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2015年04月02日17時00分

 
大森靖子、鳥取の元ストリップ小屋にて生音で圧倒的な"歌"を聴かせる——OTOTOYライヴ・レポート
 

大森靖子がメジャーデビュー後、初の全国ツアー〈❤爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー❤〉のノスタルジック鳥取・三朝ニューラッキー公演を3月29日に行った。ライヴは昼夜2公演行われ、歌、ギターともにほぼ完全生音で演奏されるなど、貴重なステージとなった。彼女にとっての"歌"とはなにかを体現するような、圧倒的な演奏だった。

三朝ニューラッキーは、鳥取の中心部から少し離れた場所に位置する三朝温泉の一角にあり、キャパは50人ほどと、このツアーのなかでも最小クラスの会場。地方公演ながらチケットは発売直後に完売し入手困難となっていた。もともとはストリップ小屋として経営していたというこの会場につくと、愛情たっぷりの手づくり装飾が出迎えてくれた。場内の壁には淫靡なポスターに混ざって大森のものも貼られており、舞台の上部には「せいこちゃんことしもありがとう」の文字が。大森はインディーズ時代にも同所でライヴを行っていた。ステージ後方には白い幕が貼られており、ここから出演者が登場した。

【昼公演】

この公演には、オーディションで選ばれたオープニング・アクトも出演した。ライヴのトップを飾ったのは、長崎・佐世保市からきたというアイドルのあぁちゅ。初々しいパフォーマンスながら、彼女が歌ったBiSのカヴァー「nerve」(短縮バージョン)では場内の一部が大盛り上がりをみせるなど、早くも大森ファンの心を掴んだ様子だった。続いて登場したのは、女子3人組のバンド、Su凸ko D凹koi(すっとこどっこい)。鬱病や引きこもりなどをテーマにした歌詞と、パンク調のキャッチーな楽曲で堂々たる演奏をみせた。大森自身も、彼女たちのステージを袖で楽しそうに見守っていた。

転換を挟み、大森の出演時間になる。あずき色のワンピース姿にボブの髪を赤く染めた大森が登場すると、オープニング・アクトに「みんなMCとか芸風が固まっててすごいね」と感心。そして音を探るようにギターを鳴らすと、「あまい」から演奏がスタートした。ミラー・ボールと赤い照明の光のなかで、客席のひとりひとりの顔を見渡し、ときにうなずきながら、ていねいに歌っていく。「呪いは水色」ではマイクを外してステージ前方にしゃがみ、お客さんの目をじっと見つめながら生声で歌を聴かせる。この曲の途中でギターのシールドを引き抜いて以降は、完全に生音&生声での演奏となった。ここからの演奏は本当に圧巻で、メモを取ったり瞬きをしたりするのもはばかられるほど、緊張が一気に高まっていった。

「君と映画」ではステージから身を乗り出してときに叫ぶように歌い、「婦rick裸にて」では靴で床を叩いてリズムをとりながら演奏。「Over The Party」の演奏中にステージ下手のスピーカーの上に腰掛けると、「高円寺」ではまるで物語を読み聞かせるように、ときおり宙を眺めたりギターを抱き寄せたりしながら歌った。「ノスタルジックJ-POP」までをノンストップで歌い終えると、「ほい、ありがとうございます」とひと言。圧倒的な演奏に、客席は拍手を贈った。

ここで大森は、最初にこの会場でライヴを行ったときのことを振り返る。当時はいまほど人気がなく、主催者が近所の人たちを集めてくれたため、年齢層の高い客層になったとのこと。そのなかのひとりがライヴ後に書いたブログで「行ったことないけど、新宿のジャズ喫茶みたいだった」と表現していたことについて、「行ったことないのに想像してくれるような場を作れたらいいなと、すごく思っていた」と喜ぶ。そして歌詞やアルバム『洗脳』、今回のツアーへの思いなどを語った。

「歌詞を書くことってそういうことじゃないですか。先天的に人間のなかにあるものしか人は作れないから、絶対にあるはずなのにないと信じきっているようなものを歌わなきゃいけないんですけど…。思ったより受け入れられないし、思ったよりみんなディズニーランドとか好きだし(笑)。もっと普通の感覚だと思っていたことが、そうでもないぞっていうことがすごく多くて。『洗脳』っていうアルバムは、それを押し付けるっていうよりはバレないようにしようと思って、いっぱい音を入れたんです。今回はそのツアーなので、バンド編成でやるときはバレないようにやろうっていうのを重視してやっているんですけど、そうじゃないところで、ひっそりわざとファンしか入れないような人数のところで、バレバレのものをやろうっていうのが今日です(笑)。きてくださって、ありがとうございます」

拍手をさえぎるように、「少女3号」から演奏を再開。再び場内の集中力が高まっていく。「音楽を捨てよ、そして音楽へ」では途中から演奏を止めて朗読するように言葉を紡ぎ、「ハンドメイドホーム」では上目遣いで客席を挑発するように歌う。続く「夏果て」では、途中で最前列の女性客に話しかけたり、大森いわく「この人、絶対に悪いもん」という客にマイクを向けて「俺は絶対に悪くない」と歌わせるシーンも。そして「サマーフェア」の演奏中、感動のあまり笑いながら涙ぐむ筆者を見つけて「気持ち悪い(笑)」と笑い、「ここにきて」とステージに招き入れる。場内からどっと笑いがおこるなか目の前に座らせると、筆者がリクエストした「ラーメンの話」を披露。途中、「犬が」と繰り返す歌詞に合わせて「吠えて」と指示を出すと筆者は「ワンワン」と吠え、会場は和やかなムードに包まれた。大森は「いいパーカッションでした」と満足げに筆者を見送り、客席からもリクエストを募って「109回目の結婚式」を演奏した。

ライヴは終盤に突入。「ミッドナイト清純異性交遊」の後半で立ち上がり「行きますよ?」と合図を出すと、これまで微動だにしなかった客席は一斉にケチャとPPPHで演奏を盛り上げた。「最後」と小さくつぶやいてはじまったのは、本編ラストの「パーティードレス」。この会場の雰囲気にぴったりの風俗嬢をテーマにしたこの曲で、大森はこの日はじめてステージの後方までさがり、赤い照明に照らされながら曲の主人公になりきったように、いたずらっぽい笑みを浮かべながら歌った。そしてアウトロのギターを弾きながら、幕の向こうへと消えていった。

アンコールを求める拍手が響くなか、大森はステージ袖から顔を出して、主催者の工藤玲央にギターを手渡し演奏するように促す。工藤はしぶしぶ、ひたすら「こんなはずじゃなかった」という後悔の念を叫ぶ「電通に行きたかった」を披露。客席が笑いに包まれるなか、大森も楽しそうに演奏を聴いていた。その後、再び大森がステージにあがり「子供じゃないもん17」を演奏。最後に「さようなら」を、場内の隅々までゆっくりと視線を動かしながらギター演奏に乗せて歌い、「ありがとうございました」と深くお辞儀をして昼公演を終えた。

【夜公演】

夜公演も、あぁちゅのステージから幕を開けた。2曲のカヴァー曲をかわいらしい笑顔で元気いっぱいに歌いきり役目をまっとうした。続いて「大森靖子チルドレン」と紹介されて登場したのは、東京で活動するキーボード弾き語りのシンガー・ソングライター、ヒロネちゃん。大森と同じように、観客に言葉を伝えようとていねいに歌う姿が印象的だった。「大森靖子さんが大好きで1年前から弾き語りをはじめて、全面的に影響を受けていて、無力無善寺でライヴをやったりしています。今日はすごくうれしいです。ありがとうございます」と感慨深い様子。曲の途中に感極まって演奏を中断するシーンもあったが、大森とそのファンの前で5曲を歌いきると、暖かい拍手が彼女を包んだ。

続いて笑顔の大森が、ヒロネちゃんを引き連れて登場。ためらうヒロネちゃんにマイクを渡し自分はギターを弾いて、なんと「ミッドナイト清純異性交遊」がはじまった。ヒロネちゃんが歌いながら思わず座り込むと、大森も座って演奏。大森はヒロネちゃんの呼吸に合わせるように、優しい笑顔でうなずきながら最後までギターを弾いた。この人は、こうやって誰かの夢をあっさりと叶えてくれたりする。夢のような景色を、突然見せてくれたりするのだ。

微笑ましいコラボレーションに、場内は拍手を贈る。すると大森は「ちょっと、しゃべっていいですか?」と、ヒロネちゃんの前で今回のオーディションについて話しはじめる。「私の好きな銀杏BOYZも前座オーディションみたいなものをやっていたんですよ。でも、それに応募できる度胸のある人なんか銀杏BOYZを本当に好きとは言えない、みたいなすごく捻くれたことを思っていたから(笑)。だから、まっすぐにオーディションを受けて、ここに来てくれて、めちゃめちゃうれしいです。本当にありがとうございます」と率直な思いを伝えた。

夜公演の大森のステージは、マイク・スタンドなどが撤去され、クマのぬいぐるみのナナちゃんとドリンクが置かれたイスがあるだけのシンプルなセットとなった。そのステージで「PINK」から演奏はスタート。強い覚悟を感じるような気迫の歌に、場内の空気が張りつめていく。続いて「I love you」「キラキラ」とミディアム・テンポの曲でディープな世界に一気に染めあげた。改めて「こんばんは、大森靖子です」とあいさつすると、このMCでは歌に対する思いを語った。

「対バンは全部つまんないし、歌を歌っているバンドは誰もいないと思っているんですよ。なので、今日みたいに思いをちゃんと歌ってくれている人が好きなんです。私が思う歌を歌うことと、日本での歌を歌うっていうことが、どんどん離れていっていて。こうやってビブラートをかけて、こういう歌詞のときはこのような歌い方をしますっていうのを教わってやっているだけの機械ですよ。お医者さんの友だちがいるんですけど、ずっとコンプレックスだったんです。パンを食べないと死にますっていうときに、目の前にパンとすごくきれいな絵があったら、パンを食べるじゃないですか? それでも生きていくのに必要だと思うから私は芸術をやりたいっていう気持ちがあったけど、それでも絶対にパンを食べるじゃないですか。その負い目みたいなものがあって… 絶対にお医者さんの方が大事じゃないですか。でも、その友だちの医者が、医者なんてマニュアルどおりのことをやって、機械ができないことを人間が伝えているだけだよって言っていて。それにも勝てないって思うのに、それと同じことを歌手がやっていたら本当に勝てない、まずいぞって思っていたんですよ。でも、歌を歌っている人はいるし、こういうところにきたら歌いたくなるんじゃないですかね。みんなここで(ライヴを)やればいいんですよ(笑)」

そう話すと、大森はギターを何度もストロークさせたあとに「展覧会の絵」を諭すように歌った。続く「エンドレスダンス」では、曲中にステージ横に設置されている換気扇が止まっていることに気づく。何度も紐を引くが動かないため主催の工藤の方を向いて合図を送ると、彼が抜けていたコンセント刺さして無事に換気扇がまわりだした。それを確認すると、大森はにっこりと笑った。

短いMCを挟み、「愛してる.com」は上手側のスピーカーに座り、頭を揺らしてリズムをとりながら歌った。「魔法が使えないなら」の途中で立ち上がると、「呪いは水色」ではとおくまで届けるように身を乗り出して歌を聴かせた。その後も「ファンレター」では地べたに座り込みながらギターを銃のように見立てて客席を狙い撃つようなしぐさをみせ、「ワンダフルワールドエンド」では演技をするように身振り手振りを交えながら歌うなど、曲によってさまざまな表情をみせた。「ハンドメイドホーム」を歌い終えると、「そろそろかな」とライヴのエンディングが近いことを示唆する。カポタストの位置を動かしながら一音一音を確かめるように小さく音を鳴らすと、「あたし天使の堪忍袋」へ。演奏を終えると、ギターをそっとステージの上に置いた。

アンコールに応えてステージに登場したのは、大森ではなく工藤だった。工藤は「残念〜」とおどけながら話すと、エモーショナル全開な演奏で1曲披露。さらに大森がうれしそうに手拍子してアンコールすると、それに応えてもう1曲センチメンタルな歌声を聴かせた。演奏を終えた工藤は、鳥取市内につぶれたキャバレーを見つけたことを明かし、次回はそこで大森のディナー・ショーをやりたいと提案すると、大森は「ぜひ」と笑顔で快諾した。

再び大森のステージへ。「あと2曲で終わりです」と大森が告げると、「夏果て」を噛みしめるようにゆっくりと演奏。「パーティードレス」は昼公演よりも少しだけ優しく聴こえた。2度目のアンコールで登場した大森は、ギターを持たずにアカペラで「さようなら」を披露。ミュージカルのようにステージ上を動きまわり、ときによろめきながら言葉をつむいでいく。最後に、軽くにぎった自身の手を見つめながら充実した笑顔を浮かべると、「ありがとうございました」と礼。大きな拍手のなかで、鳥取公演は幕をおろした。

大森靖子はいつだって音楽を、歌を、ファンを大切にしてきた。その姿勢が顕著にみえたライヴだった。余計なものを削ぎ落とした生音、生歌でのリアルな演奏。中野サンプラザを完売させてしまうようなアーティストが、鳥取の中心部から離れた場所でたった50人を前にライヴをする。その理由はきっと、そこに求めてくれている人がいるからという、単純なものなのだと思う。そのひとりひとりと真正面から向き合っているからこそ、これだけ心に響く歌を歌えるのだろう。彼女はずっとそうやって歌ってきた。それを再確認させてくれると同時に、ツアーが充実していることがうかがえるような、なんとも贅沢なライヴだった。

ツアーは今週末に北海道、東北をまわり、九州、大阪、広島、東京へと続いていく。チケットは追加公演をのぞいて、すでに完売している。(前田将博)

写真提供 : 二宮ユーキ

大森靖子 全国ツアー〈❤爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー❤〉
2015年3月29日(日)~ノスタルジック鳥取 三朝 ニューラッキー 2回公演 ~ 1stage
<セットリスト>

■あぁちゅ
1.LaLaLa ~Qty version~ (LinQカヴァー)
2.nerve (BiSカヴァー)

■Su凸ko D凹koi
1.別れたい
2.鬱病
3.ブス2
4.くず息子

■大森靖子
1.あまい
2.エンドレスダンス
3.新宿
4.呪いは水色
5.君と映画
6.婦rick裸にて
7.Over The Party
8.高円寺
9.ノスタルジックJ-POP
10.少女3号
11.魔法が使えないなら
12.音楽を捨てよ、そして音楽へ
13.コーヒータイム
14.ハンドメイドホーム
15.夏果て
16.サマーフェア
17.ラーメンの話
18.109回目の結婚式
19.秘めごと
20.デートはやめよう
21.ミッドナイト清純異性交遊
22.絶対彼女
23.パーティードレス

アンコール(The 工藤玲央)
電通に行きたかった

アンコール
24.子供じゃないもん17
25.さようなら

大森靖子 全国ツアー〈❤爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー❤〉
2015年3月29日(日)~ノスタルジック鳥取 三朝 ニューラッキー 2回公演 ~ 2stage
<セットリスト>

■あぁちゅ
1.nerve (BiSカヴァー)
2.Chocolate Kiss (LinQカヴァー)

■ヒロネちゃん
1.さみしいキャラメル
2.神様
3.片道切符
4.恐竜のうた
5.カロリーメイト

ミッドナイト清純異性交遊(歌:ヒロネちゃん、ギター:大森靖子)

■大森靖子
1.PINK
2.I love you
3.キラキラ
4.展覧会の絵
5.エンドレスダンス
6.絶対彼女
7.お茶碗
8.愛してる.com
9.魔法が使えないなら
10.あまい
11.呪いは水色
12.ノスタルジックJ-POP
13.ファンレター
14.君と映画
15.ワンダフルワールドエンド
16.最終公演
17.ハンドメイドホーム
18.新宿
19.あたし天使の堪忍袋

アンコール(The 工藤玲央)
本当は君の友達の方がタイプだった
工藤と大倉とぽんた

アンコール1
20.夏果て
21.パーティードレス

アンコール2
22.さようなら

・大森靖子、地元・松山での初凱旋ライヴでツアー幕開け (初日・松山公演レポート)
http://ototoy.jp/news/81260

・大森靖子、メジャー・ファースト・アルバム『洗脳』をハイレゾ配信&インタヴュー掲載!!!
http://ototoy.jp/feature/2015020702

・大森靖子 オフィシャルサイト
http://oomoriseiko.info

・大森靖子 全国ツアー〈❤爆裂! ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー❤〉
2015年3月8日(日) ~ノスタルジック 松山 キティホール~
2015年3月14日(土) ~ノスタルジック 広島 ヲルガン座~ (2回公演)
2015年3月15日(日) ~ノスタルジック 岡山 café moyau~
2015年3月27日(金) ~ノスタルジック 名古屋 QUATTRO~ (バンド編成)
2015年3月29日(日) ~ノスタルジック 鳥取 三朝 ニューラッキー~ (2回公演)
2015年4月3日(金) ~ノスタルジック 札幌 コロニー~
2015年4月4日(土) ~ノスタルジック 仙台 enn 2nd~
2015年4月5日(日) ~ノスタルジック 秋田 ゴマシオキッチン~ (2回公演)
2015年4月10日(金) ~ノスタルジック 鹿児島 大津倉庫 プティ・パレ~
2015年4月11日(土) ~ノスタルジック 福岡 ROOMS~
2015年4月12日(日) ~ノスタルジック 大分 別府 永久劇場~
2015年4月16日(木) ~ノスタルジック 大阪 梅田 AKASO~ (バンド編成)
2015年4月17日(金) ~ノスタルジック 広島クラブクアトロ~ (バンド編成)
ツアー・ファイナル
2015年4月26日(日) ~ノスタルジック 中野サンプラザ~ (バンド編成)
追加公演〈沖縄 大森靖子全国ツアー 洗脳特別公演❤せんせい、もう子供じゃないもん〉
2015年4月29日(水) ~ノスタルジック沖縄Output~


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