2013/12/22 00:00

My Lost City』以後、ceroはシーンのなかでひとつの定点となった。豊富な音楽的要素を含み、バンドの枠に囚われず優れた演奏者とつくりあげる、都会から生まれた良質なポップス。彼らが台頭してきたことで「東京インディー」という名前で可視化され、以後のアーティストに引き合いに出される名前といえば、cero。「東京インディー」を知りたければ彼らを聴け、と言われる位置に着いた反面、「ああ、(ちゃんと聴いてないけど)わかるわかる」と言われる、それこそが定点なのだろう。

そんな彼らが、次に出したのは初のシングル。その内容といえば新たな地平を求めた意欲作だった。どんな音楽か、詳しくはライター・レヴューにて。ただ、前作を聴いた人もちゃんと聴いてない人も、「なんとなく想像つくよ」なんて言ってる場合じゃないのは確かです。

cero / Yellow Magus

【配信価格】
mp3、WAV 単曲 250円 / アルバム購入 1,000円

【Track List】
01. Yellow Magus / 02. 我が名はスカラべ / 03. Ship Scrapper / 04. 8points

次々に新たな地平を目指しては、驚きと興奮で我々を掻っ攫う

前作『My Lost City』から1年以上ぶり、2003年唯一のリリースとは思えないほど、今年も様々なライヴ・イベントに出演しては存在感を一層高めているcero。初めて彼らのライヴを見た4年前、50人も入らない会場で、身体に収まり切らないワクワク感のやり場に困ったことを覚えている。彼らがファースト・アルバムを発売して以来、湧き上がる大歓声がライヴの一部と化すまでの、その躍進は圧巻だった。豊富なアーカイヴを背景に感じさせつつも親しみやすく、身体を芯から揺らすリズムと美しいメロディを武器にして、日本のインディー・バンドを取り巻くムードをも変化させてしまった彼ら。楽曲の装いが毎回のように変わるステージも、聴くたびに新しい要素に気付かせてくれる示唆に富んだ音源も素晴らしいが、何より惚れ惚れしてしまうのは、そういった状況の変化にも日和ったり迎合したりすることなく、バンド自体が常にアップデートしていく点だ。4曲入りの新作『Yellow Magus』は、そんな彼らのチャレンジングな姿勢が表れた1枚である。

cero / Yellow Magus
cero / Yellow Magus

表題曲「Yellow Magus」の冒頭から、今年からサポートに迎えたドラムの光永渉(チムニィ)とベースの厚海義朗による、目の覚めるような強烈なビートに驚かされた。元々自由度の高いバンドではあるが、目指す姿のためにそれまでの役割をあっさりと手放してしまう潔さも、新たな要素を違和感なく持ち込める仲間の存在も稀有だろう。これまでになくダイレクトに身体に響く、芯から踊らされるような強靭なビートを重心に据えて、多彩な音色と何種類ものコーラスとが、少しずつ違う場所から少しずつズレて重なり、豊かな空間を生み出す。砂漠の物語を紡ぐ歌もまた言葉数がかなり多く、ひとつひとつの音色はこれまで通りメロウで美しいが、みんなが口ずさめるような分かりやすいメロディアスさは身を潜めてもいる。しかしその情報量の多さの中では、聴き手それぞれがそれぞれに、胸を突くポイントを何度も発見することができるだろう。

みんなで仲良く同じ振り付けをするような予定調和の踊りなど、彼らの前ではあっさりと打ち砕かれる。次々に新たな地平を目指しては、驚きと興奮で我々を掻っ攫う、これまでもceroはそういうバンドだったし、これからもきっとそうだろう。その刺激的な変化と歓びに溢れた演奏を、リアルタイムで体験できることを、心から幸福に思う。(text by 柳川春香)

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ceroや片想い、森は生きている、oono yuukiらと肩を並べる逸材、Alfred Beach Sandalが、2年ぶりのセカンド・アルバム『DEAD MONTANO』をリリース! 今作はバンド・メンバーとして、ウッドベースに岩見継吾(ex. ミドリ、Zycos、Oncenth Trio etc)、ドラムに光永渉(チムニィ、ランタンパレード、あだち麗三郎クワルテッット etc)、サックスに遠藤里美(片想い)を迎え、これまでで最も多彩なリズムとグルーヴィーな演奏に。

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LIVE INFORMATION

インストア・イベント
2013年12月26日@タワーレコード梅田NU茶屋店
2013年12月27日@タワーレコード名古屋パルコ店

COUNTDOWN JAPAN 13/14
2013年12月31日@幕張メッセ国際展示場1〜8ホール、イベントホール

『Yellow Magus』発売記念ワンマン・ツアー
2014年1月18日(土)@梅田CLUB QUATTRO
2014年1月19日(日)@名古屋CLUB QUATTRO
2014年1月25日@東京Shibuya AX

Booked!
2013年3月8日(土)@新木場 STUDIO COAST

VIVA LA ROCK
2013年5月3日(土)〜5日(月・祝)@さいたまスーパーアリーナ

PROFILE

cero

Contemporary Exotica Rock Orchestra 略してcero(セロ)。

2004年に高城、荒内、柳で結成。2006年ごろからジオラマシーンとして活動する橋本が加入。様々な感情、情景を広く『エキゾチカ』と捉え、ポップ・ミュージックへと昇華させる。2007年、鈴木慶一氏(moonriders)の耳にとまりプロデュースしてもらう。その後、坂本龍一氏のレーベルcommmonsより発売された『細野晴臣 strange song book -tribute to haromi hosono 2-』収録の鈴木慶一『東京シャイネスボーイ』に参加。同レーベル・コンピ『にほんのうた 第二集』に唱歌「青い眼の人形」のカヴァーを担当するなど、精力的に活動している。

2011年、初の流通音源『WORLD RECORD』をカクバリズムより発売。本秀康氏による印象的なジャケットのイラストも相まって好評を得る。発売から少しして、柳が絵描きとしての活動に専念するため脱退。現在、MC.sirafuとあだち麗三郎を迎えた編成でライヴを行っている。2012年10月、2ndアルバム『My Lost City』を発表。

>>cero Official HP

[インタヴュー] cero

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