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2021/07/22 01:45

 

【ライヴレポート】人生混じり合って、お互いの歴史を生きていきたい──BiSHワンマン・ライヴ〈BiSH SPARKS"My BiSH Forever" EPiSODE 6〉at 大阪城ホール

 

BiSH SPARKS "My BiSH Forever" EPiSODE 6
2021年7月21日@大阪城ホール

BiSHのライヴで大阪に来るのは、2019年9月の〈And yet BiSH moves.〉以来だ。大阪駅くらいからBiSHTシャツを着た人たちが増えてきて、家族連れもちらほら。大阪城ホールに到着し、大阪コロナ追跡システムへの登録や検温、アルコール消毒をし、中に入った。名古屋日本ガイシホール〈BiSH SPARKS “This is not BiSH except BiSH” EPiSODE 4〉と同じく、正面に巨大なステージ、そしてメンバーがホールを一周できるように外周が組まれている。やっぱりでかい! 1人飛ばしの席はすでに清掃員でいっぱい。この時代に、このキャパのホールを埋められるアーティストって何組いるんだろうと考えてしまう。

ハシヤスメ・アツコのソロ曲“ア・ラ・モード“(待ってました!)に合わせて注意事項が読み上げられ、L‘Arc~en~Cielの“READY STEADY GO”がかかり本編が始まった。まずは大阪バージョンの撮りおろし映像。アイナ・ジ・エンドが、大阪のビリケンさんを模した格好で登場したり(僕にはC-3POにしか見えなかったのだが)、名古屋と同様に意味がわからないのだが、アユニ・Dが「6つの物語が終わりを告げるとき、俺のフォースが真の永遠となり、新たな物語の幕が開く」なんてセリフを言ったりして、また何か新しい謎解きが始まったのかと思ってドキドキしてしまった。

1曲目は超代表曲“BiSH-星が瞬く夜に-“からスタート。正面のステージでバンド演奏が始まると、メンバーは会場後方から飛び出して外周を駆け回る。6人が正面ステージに揃うと、2曲目には“stereo future”。たまげたのは、バンドの出音が名古屋と格段に違う。めちゃくちゃ音がクリアで、低音もしっかり出て、ホールやアリーナ特有の反響も少ない。これはBiSHが、バンドと一緒にホール / アリーナツアー〈BiSH SPARKS〉と並行して対バンツアー〈BiSH’S 5G are MAKiNG LOVE TOUR〉も回っている賜物だろう。メンバー、バンド共にリズムや点が揃っており、それによって完璧なグルーヴが生まれ、この音の良さに結びついたのだ。

そして名古屋のセットリストでは終盤だった“プロミスザスター“が、今日は3曲目に演奏された。この曲のアイナ・ジ・エンドは本当に凄かった。ソロやA_oの活動によって磨かれた表現力が存分に発揮され、表情、体、ダンス、声、彼女が持つ全てで“プロミスザスター“を表現していた。バンドのグルーヴの良さも相まって、過去見た中で最も素晴らしい“プロミスザスター“だった。

次に演奏された“GiANT KiLLERS”では、大阪城ホール2DAYSの2日目なのもあって、メンバーの声は少し枯れていた。それがこの曲にめちゃくちゃあっていて、セントチヒロ・チッチが「全て呑み込んでいこうぜ!」と叫んだ説得力は凄まじかった。2日目であること、ツアーをずっとしていることもあって、メンバーはアドリブを多く挟み、とてもリラックスして楽しんでいるようにも見受けられた。

そんな良い雰囲気から一転、山田健人の映像が炸裂するハードコアの“DEADMAN”に流れ込み、“ZENSHiN ZENREi”と続く。メンバー紹介、そして“DA DANCE”と続いた後の最新曲、テレビアニメ「キングダム」のオープニング“STACKiNG”が披露された。山田健人のエネルギーの爆発を表現したかのような力強い映像、そしてメンバーの激しいダンス、バンドのパワフルな演奏。本日一番良かったのはこの曲だった。最新曲が一番すごいって思わせてくれるのは、間違いなくBiSHが今一番いい調子である証拠である。もう7年目になる中で、それでも最高を更新できる彼女たちの可能性に驚愕した。

“スパーク“、”オーケストラ“と代表曲は続き、お待ちかねの滑り芸コントへ。構成は名古屋と同じタイムリープものを大阪アレンジで。ハシヤスメがたこやきになってしまいタイムリープするのをアイナが止めるのですが、ハシヤスメが繰り返し発する「タコチュー、ブッチュー」というセリフがあまりにも印象が強すぎて、正直あまり内容は覚えていません。うん、今日はちゃんと滑ってて最高でした。

後半戦は“TOMORROW”、“SMACK baby SMACK”と続いたあと、“遂に死“、”in case…”、“FREEZE DRY THE PASTS”と山田健人の映像の世界に呑みこまれる。彼の存在は、BiSHの世界を表現するのに今や不可欠である。楽しさに気を抜きそうになった時に現れ、一気にハードコアの世界、アートの世界に連れて行く。BiSHのライヴを飽きもせず何度も見にいってしまう理由の一つに、山田健人が持ち込む世界観は大いにあるだろう。特に一番激しい曲“FREEZE DRY THE PASTS”は素晴らしく、不満、怒りなどの負の感情をリンリンの絶叫と共に吐き出す。清掃員は呆然と立ち尽くし見入っていたが、それでもなんだかスッキリした気分になったのは僕だけではないはずだ。

その後、アユニ・DのMCへ。

「2年前の私たちは、まさか大阪城ホールで2DAYSをやると思ってなかったし、人と会うのもライヴをするのもこんなに難しくなるとは思っていなかったです。けどこの2年間本当に色々あって、辛抱することも悲しいこともたくさんあって、でも私はこの数年間で人の優しさだったり、人の愛の形だったり、たくさんいろんなことに気づいて、気づかせてもらって、人間になれた気がして、メンバーとも深く触れ合えるようになって、昔よりメンバーのことが好きになって、生きることが昔より好きになりました。わたしもあなたも毎日いろんなことに一喜一憂して、すごい嫌なことや辛いことがあっても、今日の楽しかった時間とか優しい言葉とか好きなものを大事にして、毎日元気で笑っていて欲しい。私たちとあなたたちは住んでいるところも違うけど、目と目を合わせることもたまにしかできないけど、私たちはいつも同じ空の下で生きています。こうやって今みたいに同じ時間を過ごして、人生混じり合って、お互いの歴史を生きていきたいです。」

そんな言葉を伝えて、BiSHなりのバラード“STAR”が始まった。ラストは名古屋では演奏されなかった“MONSTERS”、そして「素晴らしい人生ぶちかましていく!」とアユニ・Dが叫ぶ“スーパーヒーローミュージック“、外周をメンバーが駆け回り、客電をつけたなかで清掃員とメンバーがトゲトゲダンスを踊るのが爽快だった“beautifulさ“で本編は終了となった。

アンコールでは、山田健人が描く満点の星空で“I’m waiting for my dawn”が演奏され、その後一人一人が感謝の言葉をのべた。

アユニ・D 「最高の夏が始まったなって思いました。あなたたちにもそう思ってもらえていたら私たちは最高です。倒れないようにやっていきましょう。」

リンリン 「初めてのアリーナ2日間で、体力が不安でしょうがなくて、すごく緊張してしまったけど、あなたたちと会って、そんなもの忘れてすごい元気になって、今日もやっぱりライヴが楽しくて大好きだなって思いました。センキュー。」

ハシヤスメ・アツコ 「外周回った時に思ったんですけど、手を伸ばした時に手を伸ばしてくれたり、マスク越しでも笑ってるのが分かったり、距離や状況が変わっても変わらないものもあるんだなって思いました。これからもBiSHがみんなの支えになったらいいなって思いました。」

モモコグミカンパニー 「なかなかおもうようにいかないことや手を伸ばしても届かないものもたくさんあって何度もくじけそうになるけど、なにかをBiSHに求めてくれる人がこんなにいるんだったら、手を伸ばすのを諦めないで、毎日這いつくばって生きていきたいなって思いました。」

アイナ・ジ・エンド 「最近家が浸水したり、もらったビールが空港で割れて一人で拭いたり、ほんまについてないなって日々でダークな夜を過ごしていたんですけど、今日ここでライヴができたことで、そしたら、私の居場所はここなんかな、別に浸水しょうがないわ、ここが大好きな空間やわって改めて気づきました。」

セントチヒロ・チッチ 「思ったんです。人生、未来がどう変わっても、楽しんだもの勝ちだ、愛したもの勝ちだと、私なりにやり尽くして愛し尽くして、今を燃えて生きていこうと思うので、みなさんも今日という日が燃料になって、明日からも遊び尽くして愛し尽くして過ごしていってくれたら嬉しいです。今生きてくれていることが素晴らしいです。また生きて会いましょう。」

万雷の拍手の中、最後の曲は“ALL YOU NEED IS LOVE”。メンバーが優しく歌いあげていく。2分30秒。場面が変わりバンドが激しくなり「閉ざした心の-」と始まるところで、ずっと僕の前で大きなBiSHのタオルを持って応援していた清掃員が急に泣き崩れた。それを見た僕も不思議と涙が止まらなくなった。間違いなくあの瞬間、この会場で何かが弾けた。

今の混沌とした世界では、TVをつけてもネットを見ても、悪いニュースが流れ、さまざまな意見が飛び交い、誰かが批判され、不安は煽られ、毎日少しずつHPが削られていく。そんな中、今日の大阪城ホールには、自身の目で見て、音を聴いて、ちゃんと信じることができる事実があったように思う。声は出せないけど歌って、コントで笑って、拍手して、メンバーの言葉を受け取って、繋がっているということを感じることができたんだと思う。そしてそのことがメンバーのMCと“ALL YOU NEED IS LOVE”で確信に変わって、あの涙が引き起こされたのではないだろうか。清掃員だけでなく、メンバーにとっても、もちろん僕にとっても、今日が大きな1日になったのは間違いない。

もしチャンスがあるなら、少なくともあと3回はあるだろうこのツアーに行ってみて欲しい。笑って泣いて、拍手して、拳を突き上げて、この混乱する世界で、ちゃんと繋がることができる喜びを感じ取って欲しいと思う。

そして最後に、次回のタイトルと日程が発表された。

2021年9月22日、9月23日
BiSH SPARKS”Get out of boredomZ”
EPiSODE 1
えっ、場所は???

文 : 飯田仁一郎
構成: 西田健
photo by sotobayashi kenta

〈BiSH SPARKS"My BiSH Forever" EPiSODE 6〉
2021年7月21日
大阪城ホール
1.BiSH-星が瞬く夜に-
2.stereo future
3.プロミスザスター
4.GiANT KiLLERS
5.DEADMAN
6.ZENSHiN ZENREi
7.DA DANCE
8.STACKiNG
9.スパーク
10.オーケストラ
11.TOMORROW
12.SMACK baby SMACK
13.遂に死
14.in case…
15.FREEZE DRY THE PASTS
16.STAR
17.MONSTERS
18.スーパーヒーローミュージック
19.beautifulさ

EN
1.I'm waiting for my dawn
2.ALL YOU NEED IS LOVE

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【BiSH Info】
Official YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCkb6emsbTQEv8ve2dfnuVIA
Official HP : http://www.bish.tokyo
Official Twitter : https://twitter.com/bishidol

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