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2014/03/01 21:00

 

うみのて、バンドの成長を感じさせる圧巻のステージ――OTOTOY最速レポ

 

うみのてが、ヴォーカル・笹口騒音の誕生日である2月28日(正確には2月29日が誕生日)に、バンドにとって2度目のワンマン・ライヴとなる〈OVER THE UNKNOWN FUTURES ~笹口騒音 7と1/2才聖誕祭~〉を開催した。場所は初ワンマンと同じ渋谷WWW。2度目のワンマン・ライヴということで、完成度は格段に増していたように思う。映像や照明などの演出、うみのてや3人のゲスト・ミュージシャンの演奏も含めて、観ていてただひたすら美しいなと思う瞬間が何度もあった。

東京でも記録的な大雪が降るなど、とても寒かった印象のある今年の2月であったが、この日は初春を感じさせる暖かさだった。会場に着き受付へと続く階段を降りると、途中にファン有志一同から贈られた花が飾られている。ホールに入ると池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)がDJを行っていた。この日はゲスト・ミュージシャンとして、池永のほかに中林キララ(オシリペンペンズ)、村上大輔(ドンマルティネス)が参加することが発表されていた。

定刻をすぎると暗転、客席から拍手と歓声が起こり幕が開く。暗闇の中にメンバーの姿が浮かび上がる。いつものメンバーにくわえてサックスの姿が見える。早くもここで1人目のゲスト、村上の登場だ。はじまったのは「恋に至る病」。うみのてが紡ぎだす轟音の中で鳴り響くひときわ野太いサックスの音が、曲に新しい息吹を吹き込んでいる。村上はこの曲が終わるとステージから去った。続いて「三億年」を演奏。笹口のかすれた声と、透き通るような円庭鈴子(ex.寺本みき / Key、Cho)のコーラスがせつない。

なお、この日は前回のワンマンと同様、ステージの背後に巨大なスクリーンがあり、曲とリンクしたさまざまな映像とともに、その場で撮影したライヴ映像がVJ mitchelの手によりリアル・タイムでミックスされ流れていた。これが思わず見入ってしまうほどのクオリティだった。また、ライヴ映像に関しても、ときに目の前のステージにいるメンバーよりもカメラをとおしてスクリーンに映し出された映像の方がリアルであると錯覚してしまうほどに躍動感があった。こちらは、うみのての映像ではお馴染みの竹内道宏の手腕によるものなのだろう。

笹口が「うみのて2回目の居酒屋・渋谷わらわらわら… ではなく、渋谷WWWへようこそ」と笑顔で挨拶。「笑っていいとも! 」が3月で終了する話を挟みつつ、早くも代表曲のひとつである「もはや平和ではない」を演奏。高野P介(Gt)が激しくギターを搔き鳴らすと、客席が一斉に沸きあがる。キクイマホ(Dr)のずっしりとしたドラムが場内に響き渡り、2人目のゲスト、池永がピアニカを持って登場。ミニ・アルバム『UNKNOWN FUTURES (& FIREWORKS)』にて池永がリミックスを担当した「Unknown Idiot」を演奏した。それまで暗めだった照明が不意に明るくなり、早瀬雅之(Ba)のベースが鳴り響くと「Words Kill People (COTODAMA THE KILLER)」がはじまる。池永はこちらにも参加した。

うみのてらしい、昨今の社会を痛烈に風刺した曲が続く。暗い照明のなかで、高野のギターにくくりつけられたウニのおもちゃが放つ光がひときわ目立つ。なお、この日の高野のアンプにはいつもより大きいと思われる「星のカービィ」の人形が置かれ、マイク・スタンドからもカービィの人形がいくつも垂れ下がっていた。チャーミングな一面がうかがえる。

「上から見下ろす火花、下から見上げる花火」では、3人目のゲスト、中林が登場。花火のようにカラフルな無数の光が降り注ぐなかで、高野と中林のギターが交錯する。曲が終わると、中林がバイオリンに持ち替える。笹口曰く、「本当にレア」な瞬間であるとのこと。バイオリンの美しい音色に導かれるように、スクリーンには透き通った青空が映し出される。そこに笹口の暖かい歌が重なる。演奏されたのは「僕の家」だ。笹口の歌は曲ごとにさまざまな表情を見せる。ときには痛いくらいに突き刺さる笹口の歌声が、この瞬間はとても柔らかく、暖かく聴こえた。

中林が去り、笹口と高野が顔を見合わせ、息を合わせながらギターを弾く。円庭が歌う。ここでまさかの、ドラマ「あまちゃん」でもお馴染みの「潮騒のメモリー」が演奏された。ワン・コーラス歌ったあとに笹口が「じぇじぇ」とおどけると、そのまま「四角い部屋」へとつながる。続いて青い照明のなかで「SAYONARA BABY BLUE」を演奏。圧巻だったのはその次の「EIGA」。天の川や赤みを帯びた月と思われる映像を背に演奏する、うみのてのメンバーはただただ美しく、見入ってしまった。曲のエンディングでは、純白の衣装に身を包んだキクイが、まるで月に吸い込まれていくかのように映像と重なった。おとぎ話を見ているようだった。

ライヴは後半へと進んでいく。笹口が目をつむりギターを愛しそうに抱えながら歌った「ぐるぐる回る」。「東京駅」では、笹口が客席に降りてDJ卓をよじ登り、間奏で「ハッピーバースデー」を歌い自らを祝う。「俺、おめでとう!! 」という絶叫に、客席も歓声で応え祝福した。このとき、笹口の歌に合わせて手を叩きながら歌っていたキクイの笑顔がとても印象的だった。曲の後半では、笹口の幼少時の写真などがスクリーンに映し出された。

高野の紹介で、もう一度サックスの村上がステージに登場する。虹色の街がスクリーンに映し出されると、「RAINBOW TOKYO」がはじまった。続く「FUNADE」では、映像は海に変わる。大海原へ突き進んでいく船を支えているかのように、サックスの音が力強く響いていた。村上が去り、「UMINOTE LAST TRAIN」の轟音が場内を包み込むと、本編は終了した。

アンコールに応えて、笹口が1人でステージに戻る。「ありがとうございます」と感謝を伝えたあと、笹口騒音ハーモニカ名義の曲「うるう年に生まれて」を弾き語りで演奏した。そのまま、「言葉狩りの詩」へと続く。笹口がワン・コーラスを弾き語りで歌い、その後バンドの音が重なる。人の愚かさや無自覚さ、傍観、戦争、虚無、理不尽さ。さまざまな葛藤や問題定義が込められた歌への思いを象徴するかのように響く悲哀を帯びた高野のギター・ソロが胸に突き刺さる。こんなに壮大で悲しくて美しいストーリーが描けるバンドが、ほかのどこにいるのだろうか。素晴らしい演奏、演出だった。(原曲は笹口の最新ソロ・アルバム『NO! 』に収録されている。曲や、歌詞の引用元である塔和子「嘔吐」の詩がホームページ http://yanagawarecords.com に載せられているので、ぜひこちらも見て、聴いてほしい。)

狂気を帯びた赤く点滅する照明の中で、増幅された感情をすべてぶつけるように「正常異常」がはじまる。早瀬がベースを高く掲げながら激しい演奏を見せ、笹口が弦を引きちぎると、場内はノイズに包まれた。二度目のアンコールでは、メンバーはこの日から売られているFUNADE Tシャツに着替えて登場。「いつまでもこんな曲を歌わないように、戒めとして最後にこの曲を贈りたいと思います」という笹口の紹介から、最後の曲「たとえば僕が売れなかったら」が演奏された。曲が終わると、笹口が「ありがとうございました、うみのてでした」と挨拶。高野は満足そうな笑顔でギターを何度も宙に投げる。ほかのメンバーも手を上げたり、会釈をしてそれぞれが客席に感謝を伝える。これで、2時間を超えるライヴは終了した。

この日はミディアム・テンポの曲、特に「EIGA」「言葉狩りの詩」での表現力にはただただ圧倒された。2時間というライヴをとおして大きなひとつのストーリーがあり、そのハイライトがこれらの曲であったのだと思う。だから、どの曲が欠けてもこの感動は得られなかったのではないだろうか。うみのては、いつのまにかこんなにもスケールの大きなバンドになってしまった。大きな会場でライヴをやり続けることは挑戦であり、リスクも伴うものだと思う。しかし、これからも広い会場で長い尺のライヴをやり続けていってほしいと思った。この素晴らしいライヴをやり続けていれば、きっとそれが当たり前になるくらいに、いつか多くの人に伝わるはず。そう信じずにはいられないライヴだった。(前田将博)

写真 : 朝岡英輔

2014年2月28日(金)うみのて@渋谷WWW
〈OVER THE UNKNOWN FUTURES ~笹口騒音 7と1/2才聖誕祭~〉

<セットリスト>
1. Wake up (アーケード・ファイアのカバー)~ 恋に至る病 (with 村上大輔)
2. 三億年
3. LOVE & PEACE & etc...
4. もはや平和ではない
5. UNKNOWN IDIOT (with 池永正二)
6. WORDS KILL PEOPLE(COTODAMA THE KILLER) (with 池永正二)
7. ATOMS FOR PEACE
8. NEW(NU) CLEAR.NEW(NO) FUTURE
9. 下から見上げる花火、上から見下ろす火花
10. 上から見下ろす火花、下から見上げる花火 (with 中林キララ)
11. 僕の家 (with 中林キララ)
12. 四角い部屋
13. SAYONARA BABY BLUE
14. EIGA
15. ぐるぐる回る
16. 東京駅
17. RAINBOW TOKYO (with 村上大輔)
18. FUNADE (with 村上大輔)
19. UMINOTE LAST TRAIN

アンコール1
20. うるう年に生まれて
21. 言葉狩りの詩
22. 正常異常

アンコール2
23. たとえば僕が売れなかったら

・うみのて オフィシャル・サイト
http://uminote.blogspot.jp

・うみのて『UNKNOWN FUTURES (& FIREWORKS)』OTOTOY 特集ページ
http://ototoy.jp/feature/2013111501

[ニュース] あらかじめ決められた恋人たちへ, うみのて, オシリペンペンズ, 笹口騒音ハーモニカ

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