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2019年11月08日22時30分

 
白波多カミンの『引き出しからこんにちは』第12回
 

第12回「世の中を良くした気がした日」

“世の中を良くする”というフレーズはよく耳にする。

それはいままで、苦手なフレーズだった。けれど、世の中が良くなるのはこういうことじゃないのかなぁと実感したので、これからこのフレーズを使えるようになるだろう。

11月3日、鉄工島フェスという、鉄工場がたくさんある大田区で行われた、鉄工とアートと音楽のフェスがあった。

そこで、劇団の快快のパフォーマンス「HANEDABUSHI」で出演させてもらった。9月には「ルイ・ルイ」という舞台に客演として出演させていただいた快快。今回も引き続き客演として参加させてもらった。

会場は北嶋絞製作所という工場だった。現役で働いてる機械だらけで、壮観。鉄を絞る機械など、とにかくかっこよすぎる。わたしは現役の機械にメロメロであった。吸い付きたいほどにそそられた。機械が恋しい。

それはさておき、そこで快快は大田区のうた、「羽田節」というのをやろうということになった。羽田節は主にお祝いの席などで歌われる古いうたらしい。

主旋律を歌うひとが居て、そこに合いの手を入れる人が居る。「そりゃ、きた」「まだ、まだ」とか。とにかくさいごに「よかった、よかった」という合いの手で一節を終えるうただ。
多幸感に満ちたうた。ただ、よかった、よかったと歌ううた。

良いなあと思った。

鉄工場とアートの交わりを祝したパフォーマンス。

1時間おきに計7回パフォーマンスをしたが、よかったよかったの儀式を一日中するというのは、不思議な体験だった。なんだかほんとうによかったなぁと思ったのだ。何かが良くなるようにがんばったわけではないけど、何かが良くなった感じがした。見てるお客さんの顔を見て、工場の空気を感じて、そう思った。パフォーマンスの最後はよかった、よかった〜と言って去るのだが、3回目くらいからはお客さんから拍手が起こっていた。拍手を強要する場所では決してないし、お客さんはなんとなく拍手したくなったんだなあと思って、なんだかうれしくなった。

面白いものがみんな好きだよな。わたしもだよ。と思った。

わたしは快快のファンである。面白いからである。真摯な姿勢とユーモアでぶっちぎるひとたちなのである。

わたしは、こんなことが溢れたら世の中が良くなると思った。政治ってこういうことも含まれると思った。

世の中が良くなった気がした日。

少なくとも、その日、その場所、そこにいたひとたちは存在をお祝いされた。

よかった、よかった。

文:白波多カミン

※次回掲載は11月22日(金)

・白波多カミン、舞台『ルイ・ルイ』出演の日々を語る
https://ototoy.jp/news/94429
白波多カミン オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/


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