2011/11/15 00:00

Dirty Projectors + Bjork / Mount Wittenberg Orca
Dirty ProjectorsとBjork、奇跡のコラボレーションが実現! 本作『Mount Wittenberg Orca』は、彼らが2009年にニューヨークで行ったチャリティ・コンサート用に書き下ろした7曲を、ライヴの1年後にスタジオ・ヴァージョンとして収録したもの。以前Bjorkのトリビュート・アルバムにDirty Projectorsが参加したこと、Bjork本人が彼らのヴォーカル・アレンジをいたく気にいったことから、この組み合わせが実現しました。互いの才能が見事に融合した、全音楽ファン必聴の一枚が完成。

【TRACK LIST】
1. Ocean / 2. On and Ever Onward / 3. When the World Comes to an End / 4. Beautiful Mother / 5. Sharing Orb / 6. No Embrace / 7. All We Are

「クジラ和声」を核とした、ふくよかなフォークトロニカ

Salyuと小山田圭吾の『s(o)un(d)beams』、Brian Enoと詩人Rick Hollandの『Drums Between the Bells』、あるいはBon IverとJames Blakeの『Fall Creek Boys Choir』。日本、UK、USを問わず、今年に入って「声」と「現代音楽」に並々ならぬ関心を寄せ、積極的にアプローチを試みるアーティストが増えてきたように思う。それもコラボレーションによって。その先駆けが、Dirty ProjectorsとBjorkの『Mount Wittenberg Orca』ではなかろうか。はじまりは2009年にさかのぼる。もともとはエイズ患者の住宅供与を支援するチャリティ・ライブのために書き下ろした曲で、昨年レコーディングしてダウンロード配信されていた。そしてこのたび、完全限定生産のCDとして発売されることが決定! 全7曲入り21分。収益はすべて海洋保護を支援する活動にあてられる。

方やAnimal CollectiveやVampire Weekend、MGMTらとUSインディー・シーンを牽引し、前作『Bitte Orca』がヒットとなった、ブルックリンを活動拠点とするDave Longstreth率いるバンド。方や言わずもがなだが、最新作『Biophilia』(これはもう音楽というより一大プロジェクトである)で、より呪術性と宇宙性を増したアイスランド出身の歌姫。ちなみにDirty Projectorsは、David Byrneとのコラボレーションや20人編成のオーケストラAlarm Will Soundとの共演も果たしている。また前述したBon IverやFlying LotusがBjorkをカバーしたこともあり、シーンがたおやかにつながっていることをうかがわせてほほえましい。

そんな話題性抜群の2組の新作、ジャケットは山だがサウンドスケープは海である。全曲通して「クジラ和声」とでもいいたいハーモニーを核とした、ふくよかなフォークトロニカだ。今作はすべてDirty ProjectorsのDave作なのだが、メンバーが山の上からクジラの親子を見たことをもとに、曲を作ったという。そこでBjorkには母クジラ、メンバーには子どもクジラになったていで歌ってもらったのだとか。ということは、オケはさながら親子クジラが心地よく泳ぐための大海原といったところか。とくに海底をはうようなマッシヴなベースに、ピッチがころころ変わるハーモニーが力強くのった「Ocean」から、開放的なハーモニーの掛け合いが美しい「On and Ever Onward」の流れが印象的である。ちなみに、Bjorkの出身地は捕鯨で有名なレイキャヴィク(日本でも、「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」というアイスランド産のホラー映画が公開されたばかりだ)。そしてパートナーの現代美術家Matthew Barneyと、捕鯨をモチーフにした映画「拘束のドローイング9」も発表していた。クジラに縁があるのだろうか…。

ともあれ「声」と「現代音楽」に対するこだわりは、たとえばLigeti Gyorgy Sandorの「Requiem」(4つの部分からなる30分の大作で、映画「2001年宇宙の旅」の挿入曲)やMilton Babbitt の「Philomel」を彷彿とさせる。Bjorkの作品でいえばやはり『Medulla』か。しかしながらどこか陽気でおとぎ話のようなムードが漂い、小難しくなく聴けるのは、Daveのポピュラリティを忘れないサウンド・メイキングによるところが大きいだろう。自然への畏敬、賛美もしくは鎮魂が、演劇的な響きでもって描き出される。

Dirty Projectorsはすでに新作の制作が佳境に入っているとのこと。なんでも『Mount Wittenberg Orca』の方向性に近いそうで、いまから待ち遠しい。彼らに限らず、今後「声」と「現代音楽」へのロックやポップスからの接近は、より顕著になっていくに違いない。(text by 福アニー)

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PROFILE

Dirty Projectors

NYブルックリン出身の4人組バンド。02年にデイヴ・ロングストレスが中心となりバンドを結成。幾度のメンバー・チェンジを経て現在のメンバーに落ち着く。現在までに5枚のスタジオ・アルバムを発表。07年の4thアルバム『ライズ・アバヴ』はグリズリー・ベアーのクリス・テイラーがプロデュースを手掛けた。09年の5作目『ビッテ・オルカ』は年間ベスト・アルバムを総なめにした。2011年、ビョークとのチャリティー・コラボ作品『マウント・ウィッテンバーグ・オルカ』が待望の初CD化。2012年には待望の新作アルバムのリリースを予定している。

Bjork

アイスランド・レイキャヴィク生まれの女性歌手、シンガー・ソングライター、作曲家、女優。ソロで精力的に活動する以前は、オルタナティヴ・ロック・バンド「ザ・シュガーキューブス」のメイン・ボーカルとして活動していた。彼女は様々なジャンルの音楽に影響を受けた革新的な音楽を生み出すことで知られ、グラミー賞に12回、アカデミー賞に1回ノミネートされるなど多数の賞を獲得している。2011年10月、iPadのアプリとしても発売することが話題を呼んでいる、最新7枚目のアルバム『バイオフィリア』をリリースする。

この記事の筆者
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