2014/06/10 14:09

4年半ぶりのアルバムは自主レーベルからの意欲作! 50セントによる“今”しか出せないサウンドを聴け!!

2003年のメジャー・デビューから、全米で数々のスマッシュ・ヒットを生み出しヒップホップのアイコンとして君臨してきた50セント。ラッパーのみならず起業家、投資家、役者、映画監督、と多岐にわたる活動を経て、仲間達と作り上げた自主レーベル<G-Unit>から4年半ぶりとなる新譜を堂々リリース! プロデューサーにドクター・ドレー、デ・ラ・ソウルのプロデュースでも有名なジェイク・ワン等を起用し、全曲のミュージック・ヴィデオを制作するなど、サウンド、ヴィジュアル両面で万全の体制で挑む今作に込められたanimal ambition=動物的本能を是非体感していただきたい。

50 Cent / Animal Ambition : An Untamed Desire To Win
【配信フォーマット / 価格】
alac / flac / wav / mp3 : 1,543円(単曲は各257円)

【Track List】
01. Hold On
02. Don't Worry 'Bout It (feat. Yo Gotti)
03. Animal Ambition
04. Pilot
05. Smoke (feat. Trey Songz)
06. Everytime I Come Around (feat. Kidd Kidd)
07. Irregular Heartbeat (feat. Jadakiss & Kidd Kidd)
08. Hustler
09. Twisted (feat. Mr. Probz)
10. Winners Circle (feat. Guordan Banks)
11. Chase The Paper (Feat. Prodigy, Kidd Kidd & Styles P)

『Animal Ambition : An Untamed Desire To Win』収録楽曲の全ミュージック・ヴィデオはこちらからご視聴いただけます

冷静かつ鋭い目つきでシーンをにらみ続けている

2003年に発表したデビュー作『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』から現在まで累計3,000万枚以上のセールスを記録し、「2000年代最も成功を収めたアーティスト」の称号を得たラッパー、50セント。このたび古巣<Interscope>を離れ満を持して自身のレーベル<G-Unit Records>から本作をリリースしたわけであるが、彼には2011年から発売を延期し続けている『ストリート・キング・インモータル』という作品が存在する。本来であれば『アニマル・アンビション・アン・アンテイムド・デザイア・トゥ・ウィン』発表の前にリリースすべき作品を置いてなぜ今作のリリースにいたったのか。またこの4年半、音楽活動のみならず、様々な表現、ビジネスで成功をおさめた彼にどのような変化が生まれたのか。このレビューと共に追っていきたい。

彼が今作をリリースするまでには周りの環境変化と成功したがゆえの息苦しさが大きく関係しているように思う。前のレーベルでの自作品をめぐる束縛、不自由さを吐露しているし、シーンを牽引するほどのストイックさとカリスマを持った彼がそこから解放されたい思う欲求は当然であり本能であろう。またインタビューでは「俺が尊敬しているのは、生きることに前向きでまともに生きてる人たちさ。なかには街角で人々から小銭を恵んでもらうのをただ待ってる人だっている。自分の力で人生を切り開いてやろうという意志がない。完全なる他力本願だ。」とあらゆる方面で可能性を確かにしたがゆえに手に入れた冷静さと、自らを信じる推進力の賜物であろう。このような変化ゆえの“今”しか出せない作品なのである。

そして今作の内容についてに触れたい。聴いて驚いたことは、アルバムを通して予想外にスムースかつ押し付けがましさをまったく感じないことということである。また50セント作品郡の1番の色であるギャングスタ然とした風格や、狂気が以前より感じない。むしろ、より冷静に全体を見回す“静かな狂気”に変化したように感じる。
まず1曲目「Hold On」の荒廃したアメリカのだだっ広い田舎道を連想させるようなテンションにはだれしも驚かされるであろう。シンプルな音の抜き差しがとても聴きやすい楽曲に仕上がっている。タイトル・チューン「Animal Ambition」のトライバルなリズムへの溶けこみとブリッジの使いかたは、やはり経験の豊富さを感じずにいられない。やはり特筆すべきは8曲目「Hustler」でのレイドバックしたリズムにをクールに乗りこなす彼のフロウであろう。彼のイメージを良い形で裏切り、なおかつこの先長い間聴ける良曲としてアルバムをきゅっと締めている。

50Cent - Hustler
50Cent - Hustler

今しか出せないある意味での“フレッシュ”なアルバムになっていると私は思うし、なにより50セントというもはやベテラン的存在がこのような音を紡いだことは凄まじく価値のあることであると思う。
今までなかなか作品が出なかったことでメディアからはアーティスト生命の危機などを厳しく指摘されたが、本作でよりたくましい動物的本能を得た彼は、野生=ストリートに帰り、冷静かつ鋭い目つきでシーンをにらみ続けている。(text by 浜公氣)

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PROFILE

50セント
50セントことカーティス・ジェームス・ジャクソン三世は米ニューヨーク出身のラッパー、起業家、投資家、役者、映画監督。ティーンエイジャーの頃から様々なトラブルを起こし悪行の限りを尽くすも、ラッパーになることを決意し自主制作盤をリリース。こうした活動がエミネムとドクター・ドレーの目に留まり彼らが主宰する<シェイディ・レコード/アフターマス・エンターテインメント>と契約を果たす。03年に発表したメジャー・デビュー・アルバム『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』は全米1位、全英2位を獲得し初週の売り上げが87.2万枚を突破、新人として歴代1 位の記録となった。その後、05年に2作目『ザ・マッサカー~殺戮の日。』(全米を含むw)6ヶ国で1位獲得)、07年に3作目『カーティス』(全米 2位)、09年に4作目『ビフォア・アイ・セルフ・デストラクト~自我崩壊の日。』(全米5位)と作品を発表し驚異的なセールスを録し続けている。自身のクルー=G-ユニットを結成、現在までに2枚のアルバムを発表している。グラミー受賞者でもある50はビルボード・ミュージック賞13冠、ワールド・ミュージック賞6冠、アメリカン・ミュージック・アワード3冠、BETアワード4冠など優秀な授賞経歴を収めている。ビルボード・マガジンではラップ・アーティスト、そして2000年代最も大きな成功を収めたアーティスト・トップ100で1位を獲得。14年6月、古巣レーベルを離れ自身の<G-Unit>から、通算5作目となる待望作『アニマル・アンビション・アン・アンテイムド・デザイア・トゥ・ウィン』をリリースする。

50セント OFFICIAL HP

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[レヴュー] clipping.

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