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2019/11/22 18:00

 

白波多カミンの『引き出しからこんにちは』第13回

 

第13回「感覚を信じること」

近藤さくらの個展が11月16日から始まった。

わたしは近藤さくらのことを「さくちゃん」と呼ぶ。さくちゃんは絵を描いている。画家だ。さくちゃんの絵は初めて見たとき、カッコいい!という印象だった。そこに彫刻があるような、触れられそうな黒いものがある。物体なのか、それは何なのかわからないけど、カッコいい!という感じだった。

いまのさくちゃんの作品を見たとき、わたしは立っているのが困難なほどに、身体の中が掻き回されるのがわかった。かと思えば、別の絵ではしーんと静かなきもちにさせられた。とにかく、作品ごとに感情をぶんぶん揺さぶられて、座り込んでしばらくぼーっとした。その一連は感動と呼ぶのだと思う。

絵はデカイ。サイズがデカい。

とにかく、くらってしまい、それから3日間は役立たずになる。

良い展示を見ると3日間はカオスの中に生きているような、世の中の見え方が変わってしまって、だけど、よりどころもなく、とにかくそのカオスと向き合う作業をしないと、先に進めない。そんな経験は滅多にできない。デカい感動。

ボルタンスキーの展示を見たときも同じように3日間、役立たずになった。すべてがうわの空で生活した。まだあの展示を見たときの気持ちをありありと思い出せる。さくちゃんの個展も自分にとってはそんな感じで、とにかくオープニングレセプションには居たけれども、ふわふわしていた。とにかく地に足がつかない。

今回の個展で初お披露目となる映像作品「眼差しの蓄積#2」という、さくちゃんが撮りためた映像にわたしが音をつけることになった。この映像もまた違う角度からヤラれる。普通に生活している普通の風景なのだが、さくちゃんの心が動いた瞬間が、淡々と撮りためられたこの映像はもはや普通の景色に見えない。

エモい。
と思った。

「エモさ」とは自分にとってなんなのか。

無音の状態で渡された映像と対峙し、この作品の行方を考えた。考えまくった結果、熱くしたり冷たくしたり、揺り動かしたり止めたり、ユーモアを感じたりホラーを感じたりするもの、そして、予想が不可能なものになってほしい。と思った。

導かれるように、音がついていく。初めて触ったiMovieを駆使して作った。うなされながら作った。すごい頭痛がしていた。作ってる間、めちゃくちゃ面白くて、たのしくて、最高なきもちだった。

かなりの自信作ができた。

ぜひ観てほしいです。個展会場の2階に設置されています。

会期中、会場にて、映像作品「眼差しの蓄積#1」「眼差しの蓄積#2」のカセットテープ音源が発売されます。「眼差しの蓄積#1」はインダストリアル・デュオCARRE(NAG + MATERIAL)が音楽を担当。(11月16日より販売)「眼差しの蓄積#2」はわたしが音楽を担当。(11月24日(日)より販売)

稀に私も在廊する予定です。
会場で会えたら、会いましょう。

イベント情報
近藤さくら個展
「場景を愛し、眼差しを共有する」
2019年11月16日(土)―12月1日(日)
12:00ー20:00 *月曜休廊
at Cale/FST
東京都港区東麻布3丁目4−6

文:白波多カミン

※次回掲載は12月6日(金)

・白波多カミン、近藤さくら個展で「眼差しの蓄積#2」の音楽を担当
https://ototoy.jp/news/94722
白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/


[ニュース] 白波多カミン

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