2013/06/15 00:00

高く美しい声と繊細で芯のあるサウンドで唯一無比の世界を作りあげる、アイスランドを代表するバンド、Sigur Rós。2013年5月には日本武道館公演をソールドアウトさせ、圧巻のステージを繰り広げた。このたび、スタジオ・アルバムとしては7枚目となる新作『Kverikur(クウェイカー)』を日本先行リリース。前作までの美しい世界とはひと味違った、ダークでヘヴィーなサウンドが印象的な作品となっている。キーボード奏者のキャータンが脱退し、3人体勢となったSigur Rósの新たな一歩に耳を傾けてほしい。


Sigur Rós / Kveikur
【価格】
mp3、wavともに 単曲 250円 / まとめ購入 1,500円

【Track List】
1. Brennisteinn / 2. Hrafntinna / 3. Ísjaki / 4. Yfirborð / 5. Stormur / 6. Kveikur / 7. Raufstraumer / 8. Bláþráður / 9. Var / 10. Hryggjarsúla (Bonus Track) / 11. Ofbirta (Bonus Track)

これは本当にシガー・ロスなのか?

今作を聴いて筆者が最初に感じたことは後悔である。

先月5月14日に行われた武道館公演に行かなかったことを、とてつもなく後悔している。それほどまでに今作はすばらしい内容になっている。

前作『ヴァルタリ~遠い鼓動』が、遠い世界の果てで鳴り響く天使の賛美歌だとしたら、今作『クウェイカー』は地獄の底から鳴り響く堕天使の賛美歌だ。再生ボタンを押すと、地響きのようなノイズからはじまり、巨人の足音のようなヘヴィなトラックが鳴り響いた。「これは本当にシガー・ロスなのか?」と疑ってしまうほどヘヴィでダークなトラックはバンド史上最強だろう。そしてそこに加わるヨンシーの美しく壮大な賛美歌のような歌声。シガー・ロスの新作『クウェイカー』の1曲目「ブレンニステイン」はまさに地獄の底から這い上がってくる堕天使の叫びのような曲だ。

シガー・ロスにとって7枚目となる今作は初のセルフ・プロデュースとなる。インタビューで「枠に収まらずに、自分の居心地のいいゾーンから抜け出すという気持ちで制作した」と語っていたが、まさにその通り。キーボード奏者のキャータンが脱退し、3人体勢となったが、いままでよりアグレッシヴなバンド・サウンドが目立ち、ノイズや機械音といった、ナイン・インチ・ネイルズのようなインダストリアルの要素も取り入れ、メンバーが1人欠けたことを感じさせない凄まじい音圧で、重厚感に溢れる作品を作り上げた。いままでの神秘的なイメージから一変、今作は言わば原始的で、本能に従い、自分の殻を打ち破るようである。本能的だったからこそ、11ヶ月という短い期間で、これほどまでに濃密な作品を作り上げることができたのかもしれない。

全体的にダークな雰囲気に覆われているが、だからこそ、ときおり見える彼らの美しく壮大な世界観や、ヨンシーの歌声が、より一層際立って感じられる。時に激しく、時に優しく、シガー・ロスの音の波は心を浄化させるかのように、心地よく染み渡っていく。それは聴くというより体感するというのが正しいのではないだろうか。 常に前衛的で革新的な活動を続ける、シガー・ロスの新たな新境地をぜひ体感してほしい。(text by 吉野敬一郎)

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PROFILE

Sigur Rós

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[レヴュー] Sigur Rós

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