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2017/09/11 20:00

 

映画『武曲』との一対一の真剣勝負! そこで見えたあら恋の凄み-オフィシャル・ライヴレポート

 

9月6日、渋谷WWWにて、あらかじめ決められた恋人たちへ主催企画「Mixing Vol.2」が開催された。「Mixing」は、映画との対バンを行う企画であり、今回は、あら恋のバンマス・池永正二が音楽を手掛けた綾野剛主演、熊切和嘉監督作品『武曲』とのツーマンとなった。総合芸術たる映画と、生演奏でそのスケールに近づこうとするあら恋の真剣勝負は、勝敗の分からない、白熱の展開に。さらにライブ終演後には、あら恋としては最大規模の主催イベント開催が発表され、会場は大きな歓声に包まれた。

20年の間、インストゥルメンタル・バンドとしての強みを活かし、苦しみも悲しみも喜びも迷いも痛みも、またそうした言葉では表現できない曖昧な感情もひっくるめて音にしてきたあらかじめ決められた恋人たちへ。何かを塗り替えるでも更新するでもなく、日々を生きる人間の繊細な、揺れ動く心持ちに彼らは常にスポットを当ててきた。「ややこしいことが多いから、その前にまず楽しめるものを」――この日のMCでバンマス・池永が語ったように、あら恋の轟音からは、日々の様々な難題に想いを巡らすための原動力となれれば、という気概が感じられる。そんなあら恋の演奏を、この日の対バン相手である映画『武曲』の感想も添えてレポートする。

あらかじめ決められた恋人たちへの主催イベント「Mixing」は、シネマティックなサウンドを追求するあら恋が、まさに「映画」そのものと対バンを行うという企画である。2011年に開催されたVol.1では、前野健太の演奏風景と吉祥寺の街並みをワンカットで追った松江哲明監督『ライブテープ』とのツーマンを行っており、あら恋の「Back」に合わせて『ライブテープ』の映像を巻き戻すという演出に誰もが心奪われた一夜だった。あら恋20周年イヤーとなる2017年、「Mixing」としては6年ぶりの開催となった今回は、バンマスである池永が劇伴・主題歌を手掛けた、熊切和嘉監督作品『武曲』とのツーマン。主題歌となったあら恋の「Fly」にフィーチャリングされている吉野寿(from eastern youth)もゲスト出演するとあって、映画との相乗効果を期待したファンの熱気が会場を包んでいた。

先攻は映画『武曲』。かつて優秀な剣士でありながら、父との軋轢とそれに起因する事故から酒に溺れた研吾(綾野剛)と、剣士としての才覚を持つ少年・融(村上虹郎)との、儚くも激しい魂のぶつかり合いを描いた作品だ。劇中では、融がラップを披露するミクスチャー・サウンドや、演出上重要なシーンにおいて使われる幽玄なテルミンなど、池永がプロダクトした音楽、SEも物語のキーとなっている。元々映画館であるWWWの音響により、そのサウンドが最大限に発揮されたと言えるだろう。

そして後攻として、あらかじめ決められた恋人たちへが登場。今回は、メンバー6人+2PA+照明のフル編成に、rokapenisとmitchel.がVJで参加。楽曲に合わせ、ステージ後方のスクリーンをメインに、両サイドの壁面にも映像演出が施された。先攻である『武曲』に溢れる緊迫したムードが残る中、「after dance」をSEにしてメンバーが登場すると、そのまま新曲へ。都会の街並みを映写しつつ披露された一曲は、『武曲』の余韻をしっかりと受け止めるような詩情に溢れたもので、映画と生演奏のブリッジとして十分な存在感を示していた。続いてダイナミックな展開が魅力の「カナタ」がプレイされたが、激しさよりもセンチメンタルな感情が浮かんでいったのも、「Mixing」ならではと言えるだろう。池永MCも「よろしくお願いします」と最低限であったため、曲間の静けさすらひとつの“音”として味わえるものとなっていた。

久々に演奏された長尺のダブ・ファンクナンバー「テン」における強靭なビートの反復によって、徐々に自らの土壌へとオーディエンスを引き込んでいくあら恋。この日の安定感ある演奏は、池永の一本気なブレスを際立たせていた。さらに20周年アルバムに収録された、ニューアレンジ版「ハウル風」、「トカレフ」の2曲も、ダブ・バンドとしての魅力が凝縮された渾身のパフォーマンスであった。

持続する緊迫感の中で、MVもリンクした「Back」が演奏される予定だったが、トラブルによってすぐに映像が出ず、思わず池永が「台無しや……」と嘆きの声を上げる場面も。ここで会場は少し和んだ雰囲気となったのはご愛嬌だろう。しかし、ブレイク後に演奏された「Back」は、後半にサプライズとして新作映像が追加されていた。これは、MVの主人公である少年少女を数年後に撮影した続編で、3年前に映像系イベントで一度だけ公開されたもの。今回の「Mixing」用にエディットされた映像であり、そこで刻まれたふたりの成長が何よりも眩しく、美しく見えた。さらに「Res」で高揚感をあおり、静から動へと飛躍していくようなイメージを展開していったのは、音楽で映画を表現することをコンセプトにしていきた、あら恋サウンドの醍醐味と言えるだろう。

本編ラストは、『武曲』の主題歌としてエンドロールでも流れた「Fly」を、吉野寿を迎えて披露。アヴァンとしてギターイントロと吉野の語りが入れられたオリジナルバージョンは、3時間半にわたるイベントの締めくくりに相応しいものであった。吉野の叫びには都市生活者としてのリアルな嘆きや怒りが滲むが、あら恋の轟音によって希望のようなものとして昇華されていく様は、やはり圧巻の光景であった。アンコールは「ラセン」できっちりと狂騒空間を作り出し、この日のライブは終演。最後にMCで、「Mixing」開催の意図を語りつつ、来場者への感謝を伝えていた。

そして、4月のベストアルバム発売からはじまったあら恋20周年プロジェクトの最終章として、11月23日に「Dubbing」シリーズのスペシャル版を開催することが発表された(場所は恵比寿リキッドルーム)。現在、出演が決まっているのはあら恋と、「恋人」繋がりの盟友world’s end girlfriend。さらなる出演者も予定されているので、その発表を楽しみにしつつ、11月23日を期待して待ちたい。

ライター 森樹
カメラマン タイコウクニヨシ


2017年9月6日(水)渋谷WWW
あらかじめ決められた恋人たちへ主催企画「Mixing Vol.2」

〈セットリスト〉
1.ホシフルヨル
2.カナタ
3.テン
4.ハウル風
5.トカレフ
6.Back
7.Res
8.Fly feat.吉野寿

encore ラセン

ライヴ情報
あらかじめ決められた恋人たちへ 20th anniversary
“Dubbing 10″ SPECIAL
guest : world’s end girlfriend and more…
■日時/会場
2017年11月23日(木・祝)@恵比寿LIQUIDROOM
OPEN14:00 / START 15:00 Advance ¥4,500 /
■オフィシャルHP先行予約受付:9/8(金)20:00 ~ 9/18(月) 23:59
受付URL: http://eplus.jp/arakajime20-hp/ (PC・携帯・スマホ)

リリース情報
「武曲 MUKOKU」
■発売日     2017年12月6日(水)
■発売元/販売元 TCエンタテインメント
■著作権表記   (C)2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

商品仕様(予定)
■セルBlu-ray 2枚組
・価格:5,800円+税
・仕様:2017年/日本/カラー/本編約125分+特典映像(尺未定)/16:9LBシネマスコープ/(本編)DTS-HDマスターオーディオ5.1chサラウンド、(特典DVD)ドルビーデジタル2.0chステレオ/日本語字幕/2枚組
・特典映像:メイキング・完成披露試写会・初日舞台挨拶・インタビュー(綾野剛、村上虹郎、前田敦子)
・封入特典:ブックレット(16P)

■セルDVD 2枚組
・価格:4,800円+税
・仕様:2017年/日本/カラー/本編約125分+特典映像(尺未定)/16:9LB シネマスコープ/片面1層/音声:(本編)ドルビーデジタル5.1chサラウンド、(特典)ドルビーデジタル2.0chステレオ/日本語字幕/2枚組
・特典映像:メイキング・完成披露試写会・初日舞台挨拶・インタビュー(綾野剛、村上虹郎、前田敦子)
・封入特典:ブックレット(16P)


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