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2013/06/29 08:00

 

凛として時雨、初の武道館ワンマンでバンド10周年を祝う――OTOTOY最速レポ

 

6月28日(金)、凛として時雨にとってバンド結成10周年記念ライヴであり、初の日本武道館でのワンマン・ライヴとなる<凛として時雨TOUR2013 "Dear Perfect" ONEMAN LIVE at 日本武道館 ~10th Tornado Anniversary~>が行われた。このライヴは、4月からはじまったアルバム『i'mperfect』を携えたツアーのファイナルでもある。ソールド・アウトとなった会場内は、満員の観客で埋めつくされていた。

19時をわずかにすぎた頃、ほぼ定刻通りに場内は暗転。薄暗いステージの上で、メンバーの足元を照らす無機質な電球の明かりだけが光っている。ステージを丸く囲うように伸びた爪のような柱が置かれているだけの、シンプルなセット。SEのノイズが鳴り響くなか、メンバーがクールにステージに登場すると、客席からは大きな歓声が沸きあがった。

定位置につくと、ステージの3人はおもむろに楽器を鳴らす。その残響音が鳴り響くなか、TKが歌いはじめると、ステージから青い光が放たれる。1曲目に選ばれたのは「abnormalize」。TKは感情をあらわに激しく頭を振りながらギターをかき鳴らす。怒濤のようになり繰り出されるピエール中野のドラムに合わせるように、照明も目まぐるしく点滅する。早くも場内は狂気の渦へ。序盤は、立て続けに激しい曲が演奏される。「Metamorphose」では虹色の照明がステージを包み込み、「I was music」のサビでは満員の観客がステージに向けて一斉に手をあげた。

余計なMCは一切ないまま、ライヴは進行していく。蠢くような345のベースが鳴り響き、はじまったのは「DISCO FLIGHT」。ピエール中野が立ち上がりスティックをまわして客席を煽ると、ひときわ大きな歓声があがった。次に演奏されたのは、かなり久しぶりに演奏されるであろうインディーズ時代の曲「O.F.T」。暖かいオレンジ色の照明のなか、これまでの狂気から解放されたかのようなTKの優しい歌声が響いた。

中盤は、凛として時雨の情緒的な世界観を魅せる。「Filmsick Mystery」では、幻想的な紫色の照明がステージを包んだ。「キミトオク」の演奏が終わると、TKが囁くような声で「ありがとう」とつぶやき、ここでTKと345の2人は一度ステージから去る。

ピエール中野を呼ぶ声が場内にこだますると、演奏中のシリアスな空気から一変、お馴染みのピエール中野MCコーナーへ。「ライヴハウス武道館へようこそ! ここは東京だぜ」と、伝説的な氷室京介のBOOWY時代の言葉を拝借し、「ピエール中野と申します」と挨拶する。続いて、武道館の正面入口から会場入りするも誰も人がいなかった話や、ももいろクローバーZや加藤鷹が台湾で浸透しているという話などを、先日行った台湾でのライヴのエピソードを交えながらユーモアたっぷりに語った。その後、ピエール中野がステージ前方に移動すると、この日一番の大歓声が武道館に響く。「チョコレイト・ディスコ」「ウルトラ・ソウル」「Xジャンプ」「ももいろクローバーZ」など、次々と繰り出されるコール・アンド・レスポンスにより、場内は1つになった。最後に「ここは憧れの場所なんですよ。そこで(ライヴが)できて光栄です。みんな集まってくれて本当にありがとうございます」と、感謝の言葉を口にして、MCコーナーは幕を閉じた。

壮絶なピエール中野ドラム・ソロを挟み、ライヴは後半へ。「illusion is mine」では、水色の照明のなかに気泡が浮かび上がる。まるで会場ごと水中に沈んでしまったかのような演出のなかで、洪水のようなTKのギターの轟音と、345の伸びやかな声が響いた。ここから再びライヴは激しさを増していく。鋭いギターの音が空間を切り裂くと、はじまったのは「Telecastic fake show」。345が激しく体を躍動させながら演奏し、客席は熱狂の渦へと飲み込まれていく。続けて、「nakano kill you」が演奏され、赤いサイレンのような照明が場内を飛び交う。TKがマイクに食らいつき雄叫びをあげると、場内の熱気は絶頂へと達した。

しばしの沈黙のあと、深くリヴァーブがかかったギターの音色が鳴り響き、演奏されたのは「am3:45」。この曲は、これまでライヴでほとんど演奏されたことがなく、1曲とおして345がメイン・ヴォーカルを担当する珍しい曲でもある。ステージは徐々に青い光に飲み込まれる。<世界 消えて 忘れて 無重力の遊泳>というフレーズが、まるで世界の終末で1人たたずんでいるかのように空虚な声で、なにかを渇望しているかのように切実な声で、表情を変えながら繰り返し何度も歌われる。最後は、ミラー・ボールのまばゆい光が場内を包み込む。その光が白から青へと変わり、取り残されたギター音が静かに途絶えると、曲は終了した。そして、TKの「ありがとう」という声が、かすかに聞こえた。

「凛として時雨です」というTKの挨拶のあと、345のMC。武道館でもいつもと変わらずどこかぎこちない恒例の物販紹介では、TKとピエール中野が頷きながら暖かく345を見守る姿が印象的だった。その後、345が満員の場内を見回しながら「ここから見るととてもすごくて、感無量です。本当にうれしいです」「みなさん本当に今日はありがとうございました。凛として時雨でした」と挨拶すると、暖かい拍手が場内を包んだ。

青いスポット・ライトが照らすなかで、TKがギターをストロークしながら静かに歌いだす。最後に演奏されたのは、アルバム『i'mperfect』の最後を飾る曲「Missing ling」。重厚なドラムの音と、湿ったベースの音色が重なる。曲はめまぐるしく姿を変え、暴走したかのように激しさを帯びたギター・ソロと、断末魔のようなTKの壮絶なシャウトが胸に刺さる。345とピエール中野の魂の込もったリズムが、体の奥深くに浸食する。エメラルド・グリーンの光のなかで、最後にもう一度TKのギターと歌だけがせつなく響き、演奏は終了した。大きな拍手が鳴り響くなか、TKはすべての力を使い果たしたかのようにギターを置き、ピックを投げる。アンコールを求める拍手が鳴り続けるも、ライヴはこれで終了した。

ここが日本武道館というある種特別な空間であることや、バンドの10周年という特別なライヴであること。そのすべてを忘れてしまうくらい、いつもどおりの凛として時雨のライヴだった。いつもどおり、心を空っぽにされてしまうような全身全霊を込めた演奏と、あきれるくらいに美しい照明。予定調和のアンコールなどは一切ない、本編ですべてを出し尽くす姿勢。日本武道館という広い空間のなかで、それらがなおさら際立っていた。TK、345、ピエール中野の3人が、ライヴ・ハウスで構築してきた最高に美しく圧倒的な空間。それが、そのまま大きくなった。この世界観は、これからも姿を変えることなく、ただひたすらに深みと輝きを増していくのであろう。徹底して一貫された世界であるがゆえに、それは脆さや儚さも孕んでいるように思う。しかし、だからこそ絶対的に美しい世界でもある。願わくば、これからもずっとその世界を見続けさせてほしい。これからも彼らの音に、世界に、心をえぐられ続けたい。(前田将博)

<凛として時雨TOUR2013 "Dear Perfect" ONEMAN LIVE at 日本武道館 ~10th Tornado Anniversary~>
2013年6月28日(金)@日本武道館

セットリスト
1. abnormalize
2. JPOP Xfile
3. MONSTER
4. Metamorphose
5. I was music
6. DISCO FLIGHT
7. O.F.T
8. make up syndrome
9. Filmsick Mystery
10. Sitai miss me
11. キミトオク
12. illusion is mine
13. Beautiful Circus
14. 想像のSecurity
15. テレキャスターの真実
16. Telecastic fake show
17. nakano kill you
18. am3:45
19. Missing ling

[ニュース] 凛として時雨

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