2025/04/02 20:00
なにかとんでもないライヴを目撃してしまった気がする。
2025年3月24日、恵比寿LIQUIDROOMにて開催された守乃まもの主催ライブツアー「魔物大戦 vol.2」の東京公演の帰り道、僕は少し早足になっていた。
SSWとして活躍する守乃まも。2023年には、舞台『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」』の主人公・後藤ひとり役に抜擢され、その天然なキャラクターから“リアルぼっちちゃん!”と話題沸騰の人物である。
今回開催された「魔物大戦 vol.2」は、東名阪の3箇所を回るツアー。名古屋公演には、EMNWとフレンズ、大阪公演には、愛はズボーンとインタールードが出演し、大盛況でライヴを終えた。そしてこの東京公演には、彼女が敬愛してやまない、神聖かまってちゃんがゲストとして登場。いったいどんなライヴが繰り広げられるのか、期待を胸に会場へと向かった。
定刻を迎えると、まずはSEとともに神聖かまってちゃんが、ひとりずつ登場。“おはよう”からスタートしたライヴは、“夕暮れメモライザ”、“僕ブレード”とハードな楽曲を展開。の子(Vo,Gt)は、「おめえら、ついてこれっかー!?」「もっと!もっとだ!!!」とアグレッシヴにコール&レスポンスでオーディエンスを煽り、客席のヴォルテージを上げる。
神聖かまってちゃんはさらに、ステージとフロアがぶつかりあうような強靭なグルーヴで、熱狂の渦を巻き起こしていく。目をひん剥きながら全身全霊でシャウトする姿は、ある種の緊張感が漂っていた。しかし曲終わりに「お前ら、最高だぜ」と言いながら見せる笑顔に、心をなぜかグッと掴まれてしまった。
の子は再び、マイクを握ると「全部を爆発させていけよ!その準備できてんのか!暴れまくれよ!」と熱いメッセージを伝えるのだが、続いての曲はバラード・ナンバー“ハワイ”。海のなかの昆布のように揺れるオーディエンスを沸かすと、最後に披露したのは“フロントメモリー”。フロアをバッチバチに踊らせながら、守乃まもへとバトンを繋いだ。
某有名アニメのオープニング楽曲をSEに、守乃まもがステージへ。ぬいぐるみを抱えたバンドメンバーとともに登場し、「ピーッ!ピッ」とホイッスルを鳴らして敬礼して登場すると、客席から大きな歓声が聞こえた。
守乃まもは、シンセサイザーの音をゴリッゴリに詰め込んだ“Dendrobium”からライヴをスタート。さらにアーティスト・デビュー曲の“いちごジャムにチーズ”、そして未リリースの新曲へと繋ぎ、集まった観客たちに「守乃まもの音楽」をぶつけていく。腹にガツンと効くロック・サウンドと、どこかファンシーなメロディーがLIQUIDROOMに鳴り響いた。
ここからMCへと入るのだが、トーク中の様子はまさに「ぼっち・ざ・ろっく!」の“リアルぼっちちゃん!”だった。「ちゅ、ちゅ、ちゅーにんぐ、ちゅーにんぐします!」という宣言からはじまり、「今日は東名阪ツアーの東の方です!」「とう!」「めい!」「はん!」というコール&レスポンス。「今日花粉すごいですよね」という話題から「花粉症の人!〇〇〇(薬の名前)飲んでる人!」と観客に質問したりと、とにかく支離滅裂。しかし客席からの言葉に耳を傾けて反応を返そうとする姿も見られ、その人柄の良さも垣間見え、どこか「応援しなきゃ」という気持ちが湧いてきた。
ライヴはさらにそこから「ひきつづき、おおおおおおつくろぎください。次の曲は悲しい曲をやるので、静かにしてください」という言葉から比較的テンポのゆったりな曲を熱唱。まっすぐな眼差しに圧倒されるような真摯な歌声だった。
守乃まもはパフォーマンス中の姿には、MC中の様子とは裏腹に強い芯があった。フライングVを携え、歌声を届ける姿は、どこかロックスター然としている。それでいて自分の歌声を届けようとする一生懸命さが滲み出ていて、彼女から目が離せなくなる魔力のようなものを感じた。ただそれも自然と出ているものであって、真似してできるようなものではないし、彼女が誰かを真似しているわけでもないだろう。そこが彼女の唯一無二のオリジナリティーだと思った。
ライヴは再びMCへ。ここでバンドのメンバー紹介を行うのだが、守乃は「ドラムのまもさんです!」「キーボードのまもさんです!」「ベースのまもさんです!」「ギターのまもさんです!」と全員を「まもさんです!」と紹介した。ちなみにメンバーはそれぞれかなり強力な演奏者が揃っているのだが、彼女が全員を「まもさん」と紹介したことによって、より「バンド・守乃まも」感が出ていたような気がした。
ライヴはそこから“僕らの憂鬱”へ。月曜日という1週間でいちばん憂鬱になりやすい日に、誰かの心に寄り添うような優しい歌だった。続いてサイレンのような音が鳴り響く中、骨太のロック・サウンドを聴かせると、守乃は突然ギターを置き、ステージ袖へと走り出すと、大きな袋を持って再び登場。フロアに大量のぬいぐるみを投げ込むと、本編最後の“HappyENDじゃ終わらせない!”を披露。熱気と多幸感を感じさせるパフォーマンスに、集まった大勢のオーディエンスが笑顔になっていた。
特大の「まもの!」コールを受け、再びステージに姿を現した守乃。今後は遊戯王カードを取り出し、「死者蘇生」のカードを掲げると、バンドメンバーをフィールドへと召喚。さらにここで新曲を初披露。曲の途中で寝転がるなど、自由奔放なライヴでオーディエンスを沸かせると、「私の青春を奪ってもらいました神聖かまってちゃんの曲をやります!」と宣言。そこから、の子をステージに呼び、神聖かまってちゃんの名曲“ロックンロールは鳴り止まないっ”を、守乃まもバンドfeat.の子で、全身全霊を込めて熱唱。守乃はリスペクトと嬉しさが爆発したような素敵な表情を浮かべ、まさに大団円で「魔物大戦 vol.2」の東京公演は幕を閉じた。
アーティスト・守乃まもはこれからどんな道を歩んでいくのか。これは誰にもわからないが、なにかおもしろいことになりそうな予感をバッシバシに感じるステージだった。
YouTube:https://www.youtube.com/@mamonomamo