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2015/07/04 20:00

 

タグチハナ、白波多カミン、しずくだうみがカフェで静かな熱気と一体感生みだす——OTOTOYライヴ・レポート

 

タグチハナ白波多カミンしずくだうみという3人の女性シンガー・ソングライターが、6月13日に東京・高円寺のカフェ&バー「U-hA」(ウーハ)で3マン・ライヴを行った。

タグチとしずくだは今年、ともに全国流通音源を発売し、初のワンマン・ライヴを開催。白波多は自身の名を冠したアルバム『白波多カミン』を発売し、新バンド「白波多カミン with Placebo Foxes」を結成するなど、3人ともライヴハウス界隈を中心に話題をふりまいている。今回のイベントも開演時間を待たずに用意された席がほぼ満席となり、注目度の高さがうかがえた。

■タグチハナ

最初にステージに登場したのはタグチハナ。場内が静寂のに包まれるなか、アコースティック・ギターを鳴らしながら「魚になる前に」をゆっくりと歌いだした。続いて「BLUE LIGHT」「そのとき」「ロング・グッドバイ」と、1stミニ・アルバム『夜へ』収録曲を3曲演奏。そして「お母さんが歌っていた曲をやります」と紹介すると、彼女の母親が在籍していたバンド、GALAPAGOSのカバー「月の流す涙」を披露した。

「この曲を歌うとお母さんそっくりになるんですよ。だから、歌っているとお母さんに気持ち悪がられるんです(笑)。でも好きなので、たまに歌っています」と曲への思いを語る。同曲に〈あなたに逢いたくて 胸のふるえが止まらない〉という歌詞があることに触れて、「この曲は25年位前の曲なんですけど、すでに会いたくて震えてるんですよ(笑)。だから、先駆者なんです」と笑顔をみせた。「タグチハナの曲をやります」と話すと、場内は一気に集中力が高まる。「ビア」を優しく歌うと、ラストは未発表曲「カムパネルラの星」。静かにはじまった曲は徐々に表情を変え、後半では力強くも悲痛な歌声を聴かせた。歌い終えてひと呼吸置くと、前を向いて笑顔で「ありがとうございました」とあいさつ。タグチは出番を終えた。

■白波多カミン

続いて、白波多カミンがステージへ。まずは「すきだよ」「あたまいたい」を真剣な表情で歌いあげる。あどけなくも力強くまっすぐな歌声に、客席はじっと耳を傾けていた。続く「普通の女の子」までの3曲をアコギの弾き語りで歌うと、ステージに設置されているピアノの前に座る。普段はギターで演奏しているという「姉弟」を、アルバム『白波多カミン』収録のものと同じくピアノ・ヴァージョンで披露。やはりこの曲は〈仏壇の前でセックスをした〉という歌詞にハッとさせられる。ピアノを演奏しながら〈姉弟のふりで君とピアノを弾いた〉と歌う彼女の姿を観ていると、その光景がぼんやりと目に浮かぶようだった。

ピアノを独学で練習したと話す彼女が最初に覚えたという、くるりのカバー「ピアノガール」を演奏すると、再び立ち上がってアコギを肩にかける。そして「はじめて作った曲」という紹介で、彼女の代表曲ともいえる「ランドセルカバー」を披露した。後半は、前半の緊迫した空気が少し和らぎ、ときおり笑顔を交えながら演奏する。最後にアップ・テンポの「いますぐ消えたい」を歌うと、「ありがとう! 白波多カミンでした」と清々しく礼をしてステージをあとにした。

■しずくだうみ

トリを務めたのは、しずくだうみ。彼女は出演者のなかで唯一、鍵盤での弾き語りで活動しており、この日は全編ピアノでの演奏となった。まずは「あじさい」「部屋」と、2nd EP『泳げない街』収録の2曲を披露した。会場がカフェということで、ステージと客席との距離が非常に近い。「こんな距離でピアノ弾いているのを見られのは、ピアノ教室にかよっていたとき以来です(笑)。恥ずかしい〜」とおどけてみせた。

「かわいいふたりのあとは、つらみしかないんですけど…。ふたりの曲は全部歌えるくらい好きなので、私が一番のオタクです(笑)」と共演者への愛を語ると、「ゲーム」など、この日会場で発売となった3rd EP『透明コンプレックス』収録曲を続けて演奏。自称「闇ポップ・シンガー・ソングライター」らしく、ときに痛々しさを感じさせるような歌声でディープな世界をつむいでいった。「ライヴは毎回不安で… 観ている人が全員、携帯をいじってるんじゃないかって。特にここは距離が近いので、前(ピアノの方)を向いて歌っています。ビビりなんですよね」と明かすと、新作のリード曲「さようなら」を披露。「最後に、つらぽよソングをやって終わります」と紹介すると、「水色」をしっとりと聴かせた。アンコールでは、客席からリクエストを募りつつ「adult」を演奏。ファルセットを交えながら伸びやかな歌声を披露すると、拍手に包まれながらライヴは終了した。

派手さはなくとも、良質な音楽と自分たちの思いをしっかりとお客さんに届けようとする姿勢が強く感じられた3人の演奏。しずくだのMCにもあったとおり、客席と演者の距離が近いせいか、アットホームな雰囲気でありながらも、演奏中はみんな真剣な表情でステージの音楽に集中していた。白波多はライヴ後にツイッターで「しずかな熱気がすごかったですね」と語っていたが、ライヴ中は会場に心地良い一体感が生まれているように思った。ライヴハウスでの演奏とはまたひと味違う、この規模ならではの素晴らしさを感じるイベントだった。(前田将博)

撮影 : 山崎聖史(タグチハナ)、箪笥(白波多カミン、しずくだうみ)

〈タグチハナ×白波多カミン×しずくだうみ〉
2015年6月13日(土)Cafe & Bar U-hA (http://coffeeuha.web.fc2.com)

<セットリスト>
■タグチハナ
1. 魚になる前に
2. BLUE LIGHT
3. そのとき
4. ロング・グッドバイ
5. 月の流す涙(cover)
6. ビア
7. カムパネルラの星

■白波多カミン
1. すきだよ
2. あたまいたい
3. 普通の女の子
4. 姉弟
5. ピアノガール(カバー)
6. ランドセルカバー
7. くだもの
8. いますぐ消えたい

■しずくだうみ
1. あじさい
2. 部屋
3. 血のインクといちょうの木
4. midori
5. いじわるなきみのこと
6. ゲーム
7. さようなら
8. 水色
アンコール
9. adult

・タグチハナ、2ndミニ・アルバム『Orb』配信&インタヴュー
http://ototoy.jp/feature/20150315

・2015年注目の女性シンガー・ソングライター2人が語る「女の子が歌う理由」――しずくだうみ×タグチハナ対談&ハイレゾ配信!!
http://ototoy.jp/feature/index56.php/2014121501/

・あどけなくも凛とした“少女のリアル”――白波多カミン、ノイズ、アバンギャルド界の大御所多数参加のミニ・アルバムをハイレゾ・リリース
http://ototoy.jp/feature/2014041501


[ニュース] しずくだうみ, タグチハナ, 白波多カミン

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