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2019/07/04 01:25

 

【レポート】BiSH、二面性の追求の先に魅せた強さと弱さ

 

2018年12月22日の幕張メッセのライヴが強烈すぎたのだろうか。その後何度かBiSH のライヴに足を運び、〈LiFE is COMEDY TOUR〉にも行ったけれど、あの幕張メッセのライヴを思い返しては、どうしても物足りなさの方が勝ってしまうことが続いた。

アイナ・ジ・エンドに取材をする機会があったのでその気持ちをぶつけてみた。僕は、どうしても幕張メッセのことを思い出してしまう。BiSHはあのときと今ではどっちがいい調子なの? と。

「幕張より今のほうがいいライヴをしてるっていう思いがあります。それに今はみんなが個人を鍛えてる時期なんです。(セントチヒロ・)チッチの自主イベント、アユニ(・D)のPEDRO、モモコ(グミカンパニー)の文章、リンリンの表現力、ハシヤスメ(・アツコ)のコントだって。個人の強度がどんどん上がってるから、間違いなく良くなっているし、何よりあのときより楽しいんです」と語ったアイナは、「ツアーファイナルを楽しみにしていてください」と言っていた。

ZEPP TOKYOで行われた〈LiFE is COMEDY TOUR〉の最終公演は、まさに彼女の言う通りだった。

個々人がとにかくのびのびと自由で楽しそうだ。アドリブのダンスやアジテーションは増えているにも関わらず、BiSH特有のスピード感と力強さは加速していく一方で、メンバーの誰を見ても目が離せないし、新しく気づくことも多い。そして彼女たちの表情の一つ一つに感情が動かされる。アイドルなら、踊りが揃っていて歌が上手いことが大事なのかもしれない。でもパンクバンドなら、アーティストなのであるなら、揃っていなくてもピッチが外れていても、人の心が動けばいい。そんな当たり前のことを思い出させてくれた。

冒頭に行われたハシヤスメをフィーチャーした長尺のコントでさえも、やっぱりツアーで場数を踏んだことにより格段に面白くなっている。絶妙な間合い。アドリブでめちゃくちゃ鍛えられたんだなと、個々の表現のこんな鍛え方もあるんだなと笑ってしまった。

秀逸だったのは、ニューアルバム『CARROTS and STiCKS』から、5曲目「FREEZE DRY THE PASTS」〜6曲目「遂に死」のリンリンの表現力! リンリンが椅子に座り、眼をひん剥く! メンバーがその周りを狂ったようにのたうちまわる。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』を観ているかのようだ。とはいえ、とってつけた感じはなく、見事にこの難しい曲を表現しきっていたのだ。「プロミスザスター」「オーケストラ」などの名曲揃いの中、グループ史上最も激しいデジタルハードコアな曲とダンスでその名曲たちを超えてくるのだからBiSHは面白い。そして8曲目「stereo future」でのアイナ、アユ二、チッチのボーカル3連星は、ボーカリストとしての表現力が逸脱しており、鉄板の布陣となっていた。

また、アルバムのテーマである二面性──表/裏、正義/悪、強さ/弱さ、喜び/悲しみ、激しさ/静けさ──の表現に挑戦することによって、彼女たちは強さだけでなく、弱さをも見せてもいいことに気づいたのだろう。「ステージから降りれば私たちはあなたたちと同じです」「誰に勝つでも負けるでもなく、私たちにしかできない道を切り開きます。だからみんなも自分たちの道を切り開いてください」とまっすぐに伝えたチッチのMCは、「夢を叶えるからついてきて!」と叫んでいた頃から大きく変化していた。

アンコールで登場したメンバーは、「このツアーはたくさんの人と出会えた3ヶ月でした。BiSHチームは最強のチームです。でも忘れないでほしいのは、あなた方が全力で向かってくるからすごくなるんです。それを覚えておいてください。だから私たちは、明日からも走り続けます」と言って「ALL YOU NEED IS LOVE」を披露した。「全員が仲間です!」とアイナが叫び、客席中央に清掃員の巨大な肩組みサークルモッシュが出来たのは、このツアーを象徴する光景だった。「〈LiFE is COMEDY TOUR〉では、ただ歌い踊るだけではダメ。この瞬間が誰かの忘れられない日になってほしいと思って、みんなで清掃員を笑顔にさせることを一生懸命考えました」とMCで語ったチッチに応えるように、清掃員たちがよりBiSHの仲間として、この祝祭の風景を創り上げていたように思う。

BiSHは超問題作のアルバムを引っさげて、秋から最大規模の全国ホールツアーを回る。スタッフをチームと呼び、清掃員を仲間と呼ぶBiSH。未体験の人は、ぜひその仲間に入ってみることをお勧めする。そこには自分と同じく毎日を必死に頑張っている女の子がいて、そっと手を差し伸べてくれるだろう。君は仲間だ。さあ一緒に前に進もう、と。

取材&文 : 飯田仁一郎
写真 : 外林健太

LiFE is COMEDY TOUR
2019年7月3日(水)@ZEPP TOKYO
セットリスト
M01 DiSTANCE
M02 MONSTERS
M03 GiANT KiLLERS
M04 DEADMAN
M05「FREEZE DRY THE PASTS」
M06「遂に死」
M07 PAiNT iT BLACK
M08 stereo future
M09 FOR HiM
M10 I am me.
M11 MORE THAN LiKE
M12 HiDE the BLUE
M13 My Landscape
M14 SMACK baby SMACK
M15 プロミスザスター
M16 オーケストラ
M17 サラバかな
M18 beautifulさ
En01 ALL YOU NEED IS LOVE

■ライヴ情報
NEW HATEFUL KiND TOUR
2019年10月6日(土)@埼玉 サンシティ越谷
2019年10月13日(日)@熊本 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
2019年10月14日(月・祝)@福岡 福岡サンパレスホテル&ホール
2019年10月18日(金)@京都 ロームシアター京都
2019年10月22日(火・祝)@静岡 沼津市民文化センター
2019年10月27日(日)@香川 レクザムホール
2019年11月3日(日)@愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール
2019年11月4日(月・祝)@愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール
2019年11月9日(土)@愛媛 松山市民会館
2019年11月14日(木)@東京 オリンパスホール八王子
2019年11月16日(土)@山口 周南市文化会館Z
2019年11月17日(日)@広島 上野学園ホール
2019年11月23日(土)@石川 本多の森ホール
2019年11月24日(日)@長野 ホクト文化ホール・大ホール
2019年11月29日(金)@神奈川 相模女子大学グリーンホール
2019年12月4日(水)@東京 東京国際フォーラム
2019年12月7日(土)@北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
2019年12月13日(金)@宮城 仙台サンプラザホール
2019年12月14日(土)@岩手 盛岡市民文化ホール(大ホール)
2020年1月10日(金)@兵庫 神戸国際会館こくさいホール
2020年1月11日(土)@大阪 オリックス劇場
2020年1月18日(土)@栃木 宇都宮市文化会館
2020年1月22日(水)@東京 NHKホール
2020年1月23日(木)@東京 NHKホール
※ダイブ・リフト・サーフ禁止

■チケット料金/(税込)
【通常チケット】
S席¥7,000(税込)
A席¥3,500(税込)
年齢制限/ 未就学児童入場不可


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