2012/11/10 00:00

前作『PORT ENTROPY』での大ブレイクによって、今や世界の音楽シーンをリードする大注目アーティストとなったトクマルシューゴが放つ、キャリア最高作にして新たなる地平に踏み込んだ最新アルバム『In Focus?』登場! 約2年半の濃密な創作期間を経て紡ぎだされた壮大な音絵巻。あらゆるシーンから逸脱したかのような、トクマルシューゴにしか表現し得ないポップかつ驚きとユーモアに満ちた大傑作の誕生です。

トクマルシューゴ / In Focus?

収録曲 :
1. Circle / 2. Katachi / 3. Gamma / 4. Decorate / 5. Call / 6. Mubyo / 7. Poker / 8. Ord Gate / 9. Pah-Paka / 10. Tightrope / 11. Helictite (LeSeMoDe) / 12. Shirase / 13. Micro Guitar Music / 14. Down Down / 15. Balloon

販売形式 : mp3 / wav
価格 : 2000円

音楽の姿を探し求めて

2009年、ニューズウィーク誌の"世界が尊敬する日本人100人"に認定されるなど、海外レーベルからのリリースも盛んなアーティスト、トクマルシューゴ。彼の鳴らす素朴で暖かなギター・サウンドは、人懐っこく、聴く人を選ばない。だからこそ、無印良品をはじめとしたCMソングを多数担当し、度々注目を浴びてきたのだ。そんなトクマルシューゴが前作『Port Entropy』以来2年ぶりとなるアルバム『In Focus? 』をリリースした。

これまで彼は、ピアノや縦笛など100種類以上の楽器を寄せ集め、チャイルディッシュな世界観を構築していた。その音楽性は、しばしば"遊園地"であったり"絵本"などで例えられることも多い。今作も、各曲間に挿入される「Gamma」「Mubyo」などのインスト曲が、どこか紙芝居やメリーゴーランドを彷彿とさせるメルヘンでコミカルな民族音を奏でている。木琴やチャイムを幾重にも重ねた、濃厚で隙のない丁寧な音色作り。その徹底ぶりは、どこか気難しい繊細さすら秘めており、まるでガラス細工のようだった。手に取ることはためらわれるが、眺めているだけで幸せな溜息であふれるのだ。

しかし本作は、ガラス細工ほど高貴でためらわれるような音作りではなく、気軽で理屈いらずのピースフル・サウンドになっている。それは直接手を伸ばし、形を変化させることができる積み木やねんどなどの、"おもちゃ"のような感覚だろうか。その証拠を裏付けるものとして、本作リリースに合わせて立ち上げられた特設サイト「DRAW MUSIC」が挙げられる。このサイトは、ユーザーが自由に描いた絵柄をもとに、トクマルシューゴ自身が演奏した楽器フレーズ99種類の中からランダムに音楽が生成されるというものだ。彼の鳴らす音から、新たな作品を自由につくることが可能なのである。音楽を描く(DRAW)だけではなく、もとあるものに手を加え、形を変えていくその手順はまるで、積み木やねんどで遊ぶかのようではないだろうか。また、本アルバムに先行してリリースされたシングル「decorate」では、ソノシートでのリリースも果たしている。ソノシートとは、塩化ビニール製のレコード盤のことであり、聴けば聴くほど音質が変化していく消耗品である。彼は音楽の形を模索しながら、私たちの懐に収まるような音楽の姿を常に探し求めているのではないだろうか。今作は、そんな音楽の形を見つけ出し、その”焦点を当てること”に成功した――すなわち”focus in”したことを思わせる、トクマル・ミュージックの最高到達地点であるアルバムなのだ。

音粒の美しさはそのままに、タイアップからその音作りまで、次第に私たちの生活にコミットメントしていくトクマルシューゴ。今作においてその距離は、より近づくこととなった。まだまだトクマル・ワールドを知らないあなたも、世界に誇れるその音楽を是非体験してほしい。(text by 梶原綾乃)

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PROFILE

東京都出身。2004年のデビュー以来、これまでに4枚のフル・アルバムを発表。作詞・作曲、アレンジ、演奏、レコーディング、ミキシングまでを自身で手掛ける。ステージでは、ソロ、トリオ、セクステット等、様々な編成とアレンジを使い分けながら、録音とは異なる推進力に満ちたパフォーマンスを展開。日本語詞による独自のポップスを追求していながら、その音楽は欧米やアジア各国でも高い評価を得ている。

この記事の筆者

[レヴュー] トクマルシューゴ

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