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2014/03/15 07:00

 

ふくろうず、プラネタリウムで圧巻のライヴ、新譜発売&全国ツアー開催も発表――OTOTOYライヴ・レポート

 

昨日3月14日、ふくろうずがワンマン・ライヴ〈GINGA GO ~ふくろうず宇宙(そら)へ~〉を開催した。普段はサポートにドラムを加えた4人編成でライヴを行っている彼らだが、今回は事前に「3人編成&全曲リアレンジされたセットリスト」での演奏となることを明らかにしていた。そして、この日会場となるのはライヴハウスではなく、プラネタリウム。普段と違い、どのようなライヴになるか気になるファンも多かったはずだ。結論から言ってしまえば、ドラムの代わりに打ち込みをバンド・サウンドに取り入れ、これまでの曲を一新。幅の広いアレンジと会場の特性を生かした演出で、観客を魅了した1時間だった。夕方の部/午後の部と2部制で行われた今回のイベントだが、そのうちの第2部の模様をお届けする。

会場となったのは、東京都北区王子にある「北とぴあ プラネタリウムホール」。座席数は200程度だろうか。中にはいると、前方のステージに向かって映画館のようにゆるやかな傾斜があり、上空を見上げると、ドーム状のプラネタリウムが周囲をつつんでいた。

ステージには、もちろんドラム・セットは置かれていない。舞台下手からベース、キーボード、ギターという配置はいつもの通りだが、ベースの前にはMac Bookが2台とキーボード。ギターの側にもシンセが。また楽器の周囲にはステージを彩るオレンジ色の電飾が置かれており、星空に囲まれながら演奏を聴く光景を想像し、ライヴへの期待が増していった。

定時を少し過ぎると、会場が暗転。ゆっくりとメンバーが登場し、スペーシーなサウンドが会場を包む。1曲目は「砂漠の流刑地」だ。いつもは、印象的でエッジの効いたギター・リフから幕を開ける同曲だが、ゆったりとしたリズム、穏やかなアレンジで演奏がスタート。そして途中から、プラネタリウムには星座が投影される。真っ暗な会場のなか、ゆらゆらと動く星座を見つめ、楽曲の心地よさに身をあずけていると、まるで宇宙空間に漂っているような感覚だ。曲が終わり、内田万里(Vo.Key.)が「ありがとう」と呟くと、聞き惚れていた観客は、はっと思い出したように挨拶から少し遅れて拍手を送ったのが印象的だった。

続く「カシオペア」を終えると、電話のプッシュ音とコール音のサンプリング音源に合わせ、メンバーそれぞれが電話のおもちゃを使ってのパフォーマンス。内田が電話を手に取り「もしもし? テレフォン No.1」と楽曲名をさけび、演奏がスタート。原曲以上にビート感が増し、よりポップな装飾が施された楽曲で会場は温まる。

曲中にさまざまな仕掛けがあった最初の3曲とは打って変わり、ここからはしっとりと聴かせるモードへ突入。サンプリングされた雨音、雷鳴から「通り雨」へ。同期されたゆるやかなリズムが曲を支えながら、センチメンタルなメロディを強調するかのように、内田の感情豊かな歌声を中心に据えたアレンジの楽曲が続く。

そして、息を呑むような緊張感、切ない感情の高まりを静かに爆発させたのが「スフィンクス」だった。「エジプトに太陽が昇ったり降りたりするのを東京でなんとなく想像した曲です」というMCのあと披露されたこの曲では、これまでメンバー3人とも着席して演奏を行っていたが、石井竜太(Gt.)が立ち上がりエモーショナルにギターをかき鳴らす。バックのスクリーンに照らされ、激しく揺れ動く彼の影はとても美しかった。内田も〈絶対 絶対 絶対はない〉と繰り返す歌詞を叫ぶように歌う。さらにその次に、プラネタリウムに星空を浮かべながら、「サタデーナイト」を演奏するのだからたまらない。

演奏が終わると、安西卓丸(Ba.Vo.)、石井が一旦退出し、内田の弾き語りへ。ここでは、彼女が大好きなバンドだというYeah Yeah Yeahsの「Maps」、つづいて「ごめんね」を披露。

その後、内田に代わって安西が登場。あとから内田に「(観客の反応がなく)お葬式みたいな雰囲気」と笑われたMCだったが、一種の緊張感に包まれていた会場をほぐす。会場のプラネタリウムがある王子は安西の地元(厳密には近所)とのことで、今月に閉館が決定している「北とぴあ プラネタリウムホール」についてや、地元であるこの場所でライヴができて嬉しいという喜びを語った。

そしてメンバー全員がステージに揃うと「最後は盛り上がって終わろうと思うんですがいいですか?」と内田が呼びかける。開演から着席し、じっくりと演奏を聞いていた観客は拍手で答え、起立。ここからふくろうずは立て続けにポップなナンバーを披露する。

「心震わせて」に続き、ディズニーの「星に願いを」のイントロから繋いで「グッドナイトイズカミング」。ボコーダーを通した安西の〈1・2・3・4〉というカウントから始まり、「エレクトリカル・パレード」を毎度見せ場となっているベース・ソロの場面でマッシュアップするなど、ディズニーの楽曲をオマージュしたようなアレンジで畳み掛ける。

続いて、再びボコーダーを通し、繰り返される安西の〈S・O・S〉という声と「トゥーファー」のギター・リフを重ね、破滅的に加速するイントロから、「S・O・S・O・S」へ。曲中では、ハンド・マイクで歌う内田がステージを降り、階段を登ってホール全体を一周する。

最後に、内田が「ホワイトデーなのにこんなとこにいる皆さんはだめな人ー!!」と叫び、披露されたのは「だめな人」だ。内田が吹いたホイッスルに続いて、ロールプレイング・ゲームの始まりを告げるようなファンファーレ風にアレンジされたイントロから曲はスタート、その日一番の盛り上がりをみせライヴは終了した。

残念ながらアンコールはなかったのだが「大事なことを言い忘れた」とメンバー3人が再登場。「あとちょっとしたらアルバムを出しまーす」と軽やかに宣言(!)、会場からは歓喜の声があがった。また、アルバムを携えてふくろうず初の全国ツアーを開催することもあわせて発表し、ライヴは終わりを迎えたのだった。

今回のライヴは、内田万里が作る楽曲の良さはもちろんのこと、その魅力を最大限に生かすメンバーのアレンジ力をありありと見せつけられるものだった。また正式なドラム・メンバーがいないという短所を、一転して長所に変えてしまうような、ふくろうずというバンドの底力を強く感じた。今後も今回のような編成で活動していくのか定かではないが、とにかく近いうちに発表されるというアルバムが楽しみでならない。

最近では、the pillowsのトリビュート・アルバムや、Koji Nakamuraのアルバムに内田が参加したりと、どこか内向きだったこれまでとは違い、活発な活動が目立つふくろうず。アルバム・リリースなどを経て、より大きなフィールドへと彼らは羽ばたいていくに違いない。(鶯巣大介)

2014年3月14日(金)ふくろうず@北とぴあ プラネタリウムホール
〈GINGA GO ~ふくろうず宇宙(そら)へ~〉セットリスト
1. 砂漠の流刑地
2. カシオペア
3. テレフォン No.1
4. フラッシュバック
5. 通り雨
6. 灰になる
7. スフィンクス
8. サタデーナイト
9. 内田弾き語り *
10. 内田弾き語り **
11. 心震わせて
12. グッドナイトイズカミング
13. トゥーファー&S・O・S・O・S
14. だめな人

* 第1部 恋わずらいだった(未発表曲) / 第2部 ヤー・ヤー・ヤーズ「マップス」のカバー
** 第1部、第2部(夜の部) 共に ごめんね

[ニュース] ふくろうず

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