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2022年06月22日23時20分

 
【オフィシャルレポ】Helsinki Lambda Club 東名阪ツアー2022 “NEW HEAVEN"@東京キネマ倶楽部
 

Helsinki Lambda Clubが東京キネマ倶楽部で「NEW HEAVEN」という名の東名阪ツアーを完了させた。バンドの好調ぶりが感じられる充実したパフォーマンス。その6月17日の会場は、まさにHEAVENな……天国のようなエクスタシーにあふれていた。

オープニング、メンバーはこの日のために作ったというインスト曲からスタート。そのインスト曲に続けて披露されたのは轟音が炸裂する「しゃれこうべ しゃれこうべ」。シューゲイザー的なサウンドで、歌謡ポップスのようなメロディがたどる<地獄でワルツを踊りましょう><地獄でワインを飲みましょう>というフレーズは、今回のツアータイトルとつながるものを感じる。「PIZZASHAKE」、それに「ユアンと踊れ」とフレンドリーなメロディの曲が続くと、フロアはダンス天国に。このあたりの流れはポップネスが強めながら、照明も含めてサイケデリックな感覚も交差させるなど、ヘルシンキらしい、ただならぬ空気感が匂った。

ひと区切りして、ヴォーカル&ギターの橋本薫のMCが入る。東京キネマ俱楽部で自分たちがライブをするのは初めてだということ、そしてここに最初に来たのは2014年に踊ってばかりの国を観た時で、そのライブ後に同行していたギターの熊谷太起に「バンドやろう」と声をかけたことを明かした。熊谷のヘルシンキへの加入は2017年だが、彼は前段階からサポートという形でかなり関わっていて、そのさらに前にはそんな流れもあったようだ。そして橋本はNEW HEAVENというツアータイトルについて「まあ各々、ヘブン感を感じてもらって……自由に踊ってもいいし、もう棒立ちで目つぶって聴いてもいいし。ほんとにみんな、自由な感じで楽しんでくれたらと思います」と触れた。

バンドのパフォーマンスはいいテンションを維持したまま続く。轟音ギターが鳴り、後半にはラップも飛び出す「IKEA」では、明滅するライティングも効果的。<生きてるって思わんと死んじゃいそう>というフレーズも印象深い。このブロックでは「次は2022年最初の新曲をやります」と紹介された「真っ暗なドーナッツ」も配置されていた。橋本のファルセット気味のリフレインが響くこの曲は、7月13日リリースのミニアルバム『Hello, my darkness』にも収録される。「夢と現実の交錯」をコンセプトにしたこのミニアルバムはメンバーたち自身がくり返し聴くほど気に入っているとのことだ。

中盤のセットでは、このバンドが音楽に自由に向かっている姿勢がさらに体現された。オールディーズ・ポップスのようなメロディの「Be My Words」では橋本がギターを置き、ハンドマイクで唄いながら、階上にあるサブステージまで歩いて上がった。続くギターポップ的な「King Of The White Chip」では大いに疾走し、「Justin Believer」ではバンドがラウドなプレイを展開。そのまま突入した「マニーハニー」はサニーなダンス・ポップだが、<わがままな僕>を唄った歌詞は含んでいるものが大きそうである。

このようにヘルシンキの音楽は、古今の洋楽ロックを軸としたサウンドをあらゆる形で融合させたり、そこから日本語詞で独創的な展開を見せたりと、じつに奔放だ。その背景には、オリジナルというか元ネタへのリスペクトやオマージュ、さらには批評性も見える時があって、それらが叩きつけられるたびに爽快な気分になったり、あるいはツッコミを入れたくなったりする(たとえば先ほど挙げた「Justin Believer」にはスキャンダルまみれだった頃のジャスティン・ビーバーのイメージが重なる)。そしてこうしたもののどれもが彼らの音楽世界を形作っている。あなどってはならないバンドだと思う。

終盤に入る前に、橋本は再びツアータイトルについて話した。NEW HEAVENという言葉は、昨年メンバーと友人たちとで静岡の下田に遊びに行き、「音楽聴きながらお酒飲んだりして遊んだ日に、ボーッとしてたら」頭の中に降りてきたのだという。そして「今生きてるこの世こそが地獄だなと思っていて……」と言ったかと思うと、次にこう続けた。

「テレビつければ戦争やら何やら、貧困の問題やら何やら、いろいろ……この世界は地獄で。(中略)身近な生活で言っても、たとえば誰かに裏切られちゃったりすることもあるし。あとは、みんな、仕事がめちゃくちゃしんどいとかも充分、地獄だと思うし。ほんと生きてて綱渡りというか、<ちょっと足踏み外したら即地獄待ってる>みたいな世界だと思うんですよ(中略)でも僕が下田に行って遊んだ時みたいに、ちょっとした天国みたいなのがチラホラあるし。で、こうやって今日という日を用意したら、僕らはすごい楽しくて、今日は天国だなと思ってるし……みんなにも、生きてて、ところどころ天国みたいな日があると思うんですよね」

この言葉には、ヘルシンキが音楽に対して持つロマンチシズムが込められているように感じた。どうしようもないことが起こる日常、悲しみやツラさにまみれた毎日。でも音楽には、そんなものさえひっくり返してしまうくらいのパワーがある。地獄の光景を天国の空間に、死にたくなる思いを生きる歓びに転換させてしまう、そんな音楽の、起死回生の一撃。今夜ここまでさまざまな音やメロディや言葉を発しながら、聴き手に気持ちの高ぶりをもたらし、かと思えば自分の心の中のどこかに旅をさせるような感覚を与えてくれるヘルシンキの世界には、そうしたスペシャルな何かが埋まっているように思うのだ。

橋本が「ちょっと優しい曲を1曲やります」と言って唄ったミディアムスローの「ベニエ」、そしてレゲエ調がやがては爆音を導いた「収穫(りゃくだつ)のシーズン」と、昨年の配信シングルの曲が続いた。ベースの稲葉航大が共にヴォーカルをとる「ロックンロール・プランクスター」ではバンドのエネルギー量が一気に上昇。そして本編ラスト、途方もない開放感がはじけ飛ぶ「午時葵」になだれ込んだ。最もクリエイティビティに満ちていた頃のザ・フーを連想するイントロを持つこの曲には<掟破ってほら、針を刺してダーリン/死なせて欲しいの>という歌詞がある。橋本は、ヘルシンキは、天国と地獄、生きることと死ぬこと、光と闇……それらのギリギリのところを唄ってきたのだと思う。そして、ロック・ミュージックの奇跡を信じているバンドなのだと思う。

アンコールで橋本は、9月に7か所の全国ツアーを行うことを発表。そして直後には、サブスク内の彼らのトップソングにおいて「ずーっと最下位を死守してきた曲を嫌がらせのようにやろうと思います」と前置きして、「バロンダンス」を演奏した。2017年のアナログEP『Time,Time,Time』に収録されたこの曲は、スキ間が多いサウンドの波間に、やはり死や悪魔といったモチーフの歌詞が乗せられている。しかしネガティヴとは決して言い切れない余韻を残すのがこのバンドらしさだと感じる。

ライブは「ミツビシ・マキアート」、「何とかしなくちゃ」、さらにダブルアンコールで橋本が「じゃあ最後のNEW HEAVENナンバーをやりましょう」と言ってから、2015年の1stミニアルバム『olutta』から「シンセミア」が披露された。夢と日常の境を、天国と地獄の際をさまようバンド、ヘルシンキ。橋本は「ありがとう。おやすみ」と言い残して、去っていった。

これから全貌を現すミニアルバム『Hello, my darkness』は、ヘルシンキの破天荒さがフレッシュに表された会心作である。ちなみにこの日、稲葉はMVが作られているという「Mystery Train (feat.Wez Atlas)」を「めちゃくちゃカッコいいです」「バチバチよ!」と絶賛し、熊谷は「Village Satomi」について「後半部分が一番ヘブン感がある」と語っていた。

そして9月のツアーは、果たしてどんな空間になるのか? そこでもまた、これまで経験したことのない天国に連れて行ってほしい!と懇願する次第である。

テキスト:青木優
写真:マスダレンゾ

ライヴ情報
Helsinki Lambda Club 東名阪ツアー2022 “NEW HEAVEN"
2022年6月17日@東京キネマ倶楽部 SETLIST PLAYLIST

・Apple Music
https://music.apple.com/jp/playlist/2022-06-17-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%AD%E3%83%8D%E3%83%9E%E5%80%B6%E6%A5%BD%E9%83%A8-new-heaven-setlist/pl.5b2ed2966b4b4597ad788740a4df1d62

・Spotify
https://open.spotify.com/playlist/6Ja1P8CexXae6a4d2vWH2c?si=b829c3ced5e14eb0

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