大西ユカリ2年振りのソロ作が登場!

関西最大の簡易宿泊街、漫画「じゃりン子チエ」の舞台、それは大阪、新世界。街を歩けば自動販売機に挟まれた状態で「何やねん」とガンを飛ばしてくるおっちゃんや、エッフェル塔と凱旋門を模して建設された通天閣に会える、全てがでたらめで全てがリアルな大阪一のディープ・スポットだ。そんな街に長年住み、通天閣で定例ライヴを行うシンガー、大西ユカリ。「大西ユカリと新世界」と言った方がピンとくる人も多いかもしれない。しかしバンドの方は2009年に活動休止し、それ以降はソロで活動を続けている。

そんな彼女の新作タイトルは『直撃!韓流婦人拳』。リード・トラックである「韓流婦人」では韓流ブームの渦中にいる日本のお母さんたちの日常をコミカルに描いている。しかも本作で正式に韓国デビューを果たしているというのだから、向こうの人はこの曲を聴いて何を思うのだろうか。彼女に、なぜ韓国だったのか、韓国音楽インディー・シーンは今どうなっているのか、彼女が歌う昭和歌謡はどのように受け止められているのか、また、お勧めの韓流ドラマの韓国の男の子たちの魅力についても語ってもらった。

インタビュー&文 : 水嶋美和


大西ユカリ / 直撃!韓流婦人拳

【価格】
(左)MP3、(右)WAV共に単曲200円 / 1800円

「やたら綺麗な満月」以来約2年ぶりとなるニュー・アルバムは、なんと日韓バトル・アルバム。日本盤では全て日本語、新曲「韓流婦人」はハングルとは違ったスットコドッコイな小気味よさ、なんと言っても韓国ファンク・ロック・バンドを従えての大韓ロックのヤサグレ加減がピッタシはまる!

大西ユカリ INTERVIEW

——本作で韓国デビューしたとのことですが、これまた何で韓国だったんでしょう。

大西ユカリ(以下、大西) : 大西ユカリと新世界のファースト・アルバムが韓国でリイシューされてたり、向こうの任侠映画(「死生決断」監督/チェ・ホ)に曲が使われていたり、もともと縁はあったんですよ。それが2006~7年頃かな。

——作品タイトルに「韓流」とありますが、いわゆる韓流ブームが来る前から韓国とは縁が深かったんですね。

大西 : いやいや、韓流ブームにはくるっと巻き込まれてますよ。

——あら? じゃあ韓流ドラマとかK-POPとか?

大西 : K-POPはあんまり聴いてないけど、ドラマと映画ははまったねえ。ラジオのパーソナリティーをしてた時に韓流ドラマのサンプルDVDを大量にもらって、見てみたらまあかっこええやんか! きれいやんか! どえらいことやわ~ と思って、この2年ぐらいは月~金で一日5本ペースで見てます。(笑)

——結構なハイ・ペースですね(笑)。ちなみに大西さん一押しの作品は?

大西 : 「朱蒙(チュモン)」に出てくるソン・イルグクがええ役者さんでね。最近結婚して、三つ子もできたみたい。

——あららら、ちょっと悲しいですね。

大西 : いえいえ、韓流スターの幸せを一番に願うのが日本の「韓流婦人」の掟です。その心意気が美しいんですよ。

——ほう。息子みたいな感覚ですか?

大西 : そう言ってしまうと… 夢がないやん? 日常を忘れさせてくれる「心の恋人」です。ドラマの世界に入って、現実に戻って家族のために頑張る。でもたまには友達と韓国に遊びに行く。なんて可愛いらしいんやろう、日本のお母さんたちって。

——この曲に出てくる「韓流婦人」は大西さん自身のことなのか、それともそういう日本のお母さんたちのことを俯瞰して見てるのか、どっちなんだろうと思ってたんですよね。

大西 : 両方っちゃあ両方やねんけど、韓流ブームの渦中にはいますね。

——日本男性と韓国男性の魅力の違いはどこにあると思いますか?

大西 : 付き合ったことないからわからんけど、好きになった女性に尽くすところが韓国の男の子の素敵なところよね。でも、向こうの男の子も日本の女の子に人気があることを自覚し始めて調子に乗り始めてるんですよ! そこはバシっと言ったらなあかんなと、昨今は思ってます(笑)。

——なるほど! ではそろそろ音楽の話を(笑)。本作の制作は韓国で?

大西 : そうですね。新作の構想を練ってる途中に、ファーストのリイシューを出してもらったのと映画で使ってもらったのを思い出して、当時お世話になったレコード会社に相談したら「是非出しましょう! 」と言ってくれて、昨年2月に制作に着手し始めて、6月からは毎月韓国に通って向こうのバンドと一緒に録りました。

——向こうのバンドというと、例えば?

大西 : ミミ・シスターズ、ソウル電子音楽団、ファンカフリック&ブースッダ。あと日本人やけど、チャン・ギハと顔たち(以下、チャン・ギハ)のセカンド・アルバムをプロデュースした長谷川陽平君にも関わってもらいました。

——ミミ・シスターズといえば、チャン・ギハと顔たちのコーラスを務めていた2人組ですよね。

大西 : そうそう、グラサンの。うちにトッポキ作りに来てくれた時も「何が起こるかわかりませんから」って言って絶対グラサン取らへんねん。何が起こるねん(笑)。

——大西さんの家ということは大阪の新世界まで来たということですか?

大西 : 来たよ! チャン・ギハも通天閣のライヴに遊びに来てくれました。おかしかったですよ。通天閣で一人揺れながら、周りの日本人に囲まれて「これ誰? 」とか言われて(笑)。その後、一緒にホルモン焼き食べに行って色々な話して、彼の音楽に対する思いはすごく素直よね。でも作ってる音楽がちょっと変なのがいいよ。

——昨年11月のチャン・ギハと顔たちの来日ライヴを見に行った時、本当にいろんな世代の人が見に来てて驚いたんです。韓国のライヴ・ハウスではどうですか?

大西 : チャン・ギハは韓国インディーズの星やからね。やってることはキザなんやけどサウンドはサイケで、年代性別問わずファンが多い。今の韓国には80年代の波がもう一度来てるんじゃないかな。だから私も飛びこみやすくて、若い子には面白がられるし、ちょっと年輩の方には懐かしがってもらえたんやと思います。歌謡曲ともロックとも、どっちとも捉えられるしね。

——昭和歌謡の歌詞って、今の時代からすれば独特ですよね。女の悲しみの美しさを描いているというか。それって当時の日本特有の感覚なのでしょうか。

大西 : 「演歌は韓国が先か日本が先か」と言われているぐらい、韓国にも女の哀愁を描く音楽文化はあります。私は歌謡曲は行間に何を思わせるかが重要やと思っていて、今作の韓国盤で向こうの曲をカヴァーする時も歌詞の少ないものを選びました。覚えるのが楽っていうのもあるけど(笑)。

——大西さんは韓国でもライヴされてますか?

大西 : 韓国のバンドと一緒に、もう何度か。

——オーディエンスの反応に違いはありますか?

大西 : すごいですよ。全身使ってうわーって盛り上がる。「アニョハセヨ! 」って挨拶したら「こんにちはー! 」って返ってきて、もう元気元気。みんな楽しみを待ってるんじゃないかな。日本はそういう時期を80年代ぐらいで終えちゃって、アーティストとオーディエンスの間に「ここで盛り上がって、ちょっと休んで、最後は盛り上がるんでしょ? 」みたいな予定調和が生まれちゃってる。韓国にはまだそれがなくて、歌ってるこっちもすごく刺激を受けますね。

——韓国のアーティストの熱量はどうですか?

大西 : みんな、やる気満々でギラギラしてる。前に出たくて仕方がない子が韓国のインディー・シーンにはたくさんいて、これも今の日本には無いもんやなあと思った。私も25年間歌い続けてるけど、そんな風になれた時期あったかなあ。そういう風でありたいなあって思えましたね。日本のアーティストはちょっと遠慮しがちやもんね。

——じゃあ、韓国で音楽活動をすることは、ミュージシャンとしての自分を見直すいい機会になった?

大西 : なったね。引越ししたてとか新学期とかにある、これから何かが始まる高揚感。これがずっと継続している状態が、今の韓国のインディー・シーンにはある。メジャー・シーンに辟易してる子もいるけど、自分のやりたいことはちゃんと貫いてる。

——では、韓国のアーティストから見て大西さんはどういう風に見えてると思いますか?

大西 : 「何やってんねんやろ、このお姉さん」って感じやろうね(笑)。向こうから見ればサイケな人間に見えてるかも。あとね、向こうのアーティストがやりたいことに韓国の経済状況が合っている。衣装とか機材とか揃えるのって日本やとすごいお金がかかったりするやん。韓国はまだまだ発展中の国やから、お金のない若い人でも、望むパフォーマンスに必要なものを妥協せずに揃えることができる。自分の望む音楽やパフォーマンスに対して真面目で素直で純粋なのがいい。「一生懸命やるので、ステージに出させてください」ってちゃんと言えるしね。

——韓国インディー・シーンのアーティストがどんどん日本に輸入されてくると、日本のアーティストにとっても刺激になって良さそうですね。

大西 : ぼやっとしてられんくなるもんね。

——では、本作『直撃!韓流婦人』の話を聞かせてください。まず、一曲目「韓流婦人」からすごいインパクトだったんですけど、作曲は宇崎竜童さんなんですね。

大西 : まさかこんな「韓流あるある」の曲になってるとは宇崎さんも思わんかったやろねえ(笑)。

——まさかこんなコンセプチュアルな曲になってるとはね(笑)。

大西 : でも、面白いでしょ?

——曲としても「韓流あるある」ネタとしても面白かったんですけど、この歌詞に描かれている日本の韓流熱狂っぷりをハングルで韓国のお母さんたちに聴かせた時、どんな反応をするのか気になりました。

大西 : 韓国のスタッフは大ウケでした! わかりやすいのが好きなのは万国共通やね。

一からやり直そうと思って

——あと、資料に「ビートたけしからのリクエスト「恋の十字路」」とありましたが、お知り合いなんですか?

大西 : 一度番組でご一緒した時に「あんたこの曲が似合うよ」って薦めてくれたんですよ。ご本人はもう忘れたはるかもしれませんけど。で、歌ってみたら皮肉なことに、自分のどの曲よりも評判がいい。

——たけしさんは鋭かったんですね。

大西 : ずっとセルフ・プロデュースをしてきて自分のやりたいことばかり選んできてたけど、人からアドバイスしてもらうのも面白いなと思いましたね。

——あと、クレイジーケンバンドの「けむり」をハングルで、しかも女性の声でカヴァーしたのはグッときました。

大西 : これはハングルで歌うべき歌でしょ! 横山剣さんからも「やれやれ! 」って言ってもらえたし。クレイジーケンバンドの曲は「黒いオートバイ」もカヴァーしたんやけど、やっぱりハングルではまったねえ。

——韓国盤と日本盤、言葉の響きで情緒の色も変わりそうだから、聴き比べても面白そうですね。では、大西さんの活動遍歴について聞かせてください。大西ユカリと新世界は2009年に活動休止となっていますが、ソロで活動しようと思った時に、何か気持ちの変化はあったのでしょうか。

大西 : 大西ユカリと新世界が塊としてうまくいかんくなっていって。合わないものを無理矢理合わせても良くはならないでしょ? だからここらで一回一からやり直そうと思ってソロ活動を始めたんです。

——ソロになってよかったことは?

大西 : 自分一人やから誰にも干渉されずに済むし、のびのびと出来ること。

——では、逆に苦労することは?

大西 : 全責任が自分にあるので、バンドの時よりあちこちに気を使わないといけなくなったことかな。でもそれはどこにいっても同じやからね。あと、「前の方が全然よかった」と言われないかいつも怯えてます。

——言われます?

大西 : 直接は言われないけど、水面下ではあるんちゃう? 見に来なくなった人もいるし。名残惜しい愉快なバンドやったし、中年の星でもあったからね。

——休止ではありますが、解散ではないですよね?

大西 : そのつもりやったけど、2010年にメンバーのマンボ松本が亡くなってしまったからいよいよ解散かなと思ってます。他のメンバーで大西ユカリと新世界を続ける気にはなれないしね。あのバンドは幻になっちゃうのかも。マンボが亡くなった後に、追悼の意もこめて一回みんなで集まってライヴをしたんですよ。もう、すごかったね。

——大阪ですか?

大西 : 通天閣で!

——おおお! それは絶対最高ですね。前に新世界の串カツ屋で飲んでる時に、島木譲二さん(「大阪名物パチパチパンチ」「ポコポコヘッド」で有名な吉本新喜劇所属の芸人)のサインを脇に大西ユカリと新世界が店内で流れ始めて、東京から遊びに来てた友人が「完璧な大阪だ」と言ったんです。そういう意味でも、新世界の名前とイメージを全国に広めたバンドだったと思うので、とても惜しいです。

大西 : 若い世代からしたらそうかもしれないけど、先駆者はたくさんいるから。先輩方の邪魔をしないように細々とやらせてもらいます。新世界の町も変わったからなあ。串カツ屋の呼び込みとか、腕掴んで引っ張っていかれるからね!

——必死ですね(笑)。 大西さんは新世界在住で、生まれは南海沿線で大阪市内からは少し離れてる… あれ? ここって近くに「関西サイクルスポーツセンター」ありません?

大西 : うわ、バイトしてたわー(笑)。

——(笑)。大阪の中でも最もディープな街に移住したのはなぜですか?

大西 : 「大西ユカリと新世界」って名前を付けちゃったもんだから、住むしかないでしょ! 「新世界の何を知ってんねん」って突っ込まれた時に「住んでますけど、何か? 」って言えるじゃない。そういう理由で住み始めたんやけど、気が付いたら出られへんくなってた。あとさ、そんなバンド名で活動してて、実際新世界にも住んでて、通天閣でずっとライヴし続けてたらドラマにもなるやん。それが私の思い描いた風景だったんです。

——今は定期的に通天閣でライヴをやってて、まさにその風景の中にいるんですね。そういえば同じ新世界でも、先日、六本木のライヴ・スペース「音楽実験室・新世界」でライヴをしてましたが、西の新世界と東の新世界で違いはありましたか?

大西 : ちゃうちゃう、全っ然ちゃう! 東京はどこもシュッとしてはるけど、大阪の新世界はベッタベタやんか。東京の「新世界」は倉庫を改築してオシャレな建物の中にあったけど、大阪の新世界は路上で人が寝てるやろ?

——意外に共通点があったりするのかなーと… 。

大西 : ないないない! わっははははーー!!

——そうですか(笑)。では、最後にこれからの活動について聞かせてください。

大西 : 通天閣のライヴは定期的に続けていくとして、東京は新世界で「大江戸サリバンショウ 大西ユカリの霞町番外地」というイベントを3月から毎月開催します。韓国でもライヴする予定です。バンドやと連れて回らなあかんから交通費かかってしょうがないけど、一人やと身一つで何とでもなるからいいよね。これからも地道に頑張っていこかって感じです!

——韓国のライヴ・ハウスの熱気の中で、韓国のバンドをバックにハングル版「けむり」を歌う大西さんを見たいです。

大西 : 来て来て! 韓国のこと、絶対好きになるから。あなた、好きになりそうな顔してるよ。2PM(※韓国を代表するアジアNo.1野獣アイドル)みたいな髪型してはるしねえ。

——本当ですか… (頭をなでながら)意識はしてなかったんですけど。ありがとうございました!

大西ユカリ Works


大西ユカリ / やたら綺麗な満月

宇崎竜童全面プロデュースの下、平成の一代リズム歌謡が完成。大西ユカリが憧れの宇崎×阿木コンビと合体、そしてベールを脱ぐ。バックは日本屈指の、アロージャズオーケストラが全面バック・アップ! 平成の江利チエミとも言える豪華絢爛なアルバムが完成。


大西ユカリ / HOU ON

大阪・新世界を旅立ち、新たなる気合と野望と欲望に満ちた魂の暴走!! 遂に中年楽団の星=吾妻光良&ザ・スウィンギンバッパーズと夢の共演が実現。大阪・新世界の生態を、哀愁と共に歌い飛ばす必殺のズルムケ・ムーディー・ジャンプ・ナンバー。更にJB流儀なファンク楽団、オーサカ=モノレールとのぶっちぎりのファンク・チューン。濃すぎる内容で登場!

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大西ユカリ PROFILE

1964年4月6日大阪府富田林市の金剛ニュータウン生まれの女性歌手、女優。大阪府立金剛高等学校で漫画家・愛本みずほと同期生。ホーム・グラウンドは大阪の新世界を自称。自らも新世界に住み、月1回の通天閣歌謡劇場での大西ユカリショーは30回を超える。そのチケット販売方法が、特定日の通天閣での販売だけのため、地元新世界の熱いファンの集まるもはや『地域の行事』となっている。そのR&Bや昭和歌謡を彷彿とさせる音楽性とテレビ、ラジオでのしゃべくりから『平成のゴッドねえちゃん』と称される事もある。

大西ユカリ official HP

 
 

インタヴュー

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