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2019/02/08 18:00

 

映画「ラ・ラ・ランド」サウンドトラック全曲レビュー (さめおのサブカル案内所)

 

2017年2月に行われた第89回アカデミー賞で歴代最多の14部門へノミネート、そして監督賞や主演女優賞など6部門を受賞し話題となった映画「ラ・ラ・ランド」。そんな本作がデイミアン・チャゼル監督の新作「ファースト・マン」の公開に合わせて、2月8日に地上波初放送となります。

ロマンチックな恋愛描写、色鮮やかな世界観なども話題になりましたが、やはり本作の肝となるのは作中で流れる楽曲たち。往年のミュージカル映画に近い要素を盛り込みつつ、ジャズの要素も加え現代的にアレンジされた音楽は、飽きる事なく何回でも聴くことができます。

という訳で本日はそんな映画「ラ・ラ・ランド」のサウンドトラックに収録されている楽曲の解説をお届けします。ちなみに本作のサウンドトラックは歌唱曲を中心に構成された「通常盤」、インストの劇伴音楽を中心に構成した「スコア盤」、作中の音楽をほぼ全て網羅している「コンプリート盤」の3種類がありますが、本稿は一番ポピュラーな「通常盤」のレビューとなります。また作中のネタバレも含みますので、未視聴の方はできれば鑑賞後にご覧ください。

M-01「Another Day Of Sun」

本作のオープニングを飾る曲。僕は初鑑賞時にこのオープニングで完全に心を掴まれてしまいました。ミュージカルオーケストラとジャズの融合、そしてポップスの要素が盛り込まれたメロディは本作の世界観を伝えるために十分すぎるくらいの働きをしてくれます。高速道路上の長回し撮影も合わせて、映画史に残るオープニングと言ってもいいでしょう。

ちなみに作中では様々なラジオから聴こえる音楽に混ざる形で曲の音量が少しずつ大きくなる演出でしたが、通常盤サントラには頭の音からしっかり収録されています。

M-02 「Someone In The Crowd」

ヒロインのミア(エマ・ストーン)が同じ夢を持ったルームメイト3人と共に歌う一曲。女の子っぽい振付に鮮やかなパーティシーンと非常にミュージカルらしい曲で、メロディも耳に残りますね。また前曲と同じくリズムセクションがジャズスタイルを取っていて、非常に軽快なノリです。

タイトルになっている”Someone In The Crowd”は直訳すると”群集の中の誰か”で、要は「誰か私を見つけて!」という曲です。この時点ではまだ何者にもなれていないミアが後半からどんどん変わっていくため、改めて観返してみると印象も少し変わります。

M-03 「Mia & Sebastian’s Theme」

セブ(ライアン・ゴズリング)がジャズを禁止されたバーの演奏で弾き始める曲。ロマンチックなバーに相応しい綺麗なメロディで始まりますが、途中から一転、激しいフリージャズとなります。大人しくやろうとするものの結局ジャズに行ってしまう、セブのジャズ命な性格がそのまま曲になったような感じですね。

「ミアとセブのテーマ」という名の通り、二人が運命的に出会うシーンで使われます。実際はタイトル直後の高速道路で出会ってしますが、お互いをしっかり認識したのはここからですね。この後も二人の恋愛シーンでは頻繁にアレンジバージョンが流れます。

M-04 「A Lovely Night」

春に行われたパーティで再開した二人が夕暮れの丘で踊る、初のデュエット曲です。冒頭2曲は派手なミュージカル曲でしたが、こちらはそれよりも少人数の編成で奏でられており、二人の距離感がイメージできるようになっています。少しおどけた感じのフレーズが出てくるのも面白いですね!

後半からは歌無しのダンスシーンへ。ライアン・ゴズリングのタップダンスから始まる息が合ったダンスは見ごたえ十分です。ちなみにこのシーンは全編途切れず長回しで撮られていますが、綺麗な夕暮れの時間が一日30~40分しかなかったため、撮影には大変な苦労があったのだとか…。

M-05「Herman’s Habit」

ジャズが嫌いだというミアがセブと共にジャズバーで聴く曲。ピアノ、ベース、ドラム、トランペットというジャズではメジャーな構成で演奏される、本作オリジナルのジャズナンバーです。

本作で重要な役割を果たすジャズを的確に表現した一曲ですが、肝心のセブとミアは話に夢中であまり聴いていません(笑)。ここは皮肉にもセブが言っている「ジャズは死んでいる」という状況そのままで、”Someone In The Crowd”でのミア同様、まだ「ジャズバーを開く」という夢に現実感が無い状況を表していますね。

M-06「City of Stars」

ジャズバーの直後、ミアと映画デートを取り付けご機嫌なセブが埠頭で口ずさむ曲。アカデミー歌曲賞も受賞した曲ですが、この時点では1コーラスで終わるマイナー調の曲になっています。

この夕暮れの埠頭で踊るシーン、初期段階では裏路地で踊る設定になっていたようですが、監督がロケハンする中でこの場所を見つけて急遽変更したようです。もし裏路地で撮影していたら、どうなっていたのでしょう?別の良さはあったかもしれませんが、ロマンチックさはあまり無かったでしょうね…。

M-07「Planetarium」

セブとミアが映画デートの後に向かったグリフィス天文台。そこではセリフもほとんどなく、このロマンチックな一曲が終始流れています。今までは金管楽器を多く用いたジャジーな曲が多かったところに対し、フルートなど木管楽器を主体にしたワルツにする事で温かみや柔らかさを演出しています。

 そして二人が宙に浮く空想世界に入ってからは楽曲も一気に豪勢になります。今までは出番がなかったストリングスも使われ、まるで別映画のような音楽に。そして最後にはまるでミュージカル映画のエンディングのようにキスシーンが。二人が結ばれ、第一部が綺麗に終わります。

M-08「Summer Montage/Madeline」

 季節も夏に移り物語は後半へ。そのオープニングを飾るのは明るいジャズインスト曲で、二人の幸せな様子をダイジェストで見せていきます。ピアノとダンスのソロ回し(?)のようなシーンもあり、超浮かれている二人にこちらもほっこりします。

名言はされていませんが、ところどころ”A Lovely Night”に近いフレーズもあるので、個人的にはそのジャズアレンジだと勝手に認識しています。そう思って聴いてみると意外なつながりが見つかって面白いですよ!

M-09「City of Stars」

M-06と同じ曲ですが、こちらはセブとミアのデュエット版。更に1コーラスで終わったM-06版に少し明るさを入れたサビ部分も追加されており、実際アカデミー歌曲賞を受賞したのはこちらのバージョンです。

前曲のような底抜けの明るさが無いのは徐々に二人の心にすれ違いが見えてきたからでしょうか。二人が笑いあいながら歌うシーンもあるのですが、この後の展開を考えると逆に切なさも感じる演出ですね…。ちなみに作中では曲終盤に長いすれ違い演出が入りますが、通常盤のサントラに収録されているバージョンはそこがカットされています。フルで聴きたい場合はコンプリート盤に収録されています。

M-10「Start A Fire」

 セブがキース(ジョン・レジェンド)に誘われたバンドで演奏する曲。本曲が作中で持つ役割はセブの音楽性とのギャップを示す事ですが、そこを差し引いてもポップスとしてかっこいい曲に仕上げてくる辺りは流石。打ち込みも用いた近代的なサウンドですね。

 本アルバムに収録されている曲のほとんどは作曲家ジャスティン・ハーヴィッツが作ったものですが、この曲に関してはミュージシャンが本業であるジョン・レジェンドとの共作です。トイレから戻ったジョンが口ずさんでいたフレーズから発展させて作ったとの事なので、ジョンが本作で果たした役割はとても大きいですね。

M-11「Engagement Party」

 セブが姉の婚約パーティで演奏するピアノ曲。ミアと喧嘩した直後という事もあり悲壮感の溢れるアレンジですが、その原型は”Someone In The Crowd”内で流れたフレーズです。ミアがパーティの中で一人歌ったフレーズを、セブもパーティの中で一人演奏する。この対比が素晴らしい。

 演奏後にお辞儀をしたり投げキッスをしたりするところも含めて、セブの心情や人間性が一番出ている曲な気がします。

M-12「Audition(The Fools Who Dream)」

 ミアがオーディションで叔母の事を語る内に段々歌へ変化していく少し変わった曲。夢追い人への賛歌となっていて、本作のメインテーマとも言える”夢の成功”についてストレートに歌われています。ちなみにこちらの曲も”City Of Stars”同様、アカデミー歌曲賞にノミネートされました。

 ちなみにこの曲、ここで歌われる前にインストでアレンジバージョンが流れているのですがわかりましたか?正解はセブとミアがジャズバーを出た後、オーディションの結果について話しているシーンです。こんな感じで作中には今回紹介している曲のインストバージョンが色々なシーンに紛れているので、2回目以降はそこに注目する楽しみ方もできますよ!

M-13~M-014「Epilogue~The End」

 M-13とM-14は曲名の表記こそ分かれていますが一曲として捉えても問題無いのでまとめて。この曲はセブの単音ピアノから始まり、これまでに流れた曲のメドレーへと移り変わっていきます。このシーンはセブとミアが付き合い続けた場合のIFストーリーとなっており、その幸せすぎる映像の数々が胸を締め付けます…。

 そして最後には夢が覚め、セブの単音ピアノに戻ります。その流れでThe Endまで聴くと切なさを含みながらも笑いあう二人の顔が浮かんでくるのがまた…。夢を叶えつつも結ばれなかったビターエンドが更に深みを与えてくれる曲です。

M-15「City of Stars(Humming)」

 エンドロールで流れるのは”Another Day Of Sun”のインスト版、そしてこの”City Of Stars”のハミングバージョンです。個人的には両方入れてほしかったのですが、収録時間の関係か”City Of Stars”のみの収録です。

 こちらはセブ版ともデュエット版とも違い、アコギ1本とミアのハミングという構成。セブと出会った後、家で鼻歌を歌うミアを想像してしまう演出で寂しさもありつつ、この曲が二人を繋ぐ上で大きな役割を果たしていたのだと改めて実感できます。

最後に、このサントラは聴けばすぐ映画を観返したくなります。そして映画を観るとまたサントラを聴きたくなるので、無限ループへ突入してしまいます(笑)。映画を観た方は一度聴いてみてください。余す事なく聴きたいという方はコンプリート盤もどうぞ。

●この記事は下記ブログからご寄稿いただきました。
[さめおのサブカル案内所]
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