2011/12/08 00:00

ロック・フェス「COUNTDOWN JAPAN 11/12」への出演も決定するなど、現在上り調子のオワリカラが、12月7日にシングル『シルバーの世界』をリリースする。音楽番組「ストリートファイターズ」の12月度エンディング・テーマにもなっている同曲。ソリッドなギター・リフにダンサブルなドラム、ドゥルッドゥルなベース、ブリーピーな鍵盤と妖しげなコーラスがからみ、一筋縄ではいかないニュー・ウェーブ歌謡風なダンス・ナンバーに仕上がった。一転、カップリングの「Fever」は幽玄なるソフト・サイケ・ワールドが炸裂。今回、フロントマンのタカハシヒョウリに「シングル」「ライヴ」「自分たちの立ち位置と方向性」を軸に話を聞いた。そのことばから浮かび上がったのは、意外にもハングリー精神旺盛で、リアリストでありながらロマンティストな彼の人となり。「アヴァンとポップの間にある普遍的なもの」を目指し、新たなフェーズに突入しつつあるオワリカラから、目を離さないでほしい。

(インタビュー&文 : 福アニー)


オワリカラ / シルバーの世界
年間106本という脅威のステージを経て、オーディエンスと共に育てた『シルバーの世界』が遂に発売。椎名林檎や東京事変のサウンド・エンジニア、井上うに氏が担当。この楽曲はオワリカラとリスナーを次の世界へ導く新たなドアとなるはずだ!

【TRACK LIST】
01. シルバーの世界
02. Fever

自分が生きている証をそこに残そうって

――そもそも2枚のフル・アルバムを出した後、どうしてシングルを出そうと思ったんですか。

タカハシヒョウリ(以下、タカハシ) : みんなにもっとオワリカラを知ってほしくて。それには最初の入口がアルバムだとちょっとへヴィーだと思ったから、手に取りやすいシングルにしたんです(OTOTOYでは400円で配信)。

――フル・アルバムのリード・トラック同様、今回もアッパーで複雑な楽曲になりましたね。次はシンプルな歌ものでくると思ったんですが。

タカハシ : 僕も最初は歌ものにしたかったんだけど、裏切っていこうと(笑)。2曲だけの分、いろんな要素が詰め込まれている濃厚で攻撃的なものにしたかったんですよね。そう思ったのはライヴの影響が大きくて。「頭だけじゃなく体もちゃんと楽しめるような音楽を作る」のが今年のオワリカラのテーマだった気がするから、締めくくりになるまとめの曲という意味でも、アタックがあるほうがいいと思ったんだよね。

カワノケンタ(Dr)、タカハシヒョウリ(Vo.G)、カメダタク(Key)、ツダフミヒコ(Ba)

――具体的にどうやって作っていったんですか。ベースはもはやメロディーだし、プログレばりのユニゾンもあるし。

タカハシ : もともとギター・リフがあって、セッションでツダくんのベースがのったときに「これはいけるぞ」と。あとはベースもギターも細かいフレーズだから、鍵盤はそこを埋めるようなラインで音域も考えて、世界観を作っていく。それと同時に音が示しているムードと、自分のなかで見えてくる風景をリンクさせて歌詞を乗せていく。カオティックでプログレッシブな匂いを残しつつ、ツェッペリンみたいに4人で400%じゃないけど、どのパートを聞いても全員がリードみたいな曲作りを心がけたかな。

――歌詞を乗せる際、どんな風景が見えてきたんですか?

タカハシ : ギター・リフを作った時点ですごいギラギラした銀色が見えて、「ライヴの瞬間」をイメージしたんです。ほんとにいいライヴって感覚が覚醒して人間の器を超えて宇宙と交信するというか、その空間がひとつの生命体になるというか。僕は2004年のフジロックでのゆらゆら帝国のライヴを見てそう思ったんですけど。お客さんとバンドの境目が全部なくなって一体化しちゃうというのかな、その瞬間は輝くものが満ち満ちている気がして、それを曲のなかで「銀粉」って歌ったんです。

――歌詞で何かが足りない、探してるって歌ってますよね。その「何か」ってなんなんですか。

タカハシ : 僕にとっては「音楽」。魂を込めて自分のすべてを使い切ったら、どれくらいのものができるんだろう、どこまでいけるんだろうってことを突き詰めていきたい。僕は結構気分の上下が激しいので、調子のいいときは「まじ全曲すげえな、こんなかっこいいライヴ・バンドいないな」って思うけど、平常心に戻ると「これではだめだ、もっといいものができるはずだ」 ってなる(笑)。あと『ドアたち』でも足りないって歌ってるけど、あれは「もっとやれるだろ? こんなもんじゃないだろ? 」って、自分に負けそうな自分に歌ってるんですよね。でも『シルバーの世界』はサビを聞いてもらえばわかるけど、聞き手に対して語りかけてる。そこが違うかな。

――なるほど。ちなみにセッションでいろいろなアイデアが出てくると思うんだけど、サウンドでのOKかNGかって基準はあるんですか。

タカハシ : 「かっこいい」っていうのははずせない。でもかっこよすぎるとだめで、どこかダサかったりいなたかったりしないと嫌なんですよ。たとえばUSインディー風のダンス・ロックをやるにしても、歌詞は漫画家の冨樫義博のことにしよう、みたいな(笑)。メイン・ストリームを生きてこなかったから、どこかはずしたいんでしょうね。

――その感覚ってどうやって培われてきたの? あるいは影響を受けた音楽がひんまがってた?

タカハシ : 一番最初に好きになった音楽が、中1くらいに聞いたビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』なんです。それまでピアノや歌は習ってて合唱曲は好きだったんだけど、当時のヴィジュアル系とか小室ファミリーとかの音楽に一切興味なかった。でもビートルズを聞いて、音がすごいあったかいしレコーディングした当時の空気も入ってる感じで、音楽っていいな、バンドって楽しそうだなと思ったんです。あと自分にとってリアリティのある歌詞は酒飲んで踊ろうぜってことじゃなくて、漫画や特撮や普通の生活で培ってきたボキャブラリーのなかにある。ツダくんにしてもただ踊れるベースじゃなくて、どこか自分にとって新しかったりフリーであったりすることがすごい大事なんだと思うし。そういう感覚が曲作りに出てきてるんじゃないかな。

――カップリングは一転、BPMゆったりめのソフト・サイケですね。

タカハシ : リード・トラックは激しい高揚感があるので、カップリングはチル・アウトするような覚醒感があったらなって。去年インフルエンザにかかって超高熱を出したんですけど、タミフルを飲んで寝てたときに見た夢か幻覚かを、そのまま歌ってるんです。エンジニアの井上うにさん(椎名林檎やフジファブリックなどを手がける)にミックスで好きに遊んでくださいって言ったら、すごいソフト・サイケな音になってて。とても気に入ってます。

――エンジニアの井上さんもそうだけど、PV監督の山口保幸さん(ゆらゆら帝国などを手がける)やジャケット担当のデザイナーさんとやり取りしてみて、いかがでした?

タカハシ : いままで全部自分で仕切ってたんだけど、今回はほぼお任せしました。おもしろかったのは、僕が特撮好きって一言も言ってなかったのに、山口監督が送ってくれた絵コンテの1コマ目が蜘蛛女だったこと(笑)。曲とアート・ワークががっぷり支え合って、世界が広がった感じです。

心を一体化させたいって気持ちを書きたい

――ライヴについて聞いていこうと思います。「自分たちはライヴで完結する」ってよく言ってるけど、それにしたってすごい回数だよね。なぜそこまでライヴに取りつかれているんですか?

タカハシ : 音楽のリアクションが見えるのがライヴだけでしょう? やっぱりコミュニケートしたいので、単純にやりたくなってしまうんですよね。あと、曲がライヴのなかで育っていってるのがわかるからね。自分たちの音楽をもっと前に進めるために、どうしても必要なものなんです。

――いまコミュニケートの話が出たけど、『イギー・ポップと讃美歌』をリリースして「ARABAKI ROCK FEST.11」に出演したあたりからかな。音源からもライヴからも、より一層リスナーにコミットしていきたいっていう開けた感じを受けたんだけど、なにか心境の変化があったの?

タカハシ : もともと自分たちがいいと思う音楽を、自分たちでやりたくて始めたバンドたったから、ライヴもすごい内向きだったと思うんですね。でも『イギー・ポップと讃美歌』を出して「ARABAKI ROCK FEST.11」に出たあたりから、お客さんの層やテンションが変わってきて、もっと開けた楽しみ方をしてくれるようになって。全然知らない人たちが「わー! 」って拳をあげて踊ってくれて、逆に俺たちが外の世界に連れ出されたというか、俺たちの心を開放してくれたというか(笑)。それでいま、もっと強くコミュニケートしたいって気持ちが出てきてるんだと思う。

――各地のお客さんの反応を見て、だんだん根付いてきたなって手ごたえを感じることはありますか。演奏やMCに貫禄が出てきましたよね。

タカハシ : 会場いっぱいにお客さんが入るようになったのはものすごいうれしいですよね。きらびやかな他のバンドさんたちを見て、「ほんとに俺ら同じところでやってていいの? はたして受け入れられるの? 」って思ってたから(笑)。でもオワリカラでもぐわっと高揚してくれて「かっこいい! 」って言ってくれるのは、俺らでもいけるんだなってすごい自信になったし、誇り高く思います。

――とにかく今年は音源のリリースやライヴ巡業、大型ロック・フェスへの出演と、めまぐるしい1年だったと思います。音楽的な面で印象深かったことがあれば教えてください。

タカハシ : 「ベイビーグッドラック(『イギー・ポップと讃美歌』収録)」くらいから曲作りの姿勢が変わったことですかね。自分で曲を作るときに、自分が生きている証をそこに残そうって。日常のなかのかけらみたいなものを、できるだけ言葉として入れたいと思うようになったのは、今年に入ってからですね。もともと言葉遊びや傍観者の気持ちで書くことが多かったんだけど、いまは机を囲んでふたりで話してるって気持ちで書くことがずいぶん増えたなって。

――そうなったきっかけというのは?

タカハシ : いままでは声やことばがただの楽器に過ぎなかったのが、完全に意思を伝えるメッセージになったからだと思う。自分の気持ちや魂が入っていないことばを歌うのは嫌で、本当に「あなた」に伝えたいことがあるとしたら、それを歌うのがいま一番しっくりくるんですよね。だからこれからの曲は、かなり変わりつつあるかな。

――ここで「TOKYO NEW WAVE 2010」(タカハシが中心となって、新進気鋭のバンドを集めたコンピCDの発売やライヴ・イベントの開催などを行った)の話を。あれはシーンをドキュメントとしてまとめたうえで、それぞれのスタンスが浮き彫りになった動きだったと思うんだけど、1年以上たって自分たちのアイデンティティーは見えてきましたか。

タカハシ : 絶対DIYみたいな気持ちはないし、ものすごいメジャーな活動したいってわけでもないし… 。バンドとして求めるのは、アヴァンとポップの間にある普遍的なもの。たとえばオルタナでアングラなバンドもかっこいいし、エレカシみたいなバンドも大好きで、そのふたつの層の間で自分たちのかっこいいと思う音楽を追求してるバンドってすごいあこがれますよね。髭(HiGE)やフジファブリックがそうだと思うんだけど。でもその位置って、質の高い音楽をやってて、ちゃんと魂があって、メッセージがあってってバンドじゃないと、いる事を許されないと思うんですよね。あとちゃんと支えてくれるファンもいないと。だからもっとたくさんの人に知ってもらいたいし、そういうバンドになりたいですね。

――タカハシくんのいう「普遍的なもの」って?

タカハシ : 僕にとって一番身近にある普遍的なものって、「空白」「ない」ってことなんですよね。それが一番大きなモチベーションです。もちろん喜びとか哀しみとかも普遍的なものだけど、ないっていうのを満たそうとして音楽をやっているんだろうし、その空白に投げかけてるんだと思うから、同じような空白があるひとにはうまくはまるんだと思う。

――いまのインディー・シーンってざっくり言えば、古今東西の音楽をひっくるめたオルタナティブなバンドか、いまのUK/USインディーに強く影響を受けたバンドかって構図じゃない。自分たちはそれをどういう風に見ているんですか?

タカハシ : 昔に比べたら、オルタナティブなバンドとも少しは距離があると思う。年末に新宿モーションで馴染みのバンドたちとやって、次の日に渋谷クラブクアトロと幕張メッセに出るんですよね。いまはどっちともやれるような位置にいるから、それは自分たちの独自性なんじゃないかな。

――それもふまえて、今後の音楽性はどうなりそうですか。次は歌ものかもって言ってましたが。

タカハシ : いま作ってる曲はかなり歌ものですね、サウンドも変わってきてるし。最近好きなのがプリンスなので、ああいうエレクトロなファンクで、スカスカで、ちょっとアホっぽくてセクシーな要素が入ってくると思います。あと改めてデヴィッド・ボウイと井上陽水っていう自分のなかの二大ヒーローがすごい輝きを増していて。自分もその域までいきたいです。

――歌詞の内容はどうですか? いままでは特撮ものなどに対する愛を歌ったものが多かったように思うんですが。

タカハシ : 自分の好きなものに対して歌うのは今後もやりたい。でもいま作ってるなかで、誰かとブランチしてるってだけの曲があるんですけど、そういう向かい合ってる感じが、聞いた人にも届く曲があったらいいなって。いわゆるラブ・ソングではないけどもっと踏み込んで、心を一体化させたいって気持ちを書きたい。あとこの前、東高円寺UFO CLUBに高野P介と1997年、灰緑を観に行ったんだけど、絶対真似できない言葉を使ってくるなって感化されたなあ。

――そういえば夏からソロ活動も再スタートさせましたね。バンド活動との色分けはどういう風にしていきたいと思っていますか。

タカハシ : ソロはアコギ一本の弾き語りで「すごい狭い部屋での内緒話」、バンドはライヴで映えるような「オープンに面と向かってる感じ」くらいの分け方かな。でもその線引きも曖昧になってて、昔だったら絶対オワリカラでできないと思った曲も、いまではオワリカラらしくできる可能性もあるんじゃないかって。どっちの曲になるかは、なんとなくのタイミングです。

――それではそろそろ締めましょうか。今回の『シルバーの世界』、どんな人に届いてほしいですか。

タカハシ : オワリカラがちょっと気になるって人に聞いてもらいたいですね。まずは片足突っ込んでもらいたい。もちろん片足突っ込んでる人には両足突っ込んでもらうきっかけになれたらいいし、両足突っ込んでる人にはずっと好きでいてもらえるような… 。『シルバーの世界』はオワリカラの世界への招待券ですかね。

――年末は新宿モーション、渋谷クラブクアトロ、幕張メッセに出演するんですよね。音楽家人生を2日間で駆け抜けちゃうみたいなところもあると思うんですが、最後に意気込みを聞かせてください。

タカハシ : キャパが10倍ずつくらい違いますけど(笑)、どのハコでも一番かっこいいって言われるバンドを目指します!

INFORMATION

2011年12月10日(土)@つくば PARKDINER
2011年12月13日(火)@代官山 晴れたら空に豆まいて(※タカハシヒョウリ、ソロ・ライヴ)
2011年12月17日(土)@タワーレコード渋谷店「STAGE ONE」 ※「シルバーの世界」タワーレコード限定購入者特典
2011年12月18日(日)@大阪 心斎橋 Pangea ※「シルバーの世界」タワーレコード限定購入者特典
2011年12月21日(水)@渋谷 O-nest
2011年12月26日(月)@名古屋 新栄 CLUB ROCK'N'ROLL
2011年12月30日(金)@新宿 Motion
2011年12月31日(土)@渋谷 CLUB QUATTRO
2011年12月31日(土)COUNTDOWN JAPAN 11/12@幕張メッセ

オワリカラ自主企画ライブ、2012年第一弾が決定!!!
オワリカラ presents 『 GOD SAVE THE DANCEFLOOR! WEST! & EAST!』
2012年1月20日(金)@大阪 十三 FANDANGO
[GUEST] SuiseiNoboAz / tricot
2012年1月21日(土)渋谷 club asia
[GUEST] 後日発表!

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プロフィール

オワリカラ
年間106本という凄まじい本数のライヴを行う2010年代最先端4人組ロック・バンド。
2008年結成以来、圧倒的なライヴ・パフォーマンスが注目され話題になり、2010年にはカナダからの招聘でandymori等とカナダ・ツアーも敢行。海外でも圧倒的なライヴ・パフォーマンスで数々の賞賛を浴びた。
2010年8月、1st Album『ドアたち』をリリース! タワーレコードのレコメンド「タワレコメン」に選ばれ話題になる。50本のツアーを経てツアー・ファイナルのO-WESTワンマンを大成功に終わらせた。
2011年5月、2nd Album『イギー・ポツプと讃美歌』をリリース! クオリティの高さが評価されて日本中のレコード店、媒体で大展開される。Rocks TokyoやARABAKI ROCK Fes 2011などの巨大フェスの出演も含め40本のツアーを経て、9月23日、渋谷WWWにて行われたツアー・ファイナル・ワンマンを大成功に終わらせる。
そして、12月7日(水)初のシングル『シルバーの世界』をワンコイン(¥500)でリリースする。

オワリカラ オフィシャル・ウェブ

この記事の筆者

[インタヴュー] オワリカラ

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