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2013/11/22 21:57

 

5年目を迎えた関西のDJイベント〈Onion night〉に迫るーー大阪便り

 

前回まではライヴ・レポートをお届けしてきたが、今回は趣向を変えて今の関西音楽シーンの盛り上がりの陰の立役者ともいえるひとつのDJイベントを紹介したい。

それは、2008年6月にライヴ好きが集まって始動した〈onion night〉というイベントだ。「東京だけじゃなく地方でもおもしろいイベントを体験したい!」と自分たちでそれを作ってしまったのが始まりで、そこから「ライヴハウスはライヴを楽しむだけの場所ではない」ことを伝える為にDJ+バンド・ライヴというスタイルで、双方が同等に扱われるのがこのイベント。DJは決して転換を繋ぐものではないし、しっかりと時間を設けられている。どちらも100%の割合で楽しめる構成であり、DJイベント初心者でも足を運びやすい。onion馴染みのお客さんがDJイベントの楽しみ方を身をもって表現してくれることで、バンド目当てで来た人が気付けば転換中も休む間もなく踊っていたなんてこともある。お客さん主体でどんどんイベントの間口を広げていくことができるのはonionの強みなのだ。

当初はDJプレイ中に曲名やバンド名をスクリーンに流していたが、最近は専用のハッシュタグをつけてTwitterでつぶやくと、それがスクリーンに反映されることを利用し、お客さん自身の呟きにシフトしている。ここでもお客さんの主体性を見据えたイベントの方向性が見える。反映される呟きに関しては、選曲やライヴ・アクトに関しての評価やイベント全体の感想といったものはもちろん、落し物をしてしまった人の悲しい呟きがスクリーンに現れ、その数十分後に見つかりました! と歓喜の呟きによりフロアが沸き上るなんてこともある。スクリーン上で繰り広げられるそれは直接その当事者と関係ない人にも共有されるわけだが、「何アレ…」となるのではなく、おもしろいしいいよねと大らかに捉えることが出来るのは関西の風土なのだろう。

また、つぶやきが反映されるスクリーンにはVJにより様々な映像が流されているが、数ある素材の中には某アイドルの激カワショットや某ゆるキャラのダンスシーンなど、楽曲そっちのけでツッコミを入れたくなるようなものも多い。スクリーンを指さして爆笑するDJイベント、その光景はonionらしいところである。

5年目を迎え今年はアニバーサリー・イヤーらしい大舞台が用意された。6月にはonion night名義でゆかりのあるアーティストを集めた初のコンピレーションCDを発売。9月には大阪・泉大津で行われた野外ロック・フェス〈RUSH BALL〉への出演を果たした。onionの認知度向上は、彼らがバンドを育てていくうえでの追い風となっている。イベントに出演するバンドは彼らが自信を持って多くの人にレコメンドしたいバンドばかりなのだが、ラジオ局のパワープレイのようにonionでもここ数年は一押しバンドを掲げている。2011年はKANA-BOON、2012年はキュウソネコカミ、ちなみに2013年は夜の本気ダンスだ。イベントへの積極的な出演はもちろん、DJプレイでも必ずかけることで、着実にバンドの認知度は上がっていく。お客さんが楽しめる場所の創出だけでなくシーンの盛り上げ役も担い、メインストリームに躍り出た者の後に続いていくべきバンドをしっかりと育てていることが、他のDJイベントから頭一つ抜きん出た存在たる所以だろう。

onionがお客さんもバンドもどんどん巻き込んで成長させていくイベントであり続ける限り、まだまだ関西音楽シーンにおいてネクストブレイクすべき人材がいる限り、onionのパーティーは続いていくだろう。(佐藤ワカナ)

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