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2013/04/21 09:35

 

オワリカラ主催イベント〈渋谷モンパルナス〉、スペイン坂を熱狂の渦に——OTOTOY最速レポ

 

オワリカラの結成5周年を記念した主催サーキット・イベント、〈渋谷モンパルナス〉が、4月20日に開催された。これは、渋谷スペイン坂にある4つのライヴ・ハウスを利用したもので、「オワリカラが今までに出会った中でも最高にライヴがかっこいいバンドばかりを集めた」とのこと。イベント終了直後にこの文章を書いているので、まだ耳鳴りも止まないし胸も高鳴っているが、できるだけ冷静に書くように努力したい。

まずは、渋谷WWWに向かい、リスト・バンドの交換をする。今回のイベントはチケットとリスト・バンドを事前に交換でき、こういったイベントにありがちな交換待ちの行列も発生していなくて、とてもスムーズ。おお、快適。生憎の雨だが、各会場はとても近い距離にあるため、さほど影響はない。

QUATTROのギタリスト潮田雄一とオワリカラのベーシスト、ツダフミヒコという、個性派プレイヤー2人からなるユニット、うしおだつだを観るため、Wasted Timeへ。テーマは「宗教とスポーツとトラウマ」だそうで、潮田がバンジョー、ツダがドラムを担当し、バンジョーに合わせて2人で「新聞配達困ります〜」という謎の歌を歌い、「びんよよ〜ん」という効果音も入れつつ、椅子から飛び降りたりする。そんな常人には理解し難い世界観を披露したかと思えば、最後は潮田がアコギに持ち替え、哀愁溢れる彼のソロ曲を演奏し終了。見てはいけないものを見てしまったような、でもまた見たいような、不思議な気分にさせられた。

次はうみのてを観にサイクロンへ。すでにライヴが始まっており、はちきれんばかりの人が集まっている。凄まじい熱気が充満している。普段はとても謙虚で人当たりの良い笹口(Vo&Gt)なのだが、一旦演奏を始めると狂気に満ちた表現者と化す。「うみのてが来たからには! もはや渋谷は… 平和ではない!」と「もはや平和ではない」を演奏すると、フロアのボルテージも最高潮に。強いメッセージ性を持った笹口の楽曲が、うみのてのメンバーでバンド・アレンジされることによって、更に中毒性と破壊力を増して耳に迫ってくる。30分でお客さん全員を中毒症状にし、狂乱の宴は終了となった。

しばし休憩を取り、次はよしむらひらくへ。今回はバンド編成ではなくエレキでの弾き語りで、時折ドラマーを迎え、昔の楽曲を演奏していた。優しいギターの音色と、何とも言えない味のある声。よしむらひらくのライヴを観ると、いつも心の奥をぎゅっと掴まれるような、どうしようもなく切ない感覚に襲われるのだ。子供の頃の記憶のようで、とても懐かしく愛おしい。お客さんも皆吸い込まれるように聴き入っていて、ここが騒がしい渋谷のど真ん中であるということも忘れてしまうくらい、ゆったりとした時間が流れていた。

よしむらひらくの余韻を味わって、tricotを観るために渋谷wwwへ。フロント3人が女子、しかもミニ・スカートという、女子力高そうなバンドである。しかし一旦演奏に入ると、女子力どころか男気に溢れたド迫力のステージを見せる。もはや”漢”といった表現がぴったりな程。変拍子を織り交ぜたテクニカルな曲を髪を振り乱し暴れまわって演奏し、ヴォ―カルの中嶋は目を見開いて歌い、叫ぶ! フロアの前方もモッシュを巻き起こし、全力でそのステージに応えている。轟音につぐ轟音の波に支配され、息をするのも忘れてしまう程熱いステージだった。

イベントも終盤に差し掛かってきた。次は今回のブッキングの中でもひときわ異彩を放っている、クリトリック・リスを観に向かう。いつものスタイルである光るパンツ一丁で平然と登場し、屋根裏が一気に変態ワールドに! 笑いすぎてお腹が痛くなったのは久しぶり。途中ステージを降りて、汗だくの体でフロアの女の子に抱き着いたり、THE ラブ人間の金田を巻き込んだりと、やりたい放題! しかし笑いだけではなく、切なさやちょっぴりの感動も内包する、色々な意味で衝撃的なステージであった。

渋谷wwwに向かうと、丁度東京カランコロンが始まる所であった。佐藤全部(Ba)があまりにもオワリカラのツダそっくりでびっくりしたが、元々似ている上にアルミホイルの王冠までツダに作ってもらったそう。まずはとびっきりキュートな曲「少女ジャンプ」でスタート、お客さん全員を笑顔に変える。せんせい(Vo&Key)が声も仕草もとにかく可愛すぎる! 「ラブ・ミー・テンダー」ではいちろー(Vo&Gt)とせんせいが美声を聴かせ会場を包み込む。どこまでもポップでカラフルで、でも少しひねくれている彼らのステージに全員が魅了されていた。

イベントも終わりが近づく中、忘れらんねえよを観に屋根裏へ。元々彼らは別のステージに立つ予定だったらしいのだが、強い希望でこの場所に変えてもらったそう。というのも彼らは渋谷屋根裏の出身バンドであり、屋根裏は今年の6月1日をもって営業終了予定となっているからだ。これがおそらく彼らの屋根裏での最後のライヴであり、柴田隆浩(Vo&Gt)は振り絞るように屋根裏への思いを語る。そしてそのまま「この高鳴りをなんと呼ぶ」を演奏し、お客さんの中には感極まって泣いている人もいる。屋根裏への恩返しのように最大限の熱量で演奏し、しっかりとお客さんの記憶に刻み込まれたライヴであった。

トリはもちろん、オワリカラだ。WWWは満員のお客さんで埋め尽くされ、今か今かと最後のバンドを待ち受けている。そんな中メンバーは何事も無いように普通に登場し、まずはアッパーな「おいでシスター」でぶちかます! オワリカラのメンバーはそれぞれが超個性的なプレイヤーなのだが、完璧にひとつにまとまっていて見事なグルーヴを完成させている。新曲も披露し新たなバンドの可能性も見せつけつつ、猛スピードで駆け抜ける流石のステージだった。

最初にこのイベントのタイム・テーブルを見た時、正直、批判的な考えを抱いていた。ガチンコ勝負というなら、最後のオワリカラと同時刻に他のバンドをぶつけるべきだし、主催バンドといえどこの一人勝ちの仕方はないだろうと。しかしこのイベントを通して体験して、その考えはかき消された。オワリカラのメンバーは自ら働き、どのバンドのライヴにも積極的に足を運んでいた。どのバンドもステージで自然にオワリカラへの感謝を述べ、全力で最高のライヴをしていた。オワリカラもそれまでの全力のライヴをすべて受け止め、期待に応える完璧なステージを演じてみせた。出演バンドとの絶対的な信頼関係があるからこそ成り立つことであり、イベントが終了してもオワリカラの一人勝ち感は全く感じられなかった。考え込まれたタイム・テーブルと各会場に配置されたボランティア・スタッフの誘導によって、筆者が回っている限りでは一度も入場規制はかからなかったし、不便さも感じなかった。何よりイベント終了後のお客さんの顔が、このイベントの成功を物語っていた。(岩瀬知菜美)

<オワリカラpresentsスペイン坂ロックフェスティバル~渋谷モンパルナス~>

2013年4月20日(土)@渋谷www、渋谷屋根裏、渋谷CYCLONE、WastedTime

出演 : オワリカラ、THE ラブ人間、Wienners、キュウソネコカミ、tricot、東京カランコロン、科楽特奏隊、蜜、mothercoat、雨先案内人、クリトリック・リス、忘れらんねえよ、がくたく、うみのて、POCALIS、Droog、黒猫チェルシー、THE★米騒動、うしおだつだ、佐藤千明(赤い公園)、よしむらひらく、あがた森魚、ゆーきゃん

[ニュース] QUATTRO, tricot, うみのて, よしむらひらく, オワリカラ, 東京カランコロン

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