2018/11/24 18:00
サポートの時期を含めると、2年ぐらい前から、佐々木、なべちゃん、姐さん、テツという4人のフラッドは見てきて、そのライブのたびに「これが完全体だなあ」という嬉しい手応えを感じてきたけれど、この体制の凄みを本当の意味で実感できたライブだった。
11月7日にリリースしたトリプルA面シングル『13分間の悪夢』のレコ発ツアーとして、東名阪の3ヵ所のみで開催した「3日間の悪夢」の渋谷クアトロ公演。
まず前提としてバンドはメンバーが固定しないと、ライブでレア曲を演奏できない。そんなジレンマから解放されたことで、今回のツアーでは「過去の曲をけっこうやる」という話は事前に聞いていたけれど、まさに出し惜しみなしのレア曲「百鬼夜行」でライブはスタートした。そこから「Ghost」や「Dancing Zombiez」という、おそらく「3日間の悪夢」というツアータイトルを意識したであろう怪しげなセットリストには遊び心が溢れていたし、ライブの中盤には「コインランドリー・ブルース」や「Honey Moon Song」という聴かせる曲もあり、とにかく今回のライブは全体の流れがとても美しかった。
ロックンロールやブルースだけではない、フラッドの幅広い音楽への造詣、多角的に聴かせるサウンドアプローチ、日々を戦う人を鼓舞する熱いメッセージ性、そういうものがアンコールの「世界はきものもの」に至るまで、過不足なく凝縮されていた。
そのライブで重要な役割を果たしたのが、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也がプロデュースを手がけた楽曲たちだ。明るくて開放感のあるフラッドを完璧に実現した「夏の砂漠」を、その元ネタになった「春の嵐」に続けて披露したのも粋だったし、「DEAR MY ROCKSTEADY」では、会場は信じられないぐらいピースフルな雰囲気で包まれていた。クライマックスにかけては、定番の「プシケ」「シーガル」というハイカロリーなアップナンバーを畳みかけるなかで、「ミッドナイト・クローラー」(セルフタイトル作『a flood of circle』に収録された田淵プロデュース曲)もあり、トドメの一撃とばかりに「美しい悪夢」を投下。ピークに向けて上り詰めてゆく昂揚感は圧巻のひとことだった。
MCでは、佐々木が「テツが加入して、なべちゃんが守ってくれて、姐さんが支えてくれたことによって、昔の曲ができるようになった」と言っていた。誰が欠けても、いまのフラッドはなかった。泥まみれの歴史がなくても、いまのフラッドはなかった。その全ての過去も武器にして進んでいけるのが、いまのa flood of circleの強さだ。この日、予告された来春リリースのアルバムには、そういう4人の本領が遺憾なく発揮されるのだと思う。(秦理絵)
a flood of circleの3日間の悪夢
2018年11月17日 (土)渋谷クラブクアトロ