2013/09/05 00:00

カナダ・トロント在住の中国系カナダ人、ショウハン・リームによるソロ・ユニット、I Am Robot And Proud。エレクトロニックとオーガニックを融合させた、多幸感溢れるサウンドで人気を博す彼の、5年ぶりのニュー・アルバム『touch/tone』。敬愛する故レイハラカミへの、彼なりのトリビュート作であるタイトル・トラックを含めた全12曲(うち2曲は日本版ボーナス・トラック)が、日本先行でリリース!! 長い空白期間を経て届けられた彼の新たな作品に、ぜひそっと耳を傾けてほしい。

I Am Robot And Proud『touch/tone』
【配信価格】
mp3 : 単曲 150円 / アルバム購入 1,500円
WAV : 単曲 200円 / アルバム購入 1,500円

【Track List】
01. Kresna / 02. Touch/Tone / 03. Mono The Planet / 04. Circles / 05. Nothing Normal Sounds Good / 06. Unfinished Buildings / 07. Ketok Magic / 08. Summer Colour / 09. Thunder Road / 10. Slow Reaction / 11. Another Nature / 12. XT/AT

長い空白期間のなかで遂げた、リームの意識刷新

ポップなエレクトロニカによって世界観を確立し、ここ日本でも2006年の初来日、2008年発表の5作目アルバム『Uphill City』によるアルバム・デビューにて鮮烈な印象を残したI Am Robot And Proud。トクマルシューゴオオルタイチなどの楽曲リミキサーとして参加したり、東京や大阪を中心に大々的なツアーを行ったりと国内でもアクティヴな動きを見せた彼だが、2011年の来日以降、音沙汰のない状態が続いていた。それからおおよそ2年の歳月を経た2013年晩夏、新作『touch / tone』と東京・関西のライヴ・ツアーを引っさげ、ついにショウハン・リームが帰ってくる。完全な新作としては5年ぶり(途中2010年にリミックス盤を1枚発表)のアルバムでは、果たしてどのような変化を遂げたのか。

前作『uphill city』ではベルやトイピアノ風のシンセ、さらにはセガのクラシカルなゲーム機、メガドライブや16BIT世代PCの出力音楽を彷彿とさせる、まろみ豊かなチップ・チューンが特徴的だった。この色合いは『uphill~』以前のアルバムでも見られた点で、リームの十八番といっても過言ではないほど。前作ではそのアプローチがさらに幅の広がりをみせ、円熟期を迎えた貫禄すら感じられるほどであった。

新作である『touch / tone』では、16BITの柔らかな音触りはそのままに、テンプル・アジアンな音の引用(木琴・鉄琴テイストの打ち込み)やフルート風シンセが大幅に追加。チップ・チューンを土台にしつつも楽器の生音を前面に押し出し、自然音の要素が強調されるようになった。そのため以前までの打ち込みをメインに据えたエレクトロ・ミュージックから大きな変化を見せ、民族音楽や管・打楽器を中心とした組み立てへの移行が感じられる。またうねるメカニカル・ベース・ラインやリード・ギター調のメロディ・ラインが大々的に登場する楽曲も増え、ソロ・ワークスながらバンド・スタイルに寄った変動も見逃せない。全体としてミニマルな曲展開が増えたことで疾走感が生まれ、この点もよりバンド・テイストを強めた要素といえるだろう。都会的なスマートさを想起させながらも、電子音オンリーで詰め込みすぎない・作り込みすぎない手作り感によって優しさを生みだし、転向と踏襲のバランスのとれた意欲作となった。これまでのやわらかなタッチはもちろんのこと、各パートの洗練された結合を味わう楽しみ方も含まれ、その分ではリスナー側の選択肢も広がったと解釈出来るだろう。長い空白期間のなかで遂げた、リームの意識刷新を見届けるチャンスを、お忘れなく。(text by高橋拓也)

過去タイトル

I Am Robot And Proud / uphill city

独自の温かみのあるポップなエレクトロニクス・サウンドが世界中から高く評価され、日本でも大きな評判を呼び、輸入盤店および配信にて爆発的な売上を記録する。数々のサウンド・トラックやCM音楽を制作するなかで発表された4thアルバムは初の日本盤リリースであり、現在もロング・セールスを続けている。

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LIVE INFORMATION

I am Robot and Proud「touch/tone」Japan Tour 2013
2013年9月21日(土)@名古屋 K.D JAPON
w/ オオルタイチ
2013年9月23日(月・祝)@大阪 CONPASS
w/ オオルタイチ
2013年9月24日(火)@京都 Metro
w/ tickles、neue nahel
2013年9月26日(木)@渋谷 O-nest
w/ d.v.d、オオルタイチ

PROFILE

I Am Robot And Proud

カナダ・トロント生まれであり現在も在住している、中国系カナダ人のショウハン・リームのソロ・ユニット。

トロント王立音楽院で10年間クラシック・ピアノを学んだ後、コンピューター・サイエンス科の学位を取得。2000年から手塚治虫『鉄腕アトム』にちなんだIARAP名義にて音楽活動を開始。2006年に発表したペンギンジャケで知られる3rdアルバム『the electricity in your house wants to sing』は日本でも大反響を呼び、Tower RecordsのNew Ageチャート、iTunesのElectronic Musicチャートで一位を獲得。続いて初の日本盤リリースとなった2008年の4thアルバム『uphill city』も大ヒット、現在までロングセールスを続けている。

>>I Am Robot And Proud Official HP

この記事の筆者
高橋 拓也 (もり)

泡沫大学生。ナゴム好きをこじらせ、現在80's NEW WAVE(おもにドイツ周辺)を掘削視聴中。

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[レヴュー] I Am Robot And Proud

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