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2019/07/05 18:00

 

白波多カミンの『引き出しからこんにちは』第3回

 

第3回「やさしい手」

私はシンガーソングライターの他に、いろいろなアルバイトをしてきた。今は医療系の仕事をしている。

先日、84歳の女性の患者さんが来た。その方は腰が曲がっていて、歩くときに前を向くのが難しい状態。診察室まで歩いていくとき、手を引いて案内した。彼女の手を握った瞬間に「やさしい手ねぇ…」と言われた。

なんだか泣きそうになった。

私は、この世界に存在することを心から許されたように感じた(言葉にするとえらく大袈裟になってしまうけど、本当に、そう感じた)。

今までの、どんな褒め言葉よりもうれしかった。

たぶん漫画で表現するなら、「優しい手ねぇ…」と言われた直後の1コマ目が真顔。2コマ目がお花や、シャボン玉がふわふわ浮いてる感じの背景に真顔。だっただろう。実際ずっと真顔だったと思う。自分の想像を超える、受け止めきれない言葉だったからだろう。

私は「あ、えっと、そうですか、よかったです、あ、ありがとうございます。」と、答えるのがやっとだった。

すごく不思議な気持ちになって、浮かれて、ふわふわしていた。

たとえば「やさしいね」と言われるのとはちがう、あのニュアンス。84歳の方から言われるという説得力。長い間生きてきたひとに「やさしい手」と認定されることは、自分にとって特別なことに感じた。簡単に言うと、「私、生きてていいんだ〜」って思えた。

「やさしい手」

これは忘れられない言葉になりそうだ。しかし、私はとても忘れっぽい。忘れたくないので、ここに記録する。

私の業務態度はそんなに良いとは思えないし、優秀でもないし、医療のことはあんまり分からないし、とにかく自分のやれそうなことをやって働いてきた。

振り返れば、生き方自体もそんな感じだ。繰り返しになるけれど、全体的に態度が良いとは思えないし、優秀でもないし、とにかく自分のやれそうなことをしてきた。

今回のことは、得られたものがあまりに大きく、それに自分が見合っていない。と感じた。生きてて初めて、もう少し真摯に生きようと思った。

文:白波多カミン

※次回掲載は7月19日(金)

ライヴ情報
2019年7月9日(火)渋谷7thfloor
出演: 白波多カミン / ダニエル・クオン×芦田勇人(steel guitar)
OPEN 19:00 / START 19:30
予約 2300円 / 当日 2500円
*ご予約は出演者、または7th FLOOR メール予約窓口にて承ります。
7th FLOOR メール予約: 7/8(月)まで。(nanakaiyoyaku+0709@gmail.com)
件名に公演名、本文にお名前(フリガナ)、予約人数をご記入ください。
ご予約の確認がとれましたら返信いたします。

ライヴ情報
2019年8月12日(月•祝)下北沢風知空知
「basic needs vol. 1」
出演:白波多カミン / ダニエル・クオン
開場 18時30分/開演19時00分
前売/¥2,500 当日/¥3,000 (共に別途ドリンク代600円)
【予約方法】
●風知空知メール予約のみ(先着受信順/整理番号付き)
予約受付開始:6月18日(火)18時00分~
風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
(ご希望公演名、日時、お名前、枚数、電話番号以上の5点を明記の上、お申し込みください)
*受付開始時間前に受信したメールは、申し込み無効となりますので、メールをお送りの際にはご確認をお願い致します。

オフィシャル・ウェブサイト
http://shirahatakamin.com/

[ニュース] 白波多カミン

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