2014/12/14 20:09

USインディー界の奇才が奏でる、“おかしくも、愛らしい”日常風景——アリエル・ピンク、初のソロ・アルバムをリリース

3人組ロック・バンド、アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティとして活躍し、2012年発表のアルバム『ビフォー・トゥデイ』がピッチフォークで9.0を獲得するなど、着実にその特異な音楽性を知らしめているアリエル・ピンク。そんな彼がソロ名義での初アルバム『ポム・ポム』をリリースした。聴き手が困惑してしまうほどに振れ幅の広いアレンジに見え隠れするポップ・センスは今作も健在。詩世界も、「恋の物語」や「グリム童話」、はたまた「殺人」と、ヴァラエティーに富んだ彼らしい世界感となっている。ぜひ彼の“おかしくも、愛らしい”日常風景を、本作から覗きこんでほしい。


Ariel Pink / pom pom
【価格】
ALAC / FLAC / WAV / mp3 : 単曲 205円(税込) / まとめ購入 1,543円(税込)

【Track List】

1. Plastic Raincoats In The Pig Parade / 2. White Freckles / 3. Four Shadows / 4. Lipstick / 5. Not Enough Violence / 6. Put Your Number In My Phone / 7. One Summer Night / 8. Nude Beach A Go-Go / 9. Goth Bomb / 10. Dinosaur Carebears / 11. Negativ Ed / 12. Sexual Athletics / 13. Jell-o / 14. Black Ballerina / 15. Picture Me Gone / 16. Exile On Frog Street / 17. Dayzed Inn Daydreams

Ariel Pink - Picture Me Gone
Ariel Pink - Picture Me Gone

楽園のような場所に連れて行ってくれるきっかけ

アニマル・コレクティヴのエイヴィー・テラ、SSWのマック・デマルコと並び、USインディー・シーンの“奇人”と称される男、アリエル・ピンク。ボロボロのTシャツと無造作なヘアー・スタイルから、ドラッグ・クイーンばりの奇抜なファッションまでを着こなす彼は、紡ぎ出すサウンドにおいても、1つに定まることはない。しかし、聴くものをノスタルジックにさせる“なにか”が一貫して含まれている。それは、コードの響きや埃を被ったようなローファイなサウンドからも感じとれるのだが、もっと大きななにかがあるように思う。

本作『Pom Pom』は、精力的に活動を続けてきた自身のバンド、〈ホーンテッド・グラフィティ〉から飛び出して、4ADよりリリースされた初のソロ・アルバム。〈ホーンテッド・グラフィティ〉でのニューウェイヴとチルアウトが交差する感覚のままに、さらにアレンジに広がりをみせる。M02「White Freckles」、M16「Exile On Frog Street」のカットアップ的な手法から、M08「Nude Beach A Go-Go」の底抜けにビーチ・ボーイズ・ライクなアレンジなどが特に印象的だ。この広がりは、今回共作で参加したキム・フォーリーの存在が大きく影響している。キム・フォーリーは、60年代から活動を続けるプロデューサーであり、ガールズ・パンク・バンド、ザ・ランナウェイズの仕掛け人としても有名である。

The Runaways - Cherry Bomb
The Runaways - Cherry Bomb

彼との共作曲である、M01「Plastic Raincoats In The Pig Parade」、M13「Jell-o」は、聴くものをひるませ、困惑させるほどのポップネスに富んでいる。キム・フォーリーによって、アリエル・ピンクの最も“狂気”な部分が引き出され、それでもその“狂気”が嫌みに感じられないのは、2人がサウンド面でしっかりと呼応しあった結果であろう。

まぶしいほどに光り輝く場面、けだるく退屈な場面、はたまたあからさまに汚い場面等が覆い隠されることなく混在している。彼がいままで歩んできた人生、そして今の日常をあからさまに反映させた楽曲に、ノスタルジーを感じずにいられない。そんなサウンドに触れることは、個々人が脳内で漠然と想い描く楽園のような場所に連れて行ってくれるきっかけでもある。そして本作は、『Put Your Number In My Phone』のMVのラストのように(下部)、自分にとって都合の悪い現実から、光差す場所に導いてくれるような強い指針を示す存在でもある。(text by 浜公氣)

Ariel Pink - Put Your Number In My Phone
Ariel Pink - Put Your Number In My Phone

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PROFILE

アリエル・ピンク

LA出身のアリエル・ピンクことアリエル・マーカス・ローゼンバーグ。10代の頃から音楽活動を始め、2010年〈4AD〉に移籍し4人組ロック・バンド、アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティ名義で『ビフォー・トゥデイ』を発表。ピッチフォークで9/10点を獲得し同年の年間ベストではリード・シングル『ラウンド・アンド・ラウンド』が100曲中の1位を獲得。NMEで8/10点を獲得するなど2010年度の国内外年間ベスト・アルバムを総なめにした。2012年にバンドとしてのセカンド・アルバム『マチュア・シームス』をリリース。そして2014年11月、ソロ名義では初のアルバムとなる『ポン・ポン』をリリースする。

>>アリエル・ピンク OFFICIAL HP

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