2014/02/08 00:00

現代の若者の、社会に対する一種のプロテストソングだ

これは現代の若者の、社会に対する一種のプロテストソングだ。と言ったら少し言い過ぎだろうか。慎重に場の空気を読み、同調圧力に耐え、周囲からは決してはみ出さないように。そのくせ自意識過剰で、やたらと自己愛が強い。そんな彼らのなかから出てきた心の声、ささやかな異議申し立て。

音を最初聴いてみて、はたと思い浮かんだのがじゃがたらだった。単調なビートが続き、しだいに高揚していく音の波。不穏で心をざわつかせられるあの感じ。バブルと呼ばれていたころに活躍していたバンドであるが、あの時代の異様さを敏感に感じとり、一種の社会批判、メッセージ性を放っていた。かたや、平成も四半世紀が過ぎた東京のシーンからだと、こんな形のバンドが出現してくるのが面白い。平坦でまるで独り言を呟いているような歌い方、人を食った歌詞。全体的に脱力感で溢れているが、このスタンスこそいまの時代に必要なのだろう。これはある種の層、熱く自己表現することが苦手、いやダサいと思っているような若者の心はグッとつかむはずだ。ちりばめられたシニカルなメッセージ。へらへら笑いの中の鋭利な視線が目に浮かぶ。

ヘタウマを狙ったような歌い方やナンセンスな歌詞の反面、バックに流れているサウンドは非常にカッコいい。70年代後半から80年代初頭のニューヨークをにおわせ、あのあたりの音が大好きなオトナ達をニヤリとさせる。ベースのうねるリズムが印象的だ。ライヴを1度見てみたい。心の奥からくすぶり出てくるグルーブを生で聴いてみたい。意外とハマって癖になりそうな予感がする。

最後に、アルバムのタイトル曲の「スキルアップ」について。これ、鬱屈した若者の目には、我ら一般サラリーパーソンの姿がこんな風に滑稽に映っているのかなあ、なんて。意味なんてあとからついてくる。存外、希望はあるよ。と、彼らの肩をポンと押したくなった。(Text by 小田原紫野)

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[レヴュー] トリプルファイヤー

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