2016/09/20 16:26

みんながやらないような場所でやりたいですね… 富士山とか

ーーこたおちゃん加入のタイミングで、事務所移籍の発表がありました。そこが新生あヴぁんだんどになるもうひとつのきっかけでもあったと思うんですけど、見捨てられた状態から拾ってくれて2年間時間を共にした運営と決別するのは苦悩の選択だったのでは?

べに : グループの基盤が全くできていなくて、結局メンバー全部抱えこんじゃってストレスもすごくて、このままではいつか倒れちゃうって思って。前の運営から「そんなにあヴぁんだんどを長く続ける気はない」ってきっぱり言われていたんですよ。だから、これからもあヴぁんだんどを続けていくためには、ちゃんとした大人のところに行かないとそろそろきついなって思って、伝手(つて)を辿っていったら今の運営の方が快く受け入れてくれて。でも、実はプロデューサーはいないんです。今の運営さんは荷物運びとか物販とか事務的なことをやってくれる役割で、プロデュースに関してはみんなで話し合って決めています。(移籍できたのは)いいことだと思っていたから、そんなにファンの皆さんが衝撃を受けられるとは正直思っていなくて。

ーーべにちゃんが「運営のためのあヴぁんだんどじゃないんだ」っていうことを当時すごく主張していて。数多いるアイドル・グループの中には当のアイドルよりも運営の方がたっているグループも多くあるけど、今回の事務所移籍はそういうグループの在り方に対する批判とも取れました。

べに : それはあります… かなり。イベントごとに時間があったら共演するグループのライヴを見るんですけど、運営から言われてそのままその通りやってるんだろうなっていうアイドルさんも正直多くて、それは私はいやだなってずっと思ってる。運営のストーリーじゃなくて、今のメンバーで作り上げていくあヴぁんだんどなんだ! っていう気持ちがあります。
夏季 : なんか、趣味の道具にされていた感があります。

ーーどういうところから?

夏季 : ソロで自分の歌いたい曲を並べたら「これなら出ない方がいい」と言われたり… 1日にLIVEが何現場かあったときがあって一現場終わったときに溜まりに溜まっていたものが爆発してしまって… もう無理だ! ってなって飛び出した日があって、そのときにわたしがそうなったことよりも周りの目を気にしてるのを感じて…。

ーー前の運営が描いたアイドル像をできるだけ外れないようにされてたってこと?

夏季 : うん、作られていった気がする。

ーーこたおちゃんはあヴぁんだんどとして活動してみて、他のグループとは違うなと思うところはありましたか?

こたお : もう全然違いました! 素晴らしいです!
べに : 素晴らしいって(笑)。

ーーあヴぁんだんどは自己プロデュース的だってこと?

こたお : そうです! べにちゃんがダンスとかの指導をするくらいです。楽屋で見せしめのように運営がメンバーに怒鳴ってるグループもあるけど、あヴぁんだんどは大人に怒鳴りつけられたりしない。
べに : 事務所に所属します、という発表をしたら、批判的な意見も多くて…。辛くて泣きながらライヴをした日もありました。

ーー自己プロデュース的な方針が生きるのも、「あヴぁんだんど」というグループの特性があるからだと思います。全くアイドルっぽくない、むしろアイドルというフォーマットを借りてやりたいことを表現するのがあヴぁんだんどらしいと思って。今年も〈TIF〉に出られなかったという話もありましたが、本当にあヴぁんだんどが目指しているポジションって、アイドルの頂点みたいなところではないと思うのですが。

べに : そうですね、そこじゃない。だから(〈TIF〉の出演は)無理だと思う(笑)。あヴぁんだんどは語り継がれるようなグループになりたくって。「記録じゃなくて記憶に残った方がいいよ」って事務所の方が言ってたんですけど、CD何枚売れました! とかじゃなくて、あヴぁんだんどって本当にすごかったよね、って後世に語り継がれたらいいなと思って。結構壮大なんです。だから明確にアイドルとしての、○○出場目指してます! とかは全くないですね。1年前とかはもっと売れたい! テレビ出たい! って思ってたんですけど、それすら最近思わなくなった。
夏季 : でかいステージでやるのもいいんですけど、みんながやらないような場所でやりたいですね… 富士山とか。みんなが登ってくるの大変だけど…(笑)。
こたお : いいねー!

ーーこたおちゃんは思い描いているものはありますか?

こたお : 目の前のことに精いっぱいな状態なんですけど、私は美術を専攻しているので、素敵なオブジェの前とかでライヴをしたい…(笑)。

ーー普通のアイドルらしくない、あらゆるカルチャーと交差するような取組みをしていきたいってことですね。

べに : そうですね、独自路線で行きたい。あともっと曲も増やして、自分たちで作詞をしていきたい。
夏季 : この3人で作詞とか楽しそうだよね!
べに : みんな変なこと言うから…。
夏季 : それぞれが分からないことばっかりだもんね。

ーー分からないというのはどういう意味で?

夏季 : 趣味が全然違うんですよ。お互いが(お互いのことを)全く分からない(笑)。

ーー個性が3人とも全く別ってことですよね。

こたお : 全然ちがう!
べに : こたちゃんは芸術が好きで、私も現代アートが好きだから「もしかしてキース・ヘリングとか好きなの? 」って訊いても「いやあ~…」って(笑)。
こたお : 噛み合ったことないよね(笑)。べにちゃんはおしゃれなんですよね。かっこいいものを知ってる。私はへんなものをよく知ってる (笑)。

ーーへんなものというのは?

べに : こたちゃんが好きなのなんだっけ?
こたお : 私が好きなのはマーク・ライデン。油絵の画家なんですけど、私、油絵が好きで! どろっとした世界が好きなんですよ。漫画だと楳図かずお先生とか。ホラーも大好きで。

ーーハーフ美女という見た目からのギャップもすごいですね。

べに : しかも狙ってやってるんじゃないんですよ!
こたお : ほんと、赴くままに生きていて、全部自分で探してきて…。映画が好きなんですけど、TSUTAYAで端から借りていく、そういう日々を生きています(笑)。

女の子のための歌

ーー最新シングル『ヴぁんでぃっつ!!! / オンナノコヤマイ』が8月31日に発売されました。今まであヴぁんだんどはオルタナティヴ寄りの楽曲が多かった中で、今作はSSWつるうちはなさん作詞作曲のド直球なポップスで、あヴぁんだんどの新たな魅力を引き出していると思います。

夏季 : 「オンナノコヤマイ」は最初のソロが緊張しますね…。
べに : 恥ずかしいんだよね、なっちゃん。

ーーなっちゃんは所々で自分の歌声に自信がないと発言していましたが、はなさんが「最高じゃん!」って背中押してくれたと聞きました。

夏季 : 前の運営さんに「声がよくない」って結構言われていたから、私はよくないんだ、だから歌詞割りが少ないんだって思って生きていたから、歌声を褒められるとは思ってもいなくて。はなさんが少しづつ自信を持たせてくれて、今は歌うのが楽しいです。

ーーべにちゃんは初めて歌を受け取った時の印象はどうでしたか?

べに : 歌詞がぴったりだなって思いました。〈最後には笑うんだ!〉とか、すごくいいなって思って。色々あったけど、結局は私たち最後には笑いたい! って思っていて。

ーーべにちゃんは自身の生誕ライヴでつるうちはなさんの名曲「あいゆうえにい」をカヴァーしていましたね。

べに : そうなんです! この前、つるうちはなさんの主催のイベントにお呼ばれして行ったんですけど、はなさんのソロ・ライヴの時に「あいゆうえにい」を歌ってくれて、はなさんはなんてすごい人なんだろうって改めて思って。楽屋に3人でいたんですけど、私、すっごい涙を我慢しながら作業をしてて…(笑)。
夏季 : 実は気づいてた(笑)。
べに : やっぱり歌に気持ちが乗ってると相手にちゃんと伝わるんだって、はなさんの歌を聴いてすごく思いました。

ーーこたおちゃんはどうですか?

こたお : 私は涙もろいんですよ。小学校の頃から毎日泣くような子で。そしてまた、べにちゃんの振付(注・あヴぁんだんどの全振付は宇佐蔵べにが担当している)が泣けるんですよ。「ヴぁんでぃっつ!!!」でミュージカルのエンド・ロールみたいに三人で手を繋いで礼をする振付があるんですけど、そこで「あ~! あヴぁんだんど好きだ~! 」っていつも泣きそうになります。歌詞に〈愛しています〉っていうフレーズも盛り込んでくれて。

ーー歌詞に共感する部分もあるんですね。

こたお : 女の子のための歌。女の子としては共感するところが多くて。「オンナノコヤマイ」の女の子のうじうじしちゃう部分とか。それをまた男の子にも楽しんでほしい。

ーー普段なかなか伝えられない思いを歌や振付に乗せて訴えてるのかな、と思ったりもしました。振付に思いっきりキックするシーンがあったりとか。

べに : あ~確かに(笑)。SNSでそういうことを言ってしまうとまた誤解を生んでしまうから、ライヴで伝えられたらなとは思います。

ーー振付に関してお2人はどうですか?

こたお : べにちゃんの振付は考えがあって、答えがあって。(メンバーの意見を)聞いてくれたりもするんですよ。
べに : 「ヴぁんでぃっつ!!!」の最後のポーズが全然思いつかなくて「こたおちゃん、なんかプロレスの技ない?」って訊いたら… なんだっけ、あれ(笑)。モンゴレアン…?
こたお : モンゴリアン・チョップ(注・両手を大きく振り下ろして相手の頸動脈付近を叩き付ける技)っていうチョップがあるんですけど、それをちょっと可愛い目にアレンジしたのが最後のポーズで。

ーーえ! あの可愛らしい振付はプロレスの技が元ネタだったんですか(笑)?!

こたお : はい、取り入れてくれて嬉しかったです(笑)。

3人それぞれがいないとあヴぁんだんどは成り立たない

ーーさて、色々な展望がある中で今後あヴぁんだんどはなにを目指していくのでしょうか。

べに : いろんなアーティストさんやクリエイターさんと楽しいことをやりたいな。アイドルらしくない、面白いパフォーマンス・グループがいるよって口コミが広がってほしい。私、「地下アイドル」って言われるのがあんまり好きじゃなくて。「地下アイドル」は地下にずっと留まっているイメージがすごく強い。結局上に登りつめても地下ってずっと言われ続けたりするから、もうアイドルって呼ばれなくてもいいかなって思ったりもします。アーティストなのかな…? 3人の魅力を全部ひとつに放出できるようなもの… (言葉にするのは)難しいんだけれど…。
夏季 : 別に私たち歌が上手い訳でもないし、アイドルっていう感じでもない。言葉にしちゃうとアーティスト寄りになれたらいいなって感じ… かな。

ーーアーティストとアイドルが上手く交わる部分を探っていくってこと?

夏季 : そこに新しい言葉を作ればいいんだ! アイド…。
べに : アイドティスト…(笑)?
一同 : (笑)。
夏季 : 私たちが作り上げていこう。
こたお : 「あヴぁんだんど」っていうジャンル、みたいになれたらいいな。

ーーある意味で今は目指す対象がいないってことですね。体現できているグループがいない中で、そこを目指していきたいという。

夏季 : ですね。

ーーもしそういう存在になれたら、後のアイドルたちがあヴぁんだんどを目標にそのポジションを目指す、という未来もあるかもしれませんね。

夏季 : おぉ! かっこいい! すごいね。
べに : 影響とか与えられるグループになりたいな、語り継がれるっていうのもそうだし。だからやっぱそのためには自分たちがやりたいって思ったことも周りに流されず、やっていくことが大切なのかなって思います。

ーーこたおちゃんはどうですか?

こたお : この前すごくマニアックな映画のトーク・ショーに出て、あヴぁんだんどを広めてきました。アイドル・オタクだけじゃなくて、全然関係ないジャンルの人からもあヴぁんだんどいいなって思ってもらいたい。

ーーそれぞれが役割を全うして、これからのあヴぁんだんどを作っていくのですね。

べに : 3人それぞれがいないとあヴぁんだんどは成り立たない。みんな、大切な存在です。

RECOMMEND

あヴぁんだんど / ピクニック at nerd park

見捨てられたアイドル「あヴぁんだんど」の初となるミニ・アルバム。80年代テクノ、轟音ロック、さらにはヒップホップにインスパイアされたポップ・ソングへと昇華した珠玉の名曲揃い。代表曲「Feedback Friday」をはじめ、詩人・小説家 最果タヒが作詞を担当した「点滅ばいばい」を含む、全6曲。

>>特集ページはこちら

つるうちはな / あいゆうえにい

”「あいゆうえにい」の誕生は、事件でした。by 西村晋弥(シュノーケル)”。つるうちはな史上もっとも中毒性の高い、1度聴いたら脳裏にこびりつく本作「あいゆうえにい」は、つるうちはな流「人類全肯定ラブソング」。IもYOUもANYも、あいゆえに、これでいいのだ!

>>特集ページはこちら

えんがわ / おばざいTOKYO(24bit/48kHz)

アイドル界を常に牽引するBELLRING少女ハート、非常階段とのコラボも話題を呼んでいるあヴぁんだんど。アイドルの枠を超えて、数々のミュージシャンからも愛される2グループのメンバーであるカイと宇佐蔵べにが、元たまの石川浩司と新ユニットを結成しました。カイじいちゃん、べにばあちゃん、石川くんが織りなす、ちょっと不思議なほんわか世界。

LIVE INFORMATION

PURO KAWAII FESTIVAL
2016年9月11日(日)@サンリオピューロランド

DDさんいらっしゃ〜い vol.4 in 名古屋城
2016年9月24日(土)@名古屋能楽堂

No Maps presents『IDOL DIVERSITY』
2016年10月16日(日)@DUCE SAPPORO

PROFILE

あヴぁんだんど

14年7月8日、デビュー。別グループのオーディション選考から漏れたメンバーにより結成された「見捨てられたアイドル」。

路上練習や都内のライヴハウスを中心に活動を重ね、詩人・作家の最果タヒによる初の歌詞提供作品「点滅ばいばい」の発表や、実験的電子音楽デュオ・Matmosの単独初来日ツアーへ抜擢され、"キング・オブ・ノイズ" 非常階段とのユニット「あヴぁ階段」によるコラボライブを敢行。〈AOMORI ROCK FESTIVAL’15~夏の魔物~〉〈秩父4D 2015〉などのロック・フェスに出演し、トラッシュ・カルチャーマガジン「TRASH-UP!!」の音楽レーベル「TRASH-UP!! RECORDS」から第1弾アーティストとしてシングルCD、ミニ・アルバム等を発売。

16年、1月には渋谷WWWでのあヴぁんだんど初ワンマン成功! 3月に参加した MULTIPLE TAP USツアーで初の海外公演は大盛況。そして6月、フランス人とのハーフ美少女、小鳥こたおが加入。​8月には現代美術の祭典〈瀬戸内国際芸術祭2016〉での単独ライヴを行う。

いま東京で最もリアルなアイドル・グループ、 あヴぁんだんどの"いま"をみて!

>>Official HP

[インタヴュー] あヴぁんだんど

TOP