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2019/02/20 20:12

 

Hump Back、現在のバンドのすべてを刻んだ渋谷クアトロワンマン―ミニ・レポート

 

まだツアーが始まったばかりなので詳しいセットリストは書かないが、とにかく1曲目で林萌々子(Vo.Gt)の第一声が響き渡った瞬間から、「ああ、このバンドについていけば、大丈夫」という大きな包容力を感じるライヴだった。

東名阪ワンマンからスタートしたHump Back「髪はしばらく切らないツアー」の東京編、渋谷クアトロ。早々にチケットがソールドアウトになったフロアは超満員だ。「高速道路にて」や「月まで」「星丘公園」から「拝啓、少年よ」「生きて行く」まで、彼女らのディスコグラフィーのほとんどの曲を網羅した充実のセットリストには、いまのHump Backのすべてが詰まっていた。

林萌々子を中心に、ぴか(Ba)、美咲(Dr)からなるスリーピース編成の彼女たちが鳴らすのはシンプルなギターロック。切ない恋のゆくえ、青春の煌めきを決して背伸びをせずに綴る歌詞には、いまを生きるすべてに世代に刺さる訴求力がある。その音楽性から、とかく「若者に人気の……」なんて語られがちだが、実は人生の酸いも甘いも経験した大人世代こそ、彼女たちの歌は響くんじゃないか、と思ったりもする。

今回のツアーの主軸にある最新シングル『涙のゆくえ』に収録されている「のらりくらり」という曲を披露するときに、林は「どうにもならんことは、どうにもならへんでっていうことを言いたくて書きました」と紹介した。「疲れたら眠ったらいいし、間違ったら正したらいいし」と。その曲には“恥をかいていこうぜ/笑われ者になろう”というフレーズがある。私はその歌がとても好きなのだけど、窮屈な日常のなかで縮こまったハートをガツンと揺さぶるその大らかなメッセージは、ライブハウスという場所によく似合っていた。

「今日も一生懸命ライブハウスに歌いに来ました」「いま、バンドがめちゃくちゃおもろい」MCでは、林が真っ直ぐにフロアを見つめて語りかけた。前日に25歳の誕生日を迎えたことに触れて、「この25年間でHump Backというバンドに出会えたことが、いちばんのラッキーやったと思っています」とも言っていた。その語り口調は、嘘がなく、開けっぴろげで真っ直ぐだ。Hump Backというバンドを語るとき、やはりこの林萌々子というフロントマンの存在は大きいと思う。女性のバンドは「ガールズバンド」と呼ばれ、男性のバンドと区別されることが多いが、個人的にHump Backは「ガールズバンド」よりも「ロックバンド」と呼ぶほうがしっくりくると思っている。その要因のひとつが、どこまでもロックバンド然とした林萌々子の佇まいにある。ライブハウスこそ自分自身が生きる場所――と覚悟を決めたような凛とした生き様は、同性でも惚れてしまうほどかっこよかった。(秦理絵)

Hump Back「髪はしばらく切らないツアー」
2019年2月15日(金)渋谷クラブクアトロ

[ニュース] Hump Back

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