新メンバーが加入した住所不定無職の新作がリリース
2013年、250人に及ぶ応募者のなかから選ばれた℃-want you!(シ・ウォンチュ)を第2期メンバーとして迎え入れ、新しく生まれ変わった住所不定無職。℃-want you!は、小柄でかわいらしいルックスとは裏腹に、加入から半年で大きな成長を見せ、メンバーからの信頼は厚い。その才能は、楽器の演奏だけにとどまらず、アレンジへの参加や宅録に意欲を見せるなど、すでに可能性は無限大。
これまでマイペースな活動を続けてきた住所不定無職に新たな風を吹き込んだ彼女は、まさに大型新人と呼ぶに相応しい。そんな彼女自身は何を思い、他のメンバーはどう接しているのか。オーディションの様子や、1年半ぶりの新作となる4A面シングル『One Happy, Two Sad & Three Pretty Things』の話を交えつつ、メンバー全員インタビューをお送りする。℃-want you!とはいったい、なにものなのか。彼女の加入により、住所不定無職の未来はますます面白くなりそうだ。
インタビュー & 文 : 前田将博
新メンバーを迎えての新作は、より弾けるポップチューン満点!!
住所不定無職 / One Happy, Two Sad & Three Pretty Things
【価格】
mp3 単曲 150円 / まとめ購入 750円
wav 単曲 200円 / まとめ購入 1,200円
KILLERTUNE(超絶良い曲)を、EXPLOSION(爆発)させるGALACTICな(宇宙の)POP QUARTET(愉快な4人娘)a.k.a 住所不定無職! 前作「TOKYO POP'N'POLL STANDARD NO.1 FROM TOKYO!!!」から1年半ぶりに最新シングル発表。
INTERVIEW : 住所不定無職
——℃-want you! (以下、ウォンチュ)さんが2期メンバーとして加入されましたが、そもそもなぜ新メンバーを入れようと思ったんですか?
ユリナ : 前作の『トーキョー・ポップンポール・ スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!! 』が、割とライヴで再現するのが不可能な感じの曲が多くなってしまったんです。ゾンビーズ子ちゃんはライヴを考えないで曲を作っているので、それはそれでいいんですけど、あまりにもライヴで鳴っていない音が増えすぎたなと思って。それで、なにかプラス・アルファになるような人を入れたいなと思いました。
——オーディションはどのように進めていったのでしょうか。
ユリナ : エントリーだけの人も含めると250人くらいの応募がありました。そこからエントリー・シートを…。
ザ・ゾンビーズ子(以下、ゾン) : 就活みたい(笑)。
ユリナ : 住所不定無職なのに。うふふふ(笑)。はじめは特に楽器を指定していなかったので、弾ける楽器を書いてもらったんです。進めていくなかで鍵盤がいいかなって思ったので、鍵盤が弾ける人のなかから選んでいきました。実際にお会いする段階になったときには、その場で楽器を弾いてもらったんです。ピアノが入っている「1.2.3! 」っていう曲をコピーしてもらって、アレンジできる人はアレンジもしてきてもらいました。
——メンバーは全員で選考に参加されたんですか?
ユリナ : メンバー3人と、レーベルのDECKRECのネモト・ド・ショボーレ(以下、ネモト)さんが参加しました。
ヨーコ : (ここでヨーコが登場する)すみません、遅れましたー。
ユリナ : そういえば、そのオーディションの日、ヨーコちゃんが遅刻したんだけど、めっちゃお酒臭かった(笑)。もう応募者がきているのに、「お花見してて遅れました〜」とか言って入ってきて。
ゾン : ものすごかったよね(笑)。
ユリナ : 練習してきてくれたオーディション参加者の人に顔が立たないと思いました。
ヨーコ : そんなひどくないですよ!
——逆に、空気が和らいだんじゃないですか(笑)?
ゾン : ピリつきましたね。
一同 : あはははは。
ユリナ : ゾンビーズ子が、まじでイラっとしてました。
——(笑)。応募してきた人のなかで、面白い人はいましたか?
ユリナ : 実際にお会いしたのは10人弱くらいなんですけど、「なんで知ってくれたんですか?」って聞いたら、「なんとなく」って答えられたりとか、そういうちょっと不思議な人はいましたね。反対に、地方からわざわざ来てくださった人もいて、そういう人は練習もしっかりしてきてくれていました。年齢なんかも含めていろんな人がいましたね。性別は、もちろん女性に限定していたんですけど。
——女装してくる人はいませんでしたか?
ユリナ : エントリーの段階では何人かいましたね。うふふふ(笑)。
ヨーコ : 結構きれいな人もいたよね。
ユリナ : いたいた。写真がすごく凝っている人とか。
——そんななかで、ウォンチュさんに決めようと思った理由はなんでしょうか。
ユリナ : 住所がすごい好きで、ライヴにもずっと来てくれてたっていうのが強かったです。あと、私たちは全員ギターも弾くので、そこはマストでした。彼女はギターがすごくうまかったんです。ピアノは昔ちょっと習ってたくらいみたいですけど。他には見た目や雰囲気とか、いまの3人とのバランスを考えて決めましたね。
——バランスというのは、キャラ的な部分でですか?
ユリナ : いきなりギャルとかが入ってきても…ねえ(笑)。あと、声もすごくかわいかったです。
——ウォンチュさんとしては、なんで住所不定無職に入りたいと思ったんですか?
ウォンチュ : 好きだからというのが一番ですね。ずっとライヴも観ていたので。
ユリナ : コピーもしていたんだよね。
——では、もともとバンドもやっていた。
ウォンチュ : 住所のコピー・バンドを少しやったくらいですけどね。ライヴも学園祭くらいで。
——そこでギターを弾いていたと。
ウォンチュ : はい、ちょっとだけ。
ユリナ : でも、私やヨーコが話にならないくらいうまいです(笑)。
——ギター歴は同じくらいなんじゃないですか?
ゾン : いや、この2人の方が長いでしょ。
ユリナ : でも、楽器に触っている時間はウォンチュの方が私たちより全然長いと思います。
音楽的貢献度が、ゾンビーズ子に次いで第2位になってます(ユリナ)
——ウォンチュさんは、住所のどこに魅力を感じましたか?
ウォンチュ : 曲が良いんです。あとは、見た目もかわいくて、個性的ですし。1人1人キャラがバラバラっていうのも、バンドとして大事じゃないですか。そういう意味でも好きです。
ユリナ : 君もじゅうぶん個性的だよ。うふふふ(笑)。
——住所の他にはどんな音楽を聴いていましたか?
ウォンチュ : 銀杏BOYZは中学校の頃から結構聴いていました。
——住所の曲に出てくるような、ビートルズやローリング・ストーンズなどはいかがですか?
ウォンチュ : 聴きます。
ユリナ : すでに(ゾンビーズ子の)英才教育がはじまっていますからね。
ウォンチュ : ゾンビーズ子さんの指導を仰いでいます(笑)。
——ユリナさんとヨーコさんも受講していたんですよね(笑)。
ユリナ : 一応ひと通りは受講したんですけどね。
ネモト : 指導しがいがないからね(笑)。
ゾン : 諦めました。
ネモト : でも、今年に入って『Pet Sounds』(ザ・ビーチ・ボーイズが1966年にリリースしたアルバム)の良さがわかったって言ってたよね。
ゾン : 何年越しだよ(笑)。
ユリナ : 3~4年前に“絶対マストで聴くシリーズ”を、教材としてもらったんですけど、そのときは「なにこれ?」って思ったんです。でも、このあいだふと聴いたら、めちゃくちゃいいなと思いました。
——ウォンチュさんが入って、バンドの雰囲気はどうですか?
ユリナ : もう最高ですよ。ヨーコちゃんは猫かわいがりしているし。私は比較的メンバーとして接してるんですけど、ヨーコちゃんは妹みたいにかわいがっています。
ヨーコ : 小さくて愛くるしいんですよ。
ユリナ : レコーディングで歌入れとかをしていると、ミキシング・ルームのモニターを見ながら「ウォンチュ超かわいいー!!」とか言ってましからね。
ヨーコ : ハムスターみたいにちょこちょこしていて、かわいいんですよ。愛玩系ですね。
ユリナ : 2人の身長は20センチ差ですからね。うふふふ(笑)。
——とてもかわいがっているんですね(笑)。
ヨーコ : ね、ウォンチュちゃん(ハート)!
ウォンチュ : はい(笑)。
一同 : あははははは。
——ウォンチュさんはこんなヨーコさんをどう思いますか?
ウォンチュ : すごくうれしいです。お姉ちゃんがほしかったので(笑)。私は長女だから。
——ゾンビーズ子さんはどんな印象ですか?
ウォンチュ : 次から次へとアイデアが出てくるので、すごいと思いますね。フレーズとかも「これがいいんじゃないですか?」ってアドバイスしてくれます。
——逆に、ゾンビーズ子さんから見て、ウォンチュさんはどんな人ですか?
ゾン : ちゃんと練習をやってくるので、すごく助かります。
ユリナ : 当たり前のこと言っちゃてる。これじゃあまるで練習してこない人がいるみたいだね。うふふふ(笑)。
ゾン : ちゃんとアレンジとかも考えてきてくれますからね。はじめて一緒に音楽をちゃんとやれる人がいる感じがするよね。
ユリナ : そういうのがうれしいのは解るんだけど、ゾンビーズ子は練習のときとかに「ウォンチュさんは最近おすすめのコードある?」って聞いたりしています。そんな無茶ぶりに対して、ウォンチュは苦笑いをしていて、おもしろいです。
——加入してから、すぐにレコーディングに参加したんですよね。
ユリナ : そのときにレコーディングしていたものが今回の新譜なんですけど、こちらはウォンチュは見学がメインでしたね。倉内太くんのバンドのキーボードの鮎子さんが、今作のゲストで弾いてくださっていて。鮎子さんにはウォンチュにピアノを教えてもらっているんですけど、彼女が鍵盤入れをしているときに、私たちの指令でウォンチュにうちわでずっと鮎子さんを扇がせたりとかしていました。小間使いのように。うふふふ(笑)。ここは、がっつり師弟関係ですので。ふふふ。
——そんな下積み時代があったんですね(笑)。
ユリナ : いま行ってるレコーディングでは、ウォンチュがメインで鍵盤を弾いていますけどね。本当に、半年くらいの練習期間なのに、レコーディングで弾けるくらいになっていますからね。今回出す4A面シングルのレコーディングでは、ギター・ソロだけの参加ですが(笑)
——いきなりギター・ソロを!?
ユリナ : 結構無茶ぶりでしたね。それがどこに使われているかは探してほしいです。
ゾン : ギター・ソロがある曲、たぶん1曲しかないよね(笑)。
——当時はレコーディング自体がはじめての経験ですよね。緊張しました?
ウォンチュ : 緊張っていうよりは、「これがレコーディングか、かっこいい!」って感じでした(笑)。
ネモト : 結構堂々としていたよね。
ユリナ : 割とひょうひょうとしているというか、どっしりと構えている感じなので、ほんと大型新人ですね。
ネモト : レコーディングとかでも、ゾンちゃんが思いつかないフレーズを弾いたりしますからね。
ユリナ : 音楽的貢献度が、ゾンビーズ子に次いで一気に第2位になってます。抜かされちゃいました。
——そのうち曲を作ったりもするかもしれませんね。
ネモト : ありえるよね。
ユリナ : いいですね。どんどん作ってほしいです。
——ゾンビーズ子さんとしては、鍛えがいがありますよね。
ゾン : そうですね。
ユリナ : 本当に伸びしろは大きいですから、そういう意味では楽しみですね。
ディスコ・チューンをやりたかったんです(ザ・ゾンビーズ子)
——今回の4A面シングル『One Happy, Two Sad & Three Pretty Things』は、前作から1年半ぶりと、少し間隔が空いてリリースされますが、その間にも曲は作っていたんですか?
ゾン : 曲はずっと作り続けていましたね。
ユリナ : ちょうどオーディションとかをしてた過渡期で落ち着かなかったので、できた曲のなかでいいと思った曲を順にレコーディングして、今回それを集めてリリースした感じです。
ゾン : 1曲目の「宇宙のYeah!!!」は堂島(孝平)さんがプロデュースしてくれるということになっていたので、一緒に作ればいい感じになりそうな曲をデモの中から選びました。
——こちらはすごく踊れる曲ですよね。いままでの住所にありそうでなかった曲だと思いました。
ゾン : ディスコ・チューンをやりたかったんですよ。80'sっぽさもあるけど最先端っぽくもあるような、ファンキーな4つ打ちの曲をやりたかった。
ネモト : ファンクとかソウルとかの方に、この頃は頭がいってたもんね。
——個人的には、2000年代前半のモーニング娘。の全盛期だった頃の曲に通じるものがあると思いました。
ユリナ : つんく♂さんの得意分野ですからね。みんな宇宙は大好きだし。
ゾン : クラブで流してほしいなと思ったんです。お客さんが踊っているフロアで流れているのを想像していました。
——堂島さんとの制作はいかがでしたか?
ゾン : 一緒にアレンジを作ってくれたり、展開とかも考えていただいて、細かいフレーズとかドラムの入れ方とかはすごく勉強になりましたね。1つのメロディに対して、コード進行が違うと聴こえ方がどう変わるかとかも、いままではあまり意識していなかったので。
——「マージービート聴かないで!」なんかは、これぞ住所って感じのキラキラしたロック・チューンですよね。
ゾン : いい曲ですよね。バランス的に、ロックンロールっぽい曲があってもいいかなと思って。
——こちらはキーボードが映える曲だと思うのですが、ライヴで弾いてみてどうですか?
ウォンチュ : すごく楽しいです。ライヴはこれからもっとやりたいですね。
ユリナ : いまはまたレコーディング期間中なので、どうしても間隔が空いちゃうんですけど、月に1回くらいはやりたいですね。
——いまはなんのレコーディングをされているんですか?
ユリナ : 謎の録音物です(笑)。これはめっちゃやばいことになっているので、まずはこれを仕上げます。
ゾン : すごくいいものができそうです。
ユリナ : もうちょっと余裕ができたら自分たちの企画なんかもやりたいですね。
ネモト : 今年の秋くらいにはできたらいいね。
——最後にウォンチュさんが、今後バンドでやってみたいことはありますか?
ウォンチュ : まずは鍵盤の腕を上達させたいですね。
——住所はライヴ中にパート・チェンジしていろんな楽器を弾いたりしていますが、挑戦してみたい楽器はありますか?
ウォンチュ : 楽器ではないんですけど、レコーディングを見ていて、音が波形になって機械に表示されるのがすごくおもしろかったです。音がどのように重なっていって曲ができるのかわかったので、とても楽しかったです。レコーディングにも興味がわきましたね。
ネモト : 宅録やる!?
ウォンチュ : そうですね。いままでは全然やったことないんですけど、堂島さんが「宅録やってみれば?」って言ってくれたんですよ。いろんな音が出て楽しそうですし、やってみたいですね。
ユリナ : どうする? めっちゃクオリティの高いものができてきたら。
ゾン : それはすごい助かる。
一同 : (笑)。
——そのうちアレンジとかも任せられるようになるかもしれないですね。
ユリナ : 何が起きるかわからないっていうのが、新メンバーなので。うふふふ(笑)。
——未来がありますね。
ウォンチュ : がんばります(笑)。
LIVE INFORMATION
NEW DAY RISING!!!
2013年5月19日 日)@下北沢THREE
住所不定無職 / どついたるねん / KETTLES / スカート... and more
open 18:00 / start : 8:30
SHIMOKITAZAWA INDIE FANCLUB
2013年6月23日 (日) @下北沢のライブハウス
住所不定無職… and more more more!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
住所不定無職の過去音源も要チェック!
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>>>住所不定無職×カジヒデキ 対談はこちら
PROFILE
住所不定無職
ユリナ(ギターとか)、ヨーコ(ギターとか)、ザ・ゾンビーズ子(ギターとか)、℃-want you!(ギターとか)からなるロックバンド。2007年の結成後、都内ライブハウスを中心に活動し、2010年3月に1stアルバム『ベイビー!キミのビートルズはボク!!!』を発表。さまざまなサウンドを独自の解釈で混ぜ合わせ、キャッチーなメロディとオリジナリティあふれる歌詞で表現するそのスタイルが多くのロック・ファンの支持を集める。2011年1月にはDECKRECから7曲入り“フルヴォリューム・シングル”「JAKAJAAAAAN!!!!!」、同年11月には2nd“フルヴォリューム・シングル”「トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1フロム・トーキョー!!!」をリリース。2013年1月から新メンバーの℃-want you!(シ・ウォンチュ)を加え、4人編成で活動を続けている。