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2013/05/02 03:30

 

シナロケ・鮎川誠、バースデー前夜ライヴで魅せた“65年目の初期衝動” ――OTOTOY最速レポ

 

Photo:原田直樹(エヌ・フォト)

「Rock bands will come、Rock bands will go、but Rock'n'roll is gonna go on forever」

かつて、キンクスのレイ・ディビスがステージ上で叫んだこの言葉を思い出しながら、この日おこなわれたシーナ&ロケッツのライヴを観ていた。日本の音楽シーンでも「多くのロックバンドが現れては消えてゆく」中、鮎川誠率いるシーナ&ロケッツは35年間、第一線でロックし続けている。そしてその存在があるからこそ、日本でも「ロックンロールは永遠に消えることはない」のだ。

会場に入ると、ドアーズ、ストーンズ、そしてビートルズの「Birthday」が明日65回目のバースデーを迎える鮎川誠を祝うように流れている。60年代ロックが紫煙とともに漂う、今時のライヴ・ハウスのヘルシーな雰囲気とは真逆の猥雑さが溢れる中、場内が暗転すると白い革ジャンとスカーフ姿の鮎川誠がたばこを咥えて登場! バンドを率いての1 曲目はローリング・ストーンズが昨年の50周年ライヴの初日でオープニングに演奏した「I Wanna Be Your Man」。レノン/マッカートニー作のストーンズナンバーとして、両バンドを愛する音楽ファンとしてのアティテュードを感じさせる選曲だ。「今日は64歳の最後の日、99年ロックです! 」と鮎川。続いてチャック・ベリーの「Around & Around」こちらももちろん、ストーンズがカバーした曲だ。

Photo:原田直樹(エヌ・フォト)

黒いレスポールがトレブリーなイントロを奏で、「Good Luck」。早くも汗だくの鮎川がギターを掻き鳴らし、シャウトする。「シナロケのファースト・アルバムから聴いて下さい」と「Virus Capsule」。革ジャンを脱いでマイク・スタンドに向かう鮎川。長身に黒いレスポール、今更ながら、当たり前のことを言わせてもらうと、実に絵になるギタリストだ。「去年作った映画『I‘M FLASH』の主題歌、チバユウスケの曲とか書かれてたけど、違うよ。作詞・柴山俊之、作曲・鮎川誠です。コピー&ペーストの時代やけんね、拡散されちゃうけど。間違った情報に惑わされないように(笑)! 」と誰よりも早くからPCに親しんできた鮎川らしいコメントに場内に笑いが起こる。

バンド・メンバーを紹介、そしてゲストのキーボーディスト、ピチカートファイヴで弾いていた中山努を紹介。続く曲でサングラス姿のシーナを呼びこむと客席が一段と盛り上がる! イギー・ポップ作曲、ストゥージーズの「I FEEL ALRIGHT」の日本語バージョン「Omaega Hoshii」だ。続けて「Taikutsuna sekai」そのままの勢いでキンクスの「You Really Got Me」のカバーをオリジナルよりもブルージーに、ミディアム・テンポで演奏。ポップなオリジナル、「Happy House」で合唱が起こる。「1番新しいアルバムから聴いて下さい!」と「JAPANIC」。グッと重心が低くなるようなどっしりしたリズムが心地良い。アウトロでシーナが袖に下がり、次の曲では鮎川がギターをモス・グリーンのフライングVに持ち替える。シーナは赤い衣装に着替え再登場。鮎川、今度はフェンダーのサンバーストのストラトに持ち替えて「Angel Eyes」。ストラトを持つとなんとなくピートタウンゼントを思わせる佇まいになる鮎川は生まれついてのギタリストといった雰囲気だ。次の曲ではクリーム色のテレキャスに持ち替えるなど、華やかなギタリストらしいステージに。

Photo:原田直樹(エヌ・フォト)

そして愛器69 年ギブソン・レスポールカスタムに戻るとライヴは後半に差し掛かり、ドラムが激しくスネアをロールして曲は「Pillow Talk」へ。鮎川のギターの音は決して耳に心地良い音色ではない。むしろ時には不協和音のごとく脳髄を刺激するケバ立った尖った音色だ。だがその音がロックン・ローラーとしての鮎川を、長年護ってきたかのように感じる。スローにじっくり聴かせる「Almost Blue」を挟み、エンディングのギター・ソロは全くのレスポールの生音で聴かせてくれた。「PinUP Baby Blues」では間奏のギター・ソロを延々と弾く鮎川。メロディアスで小節ごとに表情を変えるソロに、鮎川のギタリストとしての懐の深さを感じる演奏だった。

Photo:原田直樹(エヌ・フォト)

ライヴは佳境に差し掛かり、おなじみ「Lemon Tea」ではシーナも鮎川も客席に体を乗り出して一際激しく観客をあおる。「今日はありがとう!99年ロック、明日は100年ロックです。変わりゆく下北沢で、変わりたくないシーナ&ロケッツ! (笑) 俺たちは決めとう、ステイ・ロック! 」とグッとくるMCを。シーナが「みんなも夢を持って歳を取ってね!」と大ヒット曲「You May Dream」へ。待ってましたとばかりの合唱が起こる。ポップな曲調と鮎川が刻むソリッドなリフがたまらない! エンディングでメンバーを紹介して本編は終了。

Photo:原田直樹(エヌ・フォト)

アンコールでは最新アルバム『DRAM+REVOLT』から「DREAM + REVOLT」を演奏。くわえ煙草のままレスポールを弾く鮎川。「20年以上前の4月にジョニー・サンダースが亡くなって、そして明日は清志郎の命日。サンキュー清志郎、サンキュー、ジョニー・サンダース! 」とジョニー・サンダースの「I Wanna Be Loved」を歌う鮎川の誕生日と同じ5月2日が忌野清志郎の命日というのがなんともいえない。だが、鮎川は誕生日を迎えるとともにいつも清志郎のことも思い出しているのであろうことがわかるシーンだった。
シーナと鮎川がワンマイクで歌うカッコよくも微笑ましい「I love you」から最後はジョーイ・ラモーン・バージョンの「What A Wonderful World」でライヴは終了。明日の誕生日を祝う多くの声援に送られて、鮎川誠とバンドはステージを去って行った。

シーナも鮎川もメンバーも全力で歌い、演奏する。当たり前のようだが、綺麗ごとじゃなくこの年齢になって簡単にできることじゃない。35年間バンドを続けるということ。それは、ロックン・ロール・マジックだけじゃない。大げさじゃなく、命を賭けて死に物狂いで音楽をやってきたからこそ今、35年前と変わらぬフォルムでステージに立っているのだ。そして、それを感じさせない音楽へのひたむきな愛情とポップさがシーナ&ロケッツ、鮎川誠にはある。

シーナ&ロケッツ35年目、”鮎川誠65歳にして未だロックン・ロール初期衝動継続中”。ステージを去る鮎川の、塗装が剥げ落ちたレスポールのボディ裏を見ながらふと、そんなことを思った。

鮎川さん、ハッピーバースデー!! (岡本貴之)

Photo:原田直樹(エヌ・フォト)

〈鮎川誠 BIRTHDAY SPECIAL LIVE 2DAYS
“SHEENA & THE ROKKETS 35years History of Rock'N'Roll+65years Rockin' Alive=100年ROCK”〉
2013年5月1日(水)OPEN 19:00 / START 19:30下北沢CLUB Que
出演:シーナ&ロケッツ [シーナ(Vo)、鮎川誠(G、Vo)、奈良敏博(B)、川嶋一秀(Dr)]
ゲスト:中山努(Key)(from 元・頭脳警察、ピチカートファイブ 他)
ゲストDJ:mon(レッドシューズ)

セットリスト

1. I Wanna Be Your Man (Lennon McCartney)
2. Around & Around (Chuck Berry)
3. Good Luck
4. Dead Guitar
5. Virus Capsule
6. Oh no! I'm flash
7. Omaega Hoshii (Iggy Pop)
8. たいくつな世界
9. You Really Got Me (Ray Davies)
10. Happy House
11. JAPANIC
12. どーしても逢いたい
13. エンジェルアイズ
14. When The Levee Breaks
15. Pillow Talk
16. I GOTTA MOVE
17. Almost Blue
18.Sodier
19. PinUP Baby Blues
20. cry cry cry
21. Lazy Crazy Blues
22. Lemon Tea
23. You May Dream

Encore
24. DREAM+REVOLT
25. I Wanna Be Loved (Johnny Thunders)
26. I love you
27. What A Wonderful World (Joey Ramone)

〈鮎川誠 BIRTHDAY SPECIAL LIVE 2DAYS
-SHEENA & THE ROKKETS 35years History of Rock'N'Roll+65years Rockin'
Alive=100年ROCK-〉

5月2日(木) 下北沢CLUB Que

OPEN19:00 / START19:30
出演:SHEENA & THE ROKKETS -oneman-
[シーナ(Vo)、鮎川誠(Gu.Vo)、奈良敏博(B)、川嶋一秀(Dr)]
SPECIAL GUEST : 西内 徹(Sax)
ゲスト : 中山努(Key)(from 元・頭脳警察、ピチカートファイブ 他)

チケット : 当日¥4,500
※入場整理番号あり/オール・スタンディング / ドリンク代別途500円

お問合せ : 下北沢CLUB Que
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-5-2 BIGBEN BILD.B2F
TEL:03-3412-9979 FAX:03-3412-3157

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