
2011年最大級の話題となること間違い無しのニュー・アルバムが遂にリリース!
Fleet Foxes / Helplessness Blues
かねてから制作中との報が断片的に届いていたFleet Foxes待望のセカンド・アルバムが遂に放たれた。前作を踏襲する素晴らしい楽曲とコーラス・ワークはもちろん、圧倒的に完成度を増したサウンドが比類なきバンドの個性をより強靭なものとしている。また、収録内容は勿論のこと、今回も特筆すべきはそのアート・ワークの素晴らしさ! バンドの友人でもあるシアトルのアーティスト、Toby LiebowitzとChris Aldersonによるもので、前作同様トータルな美意識に貫かれたパッケージは、もはや芸術作品と言えよう。
【TRACK】
1. Montezuma / 2. Bedouin Dress / 3. Sim Sala Bim / 4. Battery Kinzie / 5. The Plains / Bitter Dancer
6. Helplessness Blues / 7. The Cascades / 8. Lorelai / 9. Someone You’d Admire
10. The Shrine / An Aurgument / 11. Blue Spotted Tail / 12. Grown Ocean
感情を剥き出しにすることを選んだ
美しいコーラス・ワークと柔らかく包容力のあるアンサンブルに彩られた、2008年に発表されたFleet Foxesのデビュー・アルバムは、新世代のフォーク・ミュージックの金字塔となった。その美しくも朴訥とした音世界は、ある種の理想郷を描き出しているようだった。柔らかいリヴァーヴに包まれたクラシカルで牧歌的なメロディ、様々なフォークロアな楽器を取り入れたアコースティックなバンド・アンサンブルと、美しく重層的なコーラスが生み出すハーモニーによって描き出される、美しい森に迷い込んでしまったような音世界。それこそ、一つの絵巻物のような美しい物語を生み出したのが、ファースト・アルバムだった。歪みも、虚飾もない、ただ、自分達の理想郷を描き出しているような美しさがあった。音楽の中でだけ成しえる調和を求めるような繊細かつポリフォニックなハーモニーは、どうしようもない現実に対する強烈なカウンターとなり、世界中のリスナーに絶賛を持って迎えられた。

そして、大きな期待の中で届けられた新作『Helplessness Blues』でも音楽性にそれほど大きな変化はない。バンド・アンサンブルはよりカラフルに、アレンジも起伏に富んだものになっている。そうした成長は、彼らの物語をさらにダイナミックなものにしていることも事実だが、最も大きな変化は、美しい音世界に、突き動かされるような感情が滲み出ていることだ。前作よりも生々しい感情が、歌声から、そして時に激しくかき鳴らされるアコースティック・ギターからあふれ出ている。
溢れかえるような生命力と想像力によって描かれる音世界の美しさは何も変わらない。だが、否応なく迫ってくる現実に向き合う中で何度も現れる無力感や、生そのものにどんな意味があるのかと言った自問を繰り返す中で、彼らは音楽によってのみ体験できる理想郷においても、感情を剥き出しにすることを選んだ。歌詞がより内省的な方向に向かったこととも繋がるのかもしれないが、美しく織られていく音世界が徐々に揺れ動き、「The Shrine / An Argument」で頂点に達するエモーションに満ちた軋轢こそ、このアルバムのクライマックスだ。
Fleet Foxesが剥き出しにした感情が、その生命力に満ちた美しい音世界にうねりと躍動感を与えている。シアトルから現れた美しき音楽家集団は、このアルバムで美しきロック・バンドとなった。
(text by 佐々木健治)
ロビン・ペックノールドアルバム解説
まさしく全世界待望となるFLEET FOXESのセカンド・アルバム『Helplessness Blues』が、いよいよ本日4/27に日本先行発売!! 発売前から噂が噂を呼び、その内容に関して様々な憶測を呼ぶなど、全音楽ファンからの注目度の高さは、今まさに沸点に達している。遂に、満を持して、その素晴らしいアルバムのヴェールが脱がれる。
そんな中、この発売を記念して、メンバーのロビン・ペックノールド自身によるアルバム解説を公開! アルバムの製作については勿論、これまでロビン自身が受けてきた音楽的影響なども赤裸々に語られる、非常に貴重なものとなっている。
是非チェックして欲しい。
Fleet Foxes / Helplessness Blues
僕の名前はロビンでフリート・フォクシーズのシンガーでソングライターをやっていて、新作『Helplessness Blues』を説明するためのプロモーション用のバイオグラフィをこうやって書いている。
バック・グラウンドを少し話そう。バンドはシアトル出身で、メンバーは僕、Skye Skjelset、Josh Tillman、Casey Wescott、Christian Wargoと今作を手伝ってくれた新しい友達でツアーにも参加することになっているMorgan Henderson。バンドは最初僕とSkyeだけで中学時代に結成しずっとSkyeの寝室で曲を演奏していた。そしてシアトルに引っ越し、バンド名を決めて他のミュージシャンと会って一緒に演奏するようになり、今現在のメンバー達と出会った。Caseyは2005年、Chrstianは2007年にバンドに加わり、Joshは1枚目のアルバムをリリースする少し前にメンバーになったけどレコーディングの後だった。バック・グラウンドとしてはこんな感じ。この情報をおもしろく書くのは難しいと思うけど幸運を祈るよ。
2008年にファースト・アルバムをリリースし、いろんな人やメディアから思いがけずサポートをたくさんもらい、2009年10月までツアーをやっていた。(本当はUSツアーを一つか二つやった後に2008年秋からセカンド・アルバムの制作を始めたかったんだけどね! )
レコーディングはシアトルにある70年代からやっているスタジオでデモの段階からスタートした。このスタジオは70年代からTriangle、Jon & Stu’s、Reciprocal RecordingからHall of Justiceまで複数の会社の手に渡った経緯がある。NirvanaのBleachを含めたくさんの傑作がこのスタジオで生まれている。2009年10月にDeath Cab for Cutieとのリース契約が切れた後、僕達が幸運にも契約することができ再び曲作りに専念することができた。数ヵ月後、Joanna Newsomから彼女のライヴのオープニングをやる依頼がきた。彼女の熱烈なファンである僕は、彼女のオープニングに抜擢されたことをとても光栄に思い嬉しくって一人で演奏できる曲を作らなきゃと考えた。だから、このアルバムに収録された何曲かはこのツアーの前に作った曲なんだ。一人で演奏するということはクリアなリリックとインパクトの強いメロディをもつ曲を作ることにフォーカスするということだった。だから2009年の大半をソングライターっぽくない曲作りを手がけることをして過ごし、満足いかないことも多かったんだけど、このことが僕に普段とは違うことにフォーカスするチャンスを与えてくれた。
最初のNewsomのツアーの後、Dreamland Recordingでレコーディングするためにニューヨーク州ウッドストックへみんなで行った。ここは仲のいいバンドBeach Houseが前作『Teen Dream』をレコーディングした場所で、彼らからいいスタジオだったと聞いていた。そこでドラムとアコースティック・ギターのレコーディングのため12日間滞在した。Joshは今作でドラマーとして最高の仕事をしてくれた。創意に富んだパーツを書いてくれたし、彼の素晴らしいテンポとフィーリングのおかげで1曲をのぞいた全ての楽曲をメトロノームなしで録音できた。
そして、2010年5月から11月にかけてシアトルでの長いレコーディング期間が始まった。Reciprocal, Bear CreekやAvastといったスタジオでレコーディングしたんだけど、うまく行かないことも度々あった。まあ話せば長くなるけど、体調不良、スケジュールの問題、クリエイティブ面での疑念、仕切り直し、曲の書き直し、新曲の作曲など色んな事があって長い時間がかかってしまった。最終的に2010年12月にシアトルにあるAvastでミキシングをしレコーディング作業を終えたわけだが、ギリギリまでヴォーカルやギターを追加レコーディングしたりリリックに手直しを加えたりしていた。いや、ギリギリというかほとんど間に合ってなかったかな。というわけで、デビュー・アルバムからほぼ3年の時を経てセカンドアルバムを完成させた。では音楽についてもう少し話をしよう。
新作の音はポピュラー・ミュージックから60年代中期から70年代初期のフォーク・ロック、そしてPeter Paul & Mary、John Jacob Niles、Bob Dylan、The Byrds、Neil Young、CSN、Judee Sill, Ennio Morricone、West Coast Pop Art Experimental Band、The Zombies『SMiLE』時代のBrian Wilson、Roy Harper、Van Morrison、John Fahey、Robbie Basho、The Trees Community、Duncan Browne、the Electric Prunes、Trees、Pete Seeger、and Sagittarius他多数のミュージシャンからフォークの影響とインスピレーションを受けた。フォーク・ロック、トラディッショナル・フォークとサイケデリック・ポップを混ぜてグループ・ヴォーカル・ハーモニーを強調させた音楽だと思う。今回大きなインスピレーションとなったのはAstral Weeksだった。音に反映されてないときでも、アプローチにインスピレーションを与えてくれていたりする。Van Morrisonのヴォーカルの剥き出しの感情やトランスっぽいアレンジも新作に大いにインスピレーションを与えてくれた
音的には” 「Grown Ocean」と「Bedouin Dress」もしくは「Helplessness Blues」といった曲のスライド・ギターの部分は若干カントリー・ミュージックよりに仕上がっている。12弦ギター、ハンマードダルシマー、ツィター、アップライト・ベース、ウッド・フルート、ティンパニー、ムーグ・シンセサイザー、タンボラ、フィドル、マーキソフォン、クラリネット、ミュージック・ボックス、ペダルスチール・ギター、ラップスチール・ギター、チベタンシンギング・ボール、ヴィブラフォンなど様々な新しい楽器を使ってトラディッショナルよりのバンド編成でレコーディングをした。
OK! これでほとんどを説明できたかと思う。最後に話すのはタイトルのこと。『Helplessness Blues』というタイトルをつけたのには色んな理由がある。第一に何となくおもしろいタイトルだから。第二は、このアルバムのメイン・テーマの一つでもあるんだが、自分が誰であるかとどういう人間になりたいか、あるいは最終的にどういう人間になっていたいか、そしていかに時にして自分自身がこれを阻む唯一の妨げになってしまっているかということ。この考えは収録曲のうちの何曲かで表現している。
読んでくれてありがとう。新作を是非楽しんでほしい!
ロビン
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PROFILE
Fleet Foxes
2006年に結成のシアトル出身ロック・バンド。海外では2008年2月EP『Sun Giant』でデビュー。同年6月、デビュー・アルバム『Fleet Foxes』をリリース。バンジョー、マンドリン、ピアノ、フルート等多種多様な楽器を使い、壮大サウンドと、美しいコーラス・ワークで、デビューと共に世界中のメディアから大絶賛を受け、海外主要メディアの年間チャートを独占。今最も高い評価を集めるロック・バンド。