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2013/08/26 11:58

 

天狗バンド、大舞台への一歩目となる熱狂の初ワンマン——OTOTOY最速レポ

 

一度は音楽で挫折したメンバーたちが正体を隠し、天狗の仮面をかぶって結成されたバンド、this is not a businessの初ワンマン・ライヴ。そのアンコールで披露されたこの日三度目の「OK GO」。ほんの一年前まで、たったふたりの前で歌っていた加藤小判は、満員の暖かいお客さんの前で歌っていた。一斉に手をあげて絶叫する客席に身を乗り出しながら、加藤はなにを思っていたのだろうか。天狗の仮面で表情は見えないが、きっといろんな感情がよぎっていたはずだ。その思いがある限り、このバンドは登り続けるだろうと思わせてくれるライヴだった。

学生の夏休みも終わりに近づいている8月24日、キャパ100人にも満たない小さなライヴ・ハウス中野heavy sick ZEROにて、天狗バンドthis is not a businessのワンマン・ライヴが行われた。天狗の仮面を被った5人組バンドthis is not a businessは、OTOTOYで5週連続インタヴューにてその核心に迫ってきたが、まだ謎に包まれている部分も多い。8月21日についに1stアルバム『10good』がリリースされ、満を持して行われる今回の初ワンマン・ライヴ。いったいどんなライヴになるのだろうか。

期待と不安が入り乱れるなか会場に向かうと、入り口の張り紙には堂々たる「ソールド・アウト」の文字が。ライヴ・フロアに入ると、それを裏付けるかのように満員の観客で混み合っていた。彼らのこれまでの音楽人生の挫折エピソードを訊いていただけに、この時点でかなりこみあげてくるものがあった。客席を見ると、若い音楽ファンの姿が多い。this is not a businessのバンドTシャツに身を包む人たちに混ざり、天狗たちがリスペクトを明言しているオオカミ・バンドのTシャツを着ている人の姿も見られた。

開演予定時刻の16時を5分ほどすぎた頃、まずはステージ上に序鬼間(Prog)が登場。そして、陣下須(Ba)、木須利茶(Gu)、否戸田雲仙(Gu)、加藤小判(Vo)が順にステージに現れると、待ち望んだ観客から歓声があがり、ライヴはスタートした。はじまったのは、彼らの曲のなかでもひと際ラウドなサウンドが響く「thunder」。客席は一斉に手を挙げる。立て続けに、アルバムのリード曲と呼ぶにふさわしい爽快なメロディが印象的な「OK GO」と、彼らが世に発表した記念すべき1曲目の曲「WITH A MISSION」を披露すると、場内は早くもヒート・アップ。序鬼が腕を振りあげ、否戸田と加藤がステージ前方に身を乗り出して煽ると、客席にはモッシュ渦が。とても新人バンドの初ワンマンとは思えない盛り上がりだ。

加藤が「this is not a business good!! 今日はよろしgood!!」と挨拶。「インタヴューとか、ラジオとか聞いてる人はわかると思うけど、去年は(前のバンドで)2人の前でワンマンをやったgood。今日は、こんなにたくさんの人の前でワンマン・ライヴができることを本当にうれしく思うgood! どうもありgood!! 」と絶叫する。そして、「ちゃんと続けていればこんなワンマン・ライヴができるってことを、去年の自分に言い聞かせたいgood」と感慨深そうに語ると、客席からは暖かい拍手が起こった。

途中、加藤と陣がパートをチェンジして演奏された「migite」では、右手を揺らす陣に習って、客席も手を揺らす。その後、アルバムに入っていない新曲も3曲披露された。この頃には、天狗の仮面の裏から溢れ出る汗により、ステージ上はずぶ濡れに。メンバーは何度も水を口にする。客席も相当な熱気だったが、まだ夏真っ盛りの8月に天狗の仮面とニット帽をかぶりながらアグレッシブに演奏する彼らが感じている熱量は、想像を絶するものだったのだろう。

ライヴはあっという間に終盤へ。「MaD TeENaGe RIOt」「RED or BLACK」というアルバム発売前からネット上にアップされていた2曲の連発により、再び客席にはモッシュが起こる。そして、客席のリクエストによる加藤のメンバー紹介を経て、早くも本編ラストの曲。「みんなが聴きたかった曲をやるgood!! 」という加藤の紹介により、再び「OK GO」が演奏された。序盤で演奏されたときよりも、ずっとエモーショナルで暖かい一体感が場内を包む。ハンド・クラップとコール・アンド・レスポンスが鳴り響く客席のなかに感極まってダイブした加藤と、それを笑顔で支える客席との間には、すでに確かな信頼関係が芽生えていた。

大きな拍手に包まれながら、再びメンバーがステージに姿を現す。加藤のメガネは、天狗の仮面の表情すら見えなくなるほど曇っている。そんな姿のまま、ぎこちないMCをする加藤に対し、否戸田がところどころでフォローを入れるなど、メンバー間の信頼の大きさもうかがえた。アンコールでは、まだ持ち曲の少ない彼らのサービス精神が込められた選曲で、カバー曲が演奏される。披露されたのは、MAN WITH A MISSIONの「FLY AGAIN」と、Nirvanaの「smells like teen spirit」。客席もまさかのサプライズに、数人で大きな輪を作り体をぶつけ合って盛り上がった。ラストは、この日三度目となる「OK GO」。最後に解き放たれたかのように、客席にもダイバーの姿があった。加藤は、そんなお客さんとうれしそうにがっちり握手を交わす。他のメンバーは、そんな加藤の背中ごしにじっと客席を眺めていた。否戸田が「ありがとうございました」と挨拶すると、大きな拍手に包まれながらライヴは終了。他のメンバーがステージを去ったあとも、名残惜しそうにお客さんと何度も繰り返しハイタッチする加藤の姿があった。

このバンドにした最初のインタヴューで、加藤は自分たちはあくまで人間であると語っていた。天狗の仮面を被っていても、彼らは普通の人間なのである。特に加藤は、この日のライヴでも「最高のメンバーが集まった」とうれしそうに語り、メンバーに天狗の鼻を近づけては苦笑いされていた。そして曲中、客席に何度も身を乗り出して、お客さんと触れ合えるよろこびを噛み締めているように見えた。自分たちの音楽を求めてくれるお客さんの前で、信頼できるメンバーとライヴをする。一見当たり前のように見えるそんな光景が、当たり前でないことを彼らは知っているのだ。それを暖かく受け入れてくれる観客。この関係性が保たれていれば、きっとこの輪はもっと大きなものになる可能性を秘めているのではないだろうか。彼らがひとつの目標として掲げるZepp Tokyoのステージでこんな光景が観られる日も、そう遠くないように思う。負け犬バンドとしてはじまったthis is not a businessは、その思いを武器に、さらなる大きなステージを目指していく。(前田将博)


2013年8月24日(土)@中野heavy sick ZERO

<セットリスト>

1. thunder
2. OK GO
3. WITH A MISSION
4. MAN
5. never mind
6. Nightmare
7. burn
8. migite
9. 木須曲(仮)
10. hold on me(仮)
11. ponyo(仮)
12. MaD TeENaGe RIOt
13. RED or BLACK
14. OK GO

アンコール
15. FLY AGAIN(カバー)
16. smells like teen spirit(カバー)
17. OK GO

・this is not a business Official HP
http://thisisnotabusiness.com/index.html

・OTOTOY 特集ページ
http://ototoy.jp/feature/2013081900

[ニュース] this is not a business

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