2020/12/11 18:00
第38回「そう呼ばせて」
愛という言葉は取り扱いがむずかしいと思う。何を指すのか、たぶん一生分からない。
でも敢えて、今回は愛ということについて、書いてみようと思う。
12月5日は難波ベアーズ、12月6日は京都のSOLE CAFEでライブをした。
これまでのライブは、ライブ前に死ぬほど緊張して、終わったら喪失感に打ちひしがれていた。ライブの後はすごく寂しかった。いつも。
だけど、今回はライブ後、満たされたような気持ちで、充足感があって、しあわせな気持ちになった。何が変わったのか?今回だけなのか?分からないけど、少し考えてみる。
わたしは好きだという気持ちを持つことは得意だ。その強さでいろんなことを乗り越えてきたと思う。でも、好きだという気持ちを受け取ることは苦手だった。「わたしのこと好きだなんて物好きだね、勝手に好きになればいい。」と思っていた。それは逃げ道だった。”好き”を受け取れば、それは失う日が来るということだ。傷つくのが怖かった。
ずっとずっとそうやって逃げていた。一方通行の気持ちしか信じたくなかった。
だけど、この間、難波ベアーズでライブしたとき「わたしは今この瞬間の全てが好きで、そして、観ている人たちがこの瞬間を好きなんだというのを感じている。これが愛ってやつなのかなぁ。わたしはやっと音楽を愛することができて、そして、音楽に愛されたのかな。」と思ったのだった。
音楽に愛される。
そう思ってから、いやいや、調子に乗っちゃいけない。こんなしがないシンガーソングライターが何言ってんだ。とも、頭をよぎった。だけどそれは断じて違う。
音楽はそんなケチなものじゃない。
音楽はいつもあって、こちらの準備ができたら際限なく愛してくれる、そういう奴なのだ。
それは誰にとっても同じなのだ。
ただただ音楽はそこに在るだけで、愛して愛して愛しまくっても、そのまま受け止めてくれる。
大きく、柔らかいものに包まれた気持ちで存在できることにしあわせを感じる。
これはいっしょに音を鳴らしてくれたバンドのメンバーのおかげだし、ベアーズのスタッフさんのおかげだし、ベアーズという場所のおかげだし、お越しくださったみなさんのおかげだし、来れなかったひともたくさん居たの知ってるし、いつも応援してくれてるおかげだし、ほんとうにわたしはしあわせものです。
心の底から、ありがとう。全身で、ありがとう。を伝えたい。
そんな愛を受けて6日のSOLE CAFEでのライブをした。ライブ前、音楽に真摯に居たいと思って、それ以外は何も考えなかった。ライブ中は、音と私の世界に集中して、もう1人のわたしが背後からライブを見ているという感じだった。ライブ後は、観てくれたみなさんがなんだか良いお顔をして出て行くところを見て、うれしかった。
たぶん「愛」って呼んでいい、2日間だった。
文と絵:白波多カミン
・白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/
★【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』アーカイブ
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