2013/12/28 00:00

OTOTOYで2013年に発売されたアルバムの中から最も良かったと思う10枚を選出(OTOTOY独占音源以外)。2012年までは、お客さんの投票制であったり、ライターやインターン等多くの関係者を巻き込みグランプリを決定していたのですが、OTOTOY AWARD 2013は、「2013年新譜を聴き漁りました」という6名のみで厳選な審査を行いました。選評者は、高橋健太郎(ライター)、金子厚武(ライター)、渡辺裕也(ライター)、飯田仁一郎(編集長)、河村祐介(編集部)、西澤裕郎(編集部)の6人。「女性が強かった」「インディー・バンド達は脱ロックを始めた」「アジアがおもしろかった」「アニソンのシェアが拡大している」等多くの意見が飛び交うなか、作品の内容、時代性、クオリティ、ジャンルの振り幅等を総合的に話し合い、10位までを決定しました。この10枚のどれか一つでも聴いていない場合は、まずは試聴機のボタンを押してみてください。各ジャンルの最高峰です。必ず新しい音楽体験が待ってますよ。また、「2014年はどうなる? 座談会」も収録。そちらもあわせてご覧ください。

一つだけ、補足… 2013年は、アイドル隆盛の時代でした。バンドもアイドルも同じステージにたつことは珍しくなくなり、アイドルCDのミリオンがうまれていました。そんな時代に台頭し、多くの音楽ファンの心を鷲掴みにしたのが大森靖子! 彼女の大きくなっていく様には、本当にドキドキさせられました。残念ながら、最新作『絶対少女』がOTOTOYでは扱えなかったので下のランキングには入っていませんが、もし扱えたら、確実に上位に食い込んだ作品となったでしょう。

飯田仁一郎(OTOTOY編集長 / Limited Express (has gone?))

OTOTOY AWARD 2013 BEST 10

第1位 tofubeats / lost decade


tofubeats / lost decade

過去多くのフリー・ダウンロード作品や、ビッグ・ネームのリミックス・ワークで世間を賑わせてきたtofubeatsが22歳にして、ついに待望の1stアルバムをリリース。神戸から放たれた2012年最大のヒップホップ・アンセム「水星 feat.オノマトペ大臣」、2013年最初のシングル「夢の中まで feat.ERA」はもちろん、SKY-HI、南波志帆、G.RINA、PUNPEE、仮谷せいら、オノマトペ大臣といった豪華ゲストとの曲も収録!

【販売価格】
mp3 : 単曲 150円 / アルバム 1,500円


2013年という年は、様々なポップスの作り手によって形成された一年だった。インターネットによって過去音源が容易に聴けるようになったことと、若年層への洋楽の訴求力が衰えたことが相まって、ニューミュージックからJ-POPへと至る日本のポップスが再発見され、それを各々のバランスで編集し、今の音として鳴らす作り手がシーンを闊歩。アイドルはそのクリエイティヴィティを最も自由に発揮できる場所だったため、引き続き隆盛を極めたというわけだ。そんな中にあって、かつてはインターネット上で無料音源をばらまいてきたtofubeatsが、『lost decade』と名付けられた卒業制作を残し、メジャーへと歩みを進めたことは、とりわけ象徴的な出来事だったと言えよう。「lost」というキーワードが示す、「最初から何もないけど、どうせ生きるなら楽しく生きたい」という精神性は、今ほとんどの若手の根底にあるものだし、メジャーからの初作『Don’t Stop The Music』における森高千里の起用も、90年代のJ-POPに対する肯定の度合いがグッと強まった2013年にバッチリはまっていた。ちなみに、tofubeatsが2013年後半に愛聴していたのは宇多田ヒカルの『First Love』だったそうだが、年明けには発売15周年を記念したリマスター盤のリリースが決定。ここには間違いなく、2014年のヒントが隠されている。(text by 金子厚武)

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第2位 DJ Rashad / DOUBLE CUP


DJ Rashad / DOUBLE CUP

【配信形態】
WAV まとめ購入 2,000円 / 単曲 250円
MP3 まとめ購入 1,500円 / 単曲 200円

オリジネイター、RPブーのいぶし銀なアルバムも良かったが、やはり2013年のジューク、いやダンスもののビートでいちばん輝いてたのは彼のビートでしょう。トラックスマンに続く世代、シカゴ・ジュークのイノヴェイターによるファースト。ど天然のストリート・カルチャーが最前衛に躍り出る、ダンス・ミュージックのある種の理想の形だ。シカゴ・ゲットー・ハウスのジャッキンなファンクネスはもちろん、ディープ・ハウスの艶やかな滑らかさもときたま顔を見せる。そして床を埋め尽くす重量級のベースの上で空気を刻むハイハットの足並みはジャズ的だ。たった1枚のアルバムのなかにジュークのみならず、ダンス・ミュージックの未来へのヒントがいくつも渦巻いている。2014年はここからどんなビートが生まれ出るのか楽しみで仕方がない。またこれをリリースした〈Hyperdub〉も、ローレル・ヘイローやジェッシー・レンザのリリースなど、その他のアルバムも元気だった。来年10周年を迎えるレーベルは、ダブステップを起点に、もはや〈Warp〉とならぶ、エレクトロニック・ミュージックの筆頭レーベルになったと言って過言ではない存在となりつつある。(text by 河村祐介)

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第3位 BELLRING少女ハート / BedHead


BELLRING少女ハート / BedHead

【配信形態】
HQD(24bit/48kHzのwav)ver. 単曲 150円 / まとめ 2,000円

カラスのような黒い羽をセーラー服につけて、ステージを所狭しと舞い踊る5人の女の子たち(現在は7人)、BELLRING少女ハート。プログレッシブ・ロック調のサイケデリックな楽曲を、まだ成長途中の少女の声でたどたどしく歌うギャップは、なんだか観てはいけないものを観てしまったような禁忌感を強烈に残します。アイドルも終焉だ、なんてことを言う人もいましたが、そんなこともなく沢山のグループや名曲が生まれた2013年。結成10年目にして初のアルバムをリリースしたNegiccoの『Melody Palette』には、小西康陽、西寺郷太、tofubeatsなど豪華製作陣が名を連ね、Especiaの楽曲にはSAWAが参加。BiSの楽曲を日高央、難波章浩、津田紀昭が、でんぱ組.incの楽曲を玉屋2060%が制作するなど、ジャンルを越えたコラボが次々実現しました。また、ファンコットを取り入れたhy4_4yh、NEU!を意識したゆるめるモ!など、楽曲に対する冒険度、ぶっ壊し方の幅がさらに広がった1年でした。よくも悪くもなんでもありの状態のなかで、BELLRING少女ハートのように強い美学を感じさせるグループの存在がどういう役を担うのか。そこに強い期待を感じています。(text by 西澤裕郎)

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4位 長谷川健一 / 423

二階堂和美がジブリの「かぐや姫の物語」の主題歌に選ばれたのは、大阪のBEARS等で共演した身としては、あまりにも感慨深い出来事だった。奇妙礼太郎は、TVで多く目撃するようになったし(売れて良かった!)、前野健太は、なんと『オレらは肉の歩く朝』『ハッピーランチ』と1年に2枚のオリジナル・アルバムをリリースした。ライヴハウスで歌い、カフェで歌い、良質な歌を届け続けた上記3名は、これから更に一般層へと広まり、国民的歌手になって欲しいと願う。そして、彼らに続いてほしいのが、『423』と言うすばらしいアルバムを2013年にリリースした京都の歌うたい、長谷川健一。プロデューサーにジム・オルークを迎えた本作は、石橋英子の繊細なピアノと山本達久の音数の極端に少ないドラムが散りばめられ、根幹である歌とギターが太い幹となって立つ、36歳のSSWの強さと儚さが共存するあまりにも切ない作品であった。 歌ものと言えば、大森靖子が大きくなっていく様には本当にワクワクさせられたし、藤井洋平やHi,how are you?の出現にはドキドキし、キセル平賀さち枝湯川潮音森ゆに等の実力派歌もの勢と共に、お風呂場、天命反転住宅や大倉山記念館で録音出来たことは、2013年のOTOTOYとして非常に大きな歩みとなった。そして、2014年は、もっとシンプルな歌を奏でるJ-POPな人たちが台頭してくると思っています。(text by 飯田仁一郎)

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5位 Blood Orange / Cupid Deluxe

ゆっくりとアメリカのメインストリームを席巻したアンビエントR&Bの流れが、今年はインディー・ポップの世界も一気に侵食していった。この潮流をいち早く読んでいたのがブラッド・オレンジことデヴ・ハインズで、2012年に彼が手がけたソランジュやスカイ・フェレイラといった女性シンガーの楽曲は、まさにこの一年を予見したような素晴らしい内容だったと思う(今年9月にリリースされたムティア・キーシャ・シボーンへの提供曲も最高だった)。そんな変遷もあって、ブラッド・オレンジ名義では2作目となるこのアルバムが傑出した作品になるのは発売前からなんとなく予想できていたが、実際に聴くと思いのほかプリンスからの影響が強く表れていて、それもまた時代の気分を感じさせた。個人的には、まるでマイケル・ジャクソン『オフ・ザ・ウォール』のようだったジャスティン・ティンバーレイクの新作や、各方面でシャーデーを引き合いにして評されたライ『オープン』あたりと並べて愛聴した一枚でもある。加えて言うと、こうした80年代のきらびやかな黒人音楽を再評価する流れは、恐らく日本のインディー音楽にも少しずつ波及していくんじゃないかと予想している。(text by 渡辺裕也)

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6位 Juana Molina / Wed 21

アルバム『セグンド』で、アルゼンチン音響派などというキャッチコピーとともに注目されたのが約10年前。当初はアレハンドロ・フラノフら、辣腕ミュージシャンの助力を得ていたが、近年はサウンドも彼女自身が構築。複数のループ・マシーンを自在に操るライヴ・パフォーマンスでも、観客を驚かせるようになった。そして、制作を全て一人でやりきったのが、この2013年最新作。次のレベルに進んだ、という手触りが、冒頭から溢れ出す。幾重にも重なり合うループ・サウンドは、電子の森の中で蠢く虫や獣を想起させる。エレクトロなパートを構成するのは、誰もが使っている昨今のソフトウェアだろうが、音色感覚が独特で、奇妙に生暖かい。エレキ・ギターやベースも、どこかの民俗楽器のような響きを持っている。呪文のように繰り返される多重録音のヴォーカルは、彼女のトレードマークとも言えるが、サウンドと一体になった細やかな躍動感はこれまで以上。カオティックでいながらも親しみやすいのは、厳選されたループの中に、誰もが子供の頃に持っていたような遊び心を潜ませているからだろうし、そこがアルゼンチンから発信される彼女の音楽が世界中にファンを持つ理由でもあるだろう。(text by 高橋健太郎)

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7位 片想い / 片想インダハウス

(((さらうんど)))森は生きているAlfred Beach Sandal、スカート、白い汽笛… とにかく、ハイレベルで良質な歌ものバンドのリリースが続いた2013年。 ceroのブレイク、ミツメの躍進、それを支えるライヴ・サーキット下北沢インディーファンクラブの定着、ふるえるゆびさき等のceroを聴いた世代の登場もあり、インディー・ポップが好きな人たちにとっては、まったくもって退屈しない一年だっただろう。 中でもやはり、カクバリズムのカクバリワタルとザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり、ceroやoono yukiのサポートを行うMC sirafuの存在はとにかく大きかった。YOUR SONG IS GOODやSAKEROCKの新たなサウンドへの挑戦や、そのカクバリズムからりリースした、MC sirafuが唯一自分で結成した片想いの10年越しのファースト・アルバム『片想インダハウス』は、インディー・ポップ界隈で多くの良盤がリリースされた2013年の中でも突出していた。その力の抜けかた、おもしろいことを選択していくアレンジ力、そしてライヴで必ず全員を笑顔にさせるその実力。この作品からは、大人達の「遊び力」を体感することができる。今年のインディー・ポップの充実と盛り上がりは、知っている中でも過去最高の年だった。2014年は、どうなっていくのか? そのキーパーソンは、やはり上記の2人であると確信している。(text by 飯田仁一郎)

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8位 No Age / An Object

オルタナティブ・バンド(=新しいROCKミュージックを創ることに躍起になっている人々)も、近年は出尽くした感もあり、なかなか苦渋の時代。なんてことは、集客だけの問題で、FACTORY FLOORしかり、DEERHUNTERしかり、Iceageしかり、日本では、にせんねんもんだいやLess Than TV周辺なんかの作品は特に素晴らしかった(Limited Express (has gone?)もリリースさせていただきました!)。御体では、YO LA TENGOSUPERCHUNKはしっかりと自分達のサウンドを更新してきたし、まさかのMY BLOODY VALENTINEやPASTELSの新作もリリースされ、個人的には、SEBADOHの『DEFEND YOURSELF』に、何度も泣かされて… オルタナ / インディーでは、チル・ウェイヴの波がおさまり、現場では、またパンチのあるガレージっぽいバンドが出現し、ブラックメタルの連中がノイズと交配したり、シューゲイズになったデフ・ヘブンやアルセストが話題になったり、アンダーグラウンドでは、脈々と新しい動きが起こっているとのこと。そんな中で、ロサンゼルスのノイズ・ポップ・バンドNo Ageの4枚目『An Object』を激推薦! ネオ・シューゲイズとアート・ロックをガレージ感覚でぶっ飛ばすあか抜けサウンドの完成形は、まさにUSインディ・シーンのガレージからしか産まれないもの。手作りのジャケットで音源をリリースしたり、ギャラリーでショウをおこなったり、この時代に丁寧にツアーをまわったりと、名門【SUB POP】を代表するだけでなく、そのD.I.Y.マインドは、オルタナティブ・バンド達の精神的支柱となった。(text by 飯田仁一郎)

9位 Oneohtrix Point Never / R Plus Seven

〈Warp〉と契約したニューヨークの気鋭、ダニエル・ロパティンによる、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの最新作。ヴェイパー・ウェイヴ~ニューエイジ~ダーク・アンビエント~ドローン~ノイズなどなど、ここ数年のUSを中心としたアンダーグラウンド・シーンを流れる電子音楽の新たな、大きな流れの象徴でもあり、ある種の決定打とも言える作品だ。今年はソフィア・コッポラの最新映画『The Bling Ring』のスコアも手がけた。エレクトロニカ由来のグリッジ感を排した、ダイナミックなコラージュ感覚やシンセのどこかフェイクな響きは、非ダンス系の実験的なエレクトロニック・ミュージックのひとつのトレンドとなった。また、その空虚な感覚はインダストリアル・リヴァイヴァルとも地続きだったりもする。同じくヴェイパー・ウェイヴの旗手のひとり、NYのジェームス・フェラーロもR&Bへとアプローチした新作もリリースされた。ハウス・レーベル〈L.I.E.S〉の動きなどともに、2010年代のニューヨークのアンダーグラウンドの音楽地図を作りつつある。いや、やっぱりニューヨークはおもしろい、と再確認させてくれる存在でもある。(text by 河村祐介)

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10位 Ovall / DAWN

フル・アルバムとしては、3年8ヶ月ぶりの作品となった2ndアルバム。この作品とほぼ同時に届けられた突然の活動休止宣言とは裏腹に、本作を“夜明け”というそのタイトルとともに、どこか希望に満ちたアルバム。彼らのトレード・マークとも言える、極上のグルーヴを訊かせるジャズ/ヒップホップ/ファンク的なリズム運びはそのままに、これまで以上にポップな快作となった。ブラック・ミュージック的なリズムの方向から、現行のポップ、インディ・ロックへとアプローチしたようなそんな作品で、端的に言えば、そこは納得のさかいゆうと異色の青葉市子という2人のヴォーカリストのフィーチャリング人選が象徴的と言えるだろう。おそらく彼らがここ数年でライヴやアーティスト同士のつながりで培ってきた、バンドとして充実した活動の感覚がそこにには反映されているのだろう。活動休止もどこかポジティヴに感じられるのが本作なのだ。そう新たな門出だ。ソロや別プロジェクトでそれぞれの道を歩むことになるメンバー、hingo Suzuki、mabanua、関口シンゴの今後の活動への期待もビンビンと膨らむばかり。(text by 河村祐介)

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受賞者にはOTOTOY特製トロフィーを授与!

見事受賞したアルバムのアーティストには、オトトイ特製のトロフィーを贈呈します。果たして、喜んで受け取ってくれるのでしょうか? ちなみにOTOTOY Award 2012の受賞者は、DE DE MOUSEと田我流でした。

2012年受賞はこちらから → URL
2011年受賞はこちらから → URL

[インタヴュー] BELLRING少女ハート, Blood Orange, DJ Rashad, Juana Molina, No Age, Oneohtrix Point Never, Ovall, tofubeats, 片想い, 長谷川健一

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