LIVE REPORT「WONDER RAIN TOUR 2014」@渋谷WWW

2014年5月21日(水)、渋谷WWW。この日の主役は正真正銘、音楽だった。

START OF THE DAYが主催をつとめるツアー「WONDER RAIN TOUR 2014」の東京公演。バー・スペースでは「音ノ怪 絵ノ怪」によるライヴ・ペインティングが行なわれたり、「PASAR KITCHEN」によるオリジナル・フードが出されたりと、音楽を楽しむために余念のない空間作りがなされていた。入り口にはkilk recordsの森大地から、この日を祝う花が贈られ飾られており、関東近郊のポストロック、アンビエント・ミュージックに造形のあるバンドマンや関係者の姿も数多く見られた。

元映画館ということもあり、客席が段々になっている同会場。ステージがよく見渡せる会場で、この日のトップバッターを務めたのは、シンガポールの5人組バンド、ANECHOIS(アンエコイズ)。START OF THE DAYが主宰しているレーベル・WONDER RAIN RECORDSより、2013年12月にリリースされたコンピレーション・ミニ・アルバム『Yggdrasill 1』に収録されているバンドで、今回が初めての日本公演となる。ほぼ無名というなかで行なわれたライヴは度肝を抜くような内容であった。

2000年代中旬の日本でポストロックが盛り上がっていたころの勢いをそのまま取込んでしまったかのような音楽的冒険に溢れた音楽。なにより、それをひたむきに演奏している5人により、そのエネルギーは増幅されて会場になり響く。リスニング・ミュージックではなく血の通った肉体的なサウンド。ダンス・ミュージックさながらの演奏に客席の身体は自然と揺れていく。エネルギッシュで、自然と浮かぶ楽しそうな表情は、全力を出し切ったうえに自然と浮かぶ表情であった。ステージ上で写真を撮るなどリラックスした瞬間も見せつつ、締まったライヴで会場にどよめきを与えライヴは終了した。

ANECHOIS

2組目は、北海道のバンド、sleepy.ab。もはや安定のステージといってもいいが、確実に自分たちで課題を持ち、それを乗り越えようとしている姿勢が好印象であった。この日は、90年代レディオヘッドさながらの耽美的なメロディと、シューゲイザー・テイストのギター・サウンドで、会場を音の渦に包み込んだ。黙々と職人のように刻み付けるギター・ロックのポップ・ミュージック。もはや北海道を代表する孤高のバンドとしての存在感を見せつけた。

sleepy.ab

そしてトリを務めたのは、主催者であるSTART OF THE DAYだ。長い転換時間をへて、ステージにかかっている黒幕があくと、ステージから溢れんばかりの楽器と、白装束を着飾ったメンバーの姿が広がった。Aureoleやkaninaのメンバーなど、繋がりのあるバンドのなかから、自分たちの音楽を補完するために必要な楽器とミュージシャンがこの日のために招集されたのである。ホーン隊やコーラスの男女など、その構成を観ているだけでも、START OF THE DAYがやりたいことは、自分たちの主張ではなく、音楽そのものを生み出すことということが伝わってくる。

START OF THE DAY

第一音がなる。圧倒的なハーモニー。ギター、ベースの音は数多くの楽器に混ざり込み、はっきり輪郭を見せることはないが、アンサンブルによって、16人のオーケストラは信じられないくらい壮大で清らかなサウンドを生み出していく。逆にアンプを通していないフルートなどの楽器が音の洪水を突き破り耳に入ってくる。その音を解析しようと耳をすませているだけでも楽しいが、メロディは美しく、時間も大河のようにながれていってしまう。誰も帰ろうとしないなかでの、アンコールはこのイベントの集大成にふさわしいくらいの多幸感が会場を包んだ。

最初に述べたように、この日の主役は音楽だった。仮にSTART OF THE DAYのメンバーを知らずにこのライヴを観たら、誰がメンバーなのかはわからなかったと思う。全員白装束を着て、立ち位置も楽器を主体に置かれており、誰が誰なのかの説明も大々的に行なわれたわけでもない。あくまで演者の感心は、このメンバーでどのような音を奏でられるか、そこに尽きていた。それにより導かれた音楽はとても美しく、とても大きな渦を描くものであった。この日出演した3組は、どのバンドともに余計な説明なしに、音楽に魂を宿すことに全力を賭けているように見えた。このような祝祭感溢れるイベントが開催されたことを喜ぶとともに、来年もまたこのアンサンブルが見られることを心より願っている。(text by 西澤裕郎)

写真 : megu(サンガツ) (会場写真、ライヴ・ペインティング)
写真 : yuka jonishi (ライヴ写真)

>>「START OF THE DAY × ANECHOIS」の対談ページはこちら<<


WONDER RAIN TOUR 2014 Tokyo
2014年5月21日(水)@渋谷WWW
出演 : ANECHOIS (from Singapore) / START OF THE DAY / sleepy.ab
Live painting & exhibition : 音ノ怪 絵ノ怪
FOOD : PASAR KITCHEN
OPEN / START : 18:00 / 19:00

 
 

レヴュー

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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