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2022年08月26日12時00分

 
忘れらんねえよ〈ツレ伝〉を終え15周年に向けて高鳴る―OTOTOYライヴレポ
 

2022年8月25日(木) 渋谷CLUB QUATTROにて、忘れらんねえよ主催ライヴ〈ツレ伝 令和四年〉が行われ、ツアーファイナルを盛大に祝い、来るべき結成15周年に向けて新たなスタートを切った。

2014年から続くコンセプチュアルなツアー〈ツレ伝〉は、今やお家芸的な対バンライヴとして広く認知されており、これまで様々なタイプのバンドをツレとして行われてきた。この日は令和四年の〈ツレ伝〉らしく、新世代の人気バンドKOTORIが対バンを務めた。

開演の19時になると、オープニングのATフィールドP青木氏によるいつになく真面目で噛むこともない流暢な影ナレから、KOTORIの4人、横山優也(Vo.Gt) 上坂仁志(Gt) 佐藤知己(Ba.Trp) 細川千弘(Dr)がステージへ。静かな歌い出しからバンドが一丸となって音を放つ「ラッキーストライク」でライヴをスタートさせると、ファンたちが一斉に拳を上げる。「柴田さんがずっとBGMでかけてた曲やります」とのMCから、「トーキョーナイトダイブ」を披露。横山の伸びやかな歌声とバンドのドライブ感のある演奏が東京の夜空を想起させた。ベースの佐藤が吹くトランペットが印象的な「雨のあと」、3ヶ月連続デジタルシングルからの「ツバメ」を歌い上げると、横山がMCで忘れらんねえよとの縁について語る。「僕は高3のときにスペシャの番組から流れてきた「この高鳴りをなんと呼ぶ」を聴いて、「なんだこれ!」と思って知りました。こんな日が来るとは思いませんでした」と感慨深そうだ。「素晴らしい世界」で感情を爆発させると、真摯なメッセージソング「We Are The Future」を歌い、最後は轟音の「YELLOW」を叩きつけて、場内にノイズを残して去っていった。

忘れらんねえよは、森山直太朗の「夏の終わり」がオープニングSEで流れる中、爽やかに登場。柴田隆浩(Vo.Gt)はしっとりと直太朗ばりのファルセットボイスで被せる擬態ぶりを聴かせると、マイクを握る。「夏が終わりますね。何もなかったです、何にも。フェス、ひとつも呼ばれませんでした」。悲しい告白にも関わらず場内からは拍手が沸き起こる異常事態。さらに「強いて言うなら〈ボッチンインジャパン〉というのをやったんですけど……」と続けると、グラミー賞並みの盛大な拍手に包まれ、戸惑う柴田。「あれ、フェスじゃないですね。孤独ですよ。俺はあれをやりたくてバンドを始めたわけじゃないんですよ! あれは、今日ここに来るための伏線なんですよ!夏の想い出、今日一緒に作ってもらっていいですかね?」と語り掛ける柴田に、タイミングよくSE直太朗が「なーつのおわーりー」とサビメロを降臨させて、柴田の声と共に夏の終わりのハーモニーを聴かせる神展開。「俺らとおまえらで、想い出作ってもいいですか~!?こんばんは、忘れらんねえよです!」と叫ぶと、サポートメンバーの3人、ロマンチック☆安田(Gt.Key/ 爆弾ジョニー)、イガラシ(Ba/ ヒトリエ)、タイチサンダー(Dr/爆弾ジョニー)が一斉に音を鳴らす。自分で煽っておきながら、「イヤモニつけ忘れてました!」といきなり躓く柴田にも拍手喝采が起こる。そんな温かいお客さんたちに最初に贈られたメッセージは「あの娘に俺がわかってたまるか」。タイチが叩き出す怒涛のリズム、イガラシのブンブン鳴りまくる太いベース、安田の尖ったテレキャスの音。これだ、やっぱりこれだ。バンドの忘れらんねえよで歌う柴田は、太古の眠りから目覚めたように溌剌としている。

いきなりのゴリゴリサウンドで圧倒すると、続いては内臓系ダンスチューン「体内ラブ〜大腸と小腸の恋〜」で渋谷クアトロに集った人々の腸内環境を刺激する4人。右手を振りながらグルーヴに身を委ねる観客たちに向かって柴田は、「繋がってるよな!?」と目を見開いて呼びかけた。かなりテンションが高く、余勢を駆ってギターソロ中にサポートメンバー3人を紹介するという、バンドを始めたばかりの軽音学部1年生ばりの初期衝動的なステージングを見せた。そんなところに仲間がいる喜びが溢れていて、思わず授業参観に来たような気分で見守ったファンもいたのではないだろうか。続く「これだから最近の若者は最高なんだ」は、まさに最高のライヴを見せてくれたKOTORIに捧げられているようで、なんだか急に上級生っぽく見えた。

「いやあ、人がいると楽しいね!」と、歌と演奏を目の前で聴いてもらえることに感激している様子の柴田。「〈ボッチンインジャパン〉という55時間生配信をやったんですよ。観てない人が多数だと思うんですけど」と、すべて見届けたボッチンオーディエンスが聴いたらのりたまをぶちまけそうなひと言から、「でも、見ている人は見ていてくれたんですね!えっちゃんが見てたんですよ」と、中トロ寿司握りツイートにリプをもらったことを自慢する柴田(https://ototoy.jp/news/108190)。「だから言ったでしょ!?諦めんなって!」と、何事も諦めないことの大切さを説く柴田の言葉に全クアトロが泣いた。

「いけるか渋谷ー!」の掛け声から、バンドがドラマティックに疾走する「夜間飛行」へ。自然に起こった手拍子が、柴田を渋谷の夜空高く飛翔させる。間奏では安田のハイトーンのギターソロが興奮を煽った。「だんだんどんどん」では、「渋谷ー!飛び跳ねろ!」と観客を扇動する41歳獅子座の柴田。絶好調なバイオリズムがその躍動感から伝わってくる。共感度No.1の人気ナンバー「中年かまってちゃん」を激しくシャウトして、「俺のことなんかほっときなよ、いや、ほっとかないでくれ!フェス呼んでくれ!」と、過ぎゆく夏フェスシーズンへの未練を覗かせる厄介な中年ぶりでフロアを狂喜乱舞させた。

「フェスに行かない俺らに夏はないんですか!?俺らにしか見えない花火もありますよね!?」と、夏フェスで言ってたら伝説のMCになりそうな痺れるセリフから「花火」へ。花火の打ち上げ音を思わせるタイチのバスドラムを中心とした弾むビートで、立体的に花火が夏の夜空を焦がす憧憬を描いてみせた。

ミディアムテンポの「絶対ないとは言い切れない」では、珍しく1番の歌詞を〈二年ほど前に菅田将暉が吐いた 息かもしれない〉と、男性の名に代える多様性に配慮したアプローチ。かと思ったら2番では〈蛙亭のイワクラちゃんが吐いた息かもしれない〉と本心を明かすチラリズム。情感たっぷりな歌い回しと、イガラシのうねるベースがリードするグッと引き締まったバンドサウンドで、曲が終わると大きな拍手が起きた。〈ボッチン〉で連日弾き語りしてきたことが、クオリティの高さに繋がったようだ。

「今日はKOTORI出てくれて、ありがとうございます」と感謝すると、KOTORIの「トーキョーナイトダイブ」を一節歌い「良い曲じゃない!?」と称えた。「ラストスパート行けますか!」と、久しぶりのフラカン先輩リスペクトな「よさほい」が飛び出した。とくればやっぱり曲は「ばかばっか」。一気に白熱するフロアの観客に道を開けるようお願いしてから、「俺はルールの中で無茶をする!フロアに降りたらひとことも喋りません!」とステートメントを発表。フロアへ着地すると、無言で手拍子する観客たち、無言で両手を突き上げて踊りながらバーカウンターへと向かう柴田。見事な信頼関係により無事に生ビールをゲット。柴田はカウンターに立ち上がり一気にビールを飲み干してステージに帰還して、大喝采を浴びる。その勢いのままなだれ込んだのが、「僕らチェンジザワールド」。これが物凄かった。かなりBPMを上げたハイテンポで、グイグイ観客を引っ張って行く演奏に乗ってシャウトする柴田。場内は大盛り上がりで一体となり興奮の坩堝と化した。

「幸せだー!ありがとう!」とお客さんに感謝した柴田は、ステージを指して「ここは、純粋な場所だから。聖域だからさ。グングン行きますよ。〈スマホはもはや俺の臓器〉って歌ありましたよね(キュウソネコカミ「ファントムバイブレーション」)。みなさんも言ってみれば俺の臓器ですよ!……い、嫌ですか?」と不安そうにフロアを見渡す柴田。マスク越しからも人々の苦笑いが伝わってくるレアな光景が広がって行った。「まあいいですよ!よろしく!よろしく!よろしく!!」と叫んでギターリフを刻み出すと、フロア中から大きな手拍子が柴田の歌声とバンドの演奏をバックアップ。「この高鳴りをなんと呼ぶ」だ。ステージが煌々と照され、気心の知れたサポートミュージシャン3人の演奏に支えられて気合の入った柴田の歌声が観客の心と重なっていく。「アイラブ言うー!!」と叫び、9月5日にリリースされる1年ぶりの新曲「アイラブ言う」が披露されると、直球ロックサウンドに乗せて〈あなたが好きだ〉と絶唱する柴田。15年近くになるバンドのキャリアで、ここにきて改めてシンプルに想いを伝える楽曲が誕生したことの純粋さこそ、忘れらんねえよだ。

アンコール1曲目、柴田がゆっくりとギターのアルペジオを弾き出すと、イガラシのベースが入ってきて、タイチのドラム、安田の歪んだギターが加わり始まったのは「俺たちの日々」。バンド形態のライヴではほとんど披露されたことがないのではないだろうか(イガラシ曰く「一度ワンマンでやった覚えがあるぐらい」)。バンドの一体感が赤裸々な心情を吐露する柴田の歌声を支える。「俺たちの日々、俺たちの遊び場、俺たちの場所!勝ち取っていこうぜー!CからはじまるABC!!」と激熱に叫んで突入した、荒れ狂うパンキッシュな演奏による「CからはじまるABC」の熱狂的な盛り上がりでライヴはクライマックスへ。ラストは「忘れらんねえよ」。観客がスマホのライトをつけて左右に振りながら、ハミングで大合唱した。「これだよな!俺らの戦い方で戦おう!超かっこいいよあんたら!超かっこいいよ俺ら!」と大絶叫して、ステージ、フロアがこれ以上なく一体となって、最後は「せーの!」に合わせて全員でジャンプ。「ありがとうー!ツレ伝おしまい!」と締めくくった。

エンディングでは、10月13日(木)14日(金)リキッドルーム2daysで〈ツレ伝〉を行うことを発表。結成15周年に向けての準備も始めていることも示唆して終了となった。〈ツレ伝 令和四年〉が終わり、いよいよ15周年に向けて新たな展開へと進む忘れらんねえよ。55時間以上にわたった〈ボッチインジャパン〉、そしてこの日の〈ツレ伝〉で改めて気付かされた柴田の歌の上手さ、楽曲の良さが今度どのように深化して行くのか?より一層注目していきたいと思う。

取材・文:岡本貴之
写真:岩佐篤樹

ライヴ情報
忘れらんねえよ主催ライヴ〈ツレ伝 令和四年〉ツレ:KOTORI
2022年8月25日(木) 渋谷CLUB QUATTRO
〈忘れらんねえよ セットリスト〉
1.あの娘に俺がわかってたまるか
2.体内ラブ〜大腸と小腸の恋〜
3.これだから最近の若者は最高なんだ
4.夜間飛行
5.だんだんどんどん
6.中年かまってちゃん
7.花火
8.絶対ないとは言い切れない
9.だっせー恋ばっかしやがって
10.ばかばっか
11.僕らチェンジザワールド
12.この高鳴りをなんと呼ぶ
13.アイラブ言う
EN1.俺たちの日々
EN2.CからはじまるABC
EN3.忘れらんねえよ

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