H ZETT M インタビュー

「PE'Zのヒイズミマサユ機では? 」という声も後を絶たない謎の天才ピアノ・マジシャン=H ZETT Mが新作『きらきら☆すたんだーど2~ぷれみあむ~』を発表した。本作は、KORGのシンセサイザーPS60を使い、「エーデルワイス」や「きらきら星」といった有名曲を、H ZETT Mらしく、ときにパンキッシュに、ときにファンタジックにカヴァーした『きらきら☆すたんだーど with PS60』の続編であり、「森のくまさん」や「むすんでひらいて」などを、より自由に、やりたい放題にカバーしている。そのド派手なライヴ・パフォーマンスもあって、普段はプレイヤーとしての魅力に注目が集まりがちではあるが、今回のインタビューでは特異な表現の背景にある哲学を聞くことで、謎多きH ZETT Mの人物像にグッと迫ってみた。ライジング・サン・ロック・フェスティヴァルへの出演に続いて、10月には3年半ぶりの国内ワンマンも決定と、今後も彼の動きからは目が離せない。

インタビュー&文 : 金子厚武

馴染み深いはずの童謡が、異次元空間へ早変わり!
H ZETT M / きらきら☆すたんだーど2 〜ぷれみあむ〜

1. カンカンポルカ / 2. 森のくまさん / 3. むすんでひらいて
4. 愛のあいさつ / 5. チューリップ / 6. Je te veux
7. いとまきのうた / 8. 遠き山に日は落ちて

販売形式 : mp3 / wav
価格 / mp3 1200円 / wav 1800円
過去作品も一挙配信開始!

別次元になって、やっと面白くなる

photo by Sekiguchi Fumihiko

——最近は「台湾在住なのでは? 」と噂されるほど、台湾での活動も活発ですが、そもそもなぜ台湾なのでしょう?

一番ホットな国のひとつであることは間違いないので、そこで何かをやれば面白いことになるのは間違いないかなと。

——特殊な関係性だというヒイズミマサユ機さんが所属するPE'Zも台湾で人気がありますよね? そのことも関係してたりするんでしょうか?

どうですかね… お客さんは非常に積極的で楽しいですけどね、声も大きいですし。まあ、流れに身を任せて、ナイジェリアとかに行っちゃうかもしれないし(笑)。

——H ZETT Mの活動は今後も謎が多いと(笑)。では、新作の『きらきら☆すたんだーど2~ぷれみあむ~』ですが、昨年発表された『きらきら☆すたんだーど with PS60』の続編にあたるわけですよね?

前回は「with PS60」ってついてるぐらいですから、あのシンセの世界があったんですけど、今回はそこからの解放というか、また新たな世界を目指したという感じですね。

——具体的なポイントはあったんですか?

自由に楽しくっていうのがポイントですかね。「これは変」とかあまり考えずに、変になっちゃったらなっちゃったで楽しい、みたいな。変になる化学反応みたいのが起きたらいいなって。例えば、「チューリップ」だったら、「空中に咲いてるチューリップ」になると楽しいなってアイデアがありまして、それでやってみたって感じですね。

——アレンジによって異次元に入っていくようなものがいいって以前おっしゃってましたもんね。

そうですね。別次元になって、やっと面白くなるっていうか。基本的には、自由に楽しく、ポジティヴな感じで、なおかつ、変な化学反応をさせて、爆発させて、それが異次元になって、でもポジティヴなままだったら面白いなって。

——そういう異次元な感じ、爆発するような感じの表現っていうのは、何か影響源があるんですか?

そうですね… 影響源は音楽以外かもしれないですね。本とか漫画とか、美術館、映画…

——何か具体的に挙げてもらうことはできますか?

これを作り終わった後なんですけど、ヒイズミさんという方がいまして(笑)、その人がツアーで広島に行ったときに、現代美術館みたいなところに行って、そこで「とおくてよくみえない」っていう展覧会をやってて、そういうのに影響を受けたりしてますね。あと最近面白かったのが、佐々木マキっていう「ガロ」とかで書いてた絵本作家がいて、その人が書いた「うみべのまち」はすごかったです。そういうのを見ると、「変な人っていっぱいいるんだな、全然まだまだだな」って。

——自分はまだまだだと?

自分面白くないなって(笑)。上を見るととんでもないですね。

——でもH ZETT Mさんの作品も十分破綻してますよね、いい意味で(笑)。幼稚園児が歌うような楽曲を、ここまでガラッと変えちゃうわけですから。

一応グロさみたいのは入れてないんですよ。ポップにというか、マニアック過ぎないものを集めた感じはあります。

——わかる人にだけわかればいいアートにはしたくない?

それはそれで将来的にやってみたいとは思うんですけど、これを作る上ではやらなかったっていう感じですね。

——では、音楽からの影響というとどうですか?

技術的にはありますけど、発想のインスピレーションは音楽とは別のところから得てますね。iTunesとか見てると、かっこいいのがすごいいっぱいあって、時間が足りないぐらいなんですけど、それは最近の動向を見たり、やり方の吸収をするって感じで。「私こういう音作りました」「この音かっこよくないですか? 」っていうのをいろんな人がボンボン投げてて、それに共感することはたくさんあるので、それは技術として取り入れていきたいです。

カウンター・パンチを打ちたいなっていうのは常にあります

——じゃあ、異次元のようなというか、変な表現を好む、そもそもの理由っていうのはどこにあるんでしょうね。

やっぱり… 本とかを見て、「あ、本ってこういうものなんだ」って知って、いろいろ自分の中での常識が作られていってるんですかね… 「ある意味、それは正解だ」みたいな道も正しいんだなって。

——世間一般で正しいとされていること、常識とされていることとは違う道があって、むしろそっちの方が正しいんじゃないかっていう?

三島由紀夫がですね、「いい本っていうのは、読んだ後にどん底に突き落とすやつなんだ」みたいなことを言ってまして(笑)。それを見たときは、「そうなの? 」って思ったんですけど、そういうことをずっと考えてると、自分の中でのいい本の基準が生まれるというか… そういう感覚になった本って実際に結構あって…

——どん底になった?

どん底に突き落とされたというか、「うわー! 」っていう(笑)。でもそれぐらいじゃないと、読んだことに対して意味がないのかなって気もしてきたりして、もちろん、それだけがすべてじゃないですけど、「ここがやっぱり正しいんだな」って基準がどんどん生まれてきて… その挙句の果てがここに(笑)。

photo by Sekiguchi Fumihiko

——(笑)。でも確かにパッと見で理解できちゃうものよりも、理解できなかったり、最初は不快に感じちゃうぐらいのものの方が、結果的に心に残るっていうのは芸術全般に言えることかもしれませんね。

パッと見で「いいな」「よくないな」っていう以前に、何かグッとつかまれてるみたいな、そういうのがすごいんだなって思いますね。

——そのグッとつかむ感じはありつつ、今回に関しては自由に楽しくを基本に作ったと。

どん底もチラッと見つつ、「そこは今回は行きませんよ」っていう。

——その際に惹かれるんですかね? ギリギリがいいっていう。

やるならとことんどん底に落としちゃった方がいいと思います(笑)。それがいいもののような気がいつもしてるんで。どん底って言っても、ネガティヴとかそういうことだけじゃなくて、人の心がグハッとなるっていう、そういう意味だと思うんで。

——では今回のカバーの中で、満足度の高いものを挙げてもらうとするとどれになりますか?

原曲の和音を変えちゃったりするのが快感だったりするので、その点で言うと「チューリップ」と「遠き山に日は落ちて」が楽しかったなって。アレンジの一方法として。

——原曲の雰囲気は残しつつも、まったく違うものにしちゃってますもんね。

遠き山に落ちたのはUFOだったのか? みたいな(笑)。

——「空中に咲いてるチューリップ」とかUFOとか、浮いてるものに惹かれるんですかね(笑)。

惹かれますね… 音楽シーンの中でも僕は浮いてる気がしますし(笑)。

——(笑)。シーンの中での立ち居地とか考えますか?

小さい頃からの育ちというか、クラスの中での立ち居地とかもそうなんですけど、やっぱり僕は王道な立ち居地ではないんですよね。そっちに惹かれる気持ちもありつつ、こっちの方が居心地がいいっていう気持ちもありつつ、ボクシングでいうカウンター・パンチを打ちたいなっていうのは常にあります。王道にカウンター・パンチをっていう。

photo by Sekiguchi Fumihiko

——三島由紀夫にしても、王道でありカウンターでもありますもんね。音楽シーンの中でも、もっとそういう人が増えてもいいかもしれない。

そうですよね。

——『きらきら☆すたんだーど』が2作続いたので、そろそろオリジナルも聴きたいという声もあるかと思いますが、そのあたりはいかがですか?

いろんなタイプの曲を常に書いてます。ただ、出すことが前提じゃなくて、作ることが主というか、出ても出なくてもいいやっていう感じですね。作ることでバランスを取ってるというか… そうじゃないと街中で挙動不審になると思います(笑)。

——あとは、国内でのライヴももっと見たいところですね。

この前に台湾の路上でやったやつがキーポイントになった気がするので、ここからっていう感じですね。まあ、出し惜しみしつつ(笑)。

——期待を高めて、満を持して登場と。

満を持して… ちっちゃなライヴハウスでやったり(笑)。

——でもそこを異次元に変えるぐらいのライヴをするっていう(笑)。期待してます!

3年半振りの国内ワンマン・ライヴ開催決定!

『トンパチ祭り~ 華麗にそして大胆に~』
2011年10月8日(土)@下北沢GARDEN
OPEN 18:15 / START 19:00
前売 ¥3,500 / 当日¥4,000 ※ALL STANDING・整理番号付き・tax in・drink代別
チケット一般発売日:9月3日(土)
INFO:サンライズプロモーション東京 TEL 0570-00-3337

PROFILE

H ZETT M

身長体重不明、年齢不詳、スリーサイズ非公開の"謎の天才ピアノ・マジシャン"。PE'Zのヒイズミマサユ機なのではないかという臆測が飛び交うも、本人はぼんやりと否定。2007年、アルバム『5+2=11』を携えデビュー。『5+2=11』(ゴッタ煮の11曲)という人を食った様なタイトル通り、ジャンル無制限の天才奇才ぶりを発揮。超絶技巧に加え、無重力奏法と形容される超人的パフォーマンスで衝撃を与えた2夜限りの"幻のライヴ"「ピアノイズ」の後、シーンから突如姿を消すが、2008年まさかの復活。さらに進化したごった煮サウンドを詰め込んだ『PIANO HEAD』をリリース。映像集団OVER HEADSとタッグを組み、もはや芸術の極地に達したライヴ「弾きまくりDESTROY」を最後に、再びシーンから姿を消したが、2010年、映像作家UGICHINと新プロジェクト「H ZETT ISM」を立ち上げ第1弾アーティスト大型絶叫3ピース歌謡パンク・バンドmimittoをプロデュース。

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