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2020/03/27 18:00

 

【連載コラム】白波多カミンの『引き出しからこんにちは』第22回

 

第22回「路面電車の走る街」

最近引っ越しをした。

新しい土地はのどかで気に入っている。路面電車が走っている街。

窓が開け放たれたまま、ゆっくり走る電車だ。

この間、帰り道にその電車に乗っていたら、気づいたら乗客がみんな降りていて、わたし一人になっていた。

電車が好きなわたしには至福の時間だ。車庫に入る電車だったため、車庫前の駅が終点。車掌さんのアナウンスはたくさんの乗客を乗せている時と文言は変わらないけれど、わたしだけに言ってくれているんだ…!と気づき、贅沢だなぁと、「本日も御乗車ありがとうございます。(〜中略)終点です。」というマイク越しの声を噛みしめながら聞いたのだった。

車庫に帰っていく電車を見届けた。夜で外は暗く、電車の窓だけが明るく光っている。窓のから見える吊革がゆらゆら揺れて、カーブを描いた線路の上を走り、車庫に入っていく。綺麗だなぁ。あぁ、この街がすきだ。電車だけでもそう思う。

わりとお手軽で、めでたい造りのわたしの感情は、大袈裟で、短絡的だったりするけど、それも含めてわたしだと思う。良いときも悪いときも感度を上げて生きていたい。強くなりたいと願いながら生きていた時もあったけど、最近は、タフである必要はなく、あることがあるだけなんだと、冷静になる時間があれば、何があっても大丈夫だと思う。

みんなげんきでいようね。

(次回掲載は4月10日)

文と絵:白波多カミン

白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/


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