2014/05/29 15:57

あの頃のトキメキを歌った、ラテンでトロピカルな懐かしいメロディ!?ーー中山うり、約1年半ぶりのアルバム『鰻』をハイレゾ配信

前作『ホロホロ』より約1年半。シンガー・ソングライター、中山うりが7作目となるアルバムが完成させました。タイトルは『鰻』。「時々ドキドキ」のMVを見ればわかるように、中山の醸し出す情緒あふれる下町感に、サカモトジャイ庵スティールパンの音色が加わることで、ラテンやトロピカルの要素が際立つ、人情味あふれるメロディの作品になっています。OTOTOYでは本作を1週間先行でハイレゾ配信。音の隅々まで楽しむことで、ちょっとした非日常でゆったりとした時間をお過ごしください。


中山うり / 鰻(24bit/48kHz)
【配信価格】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) 単曲 250円 / まとめ価格 2,500円
mp3 単曲 200円 / まとめ価格 2,000円

【Track List】
1. 時々ドキドキ
2. 寝ても覚めても
3. 月曜日の夜に
4. 蒼いアジサイが泣いている
5. ガパオNo.5
6. るるるるる
7. 哀しきサングラス
8. 8月のコラール
9. トロントさん
10. 石神井川であいましょう

※アルバムまとめ購入(ハイレゾ版のみ)のお客さまにはWEBブックレットがついてきます!!

INTERVIEW : 中山うり

〈ロマンティックな歌にさようなら〉。アルバム冒頭、「時々ドキドキ」の中で、彼女はそう宣言している。中山うりの新作『鰻』をひと言で表現するとしたら、「自然体」という言葉がふさわしいのではないか。これまで空想的な世界を描き、ここではないどこかを歌っていた彼女。だが、新作から響いてくるのは、どこか懐かしいメロディ、ラテンやトロピカル風でありながらも日本の下町を感じさせるアレンジなど、より私たちの日常に寄り添った世界だ。そのすべてが、決して飾ることなく、絶妙に肩の力が抜けていて、最高に心地良い。カラっと晴れた休日の昼下がりに、だらりと身を委ねたくなるナンバーと言えばよいだろうか。そんな作風の変化を中心に、中山うり本人に話を訊いた。

インタヴュー&文 : 長島大輔

中山うり「時々ドキドキ」
中山うり「時々ドキドキ」

世の中にウケるウケないとは離れたことを考えられるというか

——早速なんですが、今回アルバム・タイトルが『鰻』ということで、なぜ鰻なんだろうって素朴に思って。

中山うり(以下、中山) : はい(笑)。

——中山さんのアルバムの中で漢字のタイトルは初めてではないですか?

中山 : あ、そうですねー。たしかに今までカタカナばっかりでしたね。でも、特に意味はないです(笑)。

——そうなんですか(笑)。

中山 : ははは(笑)。鰻が好きだからっていうのもあったし、日本を象徴する食べものでもあるなって。

——庶民のごちそうって感じですよね。

中山 : 昔はあんまり好きじゃなかったんですよ。でも、近所に昔ながらの鰻屋さんがあるんですけど、去年、夏バテしてふらっと寄ってみたらすごくおいしくて、それから自分へのご褒美として食べるようになりました。で、あるときアルバムのタイトルを考えてたら、「鰻でいいじゃん!」ってなって(笑)。

——タイミングだったんですね。

中山 : でも漢字にしたらかっこよかったし、すごく日本的だなと思って。

——なるほど。今回のアルバムを作るにあたって、日本的なものを意識したんですか?

中山 : 作っているときは意識してなかったんですけど、完成してみたら童謡的なメロディとか、日本っぽい雰囲気が感じられる作品だなとは思いました。

——前作『ホロホロ』のときのインタヴューで、次作以降はもっと自分の色が濃くなるんじゃないかとおっしゃってましたが。

中山 : そうですねえ。より自由になったと思いますよ。『ホロホロ』は独立して(セルフ・プロデュースになって)すぐのアルバムだったので、独立する以前に作った曲もあったりして。でも今回は最初からほぼ自分で作った曲が多いので、そういう意味ではより濃い部分が出たかなと思いますね。

——濃い部分というと具体的にどういうところでしょう?

中山 : 一番は歌詞ですかね。表現ひとつ取っても、より自分の好きな言い回しができるようになりました。今まではプロデューサーっていう存在がいたので、2人でいいなって思うものを作ってたんですけど、今回は自分がおもしろいなと思えるものを素直に作ろうっていう意識が強くなりましたね。世の中にウケるウケないとは離れたことを考えられるというか。

——なるほど。歌詞の部分で言うと、1曲目「時々ドキドキ」の中にある〈ロマンティックな歌にさようなら〉っていうフレーズが、セルフ・プロデュース以降の歌詞やサウンドを象徴する言葉なのではないかと思いました。空想的なことよりも、もっと身近な題材を扱うようになったのではないかと思うのですが。

中山 : あーたしかにそうですね。前にくらべてツアーに行く回数も増えたし、旅に出ることが多くなったんです。で、実際に行った先々で自分の目で見た光景を歌詞にしたり。それまでは、こんな場所に行きたいっていう空想だけというか、頭の中で旅してるだけで。

——なるほど。

中山 : でも今回のアルバムは、ある意味もっとインドアな作品なんですよ。過去に執着してできたものだと思うんですけど。

——それは中山さん自身の過去ですか?

中山 : なんて言うんだろうなあ。時間のことを歌いたいっていうのがテーマになってて。たとえば、1曲目の「時々ドキドキ」とかもそうなんですけど、あの頃のトキメキを歌うみたいな。ある年齢の頃のトキメキって、歳を取るとなかなか感じられないじゃないですか? そういう頃の気持ちが、音を通してふわっと香ってくるというか。

アルバムのキャラクターがポップになったと思います

——サウンドについても聞かせてください。今回はホーンセクションがアルバムを通して前面に出ていたり、スティールパンが効果的に使われていたりというのが印象的でした。特にスティールパンは、ここぞというタイミングで飛び込んできますね。

中山 : 去年ですかね、スティールパンを弾いてくれたサカモトジャイ庵くんとよくツアー回ってて、それがきっかけになりましたね。1年通してツアー回ってたんで、けっこう意思の疎通もスムースにいって。だからレコーディングもうまくいくなと思ってお願いしました。もともと個人的に好きな楽器で、打ち込みで入れてた時期もあったんですけど、それをどっかで聴いたサカモトくんがやりたいって言ってくれて。

——実際に生のスティールパンを入れてみてどうでした?

中山 : 全部の曲に入っちゃうとトロピカルなイメージになりすぎるんじゃないかとか、よくあるラテン色が強くなって単調になっちゃうんじゃないかとか、そのあたりは考えましたね。サカモトくんも、それをちゃんと理解して弾いてくれたので、すごくよかったです。

——スティールパンの導入だけじゃなく、前作にくらべてサウンドに一気に幅が出ましたよね。童謡みたいな曲があったり、ラテン風だったり、トロピカル風だったり…。

中山 : そうですね。アレンジの部分で聴かせたいっていうのがあって、それが私の売りだとも思うので、金太郎飴みたいにずーっと同じサウンドにならないように気をつけました。

——なるほど。それに加えて、アルバムを通してすごくテンションが高いとうか、いい意味でごちゃごちゃしてるというか。

中山 : 前作と違って、アルバムのキャラクターがポップになったと思います。ポップというか、明るい。

——そうですよね。前作まではもっとしっとりしてたかなと。今回はどちらかというとカラっと乾いてますよね。

中山 : うん、そうかもしれないですね。カラっとしてるのがいいよねっていうのは、一緒に制作をしてるベースの南勇介くんも言ってたんで、それは嬉しいですね。

——今作は目を閉じてじっくり耳を傾けるというよりは、力を抜いてだらりと聴きたいなと思いました。

中山 : 眠くならなかったですか?(笑)

——眠くなるのとはちょっと違って、リラックスして聴けるという感じですかね。そういうサウンドを目指していたり?

中山 : うーん、脱力系であることはたしかですね。

——さっきの〈ロマンティックな歌にさようなら〉っていう歌詞もそうなんですけど、中山さんのキャリアの大きな流れとして、近年になるほどそういう傾向があるなと思ったのですが。

中山 : あーそうでしょうね。歌い方もだいぶ変わってきたと思います。

正直、癒されるとか言われても全然嬉しくなくて(笑)

——さきほど、アレンジで聴かせたいとおっしゃってましたが、アレンジや作曲は中山さんがひとりで行うんですか?

中山 : メロディとコードを私が作って、それを南くんに投げて「どうしようか」と相談するところから始まりますね。

——そこからコンセプトを固めていくと。

中山 : そうですね。最初からこういう曲にしようっていうのが決まっていることは少ないです。

——曲を作ったりアレンジを組み立てたりするときは、何か具体的な景色をイメージしたりしますか?

中山 : そういうのはあんまりないかな。断片的なモチーフとかアイディアがあって、それを繋いでいくって感じですかね。

——なるほど。その曲に対して、歌詞はどのように乗せていくんでしょう?

中山 : 「この曲はこういうことが言いたい」っていう核のようなものが、メロディの中に含まれているというか。導かれる感じでできることが8割くらいですね。あとの2割は自分でもどういうことが言いたいのかなって考えながら、苦労して当てはめていく感じです。

——メロディができる時点で、すでにテーマなり言いたいことなりがそこに折り込まれている。

中山 : そうですね。適当に言葉をはめながら作ったりもするんですけど、それよりはメロディに導かれますね。

——中山さん自身、ここ最近の歌詞の変化を感じているとおっしゃってましたが、ということは、もともとのメロディに含まれるテーマやイメージも変わってきているということですよね。

中山 : 言われてみればそうですね。

——あ、そこは意識的にというわけではなく?

中山 : そうですね、ごく自然に、時の流れとともにって感じですかね。

——なるほど。リリースを重ねるごとに作風を変化させている中山さんですが、もし次のアルバムのヴィジョンなどがあれば教えてください。

中山 : アルバムを作り終わってちょっと時間に余裕ができたので、けっこう曲はできてるんですよ。次は風通しのいいものを作りたいですね。

——風通しのいいものというと?

中山 : なんだろう。正直、癒されるとか言われても全然嬉しくなくて(笑)。それよりは、あまりジャンルにとらわれない、単純にかっこいいものを作りたいっていう気持ちですね。

——そうなんですね。特に前作までは、中山さんの音楽を聴いて癒されるっていう人は多かったのではないかと思いますが。

中山 : そもそも癒したいって気持ちもないんですけどね(笑)。あと今回は大所帯の編成が多かったので、次はわりとシンプルな形でやってみたいなと思います。3人とか4人くらいの編成で、アコースティック感が強いやつを。

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LIVE INFORMATION

中山うり『鰻』リリースツアー
2014年6月6日(金)@福岡 eel
2014年6月7日(土)@岡山 城下公会堂
2014年6月8日(日)@高知 弁天座
2014年6月10日(火)@京都 磔磔
2014年6月11日(水)@名古屋 得三
2014年7月1、2日(火・水)@東京 ザムザ阿佐谷
2014年7月11日(金)@長野 ライブハウスJ
2014年7月12日(土)@浜松エスケリータ68
2014年7月19日(土)@金沢 オヨヨ書林 せせらぎ通り店
2014年7月20日(日)@高岡Cafe POULOWNIA
2014年7月21日(月・祝日)@岐阜 TRAVESSIA
2014年8月3日(日)@那須 SHOZO音楽室

アムリタ食堂新月ライブvol.17『中山うり』
2014年5月29日(木)@アムリタ食堂

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2014年6月14日(土)@里山ホテルときわ路

Tuff Beats 10TH ANNIVERSARY PARTY
2014年8月1日(金)@かねよ食堂

PROFILE

中山うり

1981年1月9日埼玉生まれ。シンガー・ソングライター。アコーディオンやトランペット、ギターなどを演奏。

幼少期に父親の影響でジャズやラテン音楽、歌謡曲を耳にして育つ。また、小学校から高校までブラスバンドや吹奏楽でトランペットを担当。シンガー・ソングライターとしては2000年ステージ・デビュー、後にs-kenプロデュースのもと、2007年〜2011年の間にアルバム6枚(EPを含む)、シングル2枚、ライブDVD1枚をリリース。 2011年、自身作詞・曲の「回転木馬に僕と猫」はNHK「みんなのうた」に選ばれた。 2012年12月に初のセルフ・プロデュース・アルバム『ホロホロ』を全国リリース。 全国津々浦々、ライヴ活動を精力的に展開中。

>>>中山うり Official HP

[インタヴュー] 中山うり

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