2013/06/13 00:00

2013年で、結成15周年を迎えるSpangle call Lilli line。2006年にリリースされた第一期のベスト盤『SINCE』以降の音源を中心にセレクトされた第二期ベスト盤『SINCE2』がリリースされた。


Spangle call Lilli line / SINCE2

【価格】
mp3、wav 共に単曲 200円 / まとめ購入 2,100円

クラシカルなピアノをメインに打ち出した「ISOLATION」、プロデューサー・吉田仁(SALON MUSIC)とのタッグでメロウでリリカルなサウンドに磨きをかけた「PURPLE」、益子樹(ROVO)との共同プロデュースでドリーミーなバンド・サウンドに回帰した「VIEW」、美濃隆章(toe)を共同プロデュースに迎えたドラマチックな「forest at the head of a river」。永井聖一(相対性理論)との共同作業によって生まれたシングル曲「dreamer」(アルバム初収録)や、TOYOTA×STUDIO4℃制作のアニメーション『PES』への提供曲「daydreamer」(初音源化)、さらには所属レーベル主催のイベントでのみ配布されたオレンジ・ジュースの名曲「felicity」のカバーも収録されるなど、充実した内容になっています。また、初期の代表曲である「nano」を、ゲスト・ボーカルを迎えてのセルフ・リアレンジ・バージョン、豪華リミキサーによるリミックスなど全7バージョンを収録。

彼らの音楽はいくら年数が経っても色褪せない

それまで気持ちよく聴いていた音楽が、ふとしたとき、その言葉に引っかかる。気になって歌詞カードを開くと、思いがけない言葉だったりして、余計に気になる。自分でも口に出したりして、覚えていって、そらでも歌えるようになって。そうしていつのまにか、すごく好きになってしまっている。

Spangle call Lilli lineの音楽は、どの曲でもなぜかいつも一音目ではっとする。ポスト・ロックといえどポップネスを失わない、やわらかくみずみずしいサウンドが、すっと入りこんでくる。しかしそこに大坪加奈の浮遊感ただよう歌声が組合わさると、一気に叙情性を増し、今度は深く潜りこんでいくような気がしてくる。そこで言葉に引っかかると、もう気にならずにはいられなくなってしまうのだ。

<由来 霍乱の照り足す 目に写る 言わず 非 よぎった中庸の連みたい トゲに巻く 組み替えし>(「nano」)

この「nano」が発売されてから10年。デビューから今年で15周年を迎えるSpangle call Lilli line。いまでも彼らの音楽が色褪せないのは、この抽象的な言葉の並びにあるのではないだろうか。

誰もが簡単に、ぐっときてしまうワードというのがある。わかりやすいものは、それ以上も以下もなく正しくて、そこに自分のなにかと重ねることはできても、新しくなにかイメージを浮かび上がらせることがないように思う。SCLLの音楽には、ありきたりなわかりやすい言葉はないかもしれない。その代わりに、一見関係ないような言葉が唐突に結びついて、自分の内側からイメージが生まれたりする。その「自分のなかからなにかが生まれる」という新しさは、Spangle call Lilli lineのサウンドのみずみずしさとあわさっていつだって鮮やかで、だからこそ彼らの音楽はいくら年数が経っても色褪せないのだろうと思う。

今回、2枚目のベスト・アルバムとなる『SINCE2』。1枚目のベスト・アルバム以降の曲のなかから各アルバムのリード曲となっているものや、永井聖一(相対性理論)との共同作業によって生まれたシングル曲「dreamer」など、初収録や、初音源化される楽曲も入っている。15年を迎える彼らをすべて追うのがむずかしいひとにとっても、いままで追いかけてた人にとってもうれしい内容だ。

とはいえベスト盤ということで、すでに彼らを好きな人は買うかどうか悩ましいところだと思うのだが、ぜひ [Disc 2]は聴いてほしいと思う。竹中仁見(salon music)、宮内優里、内村友美(la la larks)、aoki laska、TK( from 凛として時雨)と豪華メンバーを、ゲスト・ヴォーカルやリミキサーにむかえ「nano」の全7ヴァージョンを収録しているのだが、これがすごくいい。それぞれ遠慮なく自分のセンスを注ぎ込んでいて、誰と確かめずとも聴いているだけで思わず笑みが浮かぶ。たった1曲でこれほどの広がりを見せること、ありふれた言い方だが音楽ってすごいな、と思わせてくれるはずだ。(text by 梶山春菜子)

( OTOTOY では[Disc 1]、[Disc 2]と分かれていないのでご注意ください。[Disc 1]はM1~M12、[Disc 2]はM13~M19となります。)

Spangle call Lilli lineの過去作もチェック

Spangle call Lilli line / New Season

2010年6月4日リキッドルームでのライヴを最後に一切の活動を停止していたSpangle call Lilli lineの6曲入りのEP。新曲3曲、リミックス3曲の構成で、新曲は吉田仁(サロンミュージック)によるプロデュース、気になるリミキサー陣は永井聖一(相対性理論)、やけのはら、石橋英子という芯をくった布陣となりました。

Spangle call Lilli line / forest at the head of a river

スパングルの9枚目のアルバムはtoeの美濃隆章との共同プロデュースの長編物語のようなアルバム。

Spangle call Lilli line / VIEW

代表作を手掛けた益子樹との久々のコラボレーション。スパングル8枚目のアルバム『VIEW』は、シングル「dreamer」のポップモードを受け継いだバラエティ豊かなフル・アルバム。2ndアルバム『Nanae』以来、8年ぶりとなる益子樹(ROVO、etc)との共同プロデュースで、抜けのいいドリーミーなバンド・サウンドに回帰。全曲シングル・カット可能なキラー・チューン満載の1枚。

PROFILE

Spangle call Lilli line

1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライヴ・アルバムと、ベスト・アルバム2枚をリリース。数々のコンピレーション・アルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイド・プロジェクト等も精力的に活動。

>>official HP

[レヴュー] Spangle call Lilli line

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