2019/12/07 12:04
第14回「存在の肯定」
わたしは基本的に大げさな人間だと思う。美味しいものを食べると「もう死んでもいい〜」とか言うし、このひと嫌いだなと思うと「滅せよ。」と心の中で唱えたりする。
そんな大げさなわたしだが、今回、また初めての感覚に出会った。
それは「生まれてきてよかった」だ。
似ている言葉で「生きててよかった」というのがあるが、わたしにとってこの2つの感覚は大きく違うのだ。
「生きててよかった」と感じたことは数えきれないほどある。ものすごいライブを見たときとか、憧れの人と握手できたときとか、甥っ子を抱きしめたときとか。もはやもっと些細な事柄、例えば、お風呂が気持ち良かったりとか、ふとんに入った瞬間とかでも思ったりする。
「生まれてきてよかった」は初めての感覚すぎてなかなか説明が難しい。でも、この間、ライブをしたときに思ったので、言葉にしておこうと思う。
今までバンド編成での演奏は、音のカオスの中で歌っているような感覚、そのカオスをジャンプ台にして突き抜ける。それがわたしにとっての”バンド”だった。それはとても好きだった。でも、12/1に大阪のなんばベアーズでライブをしているとき、初めての経験をした。
それは、“バンドの出してる楽器の音の全てが聞こえた”ということ。カオスの逆の感覚だ。わたしにとっては大きな事件だ。
バンドマンと呼ばれるひとたちは当たり前のようにやっているのかもしれないけれど、そんなのはわたしには関係なくて、まあ、とにかく、びっくりしたのだった。音のある場所、バランス、速さ、メンバーの熱、PAさんの様子、お客さんの心の動き、など、たくさんの情報がきちんと整理されて身体に入ってくる。おのずと自分がどうすればいいのか分かる。心に目みたいなものがあって、その目にずっとかぶさってた目隠しが取れて、へぇ〜よく見えるなぁ。という感じ。
それはあの日にあの場所にあの時間に起こったことで、もう一度それが起こるかは分からない。でも、あの感覚は忘れたくない。そして、その感覚を感じたとき、わたしは今ここに居て良いんだ。今ここに居ることを喜んでるひとたちがいると分かった。
それで、「生まれてきてよかった」と感じた。
音楽が好きで、歌が好きな自分に生まれてよかった。
そう心の底から思った。
文:白波多カミン
※次回掲載は12月20日(金)
・白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/