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2019/02/07 19:37

 

いよいよ2月9日(土)公開、NORTHERN SOUL (ノーザン・ソウル)試写会レポート

 

誰も知らないレコードで、この町から抜け出すんだ。
1974年、イギリス。若者たちは60年代のソウルで激しく踊り狂った。

『さらば青春の光』、『トレイン・スポッティング』、『24アワー・パーティ・ピープル』、『THIS IS ENGLAND』など、イギリスのユース・カルチャーを描いた名作の中に、新たな作品が誕生した。

2014年制作『NORTHERN SOUL (ノーザン・ソウル)』。公開から5年余りが経ち、2019年2月ようやく日本でも劇場公開されることが決定した。

ノーザン・ソウルというと日本ではあまり馴染みのない方が多いのではないだろうか。(筆者も映画を見るまでは知らなかった)
1960年代、イングランド北部の都市を中心に築かれた少しアングラなクラブ文化で、あまり世間に広く知られていないソウル・ミュージックで何時間も踊り明かす。音楽のジャンルとしては明確な区分はなく、誰も聴いたことがないようなレアな7インチ・シングルで、激しく踊れる楽曲が好まれる。
ノーザン・ソウルのDJ達は誰も知らないシングルで客を唸らせ、踊らせることだけに情熱を注いだ。客が熱狂するレアなシングルはDJにとってアイデンティティだ。そのため、曲名を誰にも知られないようレコードのレーベルやタイトル部分をシールなどで覆い隠し、そういった楽曲は観客達の間で「cover up」と呼ばれていた。
今作『NORTHERN SOUL (ノーザン・ソウル)』は1970年代、ノーザン・ソウル絶頂期に、イングランド北部の町バーンズワースでふたりの若者が、ノーザン・ソウルDJを目指す物語だ。

内気な性格の高校生ジョンは、学校にも家庭にも居場所がなく、毎日を退屈に過ごしていた。憂鬱な彼の数少ない楽しみは、老人ホームに預けられた気のあう祖父との面会と、可愛い黒人看護師を毎朝見かけることだけ。ある日、両親に勧められ気乗りしないまま行ったユース・クラブで、聴いたこともないソウル・ミュージックに合わせて激しく踊る青年 マットに出会う。初めて聴く音楽、軽快なダンスは、陰鬱に日々を過ごしていたジョンにとって全くの新世界だった。マットが傾倒するノーザン・ソウルに、ジョンも次第にのめり込んでいく。高校をドロップ・アウトし、家も出たジョンは、親友となったマットとともにノーザン・ソウルDJとしての活動を始める。やがてナンバー・ワンDJになるために、まだ見ぬレコードを求めて二人でアメリカへ渡ることを夢見るようになるのだが…。

実際に映画を見た印象は、アンダー・グラウンドなナイト・クラブ文化を題材としている作品であるにも関わらず、見終わってみると爽やかな気分で、それこそナイト・クラブで一晩中踊り明かして、朝日を浴びながら友人と肩を組んで家路につくような気分になれる作品だ。意外にも正統派青春映画と言ってもいい。
陰気な高校生のジョンは、初めて親友と呼べる存在、マットに出会い、初めて大きな夢を思い描くようになる。親友のマットはジョンとは対照的で、明るく社交的な性格だ。取っ付きにくく挙動不審なジョンにも嫌な顔をしない。少しいい加減でもあるので、仕事でしょっちゅう失敗している。正反対にも見える彼らはノーザン・ソウルで意気投合し、一緒にレコードを探しに行ったり、ノーザン・ソウルの大物DJの十八番「cover up」を暴いたりしながら、渡米するための資金を貯め始める。

この先の展開についてはネタバレになってしまうので、ぜひ劇場で確かめて欲しい。

ちなみに本作はR15指定作品となっているが、これはノーザン・ソウルとは切っても切れない関係にあるアンフェタミン(覚せい剤)をキメまくっていること(と、若干の濡れ場)によるものだと思われる。ノーザン・ソウルのダンスは速いビートで一晩中踊り続けるだけでなく、まるでブルース・リーのキックのようなアクロバティックな動きであったり、素早くスピンを繰り返しては床に倒れこむようなブレイクダンス的な動きを取り入れている。よってクラブの客達は酒を飲まず、アンフェタミンで身体機能を活性化させながら朝まで踊り明かした。
そういったリアルなクラブの熱気を、ノーザン・ソウルをよく知らない筆者でも感じ取ることができるのは、今作が初監督で、脚本も担当しているファッション・フォトグラファー、エイレン・コンスタンティンの鋭い感性で描写されているからだと思う。70年代に彼女自身が体験したノーザン・ソウル、その熱狂をスクリーンに蘇らせたのは、ユース・カルチャーの描写を得意とするフォトグラファーである彼女だからこそ。カットのひとつひとつがかっこいい、特にクラブのシーンは抜群にかっこいい。
エイレン・コンスタンティンのInstagramアカウントで彼女の作品と、今作に関する映像なども見ることができるので、ぜひチェックして欲しい。 (内)

エイレン・コンスタンティン Instagram
https://www.instagram.com/elaine_constantine/?hl=ja

【映画情報】
『NORTHERN SOUL (ノーザン・ソウル)』
制作総指揮 : デビー・グレイ
撮影 : サイモン・ティンダール
編集 : スティーブン・ハーレン
美術 : ロビン・ブラウン
監督・脚本 : Elaine Constantine (エイレン・コンスタンティン)
出演 : エリオット・ジェームズ・ラングリッジ
ジョシュ・ホワイトハウス(『モダンライフ・イズ・ラビッシュ 〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』)
スティーブ・クーガン(『24アワー・パーティ・ピープル』)他

公開 : イギリス 2014年

【上演スケジュール】
2019年2月9日(土)〜 新宿シネマカリテ、神戸・元町映画館
2月16日(土)〜 大阪・シネマート心斎橋
上演予定 愛知・名古屋シネマテーク、京都・出町座 
以降全国順次公開

HP : http://northernsoul-film.com/

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