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2013/07/18 01:29

 

七尾旅人ヴォイス・プロジェクト、リズムと声で人類の音楽創生を描いた圧巻のステージ――OTOTOY最速レポ

 

※ライヴ画像は後日掲載予定

7月17日(水)、渋谷WWWにて七尾旅人を中心とする声だけで未知の音楽を探究するプロジェクト、〈VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!〉が2度目のライヴをおこなった。

前回5月7日に七尾旅人念願のライヴ実現となったこのプロジェクト。デビューライヴを経てヒューマンビートボクサー櫻井響、オルタナティヴ聖歌隊カントゥスに加え新メンバーに文鳥とインコが電撃加入。さらに6月に入り子犬も加入。歌が大好きな8歳&6歳の兄弟と、夏の夜の虫たち(鈴虫コオロギ総勢107匹)も含め123名+ゲスト・シンガー3名、やけのはら、AFRA、ユザーン(※タブラ禁止)による巨大ヴォーカリスト集団となり、2回目のライヴを迎えた。

この日のWWWは、雨の中多くの観客が開演前から列を作り、チケットはソールド・アウト。このプロジェクトがどんな未知のライヴを見せてくれるのかという期待感に溢れているようだ。ステージ中央には虫観賞用のケースが。どうやら新メンバーがスタンバイしている様子。公演は時間が40分程押してからのスタート。徐々に場内に鈴虫がリリリ…と鳴く声が。七尾旅人が登場して、「動物のサウンドチェックに手間取ってしまいまして、大変お待たせしました」に場内からなんとも言えない声援と笑いが起こる。「今ステージに居る鈴虫メンバーと一緒にやりたいと思います。鈴虫メンバーのモチベーションが凄くて一睡もできなかった(笑)」とさらに観客を笑わせる。夏らしい鈴虫の鳴き声と共に、旅人が操るエフェクトに自ら声をかぶせ、ライヴが始まる。「鈴虫、コオロギ合わせて127匹いますんでメンバー紹介します、オンボーカル鈴木、鈴本…」とメモを見ながら本当に全員の名前を紹介(笑)。紹介中に客席から赤ちゃんが泣き出す始末(笑)。 実にほのぼのした不思議な空間だ。「メンバーは買ってきたんですけど、鈴虫とコオロギの値段の違いにこれが格差社会か、と思いました」とメンバーの値段を報告。続いて子供メンバーとして8歳、6歳の兄弟を紹介。「どうして」という曲を。「空はどうして青いの~」というイノセントな曲。続いてもう一曲、予定になかったようだが旅人に「他にも好きな曲ある ? 」と促され「みんなのうた」等で知られる「トレロ・カモミロ」を歌うものの、途中で歌詞を失念(笑)。2人は観客を笑顔にしてステージを降りた。

本隊メンバーの登場までしばしブレイク。客席を見るとZAZEN BOYSの向井秀徳、青葉市子らミュージシャンの姿もあり、このプロジェクトの注目の高さをうかがわせる。インターミッションの後、第2部へ。

暗転すると、2階客席扉からコーラスしながらカントゥスが客席を通りステージへ向かう。櫻井響もステージに現れコーラスに加わる。七尾旅人も登場して「WE ARE VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!」と叫ぶと場内大歓声。徐々に櫻井がコーラスにビートを加えていく。「始まるよ ! Let’s sing ! 」と旅人。

「1番最初に、暗闇があった…」という旅人のリーディングと櫻井のヒューマン・ビート、カントゥスの声により、人類創生の様子が描かれる。その声と音による描写はまるで見えない映像が現れたかのように見事にイマジネーションを掻き立てる。途中、インコと文鳥がステージに登場。鳥の歌声が人類の夜明けを思わせる。恐竜、ティラノザウルス、チャールズ・ミンガス「直立猿人」…と言いながら櫻井と旅人が声とエフェクトで恐竜の迫力を表現。さらに火山の噴火を経て、人間の暮らしが描かれる。民族が生まれ、音楽が生まれる様が一際エキサイティングなリズム・トラックと櫻井のビートに乗せた旅人のスクリームで表現されるあたりは圧巻だ。そして、帽子姿のAFRAが登場、ビートを奏でる。続いて袖からユザーンが旅人の『リトルメロディ』収録の「アブラカタブラ」間奏のボルで登場すると、何故か客席から大きな笑いが沸き起こる ! 後に本人も「俺が出てきたら笑いが起こったから衝撃だったよ ! 」と振り返る程(笑)。しかしこれはオーディエンスの歓迎の意。パッと華やいだステージ上だが、中央でAFRAとのヴォイス・バトルを展開するとステージは緊張感を増し、客席からは大歓声 ! ユザーンはタブラ禁止ながら自らの声で表現するボルで見事に原子的な世界を表現。最後はAFRAとマイクを交換、ステージを交差して去っていく。拍手喝采だ。

「国家が生まれ、私たちは犬の王を選んだ」と旅人が言うと黒子に抱かれた犬が登場。アクリルケースに鎮座した犬の王様に「カワイイ ! 」と声が飛ぶ。ケースの中でエサを食べ出した微笑ましい王の姿に笑い声。「5千年後の未来の音楽を見ることができる…金色の楽器、黒い肌…」ジャジーなリズムが流れ、やがてカラフルな照明と共に4つ打ちのリズムとサンプリングされた声により急激にクラブと化すWWW。旅人がマイクを握り、カントゥスの女性と共に混沌とした世界でグルーヴを作り出す。そしてカントゥスのコーラスと櫻井のヒューマン・ビートに乗せて七尾旅人がおもむろに歌い出したのはなんと「サーカスナイト」 ! 観客から歓声があがる。こういった形でさりげなく歌われても魅力的なのが、メロディ・メーカー七尾旅人の楽曲。続いて戦争の不穏な世界が軍隊の行進、銃の音、爆発音で表され、ステージ上は赤いライトに染まる。悲しげなカントゥスのコーラスが戦争の悲劇を物語り、「私は旅立つ、戦火を逃れ…。近づく程にあの歌が聴こえる…」「夢にまで見た君のくちづけ / 夢にまで見た君のぬくもり」。カントゥスの讃美歌のような美しいコーラス。「物語はここまでです。最後はみんなも加わってもらおうかな」カントゥスの方を向き、指揮者のように手を振りコーラスする。そして観客から「ヴォイス ! 」などの声を集め、荘厳なコーラスが折り重なりエンディング。客席から大きな拍手が送られた。

ステージ上で「動物の扱いにこんなに手こずるとは…」と苦笑いしながらライヴを振り返った旅人は、そのままアンコールとしてユザーンを呼び込み、「ユザーンはタブラが無くても手ぶらで凄い(笑)」と駄洒落を飛ばしながらノープランでユザーンをステージに立たせ、「おまけで作ってやろうとしてやめた曲」として「犬とユザーンの参加により作った」曲、「チャイニーズ・ドッグ インディアン・ドッグ」いう中国風の曲を披露。カントゥスが歌う、「インディアン・ドッグ、チャイニーズ・ドッグ、ワンワンワンワンワンワン ! 」という歌詞に観客爆笑。さらに何故か「ユー、マザーファッカー ! 」とユザーンを指さす旅人。「なんでだよ ! 」と突っ込むユザーン。曲が終わり一言、「ボツにして良かった」とつぶやく旅人(笑)。

そんなリラックスムードの中、「最後に聴いて下さい、“声だけローリン”」の声に櫻井がビートを奏で、カントゥスのコーラスを重ねる。「Rollin' Rollin'」のVOICEバージョンだ。旅人の歌が入り、ここでスペシャル・ゲストのやけのはら登場。アカペラで歌われるこのアンセムが、いつも以上に言葉を大切に観客に届けられているように感じられた。ラストは観客とともにレコード・プレイヤーのボタンをOFFにするアクションで終了。

ライフワークとも言えるこのプロジェクト。「これが俺たちのロックンロールだから」と言った旅人。七尾旅人版ヴォイス・ロック・オペラとでも呼びたいようなスケールの大きなライヴだった。今後このプロジェクトがどう展開していくのか、非常に楽しみだ。(岡本貴之)


〈VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!VOICE!〉
2013年7月17日(水)渋谷WWW
メンバー : 七尾旅人 / 桜井響 / CANTUS / 文鳥 / インコ / DOGGY STARDUST(子犬)
スペシャルゲスト : やけのはら / AFRA / ユザーン

[ニュース] やけのはら, 七尾旅人, 櫻井響

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