2012/10/12 00:00

NAXOSレーベルのクラシック作品を一挙配信開始!

HQD / スタンダードセレクション for OTOTOY / 話題沸騰「交響戦艦」シリーズ!

OTOTOYに集まるような音楽好きなら、なにかのタイミングでクラシックに興味を持つことはあったりしますよね。「ま、聴いてみるか」くらいの。そんな感じ、大歓迎です。ギタリストの視点でパガニーニの超絶技巧ヴァイオリンが気になるとか、ミニマル好きがバッハにヤバさを感じるとか。そういえば、さかいゆうさんが以前ラジオ番組で「グル―ヴミュージックとしてのクラシック」なんて企画で冴えた視点を披露してくれたこともありました。最高でした。もちろん、たくさんの人がぐいぐいハマって詳しくなってくれたら、ウチのようなクラシック系レーベルとしてはありがたいんですが、そうじゃなくても全然。「この曲だけは好き」みたいな感じでオケーなんで、良かったらお友達にも教えてあげてください。

今回は、なかなか音源化されないレア曲満載のカタログで人気のNAXOSレーベルがOTOTOYに参入!ということで、教科書に出てくる有名作品から「これ、クラシックじゃなくね?」みたいな曲まで幅広くセレクトしてみましたので、なんとなくVIBESの合いそうなものwwを見つけて是非聴いてみてください。『体系的に学ぶべきだ』『これを聴かずしてクラシックを語るな』的な同調圧力は蹴とばして、勝手に聴きましょう。勝手に選びましたんで。(text by NGT(NAXOS))

HQDシリーズ(24bit/48kHz〜96kHzの高音質WAV)

『コリリアーノ: 交響曲第3番「サーカス・マキシマス」/ガゼボ舞曲集』 / テキサス大学ウィンド・アンサンブル/ジェリー・ジャンキン(指揮)

世界最大のアリーナであった古代ローマの円形競技場では、毎日さまざまな競技、闘いが催され、30万人以上の観客が熱狂したのでした。その催しは日を追うごとにエスカレートし、ある時は鍛え抜かれた戦士たちの戦いであったり、餓えたライオンと人間の戦いであったりと、血で血を洗う残虐なものへと進化(?)していったのです。そんな野蛮なショーを大規模なブラス・アンサンブルで再現したのがこの作品です。ステージだけでなく、会場の至るところに配置された楽器群が一斉に音を吹き鳴らす様は圧巻の極みです。

『マーラー: 交響曲第8番「千人の交響曲」』 / バルバラ・クビアク(ソプラノ)/イザベッラ・クロシンスカ(ソプラノ)/マルタ・ボベルスカ(ソプラノ)/ヤドヴィガ・ラッペ(アルト)/エヴァ・マルシニク(アルト)/ティモシー・ベンチ(テノール)/ヴォイテック・ドラボヴィチ(バリトン)/ピョートル・ノヴァツキ(バス)/ステファン・ヴィシンスキ大学合唱団/ポーランド放送合唱団/ワルシャワ少年合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮)

マーラーの作品の中でもひときわ壮大な「千人の交響曲」。とにかくTr.1を聴いてみてください。圧倒的なスケール感で雷に打たれた気分にな るはず!引き締まった演奏を軸に奥行きのある音場でコーラスが広がり、壮大なオラトリオのようなドラマを展開しています。この大編成を見事な 手腕で心地よい録音にまとめあげた、指揮者、演奏者、そして制作陣に拍手!「classicstoday.com」レビューでは演奏・録音両面において「10/10」の最高評価を得ています。

『ドヴォルザーク: 交響曲第7番/第8番』 / ボルティモア交響楽団/マリン・オールソップ(指揮)

マリン・オールソップによるドヴォルザーク交響曲シリーズの第2弾です。今回は第7番と第8番の2曲です。1985年に作曲された第7番は、ヨハネス・ブラームスの第3番の交響曲が随所に認められるも、極めてスラヴ的で甘酸っぱい感情を有した名作です。第2楽章の天上的な美しさに聴きほれる人も多いはずです。かたや第8番は同じくブラームスの第4番との関係性が指摘されることもありますが、旋律のひなびた美しさはアントニン・ドヴォルザークならではのもの。かつては「イギリス」と呼ばれることもありましたが、現在ではその名はほとんど使われません。牧歌的な第1楽章、溌剌とした第2楽章、つい一緒になって歌ってしまいたくなる第3楽章のテーマ、そして自由な間奏曲の形式で書かれた終楽章と聴きどころ満載です(フルート好きにはたまらない場所があるのもブラームスの4番と共通していますね)。オールソップの演奏は、一音たりともおろそかにしない、恐ろしく緊密なもの。全ての音がクリアに聞こえてくる様子には驚く他ありません。

『ショパン: ピアノ協奏曲第1番/ポーランド民謡による幻想曲/演奏会用ロンド「クラコヴィアク」』 / エルダー・ネボルシン(ピアノ)/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮)

NAXOSには、既にセーケイ・イシュトヴァーンとビレット・イディル(ブレイナー盤もありました)の録音があるフレデリック・フランソワ・ショパンの協奏曲第1番。しかし2010年のショパン・イヤーに合わせて新録音を出すことになりました。このエルダー・ネボルシンとアントニ・ヴィトの録音、もちろん演奏自体も素晴らしいものですが、何と言っても「ナショナル・エディション」のスコアを用いているところに注目です。ポーランドが国家の威信をかけて、50年かけてショパンの作品を全て見直し出版した「原典版」は、これまでの資料を全て詳細に研究し、今までになかった事実を見せてくれる、ファンにとっては涙が出るほど嬉しいものです。この協奏曲第1番では「これまで150年使われてきたスコアとパート譜は、ショパン自身が書いたものとはかけ離れていた」という衝撃的な内容が明かされています。これを聴いてみると、「ショパンは管弦楽法に疎かった」という既成概念が覆されることでしょう。確かに冒頭から充実した響きに満たされた素晴らしいものとなっています。まず聴き比べてみてください。

『ショパン: ピアノ協奏曲第2番/「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲/他』 / エルダー・ネボルシン(ピアノ)/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮)

第1番(8.572335)に続く、ショパンの新原典版による第2番の協奏曲です。こちらも、演奏者はヴィトとネボルシン。既存の版との聴き比べも楽しいですし、ただただ演奏に浸るのもいいでしょう。ヴィトはショパンのスコアを、まるでグスタフ・マーラーのように重厚に響かせ、聴き手に多大なる満足を与えてくれます。カップリングの2曲も素晴らしい演奏。どうしても技術面が空回りしがちな初期の作品が、堂々とした名曲として立ち現れます。「アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ」のオーケストラ・パートも、占める割合は少ないとは言え、強烈な存在感を示しています。

『ドヴォルザーク: 交響曲第6番/第9番「新世界より」』 / ボルティモア交響楽団/マリン・オールソップ(指揮)

このドヴォルザークの第6番は、1880年に作曲されたもので、彼の交響曲の中では最初に出版されたため、当初は「第1番」とされていました。7番〜9番に比べると知名度は低いものの、ボヘミアの豊富な民謡をふんだんに使った爽やかな音楽は、しばしばブラームスの交響曲第2番と比較されるほどに充実した書法を持っています。続く第9番「新世界」では、ホールに漲る熱気をさらりとかわすオールソップの粛々とした指揮ぶりをご堪能ください。むやみに感傷に流され過ぎることのない第2楽章はとりわけ新鮮に感じられることでしょう。

『R. シューマン: ゲーテのファウストからの情景 WoO3』 / イヴォナ・ホッサ(ソプラノ)/クリスティーネ・リボー(ソプラノ)/アンナ・ルバンスカ(アルト)/エヴァ・マルシニク(アルト)/ダニエル・キルヒ(テノール)/ヤーッコ・コルテカンガス(バリトン)/アンドリュー・ガンゲスタッド(バス)/ワルシャワ少年合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮)

悪魔に魂を売り渡したファウスト博士の伝説を基に、ゲーテが書きあげた戯曲は様々な芸術家に影響を与え、19世紀の作曲家たちも挙ってこの物語に曲を付けています。中でも「神秘の合唱」はマーラーの第8番の第2部とフランツ・リストの「ファウスト交響曲」でご存知の方も多いでしょう。このロベルト・シューマンの作品はゲーテの物語から「死と変容」というテーマを読み取ったもので、彼の最高傑作のひとつと言われています。早いペースで曲を書き上げる彼にしては、構想から完成まで9年間の長い年月をかけ、じっくりと曲想を練っています。最初に書かれたのは神秘の合唱の部分から。まずクライマックスを仕上げてから、物語を遡るように音楽を書き進め、1853年に序曲が書かれて、雄大なる物語が完成しました。1856年にその生涯を閉じたシューマンですが、最後の3年間は創作することが不可能だったため、この年が実質的に彼の最後の「生きている証」をなったのです。

『ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲「四季」/他』 / チョーリャン・リン(ヴァイオリン)/アンソニー・ニューマン(チェンバロ)/アンソニー・ニューマン(ポジティーフ・オルガン)/セジョン

誰でも知ってるクラシック音楽賞でもあれば、絶対ノミネート間違いなしの「四季」ですが、この曲集は「和声と創意の試み」というタイトルの曲集の第1〜4曲に相当しています。ソネットを掲げ、その内容を描写的に音楽化するということは、文字通り「和声と創意の試み」であり、アントニオ・ヴィヴァルディの旺盛な意欲が込められた作品となっています。絶大な人気は、題材の親しみやすさだけでなく、音楽そのものが優れているからこそといえましょう。当盤はモダン楽器による演奏となっていますが、ベテランのチョー=リャン・リンとアンソニー・ニューマンのコンビが、近年隆盛のピリオド楽器による過激路線に負けない、豊かな表現力を発揮しています。

『シューベルト: 序曲全集』 / プラハ・シンフォニア/クリスティアン・ベンダ(指揮)

歌曲王として知られるフランツ・シューベルトですが、彼がかなり多くのオペラを書いていたことはあまり知られていません。なぜならば、その作品は大抵初演で失敗し、以降誰にも注目されなかったからです。とは言え、このアルバムに収録された作品の多くはシューベルト10代の頃の意欲作であり、まるでベートーヴェンやウェーバーを思わせる躍動的な旋律に満ちた一連の作品は、そのままにしておくには何とも惜しいものばかり。具体的な題名は付されていないD.556の序曲は、何かが始まる予感に満ちた冒頭部分と、朗らかで軽快な主題が見事な連なりを見せる佳作。比較的耳にする機会のある「フィエラブラス」や「アルフォンソとエストレッラ」もこの機会に再度聴いてみてください。シューベルトの目指した世界に到達できるのではないでしょうか?新たなシューベルトの魅力に開眼の1枚です。

『T. ランチーノ: レクイエム』 / ハイディ・グラント・マーフィー(ソプラノ)/ノラ・グビッシュ(メゾ・ソプラノ)/スチュアート・スケルトン(テノール)/ニコラ・クルジャル(バス)/フランス放送合唱団/フランス放送フィルハーモニー管弦楽団/エリアフ・インバル(指揮)

まるで巨大な鉄槌を振り下ろすかのように、重々しい打撃音が延々と続くこのフランスの作曲家ティエリー・ランチーノによる「レクイエム」の冒頭。ここを聴いただけで思わず頭を垂れてしまいたくなるような、衝撃的な作品です。20世紀になって書かれたレクイエムは、宗教的な観点よりも、より人間の存在について掘り下げるものが多いのですが、この曲もその一つの形と言えるでしょう。テキストは「めぐりあう朝」の原作者として知られるパスカル・キニャール。彼との3年間に及ぶ共同作業からこの作品が生まれたと言います。彼らは死と永遠の時間について、答えの出ることのない質問を、レクイエムという形式で聴き手に突き付けます。人生というものは「壮大なフレスコ画と神聖な式典」なのでしょうか?それとも・・・。マーラー、アントン・ブルックナーで音楽というものを高みに引き上げた名指揮者インバルによる、人間の暗部に光を当てるかのような明晰な演奏です。

『シマノフスキ: 交響曲第1番/第2番』 / ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮)

最初の交響曲に、自ら「対位法、ハーモニーの怪物的管弦楽作品」とあだ名をつけたカロル・シマノフスキ。交響曲第1番には、彼独特の「肉感的なうねり感」がたっぷり。驚くほどに魅力的です。1910年に作曲された交響曲第2番はR・シュトラウスやレーガーの影響は見られるものの、冒頭の深い森を思わせる神秘的なメロディに絡む妖艶なヴァイオリンの調べはまさしくシマノフスキそのもの。

『シマノフスキ: 交響曲第3番/第4番』 / リシャルド・ミンキエヴィチ(テノール)/ヤン・クシシュトフ・ブローヤ(ピアノ)/ワルシャワ・フィル

合唱とテノールを伴うシマノフスキの交響曲第3番は、彼でなければ書けない独特の音楽。キリスト教、イスラム教、ペルシアの影響が感じられるエキゾチックで官能的な音の奔流です。第4番の交響曲ではピアノが縦横無尽野に活躍するストラヴィンスキー風の新古典主義音楽が楽しめます。特に終楽章での燃え上がるマズルカ風の音楽は一聴に値します。こういう曲はヴィトにおまかせ。

『ガーシュウィン: へ調の協奏曲/他』 / オリオン・ウェイス(ピアノ)/バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団/ジョアン・ファレッタ(指揮)

ジョージ・ガーシュウィンの「もう一つのピアノ協奏曲」である「へ調の協奏曲」です。代表作「ラプソディ・イン・ブルー」に比べると、古典的な形式に近づいているのは、この曲を作るためにガーシュウィンは、わざわざ音楽理論書を購入して、楽典から学びなおしたのだとか。もちろん前作のように、オーケストレーションを他の人の手に委ねることはなく、全て自らの手でスコアを書いたというのだから、その努力の凄まじさには敬服する他ありません。初演はガーシュウィン自身のピアノと、彼にこの作品を委嘱したダムロッシュの指揮、ニューヨーク交響楽団によって行われ、ジャズでもなくクラシックでもない新しい音楽は当時の聴衆を翻弄しました。もともと映画音楽として構想された「ラプソディ第2番」はマンハッタンの街並みを音に移したもの。彼の最後のフルスコアである「アイ・ガット・リズム」変奏曲も泣かせます。

『ヤナーチェク: グラゴル・ミサ』 / クリスティーネ・リボー(ソプラノ)/エヴァ・マルシニク(アルト)/ティモシー・ベンチ(テノール)/ヴォチェク・ギールラッハ(バス)/ヤロスラフ・マラノヴィチ(オルガン)/ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮)

晩年になって、人生の輝きを取り戻したレオス・ヤナーチェクは、堰を切ったように次々と名作を生み出します。この「グラゴル・ミサ」と「シンフォニエッタ」もその中に含まれる人類の至宝とも言える傑作です。「グラゴル・ミサ」のグラゴルとは、スラヴ人が使った最古の文字と言われることから、この曲はスラヴ文化のための奉祝であると同時に、彼にとっての最高の人であったカミラへの思いが結実しているようです。大規模な管弦楽、合唱、独唱、そしてオルガンが織り成す、神秘的で輝くような調べは聴くものの心を躍らせます。「シンフォニエッタ」は最近人気が急上昇している曲でもあり、本来は軍楽のために構想された作品。金管が大活躍する冒頭から、わくわくするような楽想に満ちています。ヴィトとワルシャワ・フィルという最高の演奏者による2つの作品、まさに文句のつけようのない名演が繰り広げられています。

『ヴェルディ: オペラの中のバレエ音楽全集』 / ボーンマス交響楽団/ホセ・セレブリエール(指揮)

もともとバレエは、イタリアの合唱曲に踊りを加えたことが起源とされますが、19 世紀前半のフランスではオペラの中に必ずバレエを含むことが条件とされ、ヴェルディ(1813-1901)のみならず、リヒャルト・ワーグナーさえ、自作をパリで演奏するためにはバレエを付け加えなくてはいけなかったエピソードが知られています。このユニークなプログラムは、ヴェルディのオペラから全ての「バレエ音楽」を集めたものです。なんといっても、「アイーダ」「オテロ」や「シチリア島の夕べの祈り」を除くと、他のほとんどの作品はバレエ部分をカットすることが通例であり、これらを耳にする機会はなかなかないのです。セレブリエールとボーンマス交響楽団は、この珍しいレパートリーを血気盛んに演奏することで、曲の必然性を炙り出すことに成功しています。

スタンダードシリーズ(mp3 / 16bit/44.1kHzのWAV)

『4分33秒』のアノ人、ピアノにものを挟む
『ケージ: プリペアド・ピアノのための音楽』 / ボリス・ベルマン(ピアノ)

ピアニストが座ったままじっとしている曲で有名なジョン・ケージ。キノコの研究家としても有名でなんだか怪しい匂いがぷんぷんするエキセントリックな印象ですが、今年(2012)は生誕100年という記念すべき年。で、この人が考案したピアノの新しい弾き方が「プリペアド・ピアノ」。ピアノの弦にゴムとか木片とかボルトなんかを挟んで、鍵盤をたたくと「ガッ」とか「ヒーン」とかいう音が鳴るようにセッティング、ピアニストをパーカッショニストにしちゃう奏法です。シンセの鍵盤ひとつひとつにサンプルをアサインするような感じですね。これ、実はめちゃくちゃかっこいいです。悪いことは言わないので是非聴いてみてください。ちなみにNGTのiPhoneの着信音はTr.6です。異常に評判いいです。

これがディランだなんて許せねぇ。
『コリリアーノ: ミスター・タンブリンマン(ボブ・ディランによる7つの詩)/3つの幻覚』 / バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団/ジョアン・ファレッタ(指揮) ヒラ・プリットマン(ソプラノ)/バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団/ジョアン・ファレッタ(指揮)

「レッド・バイオリン」等の映画音楽でアカデミー賞を受賞、グラミー賞でも常連となっているジョン・コリリアーノ。現代アメリカを代表する作曲家なんですが、ある時ボブ・ディランの「ミスター・タンブリン・マン」の詩を読んで、響きの美しさと内容の深さに感激し、ディランの詩を自らの音楽語法で再構築することを思い立ったんだそうです。リコンストラクションってやつですね。ロックやポップスの手法でクラシックを引用したものは数々ありますけど、これは「反対方向でのクロスオーヴァー」です。もちろんディラン自身の賛同を得た上での作品ですよ。この曲も2009年度のグラミー賞クラシック現代作品部門受賞作品。ちなみに指揮のファレッタは美人と評判だったりします。

モテるミニマル、あります。
『ジョン・アダムズ: ピアノ曲全集』 / ラルフ・ファン・ラート(ピアノ) ラルフ・ファン・ラート(ピアノ)/マールテン・ファン・フェーン(ピアノ)

代表的なミニマル音楽家の一人、ジョン・アダムズによるピアノ曲集。ミニマルには興味あるけどやたら長い曲ばかりで、実はいつも途中であきらめてる、なんて人はいません? このアルバムのTr.3「アメリカの熱狂」とTr.4「フリジアン・ゲート」なんかは5〜6分でスパッと終わってくれるし、アダムズ特有の色彩感があってなじみやすいかもしれません。ていうか結構ポップだと思いませんか? なんていうか、モテ・ミニマルって感じです。ちなみにNGTのiPhoneの目覚まし音はTr.4「ハレルヤ・ジャンクション」です。モテませんが、快適です。

クラシックにも、「フェス」はある。
『プロムス・ラストナイトの定番曲集 - ルール・ブリタニア』 / イングリッシュ・ノーザン・フィルハーモニア/ポール・ダニエル(指揮) リーズ音楽祭合唱団/イングリッシュ・ノーザン・フィルハーモニア/ポール・ダニエル(指揮)

エドワード・エルガーの「威風堂々」に乗せて、ひざをくいくい曲げるヘンなアクションを繰り返す紳士淑女、サッカー・イングランド代表ユニのおじさん、パンクス風の若者たちの映像を観たことありません? ロンドンでは、毎年夏に開催される通称「プロムス」というコンサートがあります。ロック・ファンの間でも有名なロイヤル・アルバート・ホールを中心に100以上のイベントがあり、シーズン通しチケットを毎年購入する熱狂的ファンも多いノこれ、もはや「フェス」ですよね。はじめに書いたヘンな集団は、このフェスの最終日恒例となっているイギリス音楽中心のコンサートの観客のことで、この日は英国愛に溢れまくったプログラミングで老いも若きも一緒に楽しむことになってるんです。このアルバムはその最終日の定番曲を集めたもので、どの曲も実に英国らしいというか、独特の誇り高いムードに満ちていますね。ちなみにNAXOSでは「威風堂々」っぽい曲ばかりを集めた『威風堂々風』ってコンピ(デジタル限定)もリリースしてます。ご要望次第で配信予定。

銀座のOLに人気の作曲家、フィンジを聴いて田園生活を夢見る。
『ベスト・オブ・フィンジ』 / V.A.

「エキセントリックなものはいらない。ただ気持ちいい曲を聴かせてくれ。ただし手垢べとべとの名曲セレクションはカンベン。多少はモダンな雰囲気も欲しい。」という人は意外に多いんじゃないでしょうか。そんな人にオススメ、覚えておくときっといいことありそうな作曲家がジェラルド・フィンジ。当時絶滅の危機にあったリンゴの品種の保存に努めるなど、園芸家としての顔も持つフィンジの作品は、まさにイギリスの田園風景を思わせるような、スーッと身体に染み込んでくるような曲がたくさん。ハーディやワーズワースなどの詩につけた曲も多くあります。個人的にはTr.6, 8, 14をプッシュ。実は銀座某有名CDショップでフィンジ・コーナーを設置したところ女性を中心に大人気を博し、異例の長期に渡って展開されたんですよ。これ、耳より情報じゃありませんか。ちなみにOLが多かったどうかは、ホントは不明なんですけど。

ベロにピアス、なのか? 乗せてるだけじゃないのか? ジャケ写。
『ラング: ピアス/ヘロイン/不正、嘘つき、盗み/祈る方法/結婚』 / V.A.

新宿の某大手CDショップでバカ売れしたことからスタッフ内で勝手に「新宿系」と呼んでいたこのアルバム。クラシックレーベルの作品にしてはアタックのきついサウンド、中2病スレスレの曲名、それっぽいジャケットと、賛否両論を巻き起こしたヤツです。Tr.2にはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『ヘロイン』も。デヴィッド・ラングはピューリッツァー賞も受賞したカナダの作曲家で、変則的な楽器編成で割と攻撃的な、かつ箱庭的な「閉じた」音楽を作ります。ここで演奏の中心になっているグループ「Real Quiet」はEndeavour Classicsレーベルから『Tight Sweater』というアルバムをリリースしており、こちらもオススメ。ちなみにそのジャケットはさらにオススメです。ググってみてください。

リズムもすごいけど、音響的にも、ものすごい。
『ベスト・オブ・ストラヴィンスキー』 / ベルギー放送フィルハーモニー管弦楽団/アレクサンダー・ラハバリ(指揮) ボーンマス・シンフォニエッタ/シュテファン・ザンデルリンク(指揮) ノーザン室内管弦楽団/ニコラス・ウォード(指揮)

クラシックにまだ縁も興味もなかった中学1年の時、先輩たちの演奏するイゴリー・ストラヴィンスキー(と、『ロッキーのテーマ』)に打ちのめされたのが音楽にハマるきっかけでした。ストラヴィンスキーと言えば何といっても20世紀を代表するバレエ音楽でアート/カルチャー・シーン全体に革命を起こした人。特に『春の祭典』は、初演時の騒動(当時あまりにも「新しい」音楽だったため、劇場内が否定派と擁護派に分かれてケンカになった)が有名です。しかし田舎の中1小僧はそんなこと知りません。単純に「普通の楽器を重ねただけでなんでこんな"ぐわしゃっ"みたいな音がするんだ? 」と不思議でしょうがなかった記憶があります。小節ごとに拍子が違ったりするのも、なんだかゲームをクリアしていくみたいな感覚で夢中で覚えてました。ちなみに映画「シャネル&ストラヴィンスキー」では冒頭にその初演の様子が描かれています。一見の価値アリ。

有名なだけじゃない、やっぱすごい人かも。
『J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲/6つのパルティータ(グレン・グールド) 』/ グレン・グールド

「クラシック? 時々聴くよ。グレン・グールドとか。」という人は自分の実体験でもかなり多いですし、その「伝説のカリスマ」的なイメージから名前を出すだけでなんとなく否定しづらい雰囲気になります。ホントはそんなに興味ないけど、とりあえず話を流したい時にもナイスなチョイス。クラシックというとなんかこう「もったいぶった弾き方」が鼻につくと感じる人も多いと思います(実はNGTもそうです)が、グールドはこの演奏で逆にドライにぐいぐいドライヴするバッハを聴かせました。「バッハにグル〜ヴをもたらした人」ですね。やっぱかっこいいです。1950年代録音の復刻盤ですので音質にご注意ください。ちなみにグールドは、1981年には同じ『ゴルトベルク変奏曲』を全く違うスタイルで再レコーディングしちゃいます。

美貌で変人な天才、巨匠と共演。
『J.S.バッハ: ピアノ協奏曲 ニ短調 BWV1052/他(グレン・グールド)』 / グレン・グールド グレン・グールド(ピアノ)/コロンビア交響楽団/レナード・バーンスタイン(指揮)

グレン・グールドと言えば変わり者として有名なんですが、伝説的なミュージシャンはだいたいそうだったりしますよね。なので具体的なエピソードのひとつひとつはここでは挙げません。そもそも詳しくありませんし。この録音は1957年なので、バーンスタインが「ウエスト・サイド・ストーリー」を書いた年(39歳)ですから、実際には巨匠の一歩手前くらいの時期でしょうか。数年後に別の曲で共演した時には解釈の違いで随分意見を戦わせたようですが、この当時はバーンスタインが「グールドより美しいものを見たことがない」(どうやらルックスを含めてのこと)と言ったという話もあり、個人的にも可愛がっていたようですね。Tr.4以降のピアノ・ソロでは再びグル?ヴィーなバッハを聴かせてくれます。

スーパーマンとか鉄道とか、あっち系なのか。
『ドアティ: メトロポリス・シンフォニー/他』 / メアリー・キャスリン・ヴァン・オズレイル(ヴァイオリン)/エリック・グラットン(フルート)/アン・リチャーズ(フルート)/ナッシュヴィル交響楽団/ジャンカルロ・ゲレーロ(指揮) テレンス・ウィルソン(ピアノ)/ナッシュヴィル交響楽団/ジャンカルロ・ゲレーロ(指揮)

1938年に原作ジェリー・シーゲルと作画ジョー・シャスターにより、アクション・コミックス誌第1号で初登場した世紀のヒーロー、スーパーマン。『メトロポリス・シンフォニー』は、彼の生誕50周年を記念してマイケル・ドアティが作曲したものです。各楽章にもしっかりスーパーマン絡みのタイトルが。例えば第1楽章では宿敵レックス・ルーサーのキャラクターがヴァイオリンの超絶技巧で表現されています。カップリングの「デウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)は列車を音楽にした作品。いかにもアメリカ的で、ゴリゴリのクラシック・ファンには嫌われそうですが、各楽器をたっぷり活躍させるサービス精神は信用できます。とにかく楽しい曲。ちなみにこのアルバムは2010年のグラミー賞で実に3部門を受賞したすげーやつです。

ブラジル音楽が好きだ。
『ヴィラ=ロボス: ブラジル風バッハ全曲』 / ナッシュヴィル交響楽団/ケネス・シャーマーホーン(指揮) ナッシュヴィル交響楽団チェロ・セクション/アンドリュー・モグレリア(指揮) ホセ・フェガーリ(ピアノ)/ナッシュヴィル交響楽団/ケネス・シャーマーホーン(指揮)』

ワールド・ミュージック好きに限らず、ブラジル音楽ってなんかすげぇぞという音楽ファンは多いはず。ショーロにしろボッサにしろトロピカリズモ一派にしろ、なんであんなに洗練されてるんでしょうね。しかもいつまでもクリエイティブなアーティストが多い印象があります。そんな国で紙幣の顔にもなった作曲家エイトル・ヴィラ=ロボスはバッハが大好きで、このちょっと変なタイトルの曲集は、ブラジルの民族音楽を素材にバッハ風の組曲を作っちゃおうとしたもの。ただしバロック風味はさほどなくもっと自由な感じです。全9曲ありますがそれぞれ編成がバラバラなので、いっぺんに演奏されることはほとんどありませんが、1曲1曲がとにかくきれいです。きっと好みの曲が見つかるんじゃないでしょうか。Tr.1なんかはテレビ番組でも聴いたことがあると思います。ちなみにTr.7は別名『カイピラの小さな汽車』。また鉄道ネタか、と言わずに聴いてみてください。見事です。

おい、フィルにピーター、オレ現役だぜ。
『トニー・バンクス: 管弦楽組曲「セヴン」』 / ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団/マイク・ディクソン(指揮)

70年代プログレの雄、ピーター・ガブリエルやフィル・コリンズを輩出した「ジェネシス」を結成当時から支え続けてきたキーボーディスト、トニー・バンクスがなんとオーケストラ作品に挑戦しちゃったのがこの曲。オーケストレーションは他人の手によるものですが、彼自身がセッション期間中に実際の音を聴きながら推敲を重ねており、彼のイメージをきっちり反映した仕上がりです。作品自体は特定のクラシックの形式等を意識したものではない、純バンクス・ワールド。バンクス自身がピアノを担当していることもあり、ファンの方にはマスト・アイテムですね。ちなみにNAXOSからは彼の作品がもうひとつ、今度はオーケストレーションまで自分で手掛けた曲がリリースされています。

19世紀の天才作曲家による妄想ドラマ。中2病は現代の病じゃないね。
『ベルリオーズ: 幻想交響曲 Op.14』 / サンディエゴ交響楽団/ヨアフ・タルミ(指揮)

恋に破れた芸術家が絶望の果てに阿片を吸って見た幻視を音楽化したというこの曲。実はエクトル・ベルリオーズ自身の実際の失恋(相手はシェイクスピア劇団の女優)がきっかけなんだそうです。「彼女を振り向かせるために一発派手でかっちょいい曲でも書こうかな」と企んだんだそうで、きっちり妄想プロットもあるんです。なんだかめちゃくちゃリアルですよね。「キミだけのためにこの曲作ったよ」みたいなことですから。ふられたことで一時的に彼女を憎んだり、その後他の女性と婚約までいったりと右往左往しますが、数年後にはきっちりその女優と結婚できちゃったそうで、そうなると逆につまんないなと思ってしまいます。ちなみにベルリオーズ、実際に阿片をキメて作曲した様子もあり、バーンスタインはこの曲を"Psychedelic Symphony"と呼んだとか。

出る杭は、打たれる。結果、曲がったものは面白い。
『ピアソラ: 組曲「ブエノスアイレスのマリア」/ブエノスアイレスの夏/天使のミロンガ』 / エンリケ・モラタッラ(ヴォーカル)/マリア・レイ=ジョリー(ソプラノ)/オラシオ・フェラー(唱詠)/ヴァーサス・アンサンブル ヴァーサス・アンサンブル エンリケ・モラタッラ(ヴォーカル)/ヴァーサス・アンサンブル

90年代後半に巻き起こった一大ブームで、一般の音楽ファンやクラシック系のプレイヤーに大きく受け入れられる一方、ワールド系の音楽ファンには煙たがられることも多いアストル・ピアソラ。「あんなのはタンゴじゃない!」的な。正直、ジャンルは違っても良く聞く話ではありますよね。好き嫌いは人それぞれあっても、正しい/正しくないの話ではない気がします。個人的にはちょっと外側にはみ出してみるミュージシャンの方が好きです。このアルバムの演奏・録音には決してむせ返るような生々しさはありませんが、室内楽として聴くとすごく面白いんですよ。それこそ「ピアソラ的」と言えるかも。ちなみに、個々のプレイヤーはもちろんきっちり熱いものを聴かせてくれますよ。

ニューヨークに、行きたいか。
『グローフェ: 組曲「グランド・キャニオン」/ミシシッピ組曲/ナイアガラ大瀑布』 / ボーンマス交響楽団/ウィリアム・ストロンバーグ(指揮)

アメリカ発のクラシック音楽というと、ゴリゴリのクラシック・マニアには冷やかな目で見られることが多いんですが、そんなことはほっといて、オーケストラを駆使して広大なアメリカ大陸のランドスケープを仕上げてしまったファーディ・グローフェの職人芸は見事すぎるでしょ。グランド・キャニオンの夜明けから発電所の水流、新婚旅行のカップルまで描写する、人呼んで「観光作曲家」。このアルバムで特にオススメしたいのが『ミシシッピ組曲』のTr.2「ハックルベリー・フィン」とTr.4「マルディ・グラ」。ある程度以上の世代なら100%わかっちゃう人気番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」でお馴染みのメロディはこの曲の一部だったわけです。ちなみにNGTはこのクイズ番組に出場したことはありませんが、友人を応援したことならあります。

「いっぺんくらい聴いてみようかなと思うクラシック」第1位。たぶん。
『ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱付き」』 / ハスミク・パピアン(ソプラノ)/ルクサンドラ・ドノーセ(メゾ・ソプラノ)/マンフレッド・フィンク(テノール)/クラウディオ・オテリ(バス・バリトン)/ニコラウス・エステルハージ・シンフォニア/ニコラウス・エステルハージ・シンフォニア/ベーラ・ドラホシュ(指揮)

毎年末に星の数ほど演奏されるこの曲、一度は聴いてみようかなという人も多いですが、残念ながらなかなか長いんですよ。せっかくコンサートに行ってもお行儀よくしてるだけでは前半で寝てしまう。そこで、興味のある楽器に的を絞って聴いてみるものアリ。全ての楽器にきっちり見せ場があって、たとえばベーシストなら第4楽章だけでもコントラバスに注目しているとかなり面白く聴けると思います。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、眉間にしわを寄せた肖像画のイメージが強いですが、実はダジャレを連発する破天荒キャラだったようで、この曲も当時の交響曲の常識をくつがえす要素が満載ですし、それまでの作曲家が王様や金持ち(パトロンてやつね)の紐付きで活動するのが一般的だった作曲家のあり方に「NO!」を突きつけ、大衆に向けて自分の作品を問うていくことを表明した、実はなかなかロケンローな漢。ちなみにこの人、そんな破天荒キャラと裏腹に、必ず豆を60粒自分で数えてコーヒーを淹れるなんて妙にきっちりした面もあったそうです。

バロック、使える!NAXOSのひそかな売れ筋アルバム。
『バロック・マスターピース』 / V.A.

テンポ揺らしまくりでエモーションたっぷりの演奏ってのも、まぁ悪くはないですが、なんかちょっと引いちゃうのもわかります。その点バロック時代の音楽、特にテンポ速めの楽章は過剰な表現を拒否するようなところがあって潔いですね。例えばこのアルバムのTr.3とかTr.6とかをぐにゃぐにゃ粘って弾くような演奏家がいたら、自己表現罪で逮捕モノです。一方でテンポの緩い曲にしびれるくらい甘く切ないメロディがあったりするのもバロックの魅力。Tr.2, 4, 5...それに圧倒的に有名なTr.13通称『パッヘルベルのカノン』。一発屋と揶揄されがちですが、いろんなジャンルの音楽に引用された名曲No.1なんじゃないでしょうか。ウチのモバイルサイト過去数年間のダウンロードランキングでも、バッハの「G線上のアリア」やショパンの「幻想即興曲」を押さえて堂々の第1位でした。ちなみにこのアルバム、例えば結婚式のBGMなんかにもばっちり使えちゃう「実用系アルバム」でもあります。

天才は弟子入りを断られる。
『ベスト・オブ・ガーシュウィン』 / V.A.

ジョージ・ガーシュウィンていうと、「ミュージカルやポピュラー・ソングのヒット作曲家で、いわゆるクラシックなんて『ラプソディ・イン・ブルー』くらいじゃないの? 」という印象もそんなに間違いではありませんけど、他にも何曲かブルースやジャズの語法を採りいれたクラシック的な作品を遺しています。彼自身はきっちりとしたオーケストレーションを学びたかった様子ですが(「ラプソディ〜」の時は先のグローフェの協力を得ています)、ラヴェル(「ボレロ」などの作曲家)に教わりに行ったところ「あなたはもう一流のガーシュウィン。今さら二流のラヴェルになる必要ないでしょう。」と断られたんだとか。名声と高収入を得てからの向学心というか、結構勤勉な人だったんでしょうね。ちなみにTr.9『ラプソディ?』の11:26あたりからの夢見るような美メロの裏でふわふわしてるホルンのバッキング、これかなりの発明じゃないかなと思います。

自分の曲は自分で弾く。実は昔から当たり前。
『ベスト・オブ・ショパン』 / イディル・ビレット(ピアノ) イディル・ビレット(ピアノ)/スロヴァキア国立コシツェ・フィルハーモニー管弦楽団/ロベルト・スタンコフスキー(指揮)

クラシックの作曲家って、曲書いてばっかりなものと思われているかもしれませんが、実際にはこの「ピアノの詩人」フレデリック・ショパンのように自分で弾くための曲を量産していた場合も多いわけです。特にショパンはその作品のほとんどがピアノのソロ曲ですし。自分の技術を活かせる難しい曲を自分で書いていた、って感じですかね。同世代でやはり自作自演ピアニストとして大活躍していたリストあたりと、曲にしろピアノの腕前にしろよく比較されていたようです。20代以降はパリを中心に活動しましたが、故郷ポーランドへの愛が強かったのかマズルカやポロネーズといったポーランドのダンス・ミュージック(舞曲)のリズムを題材にした曲もたくさん。ちなみにピアノを弾く女性の人気No.1作曲家とも言われてますので、何曲か覚えておくとちょっといいことありそうな気もします。

イケメンミュージシャンはいつの時代も女性を失神させる。
『ベスト・オブ・リスト』 / V.A.

ショパン同様自分で弾くためのピアノ曲を多く書いた「ピアノの魔術師」フランツ・リスト。パガニーニの超絶技巧ヴァイオリンに衝撃を受け、「オレも! 」とばかりに自分にしか弾けないような難曲を書き、弾きまくりました。おまけにリストはえらくルックスが良かったために、たくさんの女性ファンにキャーキャー言われてモテまくり、そしていただきまくりだったそうです。ファンに手をつけるアイドルです。どうも好きになれませんけど、ベートーヴェンとはまた別の意味でロケンローな野郎かもしれません。でも後年は妙に哲学的な方向に向かったり、無調に近づくアプローチも見せたりして、なんだか人気の峠を越えるとアーティスト然としてくるアイドルとか芸人とか、個人的にはそんな勝手な解釈をしています。ちなみにTr.6『ラ・カンパネラ』は近年特に人気が上がっています。無理を承知でチャレンジしてみるのも一興、かもしれません。

草食系の革命家なのかも。
『ベスト・オブ・サティ』 / クラーラ・ケルメンディ(ピアノ), ナンシー歌劇場交響楽団/ジェローム・カルタンバック(指揮)

80年代あたりのバブリーな空気の中で一大ブームとなり、消費し尽くされてしまった感のあるエリック・サティですが、是非改めて聴いてみてください。確かにTr.1「ジムノペディ第1番」Tr.10「ジュ・トゥ・ヴー(あなたが欲しいの)」あたりはもう完全にジャンルを超えたスタンダードですが、サティの音楽は決して「ちょっとおしゃれっぽくてシンプルな感じ」だけではありませんよね。むしろ本人のパーソナリティは変わり者として知られています。だって拍子記号や小節線を無視して楽譜を書いたり、自分の作品を「家具の音楽」と呼んで「聴かれ方」を変えたわけですからね。ひねくれていることは間違いありません。Tr.4「グノシエンヌ第1番」(北野武監督作品への起用で人気)やTr.11「最後から2番目の思想」あたりの、ちょっと聴きながらメシ食う気にはなれないような不吉さは、サティの人の悪さがどろんとこぼれ出ているようにも聴こえます。ちなみに自作に「〈犬のための〉ぶよぶよした前奏曲」とか「干からびた胎児」みたいに悪趣味なタイトルをつけて喜ぶ癖もありました。

大きいことはいいことだ、と歌うCMがありました。すんごい昔。
『ベスト・オブ・ワーグナー』 / スロヴァキア放送交響楽団/ウーヴェ・ムント(指揮) ポーランド国立放送交響楽団/ヨハネス・ヴィルトナー(指揮) スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団/ミヒャエル・ハラース(指揮)

4夜にわたって上演されるアホみたいに巨大なオペラ作品を書いたリヒャルト・ワーグナー。自信家で野心家で浪費家で嘘つきで自己チューで、天才。若い頃は金持ちの集まるパーティで「オレ様の作品に出資させてやるよ」的なアプローチで営業したり、後年には王様に自分だけのための大劇場を造らせたり、とにかく全てにおいて極端でケタはずれにスケールがでかい。まるで大げさな少年漫画に出てくる悪役みたいですよね。「んなヤツいねーよw」的な。でもまぁいたんだからしょうがない。もちろんキャラクターだけじゃなく音楽もものすごいので、是非聴いてみてください。戦闘シーンなどですっかりおなじみのTr.7「ワルキューレの騎行」でも、サッカー中継のテーマ曲Tr.1「マイスタージンガー前奏曲」でも、エロいクラシックの代名詞と言われるTr.2「愛の死」でも、上のキャラ紹介が気になった人ならきっと好きになると思います。ちなみにワーグナーに心酔するファンは自ら「ワグネリアン」を名乗り、その高圧的な態度で周囲からの怒りを買っています。うそです。

『ベスト・オブ・ベートーヴェン』 / V.A.

『第九』のとこでわりと書きたいこと書いちゃったので、こちらではその他の有名曲をご自由にお楽しみください。ジャジャジャジャーンの『運命』、いつかは自分でピアノを奏でてみたい『エリーゼのために』や『月光』、恋人と聞きたい『悲愴』のアダージョ、いつだったか鑑賞の授業で聞いた『田園』、狩りのイメージのホルンが微笑ましい『英雄』のスケルツォ、華麗で軽快なヴァイオリンやピアノの協奏曲、悲劇に徹し過ぎて深刻な『エグモント』など。人間臭いベートーヴェンの音楽を味見するのにすごくいい選曲になってます。

文句なしの人気No.1作曲家。しかもなんかいろいろ効いちゃうらしい。
『ベスト・オブ・モーツァルト』 / V.A.

最近は聴くだけで免疫力がアップするとか、野菜がおいしく育つとかいろんな効果があるらしいですよ。信じるかどうかはさておき、日本では特に圧倒的な人気を誇るヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。実はこのアルバム、2006年のi??nes Store年間アルバムランキング堂々の第1位だったんですよ。全ジャンルの。この年がモー様のアニヴァーサリー・イヤーだったこともあるんですが、それにしても驚きでした。クラシック、ナメてたらやばいな、と。あとこのアルバム、「ベスト・オブ?」というわりに意外と渋い曲も入ってたりするのでその意味でもオススメです。先入観なしに聴いて、やっぱスゲェな、と思えるんじゃなでしょうか。天国的な美メロの呼び声も高いTr.7「クラリネット協奏曲 第2楽章」を、是非。

超絶技巧の悪魔は練習曲を自作する。
『ベスト・オブ・パガニーニ』 / V.A.

イングヴェイ・マルムスティーンを筆頭に、200年後の現代でも世界中のギター小僧に影響を与え続けるニコロ・パガニーニ。13歳で既に技術的に完成されてしまい、その後は自作の練習曲で独自の奏法を身につけていったんだそうです。当時「あの超絶技巧は悪魔に魂を売って手に入れたらしいだぜ」と噂されたのはあまりにも有名なエピソードですね。次々に弦が切れても残りの弦で弾き切るといった曲芸を披露して話題を集め、チケット代を高騰させるといった興行センスも含めて、自己プロデュース能力に長けていたんでしょう。リストがあこがれるのもわかる気がします。そのリストの曲の題材となったTr.1や抜粋収録されている「24のカプリース」では超絶技巧ヴァイオリンを、Tr.4&5ではあまり知られていないギター曲を聴くことができます。ちなみのこのギター曲、特に超絶技巧はありませんが、Tr.5のアタマなんかは後のラグタイムとか「第三の男」のテーマに通じるテイストがあって面白いです。

音を絵の具に変えた人。
『ベスト・オブ・ドビュッシー』 / V.A.

今年(2012)生誕150年を迎えたクロード・ドビュッシー。27歳の時パリ万博で触れたガムランのサウンドがその後の創作に強い影響を与えたようです。それまでの西洋音階や和声のしくみからはみ出す独特の手法で、そのサウンドはどこかふわっとしてつかみどころがなく、結果とても色彩感の豊かな音楽が生まれました。CMやフィギュアスケートでの使用をきっかけに最近かなり人気の高いピアノ曲『月の光』が、このアルバムではオーケストラ版で収録されています(Tr.7)。ちなみにピアノでド、レ、ミ、ファ#、ソ#、ラ#をいっぺんに鳴らしてみると、なんとなくドビュッシーです。

『ベスト・オブ・J.S.バッハ』 / V.A.

なんでわざわざJ.S.とか入れるのか。代々音楽家の家系でしかも超絶子だくさん、有名無名いろんなバッハがいるために、通称「大バッハ」ことヨハン・ゼバスティアンのことをこう表記して区別してます。音楽の教科書ではまるで全ての始まりはバッハみたいな感じで紹介されがちですが、もちろんそんなことはありません。ただ現代の我々にとって欠かせない「12平均律」を利用して作曲されたとされる『平均律クラヴィーア曲集』や、パズルのような魅力を持つ多くの曲は完全に時代を超えまくって21世紀にも輝き続けています。グールドの演奏のように一定のテンポでグル―ヴを感じる曲もたくさんあるので、エモーショナルなロマン派の音楽よりも現代にマッチしているかもしれませんね。

あのかっこいいCLアンセム、実はヘンデルでした。
『フットボール・クラシックス - Gloria Stadium 2010』 / V.A.

NAXOS名物国内向けデジタル・コンピ。これは2010年W杯の際にリリースしたものです。クラブ・チーム、ナショナル・チーム問わずサッカーの応援歌としてクラシックのメロディが歌われることは多いですし、サッカー番組のテーマとしてお馴染みの曲もあります。Tr.1〜3はTVでお馴染みのほか「アイーダ」の凱旋行進曲はサポーターズ・ソングの定番ですよね。欧州サッカー好きなら絶対聞き覚えのあるオペラの合唱曲もありますし、Tr.8は欧州CLアンセムの元ネタ。実はヘンデルの曲なんですよ。ちなみにTr.12には(2010年が南アフリカ大会だったので)地元のオーケストラによる南ア出身作曲家の激レア作品を収録。ま、需要はないかもしれませんけど。

音楽の授業なんてだいきらいなガキだった。でも、今なら好きになれるかもしれない…
『だいきらいだった音楽室』 / V.A.

音楽鑑賞の時間、退屈なクラシックを延々と聴かされ、ヒステリックな先生に怒られたイヤ〜な思い出。そんなトラウマ、克服してみませんか。「運命」「魔王」「モルダウ」や「新世界」…音楽の授業で聴かされた、おぞましいほどの名曲の数々が収録された当アルバム。おとなになったいま聴くと、案外ハートにずっしり来るモンです。ついでに初恋の相手のことも思い出してみましょうか。あれっ? すみませんそっちのがよほどトラウマでしたか。

数々のジャズ・コンピを生みだしたトップDJ小林径がクラシックを解き放つ!
『Routine Classics the 1ST』 / V.A.

世界最大のレパートリーを誇るクラシックレーベルNAXOSと、「Routine Jazz」シリーズでおなじみ、日本を代表するジャズDJ「小林径」による新感覚コラボレーション。時代や作風・編成のカテゴリーを超えてコンパイルされた画期的なアルバムが完成!クラブDJとして高いステータスを持つ小林径のクラシックに対する鋭い感性と、NAXOSの膨大なカタログが生んだ、クラシック音楽の固定観念を大きく裏切るラウンジ系クラシックオムニバス。リミックスでもノン・ストップ・ミックスでもない、なのにしっかりと<音楽家・小林径>の作品になっている… これは心して聴くべき! 最高に趣味のいい深夜のドライヴィング・ミュージックとしても絶対のオススメです。

「交響戦艦」シリーズ

Twitterで話題沸騰! デジタルONLYでのリリース作品がSNSを通じたユーザーとのコミュニケーションから大人気となりCD化に至ったナクソス・ジャパンの新名物シリーズ。「やりすぎw」「ばかじゃねぇの」的な絶賛の声殺到! 中身は純粋なクラシック楽曲なのに、このタイトルとジャケット で聴くと子供のころから親しんだ戦隊モノやヒーローアニメのサントラのように聴こえてくるというマジックを是非体験してください。ドライヴィング・ミュージックに、集中したい時のBGMに、おっきいお友達の妄想遊びに、それからシャレのわかる友人へのギフトにも最適! かも知れません。

ツイッターで話題騒然!! ヒーローアニメのサントラ顔負けの、破壊力抜群のサウンドが目白押し!!
『交響戦艦ショスタコーヴィチ 〜 ヒーロー風クラシック名曲集』 / V.A.

「剣の舞」「巨人」「 邪神チュジボーグと魔界の悪鬼の踊り」「戦争の神」や「火の鳥」… ……タイトルだけでもインパクトたっぷりのこれらの曲は、すべて音楽の教科書でおなじみの作曲家による、れっきとしたクラシック作品。ニッポン男児の耳に焼きついている「ヒーロー音楽」のルーツであるクラシック音楽の中から、戦闘、勝負、迎撃、進軍、飛行、空中 戦、勝利などを特に強くイメージさせる楽曲をセレクトした、個性派のクラシック名曲集。これを手にした貴公こそが、この交響戦艦の新艦長である!

男なら誰しも一度は、孤高のダークヒーローに憧れる。…「交響戦艦シリーズ」第2弾の主人公は「悪役」だ!
『幻想魔神ハチャトゥリアン 〜 ダークヒーロー風クラシック名曲集』 / V.A.

大人気の「交響戦艦シリーズ」第2弾のテーマは「ダークヒーロー」! 「かっこいい悪役」をイメージさせる、ハードな曲調のクラシックを厳選して収録。「道化師(カバレフスキー)」ではダークヒーローの謎めいた姿、「仮面舞踏会(ハチャトゥリアン)」では颯爽と翻る黒のマント、「禿山の一夜(ムソルグスキー)」では強力な黒魔術、「弦楽六重奏曲(ブラームス)」では孤独な一匹狼の熱い使命感??と、重厚感のあるサウンドをたっぷりと堪能あれ。

クラシックのミラクルパワーで「魔法少女」に大変身!?「交響戦艦シリーズ」待望の”ヒロイン編”ついに登場!!
魔法革命プロコフィエフ ~ ヒロイン風クラシック名曲集

「いっけな〜い!ちこくちこく〜!」ドジで平凡なヒロインが、クラシック音楽のミラクルパワーで「魔法少女」に大変身!? 学園、敵、変身、必殺技 、涙や友情など、少女アニメの「お約束シーン」をイメージさせるキラキラでファンタジックな名曲をお届け。Twitterで大反響を巻き起こしたヒットアルバム『交響戦艦ショスタコーヴィチ』『幻想魔神ハチャトゥリアン』に次ぐ待望の第3弾![対象:小さな女の子〜大きなお友達まで]

[レヴュー] バルバラ・クビアク(ソプラノ)/イザベッラ・クロシンスカ(ソプラノ)/マルタ・ボベルスカ(ソプラノ)/ヤドヴィガ・ラッペ(アルト)/エヴァ・マルシニク(アルト)/ティモシー・ベンチ(テノール)/ヴォイテック・ドラボヴィチ(バリトン)/ピョートル・ノヴァツキ(バス)/ステファン・ヴィシンスキ大学合唱団/ポーランド放送合唱団/ワルシャワ少年合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団/ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団/アントニ・ヴィト(指揮), ボルティモア交響楽団/マリン・オールソップ(指揮)

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