2015/03/09 13:33

山寺宏一、坂本冬美のあの曲を熱唱!?――「日本アニメ(ーター)見本市」のサントラ独占ハイレゾ第2弾配信開始

3. そこからの明日。

第8話「そこからの明日。」Avaivartika「SKY5」

>>映像のご視聴はこちら : [[http://animatorexpo.com/tomorrowfromthere

監督 : 林明美

イメージボード : 品川宏樹

いつも通りの毎日…
いつもの帰り道…
…その先にあるものは…??

INTERVIEW

おそらく、その舞台は携帯やPCのデバイスがちょっとだけ違うぐらいの少し近未来。とある若い女性の、夢見る未来と目の前の現実の葛藤、それでも続く日々を描き出す。さまざまなアニメで原画を手がけてきた監督、林明美による短編作。ほぼサイレントと描かれる作品に、映像とともにある種のストーリーを与えるのは、バンド、Avaivartikaのサウンドと、そしてリリック。楽曲の盛り上がりとともにダイナミックに展開、抽象的なリリックを通して、セリフで「語らず」という部分で、逆に幾重のストーリーを想像できるような作品となっている。「ME! ME! ME!」や後述の「ヤマデロイド」と同じく、見本市のなかでもより音楽に寄り添った作品と言えるだろう(が、他2作とも全くアプローチが違うのでぜひとも見比べ、聴き比べててはどうだろうか?)。ちなみにAvaivartikaは、世界最大のアマチュア・バンド・コンテスト〈エマージェンザ2012〉で優勝する実力者、彼らが今回、監督の林ともに作り出したのが配信の楽曲「SKY5」だ。

林明美 : PVとはちょっと違うと思ってます

――Avaivartikaさんとはなんでも以前にも、一緒に制作をおこなったことがあるようですが。再度組もうと思ったのは?

林 : もともと「アニ*クリ15」(NHKの1分ショートアニメ作品のオムニバス企画で「ナミダの向こう・・」という作品を手がけている)で組んだことがあって。当時のヴォーカルのAIさんとUjiくんが、バンドとしてのスタイルに変わっていて、音楽の方向性もかなり変わっていたので「また組んでみたらおもしろいかな…?」というのがキッカケです。

――楽曲そのものがアニメの、ある種、テーマになっているようにも思えますが。

林 : AIさんの書く詩の世界観がスゴク好きなのもあるのですが、お願いするときはいつも細かく発注はせずにテーマだけを伝えてそれを共有してもらいつつ作業は同時に進めていくかたちがいつもですね。とくに音楽有りきで画面を作っていくわけではありませんのでPVとはちょっと違うと思ってます……。

――音楽とアニメの表現という部分で、今回、とくにここを気にかけたという部分があれば教えてください。

林 : 音楽も映像も閉塞感のある世界から、明るく広い世界へ…… というのがテーマですが心情変化を表現するのにいつも気を使うのが"色"ですね…。それと同じくらい大事なのがキャラ作りだと思ってます…。

――現在公開されている見本市の作品で、他の作品で音楽の気になった作品はありますか? 

林 : 「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可」のEDが最高です(笑)。

AI(Avaivartika) : 日常から離れ過ぎすぎない言葉で、非日常、ワクワクする世界を

Avaivartika
――「SKY5」は、監督さんからのディレクションもありつつ作り進めたようですが。

AI : まずはじめに「アニ*クリ15」の「ナミダの向こう・・」の続編を作りたい、ということでお話を頂きました。「ナミダの向こう・・」のテーマは「泣けない女性に泣いてもらいたい」でした。今回は「"扉を開く"をテーマに」ということでした。 作品の進めかたは「アニ*クリ15」のときも、そうでしたがそのテーマに沿った監督のイメージボード(作品のコンセプト、舞台などを具体的な絵にしたもの)をいくつか見せてもらい、そのボードの雰囲気をふまえて、音楽を作る作業をスタートさせました。

――詩や楽曲どちらも監督さんのディレクションが結構あったんですか?

AI : 監督からの細かいディレクションはそんなにありませんでした。なので、自由に制作させてもらえた感覚があります。

――林監督とは2度目の制作でしたがいかがでしたか?

AI : とてもおもしろいです。アニメになることで、音楽の楽しみ方が広がり、観るたびに違う発見や楽しみ方ができます。

――監督からの指示以外でご自身で留意したポイントやコンセプトとして持った部分はありますか?

AI : 曲のはじまりから、ラストにかけての変化を、どれだけ自然にドラマチックにできるかを大事にしました。監督は歌詞をとても大切にされるので、その為の歌詞はずいぶん悩みました。日常から離れ過ぎすぎない言葉で、非日常、ワクワクする世界を楽しんでもらえるように心がけました。

――短編アニメというわりとさまざまな限定的な要素があるなかで、難しいと感じたことはありますか?

AI : 前回の「アニ*クリ15」の60秒に比べると、今回は3分以上頂けたので、短いというよりは、むしろ今回は長いことに緊張感を覚えました。間のびしないかが心配でしたが、元々ストーリー仕立てな楽曲は好きで作っていたので、意外と大丈夫でホッとしました。あと、アニメの力が偉大でいらない心配だったと、完成後に思いました。

――今回の作業でなにかご自身で音楽を作る上で新たな面白みみたいなものを見つけた部分はありますか?

AI : コーラスが入ってるのですが、普段はコーラスを滅多に入れないので、自分の声がとても新鮮でした。アニメに出てくる女の子も世界観も本当に可愛いので、曲に"女の子っぽさ"を入れたいという意図で、頑張って女子ワールドをイメージしてコーラス録りしました。とても楽しかったし「意外と私でもイケる!」と思いました(笑)。

――できあがった作品のご感想を教えください。

AI : 客観的に観れるようになるまで時間がかかりましたが感情移入できるようになりだすと、ハマりました。「めちゃくちゃ良いアニメやん!!」って、ワンテンポ遅れてメンバーとはしゃぎました。女の子はふんわりしながらも、自分の手で扉を開ける強さを秘めている。そのテーマがしっかり散りばめられていて、大好きです。何度も見てます!!

――他のサウンドトラックで好きな音源があればあげてください。

AI : 「ヤマデロイド」最高ですね。初めて聴いた時、歌い手として悔しさすら覚えました(笑)。「感情を声にのせる」という点で、自分的でとても大切にしていることなのですが、1フレーズ毎の表現が半端ないです。あとで自分が好きな声優さん(攻殻機動隊のトグサ・ファン)だと気が付き、今は複雑な心境です(笑)。でも、曲も歌もアレンジもすばらしかったです。

――現在公開されている見本市の他の作品で気になる作品があればあげてください。

AI : 「西荻窪駅徒歩20分2LDK敷礼2ヶ月ペット不可」ですね。爆笑でした。あのピュアな絵のタッチで、あのテーマ、ラストの曲の雰囲気。ミスマッチ感? とてもツボでした。

4. ヤマデロイド

第10話「ヤマデロイド」

>>映像のご視聴はこちら : http://animatorexpo.com/yamadeloid

監督 : 堀内 隆&江本 正弘
監修 : 坂野一郎
アニメーション制作 : グラフィニカ
「こころを込めて歌います」。

第10話「ヤマデロイド」トレーラー
第10話「ヤマデロイド」トレーラー

INTERVIEW

そのタイトル通り、林原めぐみとともに、「アニメ(ーター)見本市」で声優として、すべての声を担当する(それにしてもトップ声優2人だけなんて豪華な縛りだ!)、”七色の声を持つ男”こと山寺宏一。そのタイトル通り、彼をモチーフにしたサイボーグ侍が、恋に、悪者征伐に活躍するストーリー。主人公として本編を通して山寺宏一が歌いあげるのは、坂本冬美の「アジアの海賊」。アクションあり、そしてまるでボリウッド映画のようなミュージカル形式の演出あり、さらにはラストは…… 見てのお楽しみな、「最高の娯楽活劇」とでも言いたくなるようなダイナミックな作品。今回、「アジアの海賊」を、さらにアニメと響き合うドラマティックな編曲を施したのは、林原めぐみの楽曲やアニソンなども多く手がける、たかはしごう。ちなみに、監督の堀内隆は、原曲となる坂本冬美の「アジアの海賊」のPVにも参加しております。

堀内隆 : どの世代でも、誰でも楽しめるものを目指して

――山寺さんが歌い、そしてたかはしごうさんによる編曲で坂本冬美さんの「アジアの海賊」カヴァーという布陣はどのように?

堀内隆(以下、堀内) : はじめの企画の段階で、山寺さんに歌って頂くという内容を見た島居さん(見本市音楽制作)から提案していただきました。企画当初は、曲を書き下ろす可能性もありました。制作に入る前に、イメージの共有のためのラフのビデオ・コンテを作成したのですが、そのとき、以前自分がPV制作で参加した原曲(坂本冬美「アジアの海賊」)をガイドで使用していました。最終的には、原曲の楽しさ、痛快さから、そのままカヴァーとさせて頂くことになりました。山寺さんは、声優でありながらも、お茶の間のエンターティナーとしてすばらしい方ですので、今回歌って頂く曲としては、うってつけだと思いました。たかはしさんは、普段、林原さんとも組んでお仕事されていたり、また、山寺さんをすごくリスペクトされていたので、すごく真摯に作品に向き合っていただきました。たかはしさんも、カヴァーということで、いろいろとご苦労あったかと思いますが、最終的には、すばらしいアレンジにして頂き、最終ミックスを確認させて頂いた時は本当に感動しました。各パートの演奏の方もすばらしかったです。

――今回は、楽曲そのものがアニメの、ある種、テーマになっているようにも思えますが。このような編成になったのはなぜでしょうか?

堀内 : 企画自体は、どの世代でも、誰でも楽しめるものを目指していて、演歌にしたのもそういう意味合いでした。他の楽曲を検討もしたのですが、ベースは演歌でありながら、さまざまな要素を含みつつも、シンプル。また、前向きさ、雄大さなど、今回の楽曲は理想的でした。映像のほうも当初から、タッチを生かした劇画風を目指していましたので、相性も抜群だったと思います。いずれにしても、難しいことはさておき「ヤマデロイド」を見ていただいた、さまざまな方々が、歌を口ずさんで、ちょっとでも楽しくなったり、元気になってもらえれば嬉しいですし、実際、作っている自分たちも、歌に励まされながら作っていたところはあったと思います。

――現在公開されている見本市の作品で、他の作品で音楽の気になった作品はありますか?

堀内 : 今回は、ショートフィルムを毎週公開していくという、意欲的な企画なので、いつも楽しみにしていましたが、本当にさまざまなアニメとともに音楽にもふれあえ、「これ」というよりかは、いろいろな音楽を知る、良いきっかけにもなっていると思います。また、改めて、映像にとっての音楽、音響の大事さを認識させられます。

山寺宏一 : 声優冥利に尽きます!

山寺宏一
(以下、コメント)

「声優冥利に尽きます! こんなことってありますか? タイトルが「ヤマデロイド」ですよ! 僕にとっては「声優史上に残る快挙!」。制作陣にとっては「アニメ史上に残る暴挙!」でしょう。 感動とともに、最初に感じたのは「顔が似てなくて良かった!」でした。お話を頂いたとき「ありがたい話だけど僕に似ていたらギャグにしかならないだろう」と思ったもので。「僕ってもしかして、まわりの目には阿部寛さんみたいに見えているのかな?」という思いも一瞬よぎりました。でもメガネを残してくれていたのはうれしかったです。「アジアの海賊」はもともと大好きだったので歌えることがうれしかったです。レコーディングの際、初めはもっと高いキーで歌ったのですが「もっと余裕が欲しい」 との要望が監督からあり、かなり下げたキーに落ち着きました。作詞作曲の中村あゆみさんにメールしたら「楽しみです。自由に歌って下さい」とやさしい言葉を頂きました。劇画タッチとCGを駆使した映像の融合、インド映画もびっくりのぶっ飛んだストーリ ー、大好きです! 次回があるなら是非歌中以外の台詞もやりたいです。」

たかはしごう : "演歌"というものは奥が深く、またおもしろく、進化性のあるもの

たかはしごう
――「アジアの海賊」1曲ということで、事前にコンテやストーリーと綿密にうちあわせをしたんですか?

たかはしごう(以下、たかはし) : 音楽制作の島居さんとの打ち合わせからアレンジの制作に入りました。 企画&コンセプトなどはうかがい、いくつかのインスピレーションではじめのデモはできました。後に監督との相違点があって、第2回目のデモ制作の前にお会いして打ち合わせをしっかりいたしました。

――なにか監督さんからのディレクション以外で、ご自身で留意したポイントやコンセプトとして持った部分はありますか?

たかはし : (はじめに)実はもともとあった坂本冬美さんの歌う「アジアの海賊」の音源にあわせて絵は作り始めておりましたので尺長(イントロからエンディングまで)、決められていたアタックなどの変更はできなかったのです。その範囲のなかで、原曲の作詞・作曲の中村あゆみさんと編曲の鎌田ジョージさんに失礼のないように、そして山寺さんの声に合うようなアレンジを心がけたつもりです。

――短編アニメというわりとさまざまな限定的な要素がある劇伴というところで、今回気になったところはありますか? 苦労した点など。

たかはし : 時代背景がわからないぶん、自分もあえて微妙に古い音源を使ってみたり、最新のSEも使ってみたりしました。自由に遊ばせてもらいました。もともとの楽曲&アレンジがすばらしかったので、監督や制作の方々に、どう前のイメージから抜けてもらえるかが苦労した点かもしれません。

――制作のなかでの興味深い発見などはありましたか?

たかはし : 自分の描いていた"演歌"より、"演歌"というものは奥が深く、またおもしろく、進化性のあるものだと感じました。演歌歌手に歌ってもらえるような楽曲も作っていけたらと思いました。

――できあがった作品のご感想を教えください。

たかはし : こんなに本気で気道楽な作品は初めて見たかもしれません。短い1曲の中に、「あんなこと」「こんなこと」――絶対1度見ただけではわかり得ないこと、楽しんで緻密に作られていて、そんな作品に自分も音楽という場所で携われて光栄です。

――もし、他のサウンドトラックで好きな音源があればあげてください。その理由も含めて。

たかはし : Avaivartika さん「SKY 5」好きです(「そこからの明日。」劇伴)。絵の世界観と曲と歌声がすばらしくマッチしてますね。

――現在公開されている見本市の他の作品で気になる作品があればあげてください。

たかはし : 「安彦良和・板野一郎 原撮集」(こちらは残念ながら3月4日に公開終了)。僕らガンダム・ファンの気持ちを汲み、安彦さん&板野さんに対するリスペクトを感じる作品です。まさか庵野さんの頭の中に、こんなに「ガンダム」があるとは思っておりませんでした。

[レヴュー] 日本アニメ(ーター)見本市/Avaivartika, 日本アニメ(ーター)見本市/TOMISIRO, 日本アニメ(ーター)見本市/山寺宏一, 日本アニメ(ーター)見本市/矢野博康

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