SA.RI.NA INTERVIEW

母親への想いを綴った「シングルマザー」が、2010年の有線放送でJ-POP年間リクエストの1位を獲得した女性シンガー、SA.RI.NA。自身も一児の母親である彼女は、地元横浜で自然と音楽に目覚め、レゲエをベースにしつつも、R&B、ソウル、ジャズなどを織り交ぜた楽曲で、様々な心の結びつきを歌い続けてきた。新作『光 –HIKARI-』からのリード・トラック「赤い糸 feat.ハジ→」も、すでにレコチョクの「クラブうたチャート」で1位を獲得し、女性を中心とした高い人気を実証している。

とはいえ、着うたや有線などとの接点が少ないリスナーにとって、まだまだ彼女の認知度は十分とは言えないかもしれない。僕自身、彼女のようなタイプのアーティストの取材をするのは初めてで、その内容は非常に新鮮なものだった。印象的だったのは、母親であるためライヴの回数が少なく、アーティスト写真を全面に出すタイプでもない彼女は、だからこそ自分自身に偽りのない音楽を作ることで、リスナーとの絆を作り上げてきたということ。また、取材中に“勉強”という言葉を何度も繰り返し、自身がプロの作家であるという意識が非常に高いということも、同時に強く感じられた。この2点があるからこそ、今のSA.RI.NAの高い人気が築かれているのだろう。

インタビュー&文 : 金子厚武

SA.RI.NA / 光-HIKARI-
SA.RI.NAの新たなスタートを告げるアルバムが完成! ソフト・レゲエ的なテイストに“声”と“歌詞”を全面に出した、心地良いサウンドに身をゆだねられること必死。ハジ→とのデュエット曲「赤い糸」などを始め、充実した楽曲が並ぶ作品!!

【収録曲】
1.赤い糸 feat.ハジ→ / 2.あなたに恋してるよ / 3.Wedding Song / 4.きっとできるよ / 5.願いが叶いますように / 6.あなたの勇気に / 7.サヨナラ / 8.ママの日記

私の性格がそのまま出ている音楽をしたい

――OTOTOYでSA.RI.NAさんを紹介させていただくのは初めてなので、まずはこれまでの活動について聞かせてください。そもそも人前で歌うようになったのはいつ頃からですか?

SA.RI.NA : 一番始めは高校生のときですね。横浜に高校があったので、音楽が周りに溢れていたんです。当時はHIP HOPが流行っていたり、ダンスをしている子や、サウンド・マンも結構いる中で、自然と「私は歌おう」と思いました。

――影響を受けたミュージシャンというとどんな名前が挙がりますか?

SA.RI.NA : 小さい頃の記憶ですが、父親はレコードが好きな人で、父のレコードの中でベレス・ハモンドが一番好きでした。今はもうおじいちゃんだけど、内容も心に響くものがいっぱいあって、今でも素敵な曲ばかりで、強い影響を受けましたね。ただ、そんなにレゲエを意識していたわけじゃなくて、自分の歌いたいインストを拾ってきて、それをかけて歌っていました。他にもグレゴリー・アイザックスやルトリシア・マクニール、日本人だったらTinaさんとか、かっこいいなって思ってましたね。

――クラブとライヴ・ハウスだとどっちで歌うことが多かったんですか?

SA.RI.NA : クラブの方が多かったですね。この頃はクラブ・イベントが遊びの場でもあったし、ライヴ・ハウスはバンド! という感じだった気がします。当時は、イベントに出演をする際に、お客さんを呼ぶ事が大変でした。全然見てくれる人がいなくて、自分がみじめで、辛かった時代を経験しているからこそ、今もこうして歌えている事に感謝の気持ちでいっぱいです。

――今はお子さんもいらっしゃるし、ライヴはあまりやられてないようですね。

SA.RI.NA : そうですね。今は、フィーチャリングでお声をかけて頂いたライヴにしか出演していません。私一人でできるならいいのですが、サポートをしてくれるスタッフがいないとできないことですからね。ただ、地元でずっと音楽をやってきてる子たちと、またライヴをしていこうと話してます。その際、お客さんにはお金を払ってきて頂くわけだから、それに応えるライヴがしたいと思っているし、自分のためにも深夜、頑張ってライヴを見にいったり、常に勉強させて貰っています。

――ライヴはできていなくても、SA.RI.NAさんの楽曲は着うたや有線などでとても人気があります。現在の状況をどのように考えていますか?

SA.RI.NA : サポートしてくれているスタッフの皆がいてくれるということは、私にとって、とてもありがたいことなんです。今の環境はこれ以上望まないぐらい幸せだし、その中で自分がどれだけ音楽に一生懸命になれるかっていうのが大事だと思うんです。一生懸命さが伝わらないと、リスナーの人も「ん?」ってなると思うし、嘘くさいリリックを書いたら、それはSA.RI.NAの音楽ではなくなってしまうので、浮き沈みはあるんですけど、なるべくポジティヴに作れるようにしています。

――最近はどんな音楽に興味がありますか?

SA.RI.NA : 最近、かっこいいなと思うのは、韓国の音楽ですね。ビートやベース・ラインが、すごくかっこいいんですよね。さすがに私には歌いこなせませんが、特にビートは勉強になるものばかりです。

――「願いが叶いますように」のシンセの感じとかは今のエレクトロとかにも通じるものがあるように思いました。

SA.RI.NA : 特に、エレクトロを意識したわけではないのですが、ジャンルが違うだけで、やはり、音楽には共通点が沢山あるから、そう感じるのかも知れませんね。この曲のアレンジャー(M.Kamishiro)さんは、昔からレゲエ・アーティストさん達をプロデュースしている人で、日本のレゲエ・シーンを築き上げてきたアーティストさん達と音楽をやっている方なんです。どんどんサウンドが進化していく中で、どうやったらSA.RI.NAらしく作っていけるか、自分自身、ホント、勉強しかないって感じで(笑)。でも、私以上に、私の曲のサウンド・プロデュースをして下さっているアレンジャーさん達全員が、より「SA.RI.NAらしく」を追及しながら進めて下さっているので、とても心強いです。

――今おっしゃった「SA.RI.NAらしさ」って、ご自身ではどう捉えていますか?

SA.RI.NA : 全部自分の実体験だったり、自分の考えは全面に出していきたいっていう気持ちはあります。「私の性格がそのまま出てる音楽をしたい」みたいな。例え一線を退いたとしても、そのスタンスでいれば、ずっと音楽をやっていけると思うし、歳を取っても音楽には携わっていきたいですね。横浜は、私の親の世代の方たちも、まだまだ現役で音楽をやっていますからね。ほんとにカッコイイですよ、大人の音楽っていいな、自分もこうなれたらいいなって、憧れの気持ちが湧いてきます。私は曲を書くのがすごく楽しいし、書いてないといられないので、この先も常に曲は作っていると思います。

失恋から立ち直るには新しい恋が必要

――新しいアルバムには『光-HIKARI-』というタイトルが付けられていますが、SA.RI.NAさんにとっては音楽がずっと光だったと思うし、今はお子さんも光でしょうし、いろんな意味が込められていると思うんですけど、なぜこのタイトルにしたのですか?

SA.RI.NA : 今まで『絆-キズナ-』、『心-ココロ-』って漢字3文字を選んできて、それにつながる言葉を探していたときに、このタイトルが出てきたんです。去年の震災のこともあったし、希望が持てるタイトルがいいなって。

――「あなたの勇気に」や「願いが叶いますように」の歌詞の中にも「光」という言葉は出てきていますよね。

SA.RI.NA : 「光」っていう言葉は元々私の歌詞に結構出てくる言葉なんですけど、「あなたの勇気に」は去年の震災の後すぐに書いた曲なんです。  悩み事があったり、前に進めずにいる方たちに、SA.RI.NAっていうアーティストが自分の背中を押してくれてるって思ってもらえたらいいなって。ただ、震災について直接書いているのではなくて、「あの日の出来事」という歌詞は、それぞれ、その方の環境にあてはめてくれればいいなって思ってます。

――個人的に面白いなって思ったのが「サヨナラ」で、失恋の歌かと思いきや、1曲の中で次の恋愛が始まってるんですよね。こういう曲って珍しいなって。

SA.RI.NA : そうですよね。私もそう思ってます(笑)。

――いわゆる「泣ける歌」みたいなものって、悲しいまま終わるじゃないですか? でも、意外とすぐ次の恋愛に行ったりもするもので、逆にリアリティがあるなって思いました。

SA.RI.NA : 実は、失恋ソングを沢山聴いてきました。でも、私は一曲の中で完結したい派なので、「何で失恋したまま終わるんだろう?」って思ってしまい、失恋してため息をつくような感じで終わりたくはなくて。プラスの未来が予想できる終わり方にしました。実際、これも私の実体験で、立ち直るには、やはり新しい恋が必要なんですよね。このアルバム自体、ポジティヴな事を書いている事が多いです。

――失恋ソングを沢山聴いたっていうのも、途中でおっしゃってたのは勉強の一環ですか?

SA.RI.NA : そういうことは常にやってます。ただ、流行りのものを取り入れて作っていても、またそれは難しいのかもしれなくて、「今これが流行ってるなら、逆にこっちをしよう」みたいな発想で制作していますね。歌詞を見ていると、「同じようなフレーズがたくさんあるな」って思うけど、でも人それぞれ、その人がおかれている環境にハマって聴いてるんだと思うし、今は配信の時代だから、最初の視聴で心に響くかで決まると思うんです。それに見合うメロディーも歌詞も作らなきゃっていうのは常に思っていますね。

――SA.RI.NAさん自身はCDの世代でしょうから、CDで聴いてもらいたい気持ちも強いですか?

SA.RI.NA : それはもちろん、そうですね。アルバムのブックレットも制作チームで力を合わせて作ったものだから、絶対に見てほしいし、アーティストはみんなそうだと思います。インディーズの最初のアルバムとか、今聴くと、自分のレコーディングのクオリティは低いかもしれないけれど、初めてそれを手に取ったときの喜びは今も覚えてるし、自分の曲がアレンジャーさんに渡って、初めて聴いたときは感動して涙が止まらなくなったりした事もあるんです。そういう感動は常に忘れないようにしたい。自分の置かれてる状況を当たり前に思わないようにしないといけない。そうなると、いい曲も書けなくなっちゃうと思うんで、初心は絶対に忘れないようにしたいですね。

SA.RI.NA PROFILE

1982年9月7日 横浜生まれのママ・シンガー。あらゆる形の愛、命のメッセージを歌う。2009年6月17日、インディーズ1stアルバム「絆 -キズナ-」をリリースし、同時に妊娠、出産を経験する。母親となり、優しい音、強い想いが更に込められた、メジャー・デビュー・シングル「シングルマザー」、メジャー・デビュー・アルバム「愛・絆」を、2010年4月14日、ソニー・ミュージックダイレクトよりリリース。「シングルマザー」は、2010 USEN J-POP 年間リクエスト・ランキング1位となった。2011年2月9日、mini Album「心 -ココロ-」をリリース。

SA.RI.NA HP

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この記事の筆者
金子 厚武

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