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2019年02月03日22時00分

 
〈月見ル君想フpresents 編む言葉—触れる・揺れる・震える〉レポート (A Challenge To Fate)
 

2019年1月17日(木)〈月見ル君想フpresents 編む言葉—触れる・揺れる・震える—〉

<出演>灰野敬二 / サクライケンタ / コショージメグミ (Maison book girl) / Taigen Kawabe (BO NINGEN)

灰野敬二・サクライケンタ・Maison book girlコショージメグミBO NINGEN Taigen Kawabeによる言葉と声をテーマにしたイベントを開催!今までに月見ル君想フで開催されてきた灰野敬二とTHE NOVEMBERS・BO NINGENとのコラボレーションでは、各バンドの楽曲を灰野敬二が分解し、バンドとともに再構築していくかたちを取ってきたが今回の公演ではMaison book girlの朗読曲を出演者4名で分解・再構築を行っていくコラボ演奏を披露する予定。コラボする楽曲・使用楽器等は現在打ち合わせ中。当日のイベントで何が起こるのか、ぜひ目撃してほしい。(月見ル君想フ公式サイトより)

Set list
1. 教室
2. 不思議な風船
3. 14days
4. empty
5. 雨の向こう側で
6. a-shi-ta
7. water
8. opening

Live photos by 船木和倖

長年の地下音楽愛好家であり、同時にアイドルヲタクである筆者にとって、地下音楽やアングラロックと地下アイドルの邂逅は夢のひとつであった。2013年3月14日に渋谷WWWでロンドン在住のサイケデリックロックバンド「BO NINGEN」が大阪のロックンロールバンド「N'夙川BOYS」と、秋葉原のアイドルグループ「でんぱ組.inc」との3マンライヴ「でんぱ NINGEN BOYS」を開催し、エンディングは3グループが合体しコラボ演奏を披露した。そこで聴いた成瀬瑛美のラップの面白さがキッカケで筆者がえい推しになった記念すべきイベントでもあった。
⇒[BO NINGEN/N'夙川BOYS/でんぱ組.inc@渋谷WWW 2013.3.14 (thu)]

同年の4月7日に日比谷野外音楽堂で開催された「カオスフェス2013」に灰野敬二率いる不失者が出演し、でんぱ組.incやBiSと対バンした。「カオスを楽しむ」をテーマにでんぱ組のプロデューサーのもふくちゃんこと福嶋麻衣子が企画したこのフェスは、現在に至るまで続編が開催されているが、灰野敬二に匹敵する地下音楽のアーティストが出演することはなかった。
⇒[カオスフェス2013~不失者/でんぱ組.inc/BiS etc.@日比谷野音 2013.4.7 (sun)]
⇒[【このコンサート/このライヴ2013】~オレ的2013年「今年の漢字」は『沌』~ ]

一方2012年11月20日四谷アウトブレイクで開催されたイベント「自家発電Vol.0」に出演したノイズバンド「非常階段」とアイドルグループ「BiS」の合体プロジェクト「BiS階段」は、2013年8月にメジャーデビューし、日本だけでなく海外の前衛ロック/ノイズファンの間で大きな話題となった。BiSメンバーのファーストサマーウイカやヒラノノゾミが個別に非常階段やJOJO広重とコラボすることもあったが、第一期BiSの解散(2014年7月8日 横浜アリーナ『BiSなりの武道館』)に合わせ、BiS階段も解散。その後、非常階段はアイドルユニット「ゆるめるモ!」や「あヴぁんだんど」とコラボした。

⇒[非常階段/BiS/QP-CRAZY/_ _ _ _*(テイヘン)etc.@四谷アウトブレイク 2012.11.18 (sun) ]
⇒[【緊急特集】BiS階段、ついに海外デビュー!海外記事と過去記事で辿るその衝撃の軌跡。]

それ以来、現在では地下音楽やノイズ系アーティストと地下アイドルのコラボレーションは様々な形で行われている。しかしながら筆者が敬愛する灰野敬二とアイドルの邂逅の機会はついぞ訪れなかった。2017年11月23日秋葉原Club Goodmanでの『NEO NOISE』に於ける元BiSの「テンテンコ」が灰野とエレクトロニクスでコラボしたのが最も近いが、あくまで「ノイジシャン」としての共演であり、歌と踊りをメインとする「アイドル」のコラボではなかった。

⇒[『NEO NOISE』灰野敬二/美川俊治/テンテンコ/森田潤/ドラびでお@秋葉原Club Goodman 2017.11.23 (thu)]

上記の『NEO NOISE』を含め『GIGA NOISE』や『GIGA DISCO』等のイベントを企画するドラびでおこと一楽儀光の発案によるアイドルイベント『GIGA IDOL』への出演依頼を頑に拒んでいると言われる灰野が「地下アイドル」とコラボすることは見果てぬ夢に過ぎないのか、と諦めかけていた2018年末に突然、元BiS/現maison book girl(以下ブクガ)の「コショージメグミ」と灰野のコラボレーションが発表された。ブクガのプロデューサーのサクライケンタと、2018年1月に灰野とコラボしたBO NINGENのTaigen Kawabeを含む4人の名前が併記されていた。

月見ル君想フでは、冒頭の告知文にあるTHE NOVEMBERS、BO NINGENとのコラボ以前にも、灰野×テニスコーツ、灰野×青葉市子×マヒトゥ・ザ・ピーポー、灰野×マヒトゥ・ザ・ピーポー×波多野裕文といったユニークなコラボライヴが企画されてきた。一方ブクガも2016年8月~2018年4月主催3マンライヴ「夜明けの月と煙」を20回に亘り開催していた。どちらも所縁のある満月の輝くステージに共に立つことは想定外ではあるが有り得ないことではなかった。

しかし一体何が起こるのか、アイドル(ブクガ)/サイケ(BO NINGEN)/地下音楽(灰野敬二)いずれのファンばかりではなく、当の本人たちも予測し得なかったに違いない。実際にコショージは「灰野敬二さんのすごさとか経歴を全く知らなくて」共演に臨み、「1回だけリハとか入ったりとかしたんですけど、でも全然時間とかも少なかったんで。どういうことをするのかも本当に決めないまま」だったと語っている。

そんな状態で迎えた当日、集まった観客はブクガファンが5割、BO NINGEN/灰野ファンが残り半々といった感じ。前方に並んだ椅子席は早々に満席になり、スタンディングの客が上階バルコニーまで溢れる。期待と不安が半々でどこか戸惑ったような雰囲気で開演を待つ。10分押しでステージに4人が登場。右から灰野、コショージ、Taigen、サクライの順で椅子に座る。コショージの『時計じかけのオレンジ』風の白いプリントシャツはデビュー当時の衣装。Maison book girl発足前のソロライヴでサクライの曲をバックに自作の詩でポエトリーリーディングをしていた記憶が蘇ったのだろう。

基本的に、これまでブクガのCDで発表された8曲のポエトリーリーディング・ナンバーをコショージ自身が朗読し、サクライが原曲のイメージを継承するフレーズでバックアップし、灰野とTaigenが自由度の高いプレイで別の世界へ拡張するスタイル。灰野は事前に音源を一切聴かなかったという。コショージの詩のストーリーから歓喜されたイマジネーションを、音を聴くことで限定されないよう白紙のままで挑んだのだろう。ブクガの原曲を知りつつ、昨年のコラボレーションで灰野のやり方を熟知しているTaigenは、両者の橋渡しの役割を意識し苦心したと言う。

ボサノヴァ風のギターに導かれた「教室」とベースがリズムを刻む「不思議な風船」では、コード進行や調性に囚われない灰野のギターが深いリバーヴの中に漂い、蕩けるような浮遊感を産み出した。「14days」はブクガ・ヴァージョンではカットされている“主語”がコショージの口から明かされる。それを掻き消そうと二本のギターとTaigenのヴォイスが轟音を発するが、それでも聴き手の耳に届いた禁断の言葉は異形の呪文だった。「empty」ではサクライがキーボードを弾き現代音楽的な即興演奏を聴かせた。前半が終わりMCタイム。いつものブクガのライヴとはまったく異なる緊張感に静まり返った客席にコショージも戸惑いを隠せないようだが、気詰まりな時間を緩める素直な語り口にステージ上も客席も徐々に和んでいくのを感じた。これもアイドルとしての才能のひとつだろう。

後半は灰野が灰色の街の物語をリーディングする「雨の向こう側」、アカペラで4人がランダムに言葉を発する「a-shi-ta」、Taigenがメインで朗読する「water」へと続く。それまでクールな佇まいで詩を読んでいたコショージが、Taigenのエモーショナルな語りに呼応して、呪いの叫びや情念のシャウトを聴かせたのには驚いた。心の奥の自己表現欲求の扉が開かれたかのようだった。ラストナンバーの「opening」は、老人と猫の出会いと別れを描いたストーリー。猫を何匹も飼っている灰野はリハの時に「この詩は悲しくて歌えない」と語ったという。静謐なサウンドのつづれ織りが徐々に高まり、クライマックスの猫の別れの言葉を、感極まったコショージ号泣しながら語り続ける。3人の演奏ももらい泣きするように濡れたまま70分のライヴは終了。4人がそれぞれ「ありがとう」と感謝の言葉を口にしてステージを去り、会場は暖かい拍手に包まれた。

灰野はコショージに「君がボスだから、君のやりたい通りにやって僕たちはついて行くだけだから」と語ったと言う。コラボの核心が「言葉」であるという意味もあるが、一過性のセッションではなく、ひとつのユニットになる為には「語り手」が中心にいなければならないという信念に基づいた台詞でもある。単なるアイドルとアヴァンギャルドの出会いではなく、生まれも育ちも思想も異なる4人の表現者が“バンド”として作り上げた豊穣な物語は、ポエトリーリーディングと即興音楽表現の更なる可能性を詳らかにする、独創的な“創造劇場(The Theater of Creative Music)”だった。この日の奇跡の経験と記憶を糧にして、それぞれの表現活動が充実していけば素晴らしい。またいつか機会があったら再度コラボして新しい物語を産み出して欲しい。
ANOTHER REIEW⇒JazzTokyo:月見ル君想フpresents 編む言葉—触れる・揺れる・震える—

触れ続ける
揺れ続ける
震え続ける
言葉の波動

●この記事は下記ブログからご寄稿いただきました。
[A Challenge To Fate]

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