祝還暦! 坂本龍一を祝うトリビュート・アルバムが到着

1978年のデビュー後、 細野晴臣、高橋幸宏とYellow Magic Orchestra(以下、YMO)を結成。以降音楽、映画、出版、広告などメディアを越えた活動を続け、活動の中心をNYへ移してなお国内外ともに活躍する坂本龍一が、なんと今年で還暦を迎えます! 彼の生誕60周年を祝い、スペシャルなトリビュート・アルバムが到着。まずは『坂本龍一トリビュート - Ryuichi Sakamoto Tribute -』。トベタ・バジュンがプロデュースを手掛けた本作はAtom™、半野喜弘、MimiCof、DJ Yogurt、Fugenn& The White Elephants and Shintaro Aoki、Cokiyuら話題のエレクトロニカ・アーティストが参加しています。そして『Congratulations on your 60th Birthday Dear skmts』は、坂本龍一がパーソナリティーを務めるラジオ番組「RADIO SAKAMOTO」(J-WAVE)にて、多くの公募作品の中から選ばれた作品がオンエアされる「Audition」のコーナーを通して出会ったニューカマーたちによる坂本龍一への敬意を表したトリビュート作品。坂本龍一の60回目の誕生日にリリースされる異なる2つのトリビュート・アルバム。どうぞ様々な坂本龍一像を感じとってみてください。

坂本龍一トリビュート - Ryuichi Sakamoto Tribute -

収録曲 :
1. Merry Christmas Mr. Lawrence(トベタ・バジュン)
2. War and Peace(yuanyuan)
3. Riot in Lagos(Atom™)
4. Perticepation Mistique(半野喜弘)
5. 美貌の青空(Ngatari)
6. Self Portrait(Fugenn& The White Elephants and Shintaro Aoki)
7. Ballet Mecanique(MimiCof)
8. 1919(Sabi)
9. サルとユキとゴミのこども(antennasia)
10. Thatness and Thereness(DJ Yogurt)
11. Tibetan Dance(no.9)
12. The Last Emperor(Sabi)
13. The Other Side Of Love (feat. Cokiyu) (トベタ・バジュン)

販売形式 : mp3 / HQD(24bit/48kHz)

Congratulations on your 60th Birthday Dear skmts

収録曲 :
1. ゴリラがバナナをくれる日 (Babi)
2. Out Of The Red (Tsuyoshi Obata / 4D Modulation Studio)
3. IHTOV (Babi)
4. soil (caméra-stylo)
5. a flowing (Saya Nishida)
6. とんぼ (RAKASUPROJECT.)
7. NewYearOfLife (Cube(K5))
8. On Thier Next Steps (The Phonos+Saya Saya Nishida)

【Babiからのコメント】
今回、坂本龍一さんの還暦を祝しまして、RADIO SAKAMOTOを通して出会った方々と感謝と敬意の気持ちを込めてトリビュート・アルバムを制作しました。 坂本龍一さんのラジオ番組RADIO SAKAMOTOでは、多くの方々が楽曲やその他制作物を見聞きしていただく事ができるオーディション・コーナーがあるのですが、その中で、教授からのとても厳しくも愛情のこもった生の声でコメントをいただく事ができるのです。そこを通してアドバイスや意見をいただき、噛み砕き、音への追求をする事の喜びを感じ、そしてまた精進する強い想いが重なって行きます。

私の人生において、素敵な師に出会える事は大きな大きな喜びです。私はRADIO SAKAMOTO、著書やインタビューなどを通して、坂本龍一さんの愛情深く真っ直ぐで熱いお人柄から、音楽の事に留まらず、多くの事を学んでいます。 今回は、若輩者ではありますが、強い感謝と敬意を込めましてトリビュート・アルバムのまとめ係をさせていただきました。また、このトリビュートアルバムの売上はこども音楽再生募金への寄付とさせていただきたく思います。皆で心を込めて作りました。

どうぞお聴き下さい。(Babi)

坂本龍一が最前線に居続ける理由

2012年1月17日、坂本龍一氏が還暦を迎えた。書いておいて何だが、その一文が全くピンと来ないのは僕だけだろうか。commmonsを設立したり、ライヴをUstreamで中継したり、今も時代の最先端にいる。そのため還暦と言われても、実感を持って伝わってこないのだ。とはいえ、活動歴は長いし、残してきた作品も多い。ここでは、1982年生まれの僕の視点から見た坂本氏について語ってみたいと思う。

僕が坂本龍一という人を知ったきっかけは、音楽からではなく、小学校の頃に見たテレビのお笑い番組だった。本当に“アホ”らしい役を演じていて、子供心ながらにタブーなものを見ているような気がしたのを覚えている。次に意識したのは1997年のこと。坂本龍一 featuring Sister Mで「The Other side of Love」をリリースした時だった。それもドラマの主題歌だったので、テレビを見て知った。極めつけは、1999年にリリースされた「energy flow」。三共株式会社のCM曲として使われ、連日のようにテレビで耳にした。同曲を収めた『ウラBTTB』は、累計180万枚を売りミリオン・セラーになり、芸能ニュースでも取り上げられた。以上のことから分かるように、僕の中での坂本龍一像は、テレビを介して伝わってきた部分が大きい。

2000年以降、僕が坂本氏について触れるのは、テレビ以外のメディアが中心になっていった。それは本であったり、レコード・ショップであったり、ネットだった。それらに触れながら、坂本氏の印象は少しずつ変わっていくことになる。最もイメージが変わったのが、2009年に新潮社から発売された『音楽は自由にする』を読んだときだった。坂本氏の自伝といえる同書は、読み物として大変おもしろいものである。坂本氏の天の邪鬼な青春をはじめ、時代に向かい合って生きてきた人ということが伝わってくるのだ。僕は勝手に、スタジオに閉じこもって音楽ばかり作ってきた人というイメージを持っていたが、そうではないことが分かり、新鮮な驚きを覚えた。

学生運動の時代に高校生だった彼は、学校に対するストライキをしている。また、YMOを結成して世界ツアーをしているときは、日本の工業製品が外国を席巻し出した時代だったため、ナショナリティックな役割を演じているように感じたという。音楽産業が右肩上がりだった1994年と1995年には、「ポップなもの」「売れるもの」を作らなければという意識を持って、『スウィート・リヴェンジ』『スムーチー』を作ったそうだ。それらの証言から見えてくるのは、坂本氏が社会の動きとともに活動してきたことである。世の中にコミットしながら、活動してきたこと。それが坂本氏が今も最前線にいる理由でもあり、還暦を感じさせない理由でもあるのではないだろうか。坂本氏がネットで音源を配信したり、Ustreamでライヴを中継することも、今も時代と向かいあって活動していることを如実に物語っている。

不思議なのは、彼の音楽から時代性がそれほど強く漂ってこないことだ。時代に向かいあえば合うほど、音楽にもその時代の色がつくものだと思っていたが、坂本氏の音楽からはあまり感じることがない。それは、他者に届けるということを意識してきたからなのだろう。多くの他者が理解できるようにするためには、具体的なものを抽象化することが有効だ。出来る限り曲を届けることを意識したからこそ、僕のように受動的な人間にも彼の音楽は届いてきたに違いない。

前置きが長くなってしまったが、坂本龍一氏の還暦に2作の音源がリリースされる。1作は坂本氏をリスペクトするアーティストたちによる、トリビュート盤『坂本龍一トリビュート -Ryuichi Sakamoto Tribute-』。トベタ・バジュンを始め、半野喜弘、大貫妙子、cokiyuなど錚々たるメンバーが参加している。各アーティストの色が出たエレクトロ中心の聞き応えのある作品だ。もう1作は、坂本氏がJ-WAVEでやっているラジオ「RADIO SAKAMOTO』のオーディション・コーナーで紹介されたアーティストたちによるトリビュート作品『Congratulations on your 60th Birthday Dear skmts』。この作品は、2011年に自身のアルバムをリリースしたBabiが指揮をとっている。これからの音楽を作っていく新しい芽が作る可能性に溢れた作品である。この2作を聴いて、各アーティストの持つ坂本龍一像が、どう反映されているかを楽しんでほしい。今後も坂本氏がどのような作品を聴かせてくれるのか、還暦をお祝いしながら楽しみに待とう。(text by 西澤裕郎)

左からトベタ・バジュン / 半野喜弘 / Atom™

『坂本龍一 NHK session』

大友良英、大谷能生、ASA-CHANG、菊地成孔、やくしまるえつことのセッションを、特典付きで完全収録!

価格 : 2500円
特典 : 当日の模様を収めたスペシャル・ブックレット

収録曲はこちら

坂本龍一+大友良英「improvisation inspired by Ornette Coleman」
オーネット・コールマンをモチーフにしたピアノとギターによる繊細な即興演奏

坂本のピアノは日本ツアーで愛用しているYAMAHA製のMIDI対応グランド・ピアノ。大友のギターはGIBSON ES-125で、アンプはFENDERのBlues Deluxeを改造したもの。事前にメールのやり取りによって、オーネット・コールマンの「ロンリー・ウーマン」をモチーフにすることは決まっていたが、現場では打ち合わせもそこそこにいきなり本番へ突入。まずは互いの音を 探り合うような音の交換が始まり、しばらくしてから大友がテーマを奏でる。それに呼応しつつも余白を十分にとるように坂本がピアノでコードを添えていくが極端に音数の少ない、いわゆる即興演奏と聞いて思い浮かべるイメージとは随分異なる繊細なものである。

坂本龍一+大谷能生「adaptation 02 - yors」
坂本が立てる物音と大谷のラップが織りなすゴダール的な空間

まずは大谷が即興で書いてきたという詩をラップ。そのリズムに合わせながら坂本はステージ上を靴音を響かせて歩き回り、空間の空間の響きを楽しむように手を打つ。さらにはスタジオの隅に置かれていた小さな土のうのような重しを持ち上げて床にたたきつけ、“ドスン”というキックのような低く音圧のある音を出したり、紙をくしゃくしゃにまるめて音を立てたりと、なかなかピアノを弾く気配がない。ようやくピアノの位置についたと思いきや、今度は弦を手で押さえながらの内部奏法を開始。大谷がアルト・サックスを手にブレス中心の……それこそ吹きながらポエトリー・リーディングを続けるようなプレイを展開すると、坂本は今度はピアノ弦をスペアの弦でこすり始めた……。

坂本龍一+ASA-CHANG「adaptation 03.1 - acrs 〜adaptation 03.2 thousand knives - acrs」
エレクトロニック・ドラムで奏でられる「千のナイフ」

ASA-CHANGがセッションのモチーフとして希望したのは坂本の名曲「千のナイフ」。まずはガラガラやシンバル、さらにはタブラボンゴで強烈なリズムをたたきだすと、坂本もそれに応えるようにピアノのボディをたたき、まるでパーカッショニスト同士のセッションのような趣。リズムの交換が終わると、坂本がピアノで「千のナイフ」のイントロを弾き始める。その上にシンセ・ドラムULT SOUND DS-4の持続する上昇音が鳴らされると、急にYMOっぽく聴こえてくるから不思議だ。コードに続いて印象的なメロディがゆっくり奏でられ、そのすき間をさまざまなパーカッションが緩急自在に縫っていくさまはとてもスリリング。

坂本龍一+菊地成孔「adaptation 04 - nkrs」
2人の知性派ミュージシャンが相まみえた歴史的な記録

この番組のために呼ばれたミュージシャンの中では「自分が一番坂本さんの音楽を聴いている」と豪語する菊地は、坂本のアルバム『音楽図鑑』に収録されていた「A Tribute to N.J.P.」を書き起こした譜面を用意。しかし、坂本は逆にマイルス・デイヴィスの「ブルー・イン・グリーン」をモチーフとした演奏を提案。実際に試してみるもののうまくいかず、完全な即興演奏としてもう一度始めたのがこのトラックだ。ピアノとソプラノ・ サックスそれぞれが、本来得意とする音を出しつつも、もつれ合っていくような密度の濃い音響空間が展開していく様子は、ある意味今回のセッションの中では最も即興演奏という言葉が喚起するイメージ通りの作品だ。

坂本龍一+やくしまるえつこ「adaptation 05.1 - eyrs 〜 adaptation 05.2 ballet mécanique - eyrs」
独特な声で「Ballet Mécanique」に新たな息吹を

坂本が柔らかなタッチでピアノをゆったりと奏でる中、やくしまるは飴を袋から開けてなめ、ティーカップでお茶を飲み、ペットボトルのふたを開ける。そして軽くほほ笑んだかと思うと、久しぶり会った知り合い……それもかつては深い仲にあったと思われる異性を相手に駆け引きめいた会話を始める。相手の声は聞こえず、やくしまるの声だけが聞こえる様子は、幽霊と会話をしているよう。軽い鼻歌が発せられたと思いきや、今度は英語の朗読が始まる。坂本のアルバム『未来派野郎』収録の「Ballet Mécanique」の歌詞だ。さまざまなアーティストによってカバーされているこの曲に、やくしまるはまた新たな息吹を加えて、この日のセッションを締めくくっていた。

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筆者について
西澤 裕郎 (西澤 裕郎)

1982 年生まれ。ファンジン『StoryWriter』編集長。http://storywriter-magazine.com/

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