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2013/05/04 01:22

 

〈忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace〉 4年目の5月2日に感じたブランニュー・デイ――たまらん最速レポ

 

Photo : saiko nishimura

今年も5月2日がやってきた。4年前のあの日に想いを巡らせながら、今年も九段下の駅から武道館への坂を登る。これまで何度となく登った坂の途中、思い出すのはやはり2008年2月10日の〈完全復活祭〉だ。オープニングでの武道館を埋め尽くした観客たちの笑顔。あれほど多幸感に満ちたライヴをこの先経験することはあるだろうか。2011年の震災後にスタートし、さまざまなアーティストが清志郎の楽曲を演奏する〈忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace〉。恒例となったこのイベントに、今年もあの日感じた音楽の素晴らしさを求めて多くのファンが足を運んだ。

Photo : saiko nishimura
開演前には、この日先行発売された3人組時代のRCサクセションの貴重なライヴ音源、『悲しいことばっかり』をタワレコブースで買い求めるファンも多く見られた。会場に入ると清志郎の歌声が流れている。ステージ下手にはいつものようにヒトハタウサギの巨大バルーンが客席に向って立っている。今年のオープニング映像の清志郎もやはりオレンジ号で武道館に向かう。ステージ映像の清志郎が「武道館ベイべェー、よぉ~こそ!」と叫ぶと「忌野清志郎Band」のメンバーが紹介され、映像の中の清志郎に名前を呼ばれ金髪のトータス松本が単独で登場、「ドカドカうるさいR&Rバンド」からスタート。サックスの2人がブルーデイ・ホーンズさながらのアクションで間奏に華を添える。「あっという間に一年がたって、またこの日が来ました。今日も忌野清志郎の世界を堪能して行って下さい!」清志郎の世界を誰よりも愛してやまないトータスらしいMCだ。続く曲は「不思議」。腕利きのセッション・ミュージシャンたちによるバンドの演奏がタイトにトータスを盛り立てる。

Photo : saiko nishimura
トータスがステージを後にすると、kyOnが呼び込み、サングラス姿の佐野元春がステージに。「今夜は招待してくれて光栄です! この武道館で清志郎と演奏しました。同じ曲を聴いて下さい! 曲は「トランジスタ・ラジオ」。清志郎とは違う、前のめりな佐野元春らしい歌い回しだ。続いてムッシュかまやつと浜崎貴司がステージに。座ってギターを弾きながらのストーンズの「黒くぬれ!」のカバーズ・バージョン。ムッシュは「清志郎さんはシャイな人だからあんまり喋ってもらえなかったですね(笑)」。 続いて「たとえばこんなラヴ・ソング」。浜崎ボーカルでオリジナルに近いアレンジをアコギで。シンプルな演奏が、改めて良い歌詞、良いメロディだと感じさせてくれた。このイベントに欠かせない2人、真心ブラザーズ。YO-KINGがアコギ、桜井がエレキで、バンドと共に「お墓」を演奏! 『OK』収録のレゲエ・アレンジだ。清志郎フォロワーの代表格の1人ともいえるYO-KINGがこの名曲をいきいきと歌う姿は実に似合っていた。「もう一曲、大好きな曲です!」と二曲目は「Johnny Blue」。途中、桜井もボーカルをとり、間奏ではステージ前方に出て鋭いソロも聴かせた。

Photo : saiko nishimura

続いて及川光博が王子様感満点の衣装(リボンの騎士風?)で華やかに登場! 曲は清志郎との共作でリリースされた“ミツキヨ”の「強烈ロマンス」を披露。一気に武道館を華やいだ雰囲気にするところはさすがだ。「今夜は盛大なパーティーにお呼ばれしたので、正装で来ました! こんばんは、ミツキヨのミツです! 」というMCに続き『夢助』収録の及川に提供された曲、「涙のプリンセス」。清志郎バージョンよりテンポが速いロック色が強いアレンジ。最後はビシッとポーズを決めた及川の前をスクリーンが降り、清志郎へのコメント映像が流れ出す。トップはウィルコ・ジョンソン! 続いて吉本ばなながコメント。イベント恒例のグッズ会議映像に切り替わる。両肩にナンを数枚ずつ重ね載せした竹中直人が登場(笑)。会議の場にはタッペイ君モモちゃんの姿も。

Photo : saiko nishimura
再びスクリーンが上がると泉谷しげるがステージに。「いい事ばかりはありゃしない」。ピアノとギターのみで歌う。「清志郎の歌はキーが高いから嫌なんだ!」と言いながらも、気合いの入った熱演だった。歌い終わり何故か観客に写メを撮らせる泉谷に武道館中からフラッシュが(笑)。そしてここで、この日注目の1人、the HIATUSのボーカル、細美武士がギターを持ち1人でステージに。おもむろに歌い出したのは「スローバラード」! 伸びのある素晴らしい歌声に拍手が起こる。「二年前に震災が起こって、清志郎さんが居たら今どんな歌を歌うんだろうと考えることがあります」とのMCから「デイ・ドリーム・ビリーバー」へ。客席から手拍子が起こる中、1人で歌う細美の姿にまるでストリートで聴いているかのような錯覚を覚えた。

Photo : saiko nishimura
続いて、細野晴臣+坂本龍一with 青葉市子が登場。細野晴臣曰く「期せずして細野・市子・坂本のイニシャルでHISになりました」とHISのアルバムから「日本の人」を細野メイン・ボーカルで演奏。(タブラのU-zhaan を加えた4人での演奏)しっかり最後の「帰ってこ~いよ~」まで青葉市子が再現してくれた。そしてハナレグミがステージに。「また呼んでもらえて光栄です。本当に数年前まで多摩蘭坂の途中に住んでました」と「多摩蘭坂」を。そして「自分の曲なんですが…」と「サヨナラCOLOR」を歌い出すと歓声と拍手が。武道館中が静まりかえり、耳を澄ます。

Photo : saiko nishimura

ステージの転換中、客席から、「キヨシロー! まだ~!?」という感極まったファンの声が。気持ちは、わかる。ステージには佐藤タイジと曽我部恵一。「甲州街道はもう秋なのさ」をタイジが歌う。赤く染まるステージにタイジの「嘘ばっかり~」の連呼と曽我部の歪んだエレキ・ギターのソロがハードな空間を創り出す。「ざっくり言うと四国出身のコンビです(笑)」と自己紹介。今度は曽我部ボーカルで「スローバラード」。曽我部の歌も細美に負けず劣らずの熱唱ぶり。間奏のタイジのソロも強烈だ。再び映像で、清水ミチコ、蜷川実花、リリー・フランキーのコメントが流れ、ステージには矢野顕子が登場。ピンク色の清志郎ブーツを履いている! 曲はアルバムで取り上げているHISの「セラピー」、「恩赦」、そして「以前、『はじめての矢野顕子』というアルバムを作ったとき、色んな人がこの曲をやりたいと言ってくれたんですけど、この曲だけは清志郎さんと歌いたかったんで、みんなごめんなさいって断りました」とMCから「ひとつだけ」。話しかけるように歌う矢野の声が心に染み入る名演だった。

ここからは映像でヤングインパルス出演時の「僕の好きな先生」、続いてレコーディング・スタジオでの「海辺のワインディング・ロード」(眼鏡姿で歌うラフな清志郎が最高にカッコいい!)そしてヒットスタジオR&N出演時のタイマーズ。(さすがに「FM東京」は流れず )。更にどんと紅白での「孤独な詩人」。2002年野音でのスパイスマーケットで「HB・2B・2H」(ヘア・スタイルが孫悟空みたいな清志郎・笑)

そしてスクリーンが上がるとサム・ムーアがステージ中央に! 曲は「Soul Man」、「That Lucky Old Sun」驚く程、年齢を全く感じさせない歌声。凄まじくインパクトのある声だ。サム・ムーアと入れ替わりで奥田民生が登場。「この順番どうなの?」といきなり観客を笑わせる。意外に思えた選曲「サラリーマン」。しかし良く聴けば奥田民生の歌のように馴染んでいた。続いて対照的な「あきれて物も言えない」。激しいシャウトが武道館を震わせる。民生のギターとサックスのブロウが激突して熱気を生み出した。

Photo : saiko nishimura
そして大トリは、怒髪天の増子直純! 「イジメのようなこの出順ですけど(笑)、清志郎さんを愛する気持ちは俺は誰にも負けないんで。一発ぶちかまします!」と、気合いを入れて曲は「ダーリン・ミシン」。かなり清志郎調なボーカルになっている増子が微笑ましい(笑)。「今日は日本が誇るミュージシャンのフルコース、さらにサム・ムーアさんまで来て。俺はフルコースを堪能した後にもらう飴玉みたいなもん、お口直しのガムみたいなもんですから。軽い気持ちで楽しんでください」と自虐的なMCで笑わせた後は、武道館の客電が一斉に点いて「ブン・ブン・ブン」で思いっきり盛り上げる! アニキっぷりを爆発させた熱いパフォーマンスで大トリの大役を果たした。

Photo : saiko nishimura
ライヴの最後はやはり、ほぼ全員が集合して「雨あがりの夜空に」。増子、トータス、及川、浜崎、YO-KING、桜井、最後は奥田民生がボーカルを取り、泉谷が腕立て伏せからの(笑)ジャンプで締めた。

ハウス・バンドの刷新、チャボや三宅伸治の不在に物足りなさや寂しさを口にするファンも正直多かったと思うが、出演者の熱演により理屈抜きに楽しめるイベントだった。the HIATUSの細美武士のように、10代、20代によりアピールできるアーティストが清志郎の楽曲を歌うことは、新しい息吹に思えた。エンディングで流された恒例の「毎日がブランニュー・デイ」映像の清志郎からポジティヴなメッセージを受け取って、武道館を後にすることができた4年目の5月2日だった。
(岡本貴之)

※この日の模様は5月18日深夜27:10~29:10にフジテレビにて放送されます。

Photo : saiko nishimura
〈忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー 日本武道館 Love&Peace〉
2013年5月2日(木)
OPEN17:00 START18:00

忌野清志郎Band:小倉博和(Guitar)斎藤有太(Keyboards)TOKIE(Bass) Dr.kyOn(Keyboards)古田たかし(Drums) 山本拓夫(Sax)yukarie(Sax)

【出演】※五十音順
泉谷しげる / 及川光博 / 奥田民生 / 佐藤タイジ&曽我部恵一 / 佐野元春 / サム・ムーア / トータス松本 / ハナレグミ / 細野晴臣+坂本龍一 with 青葉市子 / 細美武士(the HIATUS) / 真心ブラザーズ / 増子直純(怒髪天) / ムッシュかまやつ&浜崎貴司 / 矢野顕子

セットリスト

1. ドカドカうるさいR&Rバンド (トータス松本)
2. 不思議 (トータス松本)
3. トランジスタ・ラジオ (佐野元春)
4. 黒くぬれ! (ムッシュかまやつ&浜崎貴司)
5. たとえばこんなラブ・ソング(ムッシュかまやつ&浜崎貴司)
6. お墓 (真心ブラザーズ)
7. Johnny Blue (真心ブラザーズ)
8. 強烈ロマンス (及川光博)
9. 涙のプリンセス (及川光博)
10. いい事ばかりはありゃしない (泉谷しげる)
11. スローバラード (細美武士(the HIATUS))
12. デイドリームビリーバー (細美武士(the HIATUS))
13. 日本の人 (細野晴臣+坂本龍一with 青葉市子)
14. 多摩蘭坂 (ハナレグミ)
15. サヨナラCOLOR (ハナレグミ)
16. 甲州街道はもう秋なのさ (佐藤タイジ&曽我部恵一)
17. スローバラード (佐藤タイジ&曽我部恵一)
18. セラピー (矢野顕子)
19. 恩赦 (矢野顕子)
20. ひとつだけ (矢野顕子)
21. Soul Man (サム・ムーア)
22. That Lucky Old Sun (サム・ムーア)
23. サラリーマン (奥田民生)
24. あきれて物も言えない (奥田民生)
25. ダーリン・ミシン (増子直純(怒髪天))
26. ブン・ブン・ブン (増子直純(怒髪天))
27. 雨あがりの夜空に (全員)
※佐野元春、細野晴臣+坂本龍一、サム・ムーアの参加は無し

エンディング映像 「毎日がブランニュー・デイ」

RCサクセション
『悲しいことばっかり(オフィシャル・ブートレグ)』
TOCT-29164 ¥2,300(税込)
2013年5月3日リリース

【収録曲】
1. 黄色いお月様
2. ぼくの情婦
3. 愛してくれるなら
4. マイホーム
5. 弱い僕だから
6. ぼくとあの娘
7. あそび
8. 悲しいことばっかり
9. ぼくの家の前の道を今朝も小学生が通います
10. もしも僕が偉くなったら
11. 仕事なので
12. わるいディレクター
13. ベイビーもう泣かないで
14. 九月になったのに
15. お墓
16. ガラクタ
17. 君にさようなら
18. ベルおいで
19. 一日
20. 夢を見た
21. マリコ

地味変
http://www.kiyoshiro.co.jp/

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